無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:ガチャ。天使が微笑むか悪魔が嘲笑うかは(管理AI)すらも知らない……

文字数が多いィ……
それでは本編をどうぞ!


第三十話 理外の技と・闘技場

□とある【剣鬼】と【剣鬼】の戦い

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

 修羅の国にして、刃の国とも称される島国、天地のとある大都市の闘技場で二人の【剣鬼】が戦っている。

 互いが互いの(急所)を狙い、刃と刃を鬩ぎ合わせる様はまるで演舞を舞うかの如く。

 事前に示し合わせた殺陣の様に正確な剣のやり取りだが、しかしその刃の鋭さと剣気は実践のそれと遜色ない。

 未だ年若い二人の【剣鬼】のぶつかり合い。

 刀と小太刀の二刀を操る【剣鬼】と、太刀を多少独特な正眼の構えに持つ【剣鬼】の戦い。

 些か二人の速度がおかしいくらいに()()()()だという些事こそあれ、二人は全力で、己の持つスキルを駆使して戦っていた。

 

 

「「――《火走り》ッ!」」

 

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

 距離が開いた瞬間、またも申し合わせたかのように《火走り》による剣圧――【剣鬼】のスキルで中距離に剣圧による衝撃波を伝わせる攻撃スキルだ――が飛ぶ。

 しかし、それは片方の物は【剣鬼】の持つ二刀目の小太刀に防がれ、そしてもう片方の物は【剣鬼】は使用した《縮地(抜刀)》で回避した。

 練達の剣士に等しいか、それ以上の練度を持つこの二人にとって先の一撃への対処はそう難しい物ではなかった。

 

 

 そうして二人は若干距離を離しながらも大した負傷もなく相対する。

 じり、じりと相手の隙を伺いつつも少しずつ距離を詰めようとしている様にも見える。

 

 そのやり取りの速度は――やはり非常に遅い物である。

 もしや流々舞による稽古か、と心得のある者ならば勘付くかもしれない。

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

 しかし、流々舞と言うには互いの剣戟のぶつかり合いの激しさは死合いのそれだ。

 だが、それも当然。

 何故ならば此処は闘技場。

 この闘技場施設の機能によって互いに全力を出し尽くして戦っても双方に被害の出ない、まさに打ってつけの場所だからだ。

 

「「――ッ!」」

 

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

 剣戟は続く。

 無理に自らを抑えた様なゆったりとした動きでも――否。それはゆっくりとした遅い動きではない。

 二人共、常日頃の、日常の動きと同じ速度で剣を振るって試合を行っている。

 

 ――そう、()()()()()()()()()()で戦っていた。

 

 そして、その戦いでおかしいのはその動きの速さだけではなかった。

 

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

 二人の戦いの直ぐ傍で――それぞれの【剣鬼】の直ぐの傍で、非常に異様な光景が展開されているのだ。

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 それは、片方の【剣鬼】から伸びた一本の鎖が、戦闘に支障が出ない程度に距離を開けながらも……超高速で様々な模様を描き続けている様だとか。

 それは、もう片方の【剣鬼】の近くで、眩しくなく目に優しいパステルカラーの光球が目まぐるしく超高速で様々な記号を描き続けている様だった。

 

 ……二人共、凄く真剣である。真剣にそんな事を絶えず続けながら試合を行っている。

 

 

「ふぅ――ッ!」

 

 そんな戦いを続けながらも、幾度となくぶつかり合い離されては再度刃を重ね合う。

 

 そしてまた、今度は二刀流を構える【剣鬼】が裂帛の気合いと共に距離を詰めて剣を――

 

 

 

 PIIIIIIIIIIIIIII――――!!!!

