プロットに大苦戦しておりました……この作者いつもプロットに苦戦してるな!
それでは、本編をどうぞ!
第二十八話 プロローグと・決闘事情
□■<慶都・大闘技場>決闘場 【疾風槍士】輪廻丸曲輪
『それでは、これより午後の部第一戦目、“総合下級、パーティ戦”による決闘を開始します!』
『最近は<マスター>が数多く参戦している等級の戦いですが、今回も例に漏れず双方のパーティに<マスター>を含む物となっております』
『どうか皆々様、彼らの全身全霊の戦いをご照覧ください!』
『東の門! 登録パーティ名〈刃と魔の共演〉参加者、【軽剣士】西白寺春香、【風術師】ジーニアス、【双剣士】カシミヤ、従属モンスター・イグニスです!』
『西の門! 登録パーティ名〈
『多少の人数差はありますが、互いの奮戦を期待したい所です。それでは、尋常に――試合、始めェ!』
◇
アナウンスのその合図と共に、俺と俺の仲間達は即座に敵――〈刃と魔の共演〉の参加者に肉薄する。
俺達のパーティの構成は全員が前衛な超前のめりパーティだから、まずは乱戦に持ち込んで接近戦の優位を作るのが定石だったのだが、今回は違う。
そう、何せ相手があのムカツクやろー共だからだ。
ここ最近登録して決闘のパーティ戦に参加している中でも有名なパーティ〈刃と魔の共演〉。
……正直に言って、それより前からこの慶都の闘技場で戦っている俺らよりも既に何倍も人気で有名だ。
それも、デンドロ内外において。
原因は分かっている。それも物凄く腹立たしい事だ。
それは……あいつらの
天地では珍しい【火竜】のイグニスはともかく、他はどうだ!
あからさまに狙っている様にしか見えねぇ艶やかな着物姿のロリっ子ティアンに、どちらも殆ど違和感ないイケメンショタっ子だぁ!?
露骨……余りにも露骨ッ!! こんなの人気が出ねぇ訳がねぇだろうがッ! ハーレム気取りもいい加減にしろ!
保護者は一体何をやっているのか!?
まったく、掲示板の熱狂が脳裏に浮かぶようだぜ……
天地の決闘場とは、神聖にして厳かなる武の聖域では無かったのか?
漢と漢のぶつかり合い、力と力の鬩ぎ合い、そして上位陣では技と技とを競い合う戦場!
これは許さない……これは一人の大人として、いや一人の戦士として教育的指導を敢行せずにはいられないだろう!
というかあのパーティ羨ましすぎるダルォ!?
しかし残念ながら俺のパーティではこの考えは少数派でしかないらしい……
指導してくれているティアンの迦楼羅教官はそんな事気にせず自身を磨く事に注力しろと五月蠅いし、ああああは生粋の
ヤマトはたまに作戦を忘れるくらいの脳筋でそんな事気にしていないし、シーラーはむしろあいつらの事を息を荒げて喜んでいる変態だ。
そんな中で声を荒げる程俺も子供ではない。
だから、自然に、そう自然に少しずつ時間を調整して……やっとこさ辿り着いた戦いだ!
この戦いは……逃せない!
隠していても自覚できる程の不敵な笑みが溢れるのが止められない。
行くぞ、ショタっ子共ォ!!
◇
「《
初手で自分のエンブリオ、【風精大風 ジン】による極大の追い風を起こしてパーティ全員で加速し、突撃する。
相手の構成は火竜が一匹に前衛が
ステータスの高い火竜が、テイムモンスターを入れても四枠という頭数の少なさを補わせているのだろうが――その陣形には確かな穴がある。
人型範疇生物の参加者が全員ショタとロリという事だ。
……これは変な意味ではない。決してないったらない。
それの何が問題なのかと言うと、ショタとロリが前衛を務める事。まずこれがいけない。
前衛の役割は敵を白兵戦で倒す事だけではない。
むしろそれはパーティの前衛の役割としてはそれは優先度の低い物でもある。
典型的なパーティとしての前衛の役割は
それはこのゲームだけではない、昔のゲームからのお約束。
術者や支援役などのより攻撃力の高い、より戦術的重要度の高い後衛を守る為の前衛。
それがパーティ戦における役割分担って物だ。
勿論決闘ランキング戦等の1VS1とかは例外ではあるが――このパーティはそれが理解できていないのだろう。
体格とはそれ即ち戦場における制圧力に直結するファクターの一つだ。
決して無視して良い存在ではない。
小柄な身体に憧れていたとしても決して、決して軽視できる事柄ではない……ッ!!
