日常回とか言いながら解説回では?
それでは本編をどうぞ!
□<天地・慶都>道具屋・万入間 【風術師】ジーニアス
「うーん。今日の戦績は並……こういう時こそ、これで気分を入れ替えないとね!」
『ごしゅじんはいつもそういってる』
『当座の資金は十分あるから良いのではないか? マスターとてそれくらい分かっているであろう』
色々と通信魔法で言われているけど、まぁいつもの事なので気にしないでおく!
僕のガチャ欲を止められる者は居ないのだー!
……うん。イグニスの言う通り
そもそもこれは今日も頑張った僕自身に対するご褒美、息抜きでもあるんだから必要経費とも言えるんじゃないかな?
なんてね!
そんな取り留めのない思考をしながら僕、ジーニアスが何を待っているのかと言うと――そう、ガチャだね!
慶都に店を構える雑貨・道具屋である<万入間>の店内に居る僕の眼前には、既にそこそこの人数の行列が出来ている。
僕を含めたこの行列に並んでいる人達が何を求めているのか――その答えは、行列の終点に聳える四角い筐体だった。
ガチャ――この世界においては神造ダンジョンより供出されたマジックアイテムの一つだ。正式名称は別にあるらしいけどそれは横に置いておく。
ガチャについての詳しい説明は長くなるから省略するけど……つまりは、お金を入れてランダムでアイテムを入手できる娯楽遊具だ。
特にこのランダムで、という所が曲者で、投入した金額を遥かに上回る宝物が出る事があればゴミが出る事もある恐ろしい品物だ。
掲示板でもガチャでしか手に入らない!? と謳われる様なレアアイテムが幾つもカプセルから出した状態の物をスクリーンショットで撮られた画像が出回ったりしている。
実際にガチャ以外で入手方法がないのかはまだ分からない。ちなみに僕はまだ見つかっていないだけで他にもあるとは思う。
だけれど、その真偽はこの話にはあまり関係ない事だ。一度そんな話が出回れば……いや、仮に出回らなくても。
◇
『ごしゅじん、そろそろじゅんばんー』
「っと、ありがとリン。それじゃ、行くよ――!」
前に並んでいた最後の一人がガチャを引いて行列から退き、本日四回目の僕の順番が回ってくる。
ちなみに、一回ガチャを引く毎に列に並び直すのは最近周知された<マスター>間における
一人で長時間ガチャを占有するのは店に置いてあるガチャだとしても迷惑であるし、恐らくそれは善意(?)でガチャを置いてくれているティアンの人も望んでいないだろうから。
それに、行列に並んでいる
それでも僕もこの待ち時間は嫌いではない。この期待と不安と高揚感が混ざった様なドキドキワクワクが良いんだよね……っと。
そこで高速思考を一旦中断し、一歩を踏み出しガチャの筐体の前に真っ直ぐに立つ。
これからガチャを引く訳であるが――その前に、
「……っ!」
精神を集中して《
僕の周囲に《フォトン》によって生み出された光球が幾つも浮かぶ。
後ろに並んでいたマスターの人が口笛を飛ばして来るが、気にせず更に幾つも幾つも、数十の白い光球を浮かび上がらせる。
……ここまでは簡単。問題はこの後――
続けざまに《フォトン》を発動。更に数倍する数の小さな光球に分かれ――その上で光球一つ一つに着色する。
赤色、橙色、黄色、緑色、水色、青色、紫色、鮮やかに七色、虹の色を振り分けて煌めき輝かせる。
そうして僕の周囲に虹色の光球が瞬いて生まれては消えていって……
で、虹色の煌めきが安定した頃に――ガチャの筐体の周囲に光球を移動させて更に筐体を中心に回転させる!
……上手くいった! リン、タイムは!?
『いちびょうとはんぶん。ないすたいむー?』
よし! ベストタイム! これは――良いのが引ける気がした!
『……いつもの事ではあるが、こうまで目立つ必要はあるのだろうか?』
「僕の気分の問題! ほら、拍手も貰ってるし、今日は運が良いんだよっ」
そう、今日も三回引いてEとFが一つもないし、流れが来ているのは確定的に明らか!
確信しつつも虹色光球を維持したまま、僕は筐体に一万リル硬貨を十枚投入。
そしてレバーを回す……っ!