 

 

「はい。カシミヤ、今()()しましたね? ジーニアスの勝利です」

 

「……はい。分かっています」

 

「連勝っ! カシミヤ相手に連勝したのは初めてかもしれないっ!」

 

 

 ……とどのつまり。

 これは、こういう()()なのだった。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□<慶都・大闘技場>闘技場施設 【剣鬼】ジーニアス

 

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

「やはり、()()は難易度が高いですね……」

「……まぁ、正直この中だとカシミヤが一番不利なのは事実だと思うよ。うん」

「私にはよく分かりませんが、二人がそう言うならその通りなのでしょうね」

 

 現在は稽古の模擬戦の間の休憩時間。

 ……休憩時間であろうともカシミヤの《思動操鎖》と僕の《フォトン》による練習は絶えず行われているんだけど。

 微妙にカシミヤの鎖の擦れる音が高速で響く。

 戦闘中は集中してて気にならないんだけど、やっぱりこうやって落ち着いて休んでいる時は気になる物だ。

 

 

「確かに。不利なのは重々承知なのですが、だからこそこの鍛錬は手を抜けません。……良い鍛錬です。これは間違いなく僕の糧となるでしょう」

「全くだね。僕としては()()の方が良い武器になりそうだけど――確かに、これは覚えるのと覚えていないのでは全然違うね」

 

 そうして僕とカシミヤはもう一人――春香が提案した鍛錬をそう評した。

 

 そう、この鍛錬の始まりは春香が提案したとある戦闘訓練だった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界にはステータス、という概念がある。

 まぁ他の事は置いておいて、今重要な物はその中の一つ――そう、AGIのステータスだ。

 

 Agility――敏捷性を表すこのステータスが高くなるにつれてこの世界に存在する者達は行動速度や思考速度、知覚速度に補正を得られる。

 特に近接戦闘職においてはENDに並んで――いや、END以上に重要視されるステータスなのだが、その理由については長くなる為割愛する。

 

 今重要な事はAGIによって様々な速度や体感時間が加速する事。そして――その事実に対する武術に関する有効性についてだ。

 

 知っての通り、常の日常時の体感時間(AGI)と戦闘時等の体感時間(AGI)には大きな差がある。

 これは有識者によって「AGI、つまり体感時間が各々に差があり過ぎると日常生活に甚大な支障が出てしまう為、無意識に不要な時はAGIを抑えている為」だと言われている。

 それも当然だ。ジョブに就いていない合計レベル0の子供らとAGIに特化した戦闘職や超級職との体感時間の差は十数倍、数十倍もの差になるのだから。

 これ程の差が開いていればまともに共同生活を送るのは不可能だ。故にその説はそこまで間違っていないのだろう。

 

 

 さて、それが一体何故鍛錬に繋がっていると言うのか。

 それは、大昔のティアンの武芸者が編み出し、今やこの世界におけるティアンの上位の武芸者における()()となった技だ。

 いや、それは()、という事も憚られる程の小技かもしれない。

 しかし、それが与えた影響は計り知れない物だったのは間違いない。

 

 

 その技術は――()()

 常日頃では無意識に行っている体感時間の低下。それを戦闘中に意識して、自由自在に行う技術だった。

 

 考えてみて欲しい。

 

 高速戦闘中に間違いなくドストレートな一撃を回避、或いは防御しようとした途端に急激に相手が減速し、その一撃がフェイントとなって体勢を崩される事を。

 相手の動きを先読みして予測位置に攻撃を叩き込んでも、相手が減速して予測に狂いが出る事を。

 

 勿論、それらの()()も、元々の実力が伯仲している相手でなければ有効ではないが――それでも、ティアンの武芸者の持つ有力な技の一つなのは間違いない。

 春香も度々それを使って僕らに苦渋を飲ませんとしてきたし、僕らがその技術を覚えるのも吝かではない。

 

 吝かではないのだけど――物事には相性と言う物が付き物なのもまた事実だと思う。

 

 

 

 

 

 

 ZYRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――

 

 

 

 ……うん。まぁそりゃカシミヤは難しいだろうね。

 カシミヤは剣術の達人だ。特に抜刀術に対する造詣は並々ならぬモノを感じさせる。

 まず間違いなく現実(リアル)でももっとずっと幼い頃から、長い時間を掛けて鍛錬してきたのだろう。

 一つの系統だった流派を、だ。

 

 