「まずは――定石ィい!!」
火竜はパーティ中で一番の実力者である迦楼羅教官とヤマトが。
二人の前衛はパーティの中でも大柄なああああとシーラーが肉薄。
そして、パーティ中で最もAGIが高い俺は――当然の如く
……ヤマトの奴もAGI高いんだが、あいつは脳筋だから大体こういうのは俺の役割だ。
使い古された戦術? 面白味がない? 言いたい奴には言わせておけば良い。
俺は当然相手パーティにある弱点――小柄過ぎる前衛のせいで後衛を守りに行き辛いという弱点を正々堂々と突かせて貰っただけだ。
相手の弱点を突くなんて戦闘の常道であるし迦楼羅教官もそこは褒めてくれたからな。
「このままッ! 脱落だぁ!」
「――ッ!」
今更前衛の二人が少し反応してるが、遅い遅い! とってもスロゥリィだ!
多少の差ではあるがエンブリオの補正もある俺がこの戦場で一番AGIがある事を察する。
既に前衛の護りもない後衛の
鋼色が乱舞した。
重力に逆らい、何らかの力によってか一斉にその刃先を俺に向け――高速で飛翔してきた!
――《
それは風属性の魔法の一つ。
風を操る事で矢弾を高速で射出する【風術師】の魔法。
威力や追加効果などを射出する武器次第で変化させられる応用性を持つが、完全に物理防御力で防がれるし
熟練者では数を増やしたり、射出後も動きをコントロールする等の応用が可能らしい。
可能らしいが……この数を扱えるのは初めて見た!
俺は相手の実力予想を多少上方修正しながらも、自身のAGIで鉄杭の群れを回避――――
しない。
「相性が――悪かったな! 《
エンブリオの固有スキルの全力行使。
台風もかくやとばかりの暴風が俺の周囲に巻き起こり、チャチな風魔法で放たれた鉄杭達はバラバラに吹き飛ばされた。
――そもそも、下級職の【風術師】じゃ俺には勝てねーよ。どう足掻いてもな。
《シュートアロー》の事を知っていたのだって自身のエンブリオでできる事を考えた時に参考になるだろう、と一通り風属性魔法の勉強をしていたからだった。
今回のショタっ子との相性が良かったのは本当に偶然だが、相性が悪かろうが戦いは戦い。
迦楼羅教官風に言わせれば、相性差を覆せない相手が悪い、という奴だ。
勝負の世界は非情なのだ。許せよショタっ子。
そう考えながら念を入れて相手の剣の射程外からエンブリオによる追い風と《ファスト・スタッブ》により勢いを付けた槍による刺突を以て相手を下
その瞬間。俺の身体が上半身と下半身に分断された。
えぇぇぇぇ…………
◇
「……危なかった。何事も練習しておくものだね」
逆手に隠し持った
<マスター>が多いと、本当に厄介だよねエンブリオは――
◇◇◇
9月5日(土)
待ちに待った土曜日! 少し振りに一日中デンドロにログイン!
……夏休みボケかな? 大丈夫だよね? ち、ちゃんと学校で勉強はしているし。
昨日は久しぶりに慶都に到着した所だったから、今日からようやく闘技場に参加!
うん、互いの移動手段が違って結局今回も歩き通した甲斐はあったよね。
……馬、馬かぁ。従属モンスターは現状リンとイグニスだけで結構十分なんだよねぇ……むーん。
闘技場のレース競技とかでも世話になるみたいだけど、さていつになったら余裕が出来る事やら。
馬についてはさておき! 今日はログインして春香とカシミヤと合流してから早速慶都の闘技場施設へ出向いて参加登録をする事に。
ちょっとした解説になるけど、今回僕らが登録したのは闘技場におけるパーティ戦の参加登録だった。
闘技場は毎日種々様々な競技、ルールがある中のパーティ戦はその一つ。
通常通りのパーティを組み、そのパーティ同士で戦う決闘競技だ。
細かなルールが
パーティ単位でのジョブの組み合わせや戦術、連携を競う戦い。
全てを自身の力のみで賄わなければならないランキング戦等の1VS1とはまた違った決闘を求められる競技だ。
……なお、当然ながらパーティ単位での登録なので基本的に最大六人同士での戦いになるけど、残念ながら僕達のパーティは僕、春香、カシミヤとあと僕の従属キャパシティに入りきらなかったイグニスで四枠しか使っていないという弱点がある。
知り合いが慶都に居れば誘ったんだけどなぁ……残念。
それでもそう簡単に負けるつもりはないのだけどね!