こ、これは……!
「…………?」
ガチャから排出されたカプセルには、今まで見た事もないレアリティ表示がされていた。
僕が一度引いた事があるAでも、今まで数多引いてきたFでもない。
そして、最高レアであるSでもないレアリティだった。
「……Xっていうレアリティなんて、あったっけ……?」
◇
◇
その後、僕は慶都の西門を出て<白庭街道>にまで来ていた。
それと言うのも、つい先程引いたガチャのカプセルを開封する為である。
ここまで来たのも、ひとえにレアリティに驚いたそのカプセルに「広い場所で開けてください」という注意分があったからだ。
――掲示板や各種ニュースサイトも見ている僕が、一度も聞いた事のないレアリティ、X。
――未知のレアリティに、馬車やカタパルトを始め巨大な代物に付けられる注意文。
これらが表す物とは……全く、ワクワクが止められないよね!
期待に胸を膨らませながらも周囲一帯を《生命探査陣》でサーチ。
――西門から距離、六キロメテルの草原。
周囲一キロメテルに生命反応なし、モンスターなし。
二キロメテル先に初心者っぽい<マスター>は居るけど、こちらを全く意識していない様だし問題なし。
……よし、大丈夫そうだ!
『いいのがでるといいねー』
『うむ。マスターは微妙に運が悪い時はあるが、天運は巡るとも言う。善き物であれば言う事なしだな』
「ありがと、リン、イグニス! それじゃ……オープン!」
レアリティXのカプセルを手に持ち、開封。
そして、中からズ、ズゥン……! と、凄く重く大きな物が落ち
「ってあぶなっ!?」
回避。
――ウゥゥン……
……僅かに舞った土埃が晴れ、僕の目の前に現れたのは――黒鉄色の不思議な光沢を放つ……巨大にして長大な“丸太”だった。
「……これはアタリ、で良いと思う?」
『――ごしゅじん! これ、すごい! すごいよ!』
『ああ。まさか、こんな物が出て来るとは……』
うん、僕も言ってから気付いた。
それは丸太――木の質感をして居なければ金属の土管にも見えたかもしれない――の様に見えるが、どう見ても。いや、どう“視”ても、ただの丸太ではない。
丸太から溢れ出す豊富に過ぎる魔力量。
僅かに感じられる生命の息吹からは、その丸太がアイテムとなって尚“活きて”いる事を窺わせる。
全身を覆う黒鉄色の光沢は、もしやと思って触れてみると非常に頑丈で傷一つ付かなそうにも思えるのに、木材のしなやかさを併せ持つ不思議な性質の理由なのだろうか。
【霊樹の械枝】
『木材』
先々期文明においてとある霊樹の枝を魔法金属粒子と融合し、作成された。
木材としても最高位の素材でありながら、更に頑強さと魔力に対する非常に高い適性を持つ。
しかし、金属と融合したこの枝はもう新たな命を紡ぐ事はない。
詳細不明。
――本当に凄い!
先々期文明の代物だなんて……本当にまさかとしか言い様がないアイテムだ。
ぺたぺたと丸太……じゃなかった。枝に触りながら、興奮してうっかり多めに《フォトン》を出してしまう。
ついでにリンとイグニスも《喚起》しておこう。これは皆でお祝いすべきだからね!
『わーい、わーい!』
『マスター、おめでとうございます!』
ガチャを続けていた事を自分に感謝しながら、二人に礼を言う。
さて、それじゃあこれをアイテムボックスに。
【
【
……え?
【
【
【
【
【
【
……えっ。
これ、僕が持っている中で一番質の良い、戦利品収納用の中が空いているアイテムボックスなんだけど……
丸太……枝を見る。
長い。非常に長大だ。
おそらく長さにして30メテルはあるのではないだろうか。
硬く、重い。出した時の音からして数トンと言うレベルで済むかも分からない。
STRが2000越えている僕でも引き摺るのが精一杯っぽい……あれ、運ぶのすら難しいんじゃ。
…………
…………
えっ。
……ど、どうしよう……!?
◇◇◇
9月12日(土)
今日も今日とてデンドロにログイン!