 詳しく語るまでもないけど、武術、技術を練達させるという事は無駄を削ぎ落す事と同義だ。

 如何に効率良く、如何に無駄無く、如何に理を突き詰めて、その動きを精確に身体に染み付かせる物だ。

 個々の才能次第ではそれを自分の身体に染み付かせるのに時間が掛かったり、そもそも精確に行う事が難しかったりとするがまぁそれはさておき。

 カシミヤはその身に秘めた才覚によってあの年齢で莫大な技量を身に着けている。

 それ自体は全く素晴らしい事ではあるのだけど……ここで些細な問題が発生した。

 

 そう、元々の現実の剣術では全く存在していなかった『AGIを意識して変化させる』という、新しい(システム)に直面した事だ。

 当然ながら元の世界にはそんなシステムは存在しないし、カシミヤはそれを前提として剣の技量を磨いてきた。

 

 だから、元の世界の剣術に慣れていたカシミヤは……この新たな(ルール)を自分の中に飲み込み、変速を習得するのに時間が掛かりそうだ。

 習得できない、とは言わない。

 カシミヤの才覚ならそのハンデがあろうと出来るだろうし、カシミヤならば()()だろう。

 カシミヤも大概負けず嫌いだからね!

 

 

 

 ……まぁ、どの道今やっているのはその第一段階、『日常時の速度(AGI10)で戦闘を行い続ける事』で精一杯なんだけど。

 戦闘だと言う事を意識させる為に積極的にアクティブスキルを使う様に、という春香の指示は結構スパルタだと思う。効果は期待できそうだけど。

 最も、それは今の鍛錬が難しい事の原因の()()でしかないんだけど。

 

 

「……それでも、やっぱり()()()()()を同時にやるのは割と無茶なのでは?」

「いえ、むしろこちらの――()()()()の鍛錬の方が急務ですっ! 早く覚えないと自爆してしまいますよ!?」

「まぁ、僕らは<マスター>だから最悪の事態にはなりはしないけどもねー……」

 

 

 それは同時に行われていたもう一つの訓練。

 二人して鎖と光を高速――互いのAGIによる最高速で動かし続けるそれが、もう一つの訓練の第一段階だった。

 高速思考――超一流魔法職の基本技術と言われるそれを、今僕らは練習している。

 何故それを習得するのが急務なのかと言えば、その原因は僕とカシミヤのジョブの一つ、【剣鬼】にあった。

 

 

《刹那》:パッシブスキル。

 【剣鬼】の奥義。

 戦闘中、自身の思考速度を三倍に加速する。

 発動時は自動で「【剣鬼】のジョブレベル/10」秒間に1ポイントのSP消費が生じ、消費可能なSPがない場合、効果は発揮されない。

 

 

 それが、春香に説明された上級職である【剣鬼】の習得する奥義だった。

 AGIには干渉せず、思考速度のみを加速させるスキルは他にも存在するが、この《刹那》と同じ様に戦闘中に発揮される思考加速スキルの場合、慣れない者が戦闘中と言う緊張状態に思考加速スキルを使用した時、行動速度と思考速度に著しいズレが生じてしまって身体が変な動きをしてしまったり、スキルの制御に失敗して自滅してしまったりというケースがあるらしい。

 

 ……僕とカシミヤならその心配はないと思うのだけど、最近の春香は無駄に過保護だ。

 過保護過ぎて微妙に鬼教官になっている気もする。

 まぁ、高速思考自体は僕にもカシミヤにも恩恵はあるからこうして頑張って稽古を受けている訳だけども!

 

 

 

 

 ――それに、僕もこの鍛錬自体嫌ではないからね。

 

 どうやら、高速思考は中々に()()()の技術らしい。

 カシミヤが変速に苦戦しているのを差し引いても僕の方が習得が早く、使いでがありそうだ。

 変速の方もカシミヤより先に習熟して、野試合でのリベンジを果たすのがとりあえずの目標の一つ。

 大丈夫。今の感じからすれば両方行けそうな気はする。

 

 

 ――何故なら、僕は天才だからね!

 

 

 

 

「――五分経過、休憩は終了です。それではもう一度頑張ってください!」

 

「頑張るぞ、おー!」

 

「おー。……ジーニアス、テンション高いですね?」

 

 

 

 

 

 この後も滅茶苦茶鍛錬した。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

9月22日(火)

 久しぶりに……定期検査明けで実に三日ぶりのデンドロと日記!

