無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

31 / 88
前回のあらすじ:鍛錬パートと> 突然のUBM <

いつもより遅れてしまって申し訳ないです……
それでは本編をどうぞ!


第三十一話 野試合と・一喝

□<群白森林・浅部> 

 

 

 

「――――」

 

「――――」

 

 

 

 各地で大童だった『収穫祭』イベントも終わり、数日後の昼下がり。

 <群白森林>の開けた場所で、二人の童が対峙していた。

 

 

「――――」

 

「――――」

 

 

 今この時、二人の間に会話はいらない。

 ただ二人は無言で笑みを浮かべて武器を構える。

 

 片方の少年、カシミヤは隙なく長刀と鎖を携えて相手を見据え。

 もう片方の少年、ジーニアスは長剣を下段に持ち相手を誘う。

 

 

 ――――

 

 

 

 ――――

 

 

 ――

 

 二人の間を一陣の冷たい風が流れ

 それが二人の激突の合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

□<群白森林・浅部> 【陰陽師】ジーニアス

 

 

 

 

 

「――ハァッ!」

 

 裂帛の気合いと共に、挨拶とばかりに《レイ(光線の魔法)》をまだ距離がある内に数条まとめてカシミヤに叩きつける。

 闘技場での試合では秘匿していた【ラスリルビウム】の力も、カシミヤとの野試合であれば隠す理由は何処にもない。

 

 当然ながら光速の魔法を避ける術はなく、狙い違わず高威力の魔法がカシミヤに直撃する。が……

 

 

 (まぁ、当然ながらそれ(・・)はそのままだよねっ!)

 

 

 ――高威力の魔法が直撃したカシミヤは、少し顔を顰めて身体が揺らぐ程度で大したダメージを受けていそうには見えない。

 

 だが、それもある種当然だろう。これはある種趣味でやっている野試合だとは言え、互いに己の本気をぶつけ合う決闘遊技(野試合)

 対戦相手――僕の対策をするのはむしろ必然だと言っても良い。

 

 長くジーニアスと共に、ジーニアスを相手に戦ってきたカシミヤはジーニアスの“手札”をある程度把握しているものだ(勿論、それはジーニアスの方も同様だが)。

 そして、ジーニアスを相手に決闘を行う時、何が一番脅威なのかと言えばそれは――奇しくも【極光剣精 ラスリルビウム】と同じ、光速であり不可避にして高威力の光属性魔法に他ならない。

 現に初めてそれをやられた時には近付く前に瞬殺された事も記憶に新しい……かもしれない。

 故に、以前の僕との決闘からカシミヤはメイン装備である上半身と下半身、それと一部のアクセサリー以外の防具の大半を対僕特化――炎熱耐性を光属性耐性の付いた防具で固める程にはカシミヤも本気だった。

 

 (それも【イナバ】の新スキルで耐性まで付いているんだから、これはもう諦めた方が良いね!)

 

 そう思考を切り替え、次手に移る。

 つまりはそう――カシミヤに分がある接近戦だ。

 

 当然、小細工なしでカシミヤと斬り合うのはナシ。

 僕だってそう簡単にやられるつもりはないけど――天地を巡る野試合の旅で()()()のとも度々やり合ってきたカシミヤだ。

 その技量は最初に大白宮の闘技場でやり合った時と比べても数段は向上している。

 まったく、健全に成長している様で何よりだよね!

 

 周囲に《シュートアロー》用の【棒手裏剣】を浮かべ――《縮地(抜刀)》を以て一息に距離を詰める。

 

 当然の様に対応されて――鍔迫り合いになる。

 

 

「――チィッ!」

 

 そして、一拍遅れて《シュートアロー》が――【ラスリルビウム】で強化され、超音速に近い速度にまで加速された【棒手裏剣】が紙一重で回避される。

 

 ……今のは見せた事ない筈だけど、なんで避けられるんだろうね!?

 予想されていた、かな……?

 いや、でも《シュートアロー》に《極光剣》の効果が乗るのは僕も予想外だったのだけど……!

 

 そう考えながらも順次浮かべていた【棒手裏剣】を射出するも、次弾以降は上級エンブリオに進化し、更に耐久力の上がっている【イナバ】に弾かれる。

 

 だけど、流石に【イナバ】の操作に思考を多少ではあれ割かれているせいか剣速が僅かに落ちている。

 そのお陰で直撃は免れ――ッ。

 

「くっ!」

 

 

 咄嗟に地面を勢い良く踏み締め、《縮地(抜刀)》にて数メテル後退する。

 

 ――その一瞬後に、今まで自分が立っていた場所が横一文字に斬り裂かれていた。

 あれは【剣鬼】の攻撃スキル、《満月斬り》。

 もしかして未だ速度を抑えていたのか、と驚愕する隙もなく、眼前に多重に《簡易結界》を展開する。

 

 ――カシミヤの両横に控える鎖が、新たな二本の刀を構えんとしているのが見えたから。

 

「《火走り》――!」

 

 【双剣士】か、それとも素の技量か。カシミヤは両の手で日本の刀を同時に掴み、振り抜く。

 

 

 

 ――そして、その直後に《瞬間装備》で交換された二刀を再度抜き放つというオマケ付きで。

 

 次撃は風を纏った剣圧。多分西方の【剣士】系統のスキルだと思う。

 威力は初撃と比べて多少低い筈だけど、風を纏ったその一撃の範囲は――

 

 二連二撃。それぞれが微妙に軌道を変えている癖に狙いも正確な剣圧が迫る。

 

 初めの二発は、片方が《簡易結界》を吹き飛ばし、もう片方は足裁きと極小の威力の《ウインドハンマー》の併せ技でギリギリで回避に成功。

 

 次撃の二発を、なんとか一撃を《閃》を使って弾くが――

 

 

 

 BOMB!!!