……午後からだけどねっ。
今日もカシミヤはログインできないという事なので、午前中に精一杯時間を掛けて来週の学校の支度をしたり、掲示板とかデンドロのニュースサイトを見て時間を潰していたのだ。
情報収集は実際大事!
その間は明日香にデンドロのハードを使って貰う事にして、特に僕が集中して調べていたのは――当然ながら天地の決闘ランキングについての事だった。
敗北した翌日に速攻リベンジ! ……といきたいのは山々だけど、流石にそんなに僕は猪突猛進ではない。僕は敗北に学べる人間……!
敵を知り己を知れば百戦危うからず、って古い言葉にもある通り、まずは相手の事を調べて優位に立つべし、だよね。
……まぁ、掲示板とかじゃ断片的な事しか分からなかったから、結局デンドロにログインした後、決闘ランキングにも当然詳しい大名の娘たる春香に一緒に観戦がてらで解説して貰ったのが主なんだけど!
別に掲示板でも、情報を秘匿していたとかそういう事ではなく、そもそも<マスター>で情報を持ってた人が殆ど居なかったであろうという罠が……本当に天地の決闘界隈は魔境だなぁ。
さて、そんな感じである程度詳細を把握した天地の決闘事情はと言うと……現状は未だに殆どティアン一強、という有様だ。
<Infinite Dendrogram>のサービス開始から現実時間で約二ヶ月、内部時間では半年近く経った現時点ですら、である。
他の国は決闘ランキング、30位の内既に半分くらいは<マスター>がランキングを占有出来ていると言うのに、天地では安定して決闘ランキングに名を連ねている<マスター>なんて二、三人くらいしか居ないのが現状である。
……僕が考えていた様に、対戦相手の
僕のエンブリオは性質的に
しかし、その残念な結果は決して天地の<マスター>達が惰弱だから、という訳ではない。
むしろ、決闘に参加している様な天地の<マスター>達は同じ様な他の国の<マスター>達と比べても一回りか二回りは実力で上回っている。……らしい。
僕は他の国の<マスター>を見た事ないから真偽は分からないけど、まぁ戦闘を求める<マスター>は天地に集まりそうだというのは理解できるからそう間違っては居ないんじゃないかな。
そして、そんな<マスター>達でも結果を出せないのは……ひとえに、決闘で戦う
掲示板で調べて驚いたのだが、サービス開始時、他の国の決闘ランキングの20位代のランカーであるティアンは多少の上下こそあれ合計レベル300台、10位台のランカーで400台。
そしてランキングの栄誉ある一桁台のランカーはティアンの限界レベルたる合計レベル500に至っている者が多く、そして他の六国の内三国の決闘ランキング一位は超級職がその座を死守し、挑戦者を待っているのだとか!
……天地じゃ、決闘ランキングはランキング内の最下位である筈の30位の人でさえ合計レベル500のカンストである上特典武具を所持していたくらいだけどね!?
当然の如く上から下まで合計レベルをカンストしていない人は居らず、それどころかランキングに残留している極一部の武芸者と言うのは20位台であろうと更にその上で上記の様に特典武具を持っていたり、自分で編み出したオリジナルスキルを自在に操ってきたり、技量だけならカシミヤと同等とも思える技量を持っていたりという傑物ばかりだ。
ちなみに、天地ではランキング一位どころか一位から十三位までびっしり超級職のティアンで埋め尽くされている。
その域まで来ると対策をしようがまぐれだろうが<マスター>では未だ一度も勝利できていない程だ。遠い、遠いなぁ……!
そして、一方僕を含んだ
まず、レベルが足りない。この場合のレベルは、実力と言う意味ではなく当然ながら合計レベルの事だ。
以前も少し書いたと思うけど、現時点で決闘に注力しているマスターは合計レベルで300レベル前後。
無制限級やランキング戦に無鉄砲に参加している人でも最大でも350くらいだったかな?