 デンドロ始めてからこんなに長期間デンドロしてないのは何気に初めてかもしれない……!?

 そりゃあ、僕だってオーバーテクノロジーの塊であるデンドロを開始して……というか僕自体病院から退院して初の定期検査だというオマケも併せている。

 そんな状況なんだから何か問題はないか多岐に渡る精密な検査が必要だと言うのは理解できる。

 ……うん、理解できるんだけどこんなに時間が掛かるとは思わなかったよっ!

 まぁ、結局特に問題はなさそうという事で一応そこは一安心。良かった良かった。

 

 で、少し話は変わるのだけど、意外? だったのはこの期間――シルバーウィークでデンドロ内で特に何らかのイベントが発生する気配が無かったらしいと言う事。

 前回の『ラベンダー祭り』イベントからもう一ヵ月経ってるし、今までのイベントの間隔からしてこの大型連休で何かイベント開催されるかなー? って思っていたんだけど、特にそういう事は無かったみたい。

 まぁ、シルバーウィークというのも日本限定の連休なんだから、全世界で展開されているデンドロでそれを考慮されるって事でもないという事だね。

 初回……初回? の『海の日』イベントはともかく、前回の『ラベンダー祭り』イベントは別に日本の祭日とは全く関係なかった訳だしね。

 

 さて、そんな訳で漸くデンドロを再開!

 二人やリン、イグニスとも少し振りの再会だったのだけど、二人は今日も今日とて決闘に模擬戦にと闘技場で剣を振るっている。

 カシミヤは言わずもがなだけど、春香も大概天地らしい戦闘狂だよね。

 ……まぁ、間違いなく僕も人の事は言えないかもしれないけど!

 

 二人と合流した後は三人揃っているんだしパーティ戦にまた挑戦してみる事になったのだけど……空き時間が結構あったので今日も闘技場施設で三人で訓練する事に。

 経験値が入らないと言うのもあってマスターで闘技場施設を利用している人はそう多くはないから結構な穴場なんだよね。

 追加料金を払えば結界時間内加速も出来るし、これを利用しない手はないと思うのだけど……まぁそれはさておき。

 今日の訓練は主に春香主導の物。何故か春香がお姉さん風吹かしまくっているんだよね……

 どうやら、僕がログインしていない間にカシミヤ経由で僕とカシミヤの年齢が自分よりも下だと言う事に気付いたらしい。

 ……年齢的には明日香とかもお姉さんと言っても良いんだけど、何か慣れない感覚!

 ――もう数日もしたら慶都から大白宮に帰って、大白宮の実家で家族の人達と一緒に本格的に学園へ入学する準備を始める事になるって言ってたし、多分その事情もあるんだろうけどね。

 それを鑑みれば春香と一緒にやれるのも後数日、か。手は抜けない……!

 それはそれとして、天地のジョブに詳しい春香が居る事がこんなにも有難い事だったとは思わなかったよ……

 各国固有のジョブ、特に上級職の情報は未だにWikiにもろくな情報がないからね……

 

 

 

 ガチャ:

 C 【魔法カメラ】

 E 【エクスプロージブ・ブリット】

 D 【ジェム:ファイアーウォール】

 

 折角なので魔法カメラはコテツにあげる事に。一応でも<DIN>の【記者】だからね! まぁ、もう既に高品質な物を持ってそうだけど、予備はあって損はないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

9月23日(水)

 今日はシルバーウィーク最終日の秋分の日!

 ……運動の秋、って言っていいのかな?

 それはともかく今日も昨日に引き続きデンドロにログイン。

 

 今日も大体いつも通りに三人で闘技場通いの日々! ……なのだけど。

 丸一日、デンドロ内でもかなりの長時間ログインして闘技場に入り浸っていると、どうしても鍛錬の時間の方が長くなりがちだよね。

 いくら天地の慶都であっても四六時中試合が組まれたりはしない。むしろ最近は<マスター>需要でかなり増えている方だと聞いている。

 ……天地のティアンの人達なら<マスター>需要がなくても決闘はいつでもやってそうに思えるのは僕だけかな?