ちなみに、更に付け足すと僕らが参加するのは闘技場の階級で言うと下級に当たる。
ここ、天地における闘技場の階級は各々の合計レベルが300以下の下級、400以下の中級、500以下の上級――そして無制限級の四段階に分けられている。
そりゃ実力が違い過ぎる相手とマッチングしたってどちらにとっても旨味はないからね。
僕らも早く上級、いやさ無制限級での戦いにチャレンジしてみたいものだよね!
……僕の《全主恩寵》的に、僕は最終的に超級職でもないのに無制限級に参加する事は確定しているし。
まぁ、天地だけじゃなくて他の国でもそうだけど、決闘ランキングはどの道無制限級になるのだから、それ自体は別に気にしていないのだけど!
――そりゃ、上級で鎬を削っている武芸者達の業を間近で見てみたいってのはあるけどね。
無制限級にだって、いやどう考えても無制限級に参加する様な武芸者達はそれこそ超級職に喧嘩売りに行ける技量を持っている訳でもあるんだけど、どうしても特に理由のある不満感がこう溢れ出すよね!
……あ、更に余談になるけど、下級でもイグニス――亜竜級の従属モンスターをパーティ枠で登録可能な事には驚いた。
何でも、下級のパーティ戦であればパーティ内で亜竜級を一匹まで、中級であれば三匹まで、上級ならば亜竜級は無制限に、そして純竜級のテイムモンスターも一匹まではパーティ内の枠で登録する事が可能らしい。
他の国ならともかく、天地の闘技場だとこの数は……まぁ、通常の狩りの時とかと違ってすべて従属モンスター任せにするという戦法が取れないだけ十分なのかな?
僕的には従属キャパシティに入らない従属モンスターは全面参加禁止だと思ってたから助かっているのだけどね! イグニスも頑張るぞー!
なお、当然ながら無制限級にそういう制限はない。なんたって無制限級だからね!
さて! それはそれとして、闘技場に参加登録したからには――そう、予定通り早速決闘にチャレンジしてみる事に!
今日は登録したばかりだからか、あまり出場回数は多くなかったけど、とりあえずは勝ち越せていたので闘技場参戦初日の結果としては良かったんじゃないだろうか?
初日の感想としては、予想以上に<マスター>の参加者が多かったね……下級だったからかな?
……初日だからあまり詳しい所感は言えないけど、やっぱりエンブリオは厄介だなって。
あと、あの戦法は少し早かった気がするからちょっとやり方を変えようかなって。どうしようかな?
メモ:
D 【下級契約書】
E 【山の幸セット】
E 【ガントレット】
F 【10フィートの棒】
E 【山の幸セット】
被 っ て る 。
◇
9月6日(日)
今日は昨日に引き続き慶都で闘技場ライフ!
……まぁ、昨日と同じ様に試合のない空いた時間は相応にあったのだけど、それでも昨日よりはその空き時間も少なく多くの試合が出来た。
たーのしー!
空いた時間は空いた時間で、慶都で散策したり、闘技場施設で二人と練習したりと実りある一日だった気がする!
うん、前回慶都に来た時は将都へ行く旅の途中だったからそこまでゆっくりできなかったけど、こういうのも悪くない。悪くないよね。
結局今日は昨日と比べ倍くらいの試合を行った事になるのかな。昨日日記に書いた通り今日も引き続き闘技場にはパーティ戦で参加!
今日も勝率は悪くない。振り返ってみれば七割程度の勝率をキープ出来ている。
この人数の戦績としては十分上等じゃないかな!? やっぱり二人の技量も、イグニスの魔力も凄まじい。
相手からも仲間からも学べる事は未だ多い。日々是精進、ってね。
さて、昨日今日と慶都の闘技場に参加・観戦してある程度分かった事もあるのだけど、まずはやっぱり……この下級の等級に参加している<マスター>の多さかな?