当然ながら超級職には一人も就いていない。そんな状況でエンブリオによる補正があるとは言っても自身よりもレベルが上の物と戦うのは…………
……正直、エンブリオのステータス補正ってかなり大きいから、素のステータスだけなら多分今の僕でもカンストのティアンと同じくらいだと思うんだよね。
他の人だってステータス補正が高いエンブリオの人なら同じ様な状況だと思うけど、それでもまだレベルを上げる余地はあるのだからここはそこまでにしておく。
次に、技術……と言うよりは――そう、戦闘経験が足りない。
当然ながら殆どの<マスター>はこの21世紀を生きる現代人である。
格闘技術や武術等を修めている人は居ても(天地を選んだ人はその割合が非常に多いらしい)実際に命を懸けた戦いの経験がある人なんて殆ど居ない。
それに対して、ティアンの人は、生まれた時から
……詳しく語らずとも、比べずともその意識と経験の差は歴然だろうなとは思う。
その意識の、経験の差を埋めるのは一朝一夕にはいかないだろうと思う。
それでも、長い時間を掛けてモンスターと、人と戦いに明け暮れていれば或いは、もしくは例外が現れるか……
……現時点で決闘ランキングに居る極々少数はその例外っぽいもんね。それに釣られて、ってのもありえるのかな?
他にも装備品の格の差だとか、各領地の客将や重要人物である彼らに対するバックアップの差だとか色々あるけど――まぁ、そこら辺は割愛!
……僕、大白宮の陰陽師ギルドの人かコテツ以外の生産職と関わった事あまりないし。
掲示板を見ている限り、生産型も生産型で会合して知恵を出し合ったりクランが出来たりしているみたいだしそこも時間が解決しそうではあるしね!
さて、そんな簡単な考察をしてみた僕はと言うと……
うん、確かにレベルが足りないし、経験は特に足りない、よね。
武術の才覚が足りてないとは思わないし……つまり、やっぱり考察通りレベルと経験を積み重ねていけばOK!
だから今日みたいに観戦と個人戦を地道に行っていくのが一番だよね!
……それにしても、夏休みが終わってからのログイン時間の低下も理由の一つだけど、最近本格的にモンスター狩りに出掛けてないから掲示板の話題に入れないのがちらほら。
地力、つまりレベルを上げる為には必要だとは分かっているんだけどね……
メモ:
B 【ドーピングポーションα】
C 【高位麻痺毒薬】
F 【たわし】
D 【HP回復ポーションLv8】
D 【紫皮の皮鎧】
ゴムっぽい感触の皮鎧。防御力自体は低いけど打撃耐性と雷耐性は優秀かも。
◇
9月13日(日)
orz うーあー……
コテツに怒られたー……
うん、そりゃランダムにアイテムが出るガチャだからね。ああいう事があるって想像してなかった僕も悪いよね……
何があったのかと言うと、今日も闘技場で汗を流してから、日課のガチャ(デンドロ内のあのガチャだよ?)をやっていた所、なんとレアリティXと言うのが出て……
注意書きに書いてある通りに開けた場所、慶都から出た<白庭街道>で開封したんだけど、出てきたのが長大な金属質の丸太だったんだよね。
その丸太の詳細についてはコテツに預けてあるから割愛! かなり品質が良さそうなのは分かったけども!
で、それは良かった。良かったんだけども問題は……その丸太が僕の所持しているアイテムボックスに入らなかった事だった。
確か、最初のキャラクターメイクの時にされたジャバウォックの説明によると、最初に渡されるあのアイテムボックスの許容量が大体教室一つ分の広さと、重量にして約一トンだった筈。
僕が持っているアイテムボックスは幾つかあったけど、容量的には初期の物の二倍が精々だったから……うん、明らかにオーバーしてたんだよね。ぐぬぬぬ。
だってだよ? 普通アイテムボックスって生産型じゃなくて戦闘型だったら破損耐性とか盗難防止とか劣化防止とか即時展開系のを重用するもんだよ!?
普通は大量の戦利品を考えても、ある程度加工された状態でドロップするからあのサイズの容量でも十分だったんだよー……後にするからこそ後悔、としか言い様がないけども。
つまり、結局それで途方にくれた僕はリンに頼んでそういう超容量のアイテムボックスを持っていそうなコテツに連絡して助けを待つしか出来なかったんだよね……
……そして、当然の如くすごーく説教された。すごーく。
反省……
その後二人して僕用の容量の大きなアイテムボックスを買いに行く事に。結構な出費だった……
ついでに【テレパシーカフス】も渡された。これは距離的にあまり使えないと思うのだけど、反省の意を込めて装備装備。
ガチャも回数を抑えないと。闘技場のファイトマネーとか、今までの戦利品で貯めてきた分とかでお金はあるんだけどねー。
それはそれとして! あまり関係ないけど今日は少し振りにカシミヤがログインしていたので、ログアウトする前に<黒藤森林>――慶都での野試合スポットらしい――でカシミヤと野試合をしに行く事に。
先客の後にカシミヤとやり合ったのだけど……見事に負けちゃった。ぐわーっ!