 

 まぁ、そんな訳で今日の活動も闘技場施設での鍛錬がメイン!

 鍛錬内容は……三人でバトルロワイヤル的に乱戦の模擬戦をしてみたり、昨日の鍛錬の続きをやってみたり。

 カシミヤはともかく、僕の方は昨日とは少し趣が変わった感じだけどね。

 

 僕の鍛錬について、まず初めに春香……だけでなく、カシミヤにも言われたのは僕の戦闘スタイルについてだった。

 僕がこうやって自分で書くのもちょっと恥ずかしいけど、僕の今の戦闘スタイルはエンブリオ、【アダムカドモン】の特性もあって変則的な万能型……もっと言うと器用貧乏というのが実際正しいと思う。

 万能型のジョブ構成。一応《全主相応》とステータス補正のお陰でステータス自体は十分高い様に見えるけど、これでもまともなステータス補正をしているエンブリオを持った普通の物理か魔法、どちらかに傾倒した<マスター>と比べたら押し負ける程度なんだよね……

 ……いつも比べているカシミヤのエンブリオはスキル特化型だから実感できないけども!

 

 で、そんな僕が本気で戦う時やそれを模した模擬戦を行う時は基本的に長剣を両手で持っての白兵戦が基本だ。

 基本なのだけど……変則的と称した様に、時と場合によってSTR(筋力)任せに片手で剣を振る事もあれば完全に遠距離から魔法戦になって剣が宙ぶらりんになる事だってある。

 二人が戦闘スタイルについて問うてくるのも無理はないよねこれは……

 しかし、僕にだって言い分という物がある。……まぁ、言い分と称するには少し稚拙だけど。

 そもそも、僕は二人と違って元々固定された戦闘スタイルなんて物は欠片も持っていなかったのだし、それ以前に武器を持つ事ですらデンドロにログインして初めての出来事だったのだ!

 今のこの戦い方だって割と手探り状態で戦っている現状で、何とかなっているのは正直に言って僕自身の才能(センス)に依る所が大部分を占めている。

 初期武器やその後ずっと使っている武器に剣を選んだ事だって、一番近くに居たコテツが選んで使っていた事と、イメージ的な問題が大半で特に得意であるとか思い入れがあるという事でも無かったのだから。

 

 ……と、簡単にそんな感じの事を伝えたら、それじゃあ今から合う得物を探してみよう! という事になった! いぇーい!

 ……何故か二人は武器を持ったことがなかったという所で疑ってたけど! 別にそこ疑わなくても良くない!?

 

 その後は闘技場に用意された練習用の武器を借りさせて貰って様々な武具の練習をした。

 スタンダードに片手剣と盾とか、刀と小太刀の二刀流だとか、短剣だとか、鋼線(ワイヤー)だとか、格闘だとかもね。

 他にも斧術、槍術、棒術、エトセトラ、エトセトラ……

 というか、武器の種類豊富過ぎじゃないかなっ!? ちょっと扱って試してみるだけでも膨大な時間が掛かったのだけど!

 剣だけでもスタンダートなロングソード(長剣)ブロードソード(幅広剣)レイピア(細身剣)ツーハンデッドソード(両手剣)ショートソード(小剣)クレイモア(大剣)なんて序の口。

 カッツバルゲル(鰭剣)マインゴーシュ(逆手短剣)カトラス(舶刀)ショーテル(歪剣)ファルクス(反剣)シミター(三日月刀)、剣鉈、蛇腹剣、長刀に斬馬刀……と、ここで挙げている物ですらその一部に過ぎない程膨大な量と種類の武器達だった。

 色物っぽいのも幾つもあったし、詳しく調べてないけど此方の世界での出自もバラバラだと思うんだけどなんであんなに種類があったんだろう……?

 まぁ、あそこまで時間が掛かったのは様々な武器を見てテンション上げて試しまくっていた僕の責任でもあるけども!

 ――武器は男子のロマンだって誰かが言ってたからね!