と言うよりも、未だ殆どの<マスター>は合計レベル300まで上がっていない、というだけの事だとは思うんだけど。何人か、明らかにステータスが足りてないのに無制限級に挑戦して瞬殺されてた<マスター>は居たんだけど、それはさておき。
でも、まぁそれも仕方のない事ではあると思う。
何せこの<Infinite Dendrogram>は無限の可能性を謳うだけはあり、やる事、やれる事、やりたい事が本当に沢山あるのだ。
レシピを使用した簡易的な生産ではなく一から作るハンドメイドの生産をやろうと思えば数多の工程が必要になるし、金を稼ごうと思えば戦利品を売ったりクエストを請けるだけでなく、やり方次第では自分の意思で流通を握る事すら可能なのだとか。
ただレベルを上げて強くなるにしたってその道筋はまさに〈エンブリオ〉に合わせてそれぞれの<マスター>毎に無数に枝分かれして効率的な狩りを望むには未だに情報が圧倒的に足りていない状況。
ジョブレベルを上げる傍らで専門ギルドでジョブクエストを請けたり他の仲間と共に冒険者ギルドでギルドクエストを請けて
今僕達がやっているこの闘技場の試合だって経験値は入らないし、対人戦闘に興味がない人は本当に全く寄り付かない要素の一つでもあるんだろうね。
そんな事情もあって、現段階で合計レベル300を越えている様な廃人<マスター>は極めて少ない傾向にあるのだ!
……それとは別に、レベルを上げるのを重視する様な人は経験値が得られない闘技場には来ないと言うのもあると思うけどね!
実際、掲示板ではそこそこ300を越えている様な人も居るみたいだったし。
でも、それは別にしても――掲示板では闘技場に参戦する事に忌避感を表している人も居ると言う事実があるらしい。
僕も調べてみてビックリした。
何でも、精神的、論理的にもこういう闘技場と言う物は敷居が高いらしい。大多数の<マスター>にとっては。
流石に例え話で大昔の剣闘士奴隷に例えてた人には思わず笑ってしまったけど。
まぁ、人によってはモンスターを自身の力で殺傷する事にすら忌避感を覚える人ってのも一定の割合で居るらしいしそんな例えも笑えはしないんだろうか……僕のクラスメイトの大多数とかね!
……うん、つまり、何が言いたいのかと言うと。
即ち、そんな人によっては忌避する様な場所でこんな早い時期に積極的に参加している<マスター>は、つまるところ大なり小なり大体僕やカシミヤの
戦ってみた感じ、お試し感覚とか記念に挑戦してみたという感じではない、ここ数日だけでも複数回試合に参加している常連マスターってのは一人一人が合計レベル200台の後半にまで至り、更にほぼ全員が上級エンブリオにまで進化している様な猛者達ばかりって事なんだよね!
技量の違いこそあれど、皆が皆戦意を剥き出しにして自身の全力を以て試合に臨んでいる
当然、中には僕達でも勝てない様な相手だって居るくらいだ。……こう言っては何だけれども、うん、良い。凄く良いよね!
昨日今日で戦ってきた数多のパーティの<マスター>達を見回してみても、剣の技量だけであれば間違いなくカシミヤは頂点に立っていたと断言できる。
勿論、僕や春香の技量はそれに若干劣るとは言え、技量のみを競うのであれば僕らだって最上位グループに入る程だ。
――それでも尚、勝てない相手は居る。それも複数。
圧倒的なステータスで春香を蹂躙する相手が居た。不思議な絡繰でカシミヤを追い詰める相手が居た。僕が未だ使えない【大陰陽師】の式神で圧殺して来た相手も居た。
そして何より、そんな<マスター>達の操る数多の〈エンブリオ〉。
中には巷で噂の“必殺スキル”を習得していたのも、数は少ないけれど居た。……本当に、あれは確かに必殺を冠するだけはあったね。
まさかたったの一撃で闘技場全域を爆破するとか流石に予想もしていなかったよ……! 他のパーティメンバーのジョブやエンブリオのスキルで自分達の被害だけ抑えるとか、上手くやるよね。
その例だけじゃなく、やっぱり
<マスター>が<マスター>である所以。侮れない!
僕もカシミヤも、エンブリオは既に上級エンブリオに進化しているけれど煮え湯を何度も飲ませられている必殺スキルはまだ未習得。
以前PKがやっていた様に初手奇襲、速攻がベスト……でも僕達にそういう真似は少し難しいんだよね。
エンブリオは本当にどんな固有スキルが飛び出すのか分からないから、やはりやられる前にやれが最適解だよねって。
あのPKも理に適っていたという事……まぁ、闘技場の試合じゃ奇襲は出来ないんだけどね!
メモ:
A 【邪神の心臓(偽)】
D 【
F 【オークの丸太】
E 【SP回復ポーションLv5】
B 【ミスリル
初のA! ……これ、素材アイテム? 素材アイテムっぽいけど(偽)って何さ……?