先程の出来事でテンションが落ちていた、とかの言い訳はしたくないから端的に敗因だけ出してみるけど、カシミヤが本当に負けず嫌い過ぎる……っ。
アクセサリーと防具で魔法耐性がバッチリだったよ。どうやって対抗すべきか……
やっぱり早めに【影】に転職しないとだね!
ガチャ:
D 【汎用解毒ポーションLv2】
C 【ミスリルアックス】
D 【森の幸セット】
X 【霊樹の械枝】
凄くメカメカしい枝! 魔力が凄い。
◇
9月16日(水)
桑木さんや明日香に決闘の良さを解説しても理解して貰えない……
明日香はともかく、桑木さんはグランバロアの決闘には参加しているらしいのに酷い話だよね!?
コテツはまだ理解を示してくれている。やっぱり男の方がこういうのは分かってくれるのかなー。
……でも、天地の決闘は男女同じくらい、とまでは行かないけどそこそこの割合で女の人も参加してるんだよねぇ。
学校から帰ったら今日もデンドロにログイン!
……なのだけど、今日は久しぶりに一人。
カシミヤは今日もログインできないし、春香は入学する事となる学園の見学に行っているからだ。
学園、僕も興味あったんだけど、天地のティアンの中でもお偉いさんとか
今の僕の実力では強引に押し入るのはかなーり難しそう。……で、できないとは言わないけどね!
そんな訳で、今日は御一人で闘技場の観戦と――一人でもできるジョブクエストをやっておく事に。
今日請けたのは所謂討伐クエスト! 武士ギルドや戦士ギルドを筆頭にそこら辺のジョブは討伐クエスト以外あまりやれないからね。
……とは言うものの、正直内容としては本当に特筆する点はまるで無かった。
基本的に討伐クエストと言うのは近辺の危険なモンスターの駆除だったり、モンスターの落とす
で、近辺――そう、この慶都近辺に生息する中でも危険なモンスターの討伐。
天地における初期スタート地点にして四方に初心者狩場が広がるこの慶都の近辺!
――流石に、僕の実力で苦戦はしなかったね、うん。
できればもっと歯応えがあるモンスターと戦いたかったのだけど、それは後回しという事にしよう。
まぁ、クエストの方はともかく、やはりと言うべきか闘技場の観戦の方は中々有意義な一時!
上位の実力者同士の戦いは派手で見応えがある、とかそういうのではないのだけど。
いや、まぁそういう側面もない訳ではないけど、僕としてはただの娯楽とも言い難い経験を得られる、と言っても過言ではないと思う!
それと言うのも、先日も書いたかもしれないけどはっきり言って僕はカシミヤや春香と言った幼い頃から鍛錬を続けてきた練達の武芸者と比べて、いやそこまでですらない他の闘技場参加者と比べてすら武に対する経験と言う物が少ないからだ。
実際に戦ってみるのも、こうやって見稽古をするのも収穫になる。
特に天地の決闘の試合ではデンドロ特有の各流派毎の独特な動きや強者であるランカーが編み出したオリジナルスキル等も見られる。
……模倣できないかなぁ、とか試してみるんだけど、出来ないんだよね。
うーん、少なくともマスターは未だオリジナルスキルの作成とか模倣はまともな報告が全くないから参考にならない……
保留にしておこう!
ガチャ:
D 【SP回復ポーションLv7】
D 【沢の幸セット】
D 【古木の短杖】
D三連星……!
◇
9月18日(金)
明日からは待ちに待った五日間のシルバーウィーク!
年内でほぼ最後の大型連休らしい! ……らしいんだけど。
そんな折角のデンドロ日和に僕はその内の最初の二日か三日間くらいは“組織”の病院で定期検査が入ってるんだよね……!