 

 で、そんな楽しい時間はさておき。

 結論から言うと、合う得物、というのは見つかったけど……戦闘スタイルは結局決まらなかった。

 それと言うのも、今回試した練習用の武器に限らず、実際の装備スキルが付与された装備も含めてそれぞれの長所があるという物。

 折角の万能型のエンブリオなのだから、何種類もの武器をアイテムボックスに用意しておいて必要に応じて武器を使い分けるのが結局一番なのでは? という何ともありきたりな結論に終着したんだよね……

 まぁ、何種類もの武器を使い分けるのも使いこなすのも僕の才覚如何という事でもある。やり甲斐がありそうだよね!

 これはまたコテツに色々お願いしないとね……!

 ……そういえば、最初に刀剣を選んだ理由こそ大した事無かったけど、やっぱり何だかんだ言っても刀剣類は広く使われているだけあって扱いやすさと利便性と殺傷力のバランスが優れているよねぇ。

 これもカシミヤや春香に布教された結果なのかな……?

 

 ちなみに、使ってみてこれは、と思った武器は――バスタードソード(片手半剣)だった。

 これはまさに僕の戦闘スタイルの為にあると言っても過言ではないのでは!?

 とりあえずは片手で剣を持ち、もう片方の手は状況に応じて、という今までと変わらない様な感じに落ち着く事になりそう。

 ……片手はこうして空けておけた方が小細工はしやすいんだよね、僕の場合は。

 今まで使っていた武器もそれに合わせて少しサイズ調整して貰うのが良いかもしれない、かな? まぁ、そこは要相談!

 そんな実りあるデンドロ日和でした、と……

 ――ところで、春香はともかくなんでカシミヤまで鎖鎌とかヌンチャクとかをそんなに自由自在に使いこなせるんだろう……?

 

 

 

 ガチャ:

 F 【ペリシャの実】

 E 【野原の幸セット】

 D 【樫の指揮棒】

 

 

 

 

 

 

 

 

9月24日(木)

 今日はシルバーウィーク明けの最初の登校!

 連休明けの常で気怠げなクラスメイトが多かったけど、先生もそれが分かっていたようで今日の所は以前やった所の復習が多め。

 ……僕はちゃんと授業聞いてたよ。本当だよ。

 

 学校から帰って来てからはいつも通りデンドロにログイン!

 今日は春香が慶都から大白宮に帰る日。折角なので最後にパーティ戦に参加して華を添えてみせる!

 ……引退戦という訳ではないのだけど。多分僕やカシミヤは今後も闘技場に顔を出すし。

 僕らもこの一ヵ月とちょっとの活躍で少しは年齢とか物珍しさから以外でも固定ファンが付いてたらいいんだけどなぁ。

 でも、やっぱりそういう所はエンブリオの地味さが足を引っ張りそう。くぅ。

 

 最後に戦った相手は<マスター>が四人とティアンが一人の五人パーティ。今までも数回パーティ戦で戦ってきた相手だった。

 決闘の内容についての詳細は省くけど、なんとか勝利を捥ぎ取る事ができた! わーい!

 多分、平均レベルとかステータスに関しては向こうの方が上回っていたと思うのだけど……うん、相手も技術がない訳じゃないんだけど一辺倒というか、割とパーティ全体が脳筋気味だったよね。

 とは言え、まずパーティの人数で負けている上に<マスター>の人数――〈エンブリオ〉の数が倍も離れていてはかなり苦しかったのは確か。

 戦闘技術は此方が上回っていたとしても、相手が脳筋でも、実力は本物だからね……

 

 ……やっぱり派手派手なエンブリオは羨ましいなー。

 

 まぁ、それはともかく勝てば官軍。三人で挑む最後の決闘、紙一重でも、勝てて本当に良かったよ。

 

 さて、試合が終わって……後は大白宮に帰るだけ。

 ジョブレベルによって齎されるステータスに因る高い身体能力と、アイテムボックスの存在があるこの世界で事前準備をしっかりとしていれば旅先から出発するのにそう長い時間は必要ない。

 勝利の余韻を残したままに僕らは慶都を後にして大白宮へ行く旅路を進む事になった。

 ……ちなみに、特に理由はないとの事だけどカシミヤも同道してくれた。

 この期間一緒にパーティを組んで、カシミヤの方にも多少の感傷があったら……嬉しい、かな?