◇
9月9日(水)
今日も今日とて闘技場通い!
ここ最近は闘技場に通ってばかりでモンスターと戦っていない。
たまには普通の討伐クエストでも請けた方がいいかなと思わないでもないのだけど、まぁとりあえず今は二人と共に楽しんで行こう!
学校が始まって平日はそんなに長時間ログインできないというのもあるけどね。
ちなみに、そんな僕らがログインできない時間帯は春香は一人で短期のギルドクエストを請けたり闘技場を観戦しているらしいのだけど……なんと、地味に慶都の闘技場界隈で僕らのパーティが少し有名になっていたらしい!
…………年齢的な意味でね!
天地にはレジェンダリアとは違って長寿な種族の
大柄で角が生えている鬼っぽい
それでもやはり、闘技場に出てくるのは稀なのだとか。勿論参加する方で、だけど。
観る方はティアンには珍しい娯楽の側面もあるけど、実際参加するのは……特に天地では、ほら、敷居が高いからねぇ。
……でも、そういう人達以外でも本来闘技場か闘技場のある都市に常駐していても良さそうな決闘ランキングの上位勢だってあまり闘技場に姿現さないよね?
僕も春香もカシミヤも、ここ数日でかなり通っている筈なのに決闘ランキング15位以上の人の決闘、一度も見た事ないよ。ランキング戦じゃなくても。
さて、それはそれとして、今日は昨日に引き続いてパーティ戦、ペア戦の他に
決闘ランキングの仕様的にも、やっぱり最終的には個人戦に収束する訳だから、少しでも慣れておかないとね。
春香は個人戦に関しては卒業してから挑む予定だから今回は観戦に留めるらしい。
ふふ、ならば今の内に経験とかそういうのを引き離してあげるという事で!
……それくらいの心意気の方が春香も嬉しいだろうしね。
とまぁ、僕もそう意気込んでいたのだけど。
個人戦は個人戦で、ティアンも<マスター>も大体パーティ戦や
それは当然。個人戦はパーティ戦やペア戦と違って複数人で個々の粗や弱点などを支え合い補い合いつつ戦うのとは全く違うモノ。
どの様な強者が相手であっても仲間を頼る事は出来ず、自身の隙や弱点を突く相手であってもそれを補ってくれる友の居ない、唯々己一人で、己の持つモノだけで戦い抜かねばならない真の修羅場。
頼れるモノは己が今まで培ってきた力と、自分を今まで支えてくれた才覚と、自身の手足たる
そんなだからうん、間違いなく敷居は高いんだけど……つまり、決闘ランキングのランキング戦とルールは同じなんだよね。
だから、前述の事柄があっても尚個人戦に参加するのは邪魔の入らない1VS1の戦いに飢えた修羅か、もしくは――当然、僕やカシミヤも同様だけど、決闘ランキング戦を見据えた者達という事になる。
故にこそ、そう簡単に負けていられない、よね。春香も見ているし、あまり無様な姿は見せられない!
ルール的に従属キャパシティ内の従属モンスターは問題なく戦えるから、リンが戦える僕は大体有利だからね!
……有利だと思いたかったのだけど!
ティアンの人も強い人何人も居たのだけど、やっぱり他の<マスター>のエンブリオ、派手派手で強そうなの羨ましいなぁ……
ついつい対抗して無駄に派手に魔法使ったり。それでも、カシミヤ相手だと全く余裕がないのだけど……
というかカシミヤぁ! 一つか二つ光耐性のアクセサリー装備してなかった!? 油断も隙も無い……!
メモ:
C 【食器セット甲】
D 【レシピ:カルボナーラ】
F 【鉄の矢束】
C 【ジェム‐《ダークプロ―ジョン》】
C 【適職診断カタログ】
カタログを試してみたら【冒険家】と【魔戦士】だった。……玉虫色。
◇
9月11日(金)
最近学校でようやく、よーやく! 桑木さん――以前日記に少しだけ書いたクラスのデンドロを続けていた子と話をする様になった。
どうやら、桑木さんも自分が楽しく遊んでいる<Infinite Dendrogram>の事について話せる友達が居なくて苦心していたらしい。
…………これはつまりもう友達でいいんだろうか!? わーい!
まぁ、そうは言っても桑木さんも他の友達との兼ね合いもあるからあまり長時間は話さないんだけどね!