 

 

 防具に【符】として仕込んでおいた風属性魔法――特大の指向性を持たせた《ウインドハンマー》による疑似反応装甲によって最後の一撃も軽傷に留める。

 

 しかし、指向性を強めていても自身の防具から風属性魔法を発動させるのは体勢的に非常に無理が来るというものだ。

 再度《縮地(抜刀)》によって距離を離し、息を吐きつつも一度腕を振って体勢を立て直す。

 が。

 

 

「疾ッ!」

 

 

 ()()()()()()()()【ミスリル鋼線(ワイヤー)】が【イナバ】に弾かれる。

 

 《シャドウペイン(攻撃隠蔽スキル)》と《剣速徹し》、それと元々視認性の低いワイヤーを併用した中距離用の必殺技だ。

 本来は短剣や一部の暗器などの特定武器でしか使用できない《シャドウペイン》と、刀剣類を装備していないと使用できない《剣速徹し》を《全主権限》によって使っている。

 闘技場の試合で何人も気付かれずに葬って来た技だったんだけど、これも難なく防ぐのかー……

 僕的には必殺の一撃のつもりだったのでうっかり表情に出してしまう。

 

 

「……残念ながら、それは闘技場で何度も見ていますので、僕には効きませんね」

 

「そうみたいだね。本当にやり辛いよ――」

 

 そうは言いながらも、カシミヤは安直には近付いてこない。

 ……まぁ、僕の新技奇技を警戒しているのだろう。凄く正しい。正し過ぎて何度も言うけど本当にやり辛い!

 

 

 ……その膠着は、最初に武闘大会でやり合った時の事を思い出させる。

 しかし、あの時と違い今はもう《退魔封印》一つで勝敗を左右はできないし、僕のエンブリオによる奇手にも慣れてきているカシミヤには大体対応されるだろう。

 さてどうしようか。

 風属性魔法は風圧は《鮫兎無歩》で無効化されるだろうし、単純な攻撃魔法は超音速に満たない風属性魔法じゃ当てられないだろう。

 不可視だという利点も、カシミヤが相手の時点で《刹刃圏》があるから無意味。

 【隠密】のスキルは……まぁ《シャドウペイン》が全く通用しない時点で僕が習得している他のスキルも使えないだろうね。

 上級職の【影】にまでなっていれば念願の《影分身の術》があるのだけど。

 

 ……ここはやっぱり、()()()で《レイ》でダメージを積み重ねるのが良いかな?

 僕がカシミヤを削り切るか、削り切る前に僕が斬られるか。

 

 

「――今ので品切れですか? それなら、僕から行きますが」

 

「僕の特製必殺技は108個はあるよ! だけど、それを使うのは今ではない……」

 

「……ジーニアスだと、本当にそれくらいあっても不思議ではない様な気がするから困りますね?」

 

 流石の僕でもそこまではないよ!

 カシミヤにまだ見せてない決め技なんて後…………まぁ10個くらいしかないし、その内8個くらいは既にカシミヤにはあまり効かないから他の人用のだと割り切っているし。

 

 

「だけどそこまで言うならば仕方ないから、その内の一つを今ここで使わせて貰うよ――」

 

「ふっ、望む所ですよ……!」

 

 

 その言葉を皮切りにして、互いの戦意が膨れ上がる。

 カシミヤの足元には《鮫兎無歩》の魔法陣が、僕の周囲には数十もの光球が浮かび上がる。

 

 今回は前回のリベンジマッチ。僕もそう簡単には負けてあげられないんだよね――!

 

 

 

 

 

 

 

「「いざ――――!」」

 

 

「喝ッッッッッ!!!!!」

 

 

 ――っ!?

 

 う、動けない……っ!?

 脚が、腕が、首が、胴が。

 まるで巨大な拘束具を付けられてしまったかのように全く動かせなくなって、その場に倒れ伏してしまう。

 視線だけ動かしてみると、カシミヤも同じ状態の様だ。

 

 ――って、《鮫兎無歩》があるカシミヤも動けないって、不味いっ!?

 

 内心僕がそうやって軽くパニクっている所に、足音が聞こえた。

 野試合を始める前に周囲数キロメテルの人の気配は探査しておいた筈なのに……

 

 

 

 

 ――そうして現れたのは。

 とある禿頭の老人――いや、僕はその顔、その人物を一応ではあるけど知っていた。

 大白宮、いや、西白寺領に五人しか居ないと言われている超級職の位を戴く者。

 

 

 

 ――【鬼神武者(デモニック・サムライ)】 不動藤十郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月29日(火)

 今日も今日とてデンドロデンドロ!