 ともかく、そんな感じで僕らの闘技場月間は終わったのであった、なんてね。

 

 ――それにしても、この慶都から大白宮へ続く道を辿るのは二度目になるんだけど、AGIによる高速機動で進むとまた風情が変わるよね……まぁ、僕とカシミヤのリアル時間的に仕方のない事なんだけども!

 あと、幾らなんでも道中でまで高速思考の訓練やらせるのはやめよう!?

 

 

 

 ガチャ:

 B 【ヘビィデリンジャー】

 D 【SPMP回復ポーションLv4】

 D 【銀の壺】

 

 ……弾丸の入ってない銃だけ出ても困るっ。天地の規格の弾丸でいけるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

9月26日(土)

【<Infinite Dendrogram>公式季節イベント開催中!】

【現在、『収穫祭』イベント開催中! アイテムボックスに入りきらない程の沢山のアイテムを入手するチャンス!?】

【ただし、欲張り過ぎると痛い目に遭うかも……? 己の力量を見極めよう!】

 

 やーらーれーたー!

 不意打ち……圧倒的不意打ち……!

 ――とは、少し言い難いけど、そう言っても過言ではない気がする!

 

 今回開催されたイベントは期間中モンスターからの戦利品(ドロップアイテム)二倍、採取品の自然回復率数倍化という、どの層のマスターにも美味しい嬉しいイベントだった。

 ……運営(管理AI)によって放たれた一体の〈UBM〉が居なければ。

 

 【万裂天使 ワグシェム】。この世界における最上位のモンスターの証である、神話級(マイソロジー)の〈UBM〉。

 鎌と直剣を携えて真っ白なフードとローブみたいな服を着たモンスターだったのだけど……実際あれの実力は神話級としては大した事ないんじゃないかと言われている。

 ――あの厄介過ぎる特性が無ければね!

 

 多くの<マスター>の犠牲と鑑定・知識に特化されたエンブリオにより判明した敵の特性は……いや、それらが無くてもある程度は皆即座に気付いていたのだけど、“分裂”だった。

 いや、確かに【万裂天使】って名前が表示されてるよ? だからって――幾ら何でも本当に()()()()()()()()とか反則だよね!?

 HP・SP・MP以外は分裂しても大した減衰もしていないし、しかも分裂体が更にリソースを消費して複製体を作り出したり下級天使っぽいモノを召喚するスキルを有しているとか!

 たった一体――そう、たった一体の〈UBM〉とその軍勢がデンドロ内の全世界を席巻するのは本当に凄まじかったよ……世は正に天使の大行列。

 セーブポイントがある場所に近寄らなかったり、マスター以外は襲わない様にされていなかったらヤバイ部類だよね、あれは。

 

 ……まぁ、天使だからと実は交渉できないかな!? とか考えて彷徨ってた【ワグシェム】の分裂体にほいほい近付いた僕も僕なんだけど。

 実際、《魔物言語》もあるからコミュニケーションは万全!

 ……と思ったんだけど、挨拶しても問答無用で奇声を上げて襲い掛かられたんだよね……

 しかもデスペナ後に掲示板で調べてみたらあいつら種族:天使じゃなくて配下の天使っぽいのも含めて皆種族:キメラだったというぬか喜び!

 【天使】とは一体……召喚された下級天使だって【レッサーエンジェル・フュージョナー】ってあったのに……

 初めて遭遇する自分以外の天使だと思ったからワクワクしていたのに!

 

 まぁ、せめてもの救いは分裂体の戦闘力自体は上級のマスター達なら戦えないレベルではないらしいという事だ。

 僕がデスペナになった時点ですら撃破報告が幾つか上がっていたみたいだし、情報がもっと集まれば期間中に本当に一万体全部倒しきれる、のかな?

 僕はすこーしテンション下がったからデスペナ明けた後は普通に狩りとかクエストを請けるだけにする予定だけどね……ぐぬぬ!