つい最近どころかむしろ僕が退院した時から明日定期検査だって決まっていたのだけど、決まっていたのは知っていたのだけど……うん、仕方ないよね。
やっぱり、僕も“組織”の人達も病院の人達も皆都合が良いこういう大型連休を使うのは必然なんだよねぇ……
……そういえば、僕ってば今回のシルバーウィークだけじゃなくて夏休みも、それどころかデンドロを始める前のゴールデンウィークすら大体ゲーム三昧だったんだよね。
ち、ちょっとだけ反省。
まぁ、そういう暫くデンドロをプレイできない僕の嘆きは置いておいて、その分今日たっぷり朝方までデンドロをプレイ!
と言うのも定期検査の当日朝にそんな事するのは流石の僕もないと思うので、いつも通り日付が変わるくらいまでだったんだけど、しっかり遊ばせてもらう事に。
そんな今日は久しぶりに春香とカシミヤとの三人とイグニスで闘技場のパーティ戦に参加する事に!
ここ最近は色々互いの日程が合わなくて結局半分くらいしか揃う機会が無かったから嬉しいね!
……しかし、そうやって意気揚々と闘技場に行ったんだけど、結局今日は三戦しか出来なかった。ちぇ。
まぁ、合計レベル300以下の下級の参加者はマスターばかりだからどうしても振れ幅があるから、こういう日もある。
その分今日は闘技場施設を使って三人で戦闘訓練もできたしね!
三人でバトルロワイヤル染みた模擬戦をしてみたり、カシミヤと春香が互いのやり方で剣術の稽古を付ける様な事をしてみたり――
――稽古は僕は受ける専門だったんだけどね!?
僕にできるのと言われても大体二人の真似事か、もしくはコテツに教わった時の事を繰り返すくらいしか出来ないしね。
……そういえば、この二人とコテツ以外の剣術って言うのは、この慶都の闘技場に来るまで余り馴染みがなかったかも。
ジョブも【剣武者】【剣鬼】まで取った剣メインの筈なのにね。
あとは……ああ、烏丸と弥生もそうだったね。あの二人の剣もあれはあれでお手本とするには丁度良いと思うのだけど――多分、僕としては、前述した三人の、
理由は色々あるけど……いや、僕に限っては大体《全主権限》のせいかもしれない。ごめんね烏丸!
……そういえば、戦闘訓練中の雑談でふと気になった事が一つ。
あの闘技場、というか闘技場施設ではあらゆる損傷や消耗をいつでもなかった物として復元できるあからさまなオーバーテクノロジーなのだけど……あの闘技場での経験って、ちゃんとエンブリオの経験になっているのかな?
基本的にジョブレベルとしての経験値が入らない事は知っているけど、エンブリオというのは
ジョブレベルを上げる為の経験値とは別に何かを蓄積している様な、何となくだけどそんな気がするんだよね。
そう思って話を振ってみたのだけど、カシミヤは特にそういった感覚はないとの事。
……僕の気のせいならそれはそれで構わないんだけど、もしかしてボディだからとか……じゃないよねぇ?
ガチャ:
C 【空の幸特盛セット】
F 【泥団子】
C 【快癒万能霊薬】
空の幸……? 何か見た事もない植物と動物(多分、鳥……?)の肉だけど、空の幸とは一体……?
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
《
天才の才能で無駄に洗練されたまるで無駄のない演算による無駄な魔法行使。
意外と人気だ。
【ドーピングポーションα】
『ポーション』
一時的に身体能力を向上させる薬液の入っているポーション。
しかし、有害物質がこれでもかという程入っているので効果時間終了後に副作用があるので注意が必要。
服用後、10分間STR・END・AGIに+20%のステータス補正を与える。
服用してから10分後に48時間STR・END・AGIに-50%のステータス補正を与える。
【β】【γ】【δ】【Ω】と共に決闘での使用は固く禁じられている。
【霊樹の械枝】:
作成した名工は【妖精女王】にお仕置きされて二つ目以降は作成されていない。
……はい、今話もご覧いただきありがとうございました!
レアリティXで笑う者がいればレアリティXで泣く者もいる……そんな話だったかもしれません。
それでは、こんな感じのゆったり進行ですが次話以降もよろしくお願いします!