僕は相変わらず未だ他の子からは遠巻きにされているし……ぐぬぬ。
そして、デンドロについての話をする、って言ってもまだ互いにアバターの事とかエンブリオの事とかは話していない。エンブリオは各々の<マスター>の切り札でもあるから仕方ないね。
それでも互いのアバターネームは教え合っているし、桑木さんの様子からして多分アバターは実年齢からかなり下駄を履かせて造っているっぽい、っていう事は察したけどね。
格好良い女船長RPが好みらしい。何の
そんな感じでようやく一歩目を踏み出した友達を作ろう作戦だったとさ。
もっとデンドロやる人増えて増えて!
さて、今日はそんな話以外でも、金曜日の週末で来月以降の文化祭の事だとか遠足の事だとか先生の連絡事項がそこそこあって少し帰るのが遅れちゃったけど、諸々済ませてからいつも通りデンドロにログイン!
今日はリアルの事情でカシミヤがログインできないみたいなので、春香とリンとイグニスと共に過ごす事に。
パーティ戦は出来なくてもペア戦や個人戦は出場できたのだけど、折角なので今日はここ最近の決闘参加を思い返しながらのんびり観戦に回る事にした。
今まで参加してた決闘だけでなく、レース競技や水中競技、バトルロワイヤルなどの特殊競技も一緒に楽しみながら、ついでに【符】のストックを増やしておく。
闘技場で使用したこれらの消耗品は終了後に元に戻るから目減りはしないんだけど……本当、一体どんな仕組みなのやら。
そうして戯れながら時間を潰していたら……なんと、今日はコテツとサラさんも慶都に到着したんだよね!
コテツが大白宮から移動するのは本当に珍しい気がする。びっくりするくらいに。
どうやら、
……ついでにコテツも決闘を観戦してみたいのだとか。大白宮にも闘技場施設はあるけど、興行は何らかの大会とかがないと行われないからねぇ。
それにしても、コテツの【カナヤマヒコ】でも入手できない素材とかもあったんだね……最近では上級エンブリオに進化してから希少な鉱物も出る様になったって聞いたけど、やっぱり偏りが酷いのかな?
採れる物がランダムだから仕方ないけど、少し不便っ。
……うん、まぁここまでは良かったのだけど。
コテツに格好良い所を見せようと思ってこの機会に、と決闘ランキングのランキング戦に挑戦してみた!
――――ボロ負けだったんだけどね!
なぁにあれぇ……ランキングの28位、それでも未だ遠い高見だよ……!
メモ:
D 【米俵】
E 【海の幸セット】
E 【調味料セット】
E 【レシピ:MP回復ポーション】
E 【鋼鉄の短剣】
レシピの使い道がなぁい……!
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
名称:【風精大風 ジン】
<マスター>:輪廻丸曲輪
TYPE:テリトリー
能力特性:暴風
到達形態:Ⅳ
スキル:《
モチーフ:アラブで人々に信じられてきた砂や風、火を操る精霊“ジン”。
紋章:逆巻く波濤
備考:風を操るテリトリータイプのエンブリオ。
一言で表せば【気哭啾啾 ウラノス】の精密性を大幅に下げ、その分のリソースに相応しいだけ出力を上げたエンブリオ。
迷彩や気圧操作等はどう足掻いても出来ないが、空気弾や空気砲、空気の壁による防御、そして出力の高い暴風による高速移動等に関しては【ウラノス】よりも得手としている。
…………到達形態が同じであれば、だが。
《シュートアロー》:魔法スキル
下級の風属性魔法。
風の力で物体を射出する。
その仕様的に魔法攻撃力などは関係ないが、射出物の形状や重さは当然ながら威力に密接に関係してくる。
スキルレベルや最大MP、消費MPを増やす事で射出速度が向上していく。
《シャドウペイン》:アクティブスキル
自身の武器に攻撃軌道隠蔽効果を付与して攻撃する攻撃用アクティブスキル。
【隠密】で習得する数少ない攻撃用スキル。
実に約一ヵ月ぶりの更新……そんな更新も見てくれてありがとうございました!
今後も何とか章終わりまでは週一ペースで投稿していきたいと思います。お付き合い頂ければ幸いです!
今章は間章と書いた通りイベントがあったりなかったり事件があったりなかったり新キャラが居たり居なかったりします。
そんな間章でまた少しずつジーニアス君が強化されたらいいなと思います。
ちなみに書くまでもない事かもしれませんが今話の闘技場に関するあれやこれや大体捏造で出来ております。あしからず。