 

 

 

 

 

To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

高速思考:
 AGIによる速度の加速に依らない思考速度を加速させる方法の総称。
 前衛と比べて圧倒的にAGIで劣る超一流魔法職の戦闘用の基本技術とも言われている。
 原作では現時点で少なくともインテグラと【イグニス・イデア】が使用している。
 長じれば典型的な魔法職でもAGIが三万を超える様な相手に迎撃魔術を成功させる事もできるとか。
 リアルスキルで代用できるセンススキルとしても存在する。
 【操縦士】系統の機体同期思考加速や【司書】系統の読書時限定思考加速、他にも【記者】系統や【書記】系統の非戦闘時、事務作業時限定思考加速スキル等が挙げられる。
 その中でも、戦闘時にも発動できる思考加速系スキルは稀。

 なお、リアルスキルで代用できはするが一般的なセンススキルと違いスキルによる思考加速と併用する事も可能。


【万裂天使 ワグシェム】
種族:キメラ
主な能力:分裂・増殖
最終到達レベル:94
発生:認定型
作成者:フラグマン
備考:元は先々期文明時代にフラグマンが対“獣の化身”用に作成した混合生物(キメラ)
 【エデルバルサ】の失敗から慣れない生物工学にも手を出して作成してみたが当然ながら生物ベースのこれも〈UBM〉認定からの暴走に至る。
 しかし、その時点で既に対“化身”用のリミッターを設定しており、化身か、化身に類似した反応を持つ相手以外を襲わない設定になっていたので廃棄していた(ところを化身達に回収された)。
 ちなみにその対“化身”用のリミッターはありがたくイベント用に流用されているとか。
 固有スキルは《万裂分身》。その名の通り自身のHP、SP、MPを一万分の一にして自分を一万体の分裂体に増殖させるぶっ壊れスキル。
 元のHPもキメラとしてそれぞれ特殊な能力を持った強力なスライムやエレメンタル、天使や悪魔等を融合させていった結果、数十億に達している。
 その代わり分裂していない状態では不気味で巨大な肉塊としか言えない存在でまともに動けもしないが、分裂した状態が基本なので特に意味はない。
 分裂体のステータスは一体一体が伝説級モンスターより少し強い程度。
 それも自身の身体から生成した武器を使った物理攻撃しかできない稚拙な物だが、想定していた相手が相手なので仕方がない。
 更に分裂体はSPを消費して使用する《複製体創造》を使用する。複製体のステータスは亜竜級上位程度の平均3000程度。
 そして更に分裂体と複製体がMPを消費して行なう《眷族召喚》も持つのだからジョブで行える《軍団》では対処できない数となる。
 ……ちなみに、そんな【ワグシェム】でも、仮に【ワグシェム】が暴走しなかったとしても、おそらくは無限に増殖する“獣の化身”に対しては大した痛痒は与えられなかっただろう。

 イベント時は最初の分裂体が世界各地の各フィールド、ダンジョンに配置されて<マスター>を次々と狩って行った。
 が、【ワグシェム】も一部の管理AIも失念していたのだ。MMOにおける廃人達の狩りイベントに対する熱意という物を……
 結局、物量戦以外できない【ワグシェム】の分裂体は各地で次々と<マスター>達に討たれ、無事イベント期間終了までに討伐されたのであった。《万裂分身》の使用を管理AIに制限されていなければ……
 これは管理AI達の粋な取り計らいにより分裂体や複製体を討伐時にも経験値や戦利品が手に入る仕様になっていたから……だけだったか否かは定かではない。
 ちなみに、地味にマスター初(?)の神話級〈UBM〉討伐の栄えあるMVPは各地を回って辻支援に勤しんでいたとある支援職だったとか。


 ……はい、今話も最後までご覧頂きありがとうございます!
 何時にも増して捏造設定、捏造設定過多ですね!
 実際、【イグニス・イデア】が【龍帝】の速度に相手が動いたのを見てからカウンターできるのって凄い。
 イデア化してAGIも上がっていたかもしれないけど要望的にMPというか魔法特化設計にされているのだからそこまで上がってないと思うのですが。

 文字数が膨らみ過ぎなので次話は少しは短くしたいなぁとか考えつつ、次話に続きます!
 
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