 なのだけど……今日はちょっと珍しい事があったのでちょっとそれについての事。

 ……珍しい事だよね? うん、珍しい事の筈。

 

 今日もログインして、さて今日はどのジョブクエストを請けようか、また【陰陽師】ギルドに行こうかなと大白宮の都を歩いていた所で、冒険者ギルドの近くでふとカシミヤの姿を見かけた。

 慶都から大白宮への道行の後は偶然にも遭遇していなかったから、折角なので声を掛けてみる事にしたんだよね。

 どうやらカシミヤはまた決闘や野試合に参加する為に慶都にとんぼがえりするらしい。ちなみに、それからまた暫くしたらまた慶都から天地中を旅して野試合(辻斬り)の旅を再開するんだとか。

 本当にカシミヤはカシミヤだよね!

 ……僕も興味なくはないけど、暫くは大白宮でやりたい事があるからなぁ。少なくともその後で、だね。

 

 ……ちなみに、カシミヤみたいな決闘、闘技場で行なわれる試合とはまた違う、野試合――闘技場施設の結界の保障のない、互いの命を懸けた戦い(殺し合い)を好むマスターは上位<マスター>の中にはまぁそこそこの数が居る。

 ただし天地に限る、だけどね。

 で、その野試合を好んでいる<マスター>達が基本何処に集まっているのかと言うと、それは当然天地での決闘ランキング戦のお膝元である慶都に他ならない。

 天地の新人<マスター>の初期スタート地であり、決闘の参加者が多いから物流も盛んだしね。

 あと、これは僕にも当てはまるんだけど、野試合を好みつつも闘技場での決闘にも興味がある対人勢もそれなりの数が居るというのもある。決闘にも積極的に参加してたし、一応カシミヤもこちら寄りかな?

 ……中には所属する領を決めているのに慶都に野試合をやりに遠征しに来るのも居るんだとか。

 

 で、カシミヤはここ数日、その前に大白宮特有のマジックアイテムを物色したり、レベル上げをしたり、冒険者ギルドで慶都への道中でのクエストを探していたりして――いる時に指名依頼を請けたりしていたらしい。

 ……まぁ、指名依頼なら僕だって何度か請けた事あるんだけどね! 【陰陽師】ギルドとか【従魔師】ギルドとかで!

 まぁ、それはともかくその数日を掛けた準備と先日の『収穫祭』イベントの狩りや好景気の影響もあって準備は万端。

 レベルも天地の決闘事情において一つの区切りである合計レベル300まで到達していた様だ。おめでたいね!

 僕から見てもカシミヤは既にある程度ビルドが纏まっているから、多分残りのジョブは同系統で脇を埋めるか、ステータスを上げる為のジョブを選ぶか……

 汎用スキルを目当てに習得する、ってのも【斥候】とかならありえるのかな?

 

 そんな訳で出発準備が万端なカシミヤは冒険者ギルドで道中のクエストを探しに行こうとしていた途中だったと。

 なので――その前に、折角だから今日もカシミヤと野試合をするのであった!

 前回負けちゃったから、今回はリベンジだよ! という心意気で。

 

 まだ対策は完成しているとは言い難い状態だけど、僕にだって他に切り札の一つや二つ、いやそれ以上にあるのだ。

 そうして大白宮を出て<群白森林>の少し歩いた所で二人で意気揚々と野試合を始めたんだけど――

 

 ……野試合を始めて少しした所中断する事に、というか止められちゃったんだよね。

 ――大白宮、いや西白寺領の筆頭客分、超級職【鬼神武者(デモニック・サムライ)】に位を戴く不動藤十郎さんに。

 竜胆さんとか春香、泰央氏に話では聞いていたけど直接会うのは初めてだった。

 僕とカシミヤの動きを止めたあれは……確か【鬼武者】系統は白兵戦の補助として神通力っぽい少し特殊な魔法スキルを使用できた筈。

 だから多分それの一種だと思うんだけど……流石は超級職というか、うん、凄いなぁ……

 

 そんな訳で、不動さんに僕らの野試合は止められて、叱られる事になったのだ。

 

 ――野試合の作法が成っていない、って。

 

 そこなの!? 叱るのはそこなの!? とつい突っ込んじゃったよ……

 その後? えー……不動さんの野試合作法教室……かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月1日(木)

 スパルタンから自由の味は空気が美味しい……!

 最近は文化祭の準備で授業が短縮される事がそこそこ。

 ……僕的には授業の方がありがたいとかは言ってはいけないよねぇ。

 

 今日も学校から帰って諸々を済ませた後に早速デンドロにログイン。

 昨日一昨日とログイン中ずっと不動さんの教育的指導受けてたから僕はかなり疲れたよー……主に精神的に。

 カシミヤは割と平気みたいだけどね! 指導されていたのは同じなのに忍耐強さが違うのかなー。

 まぁ、僕の方も一緒に不動さんの武の教えをさわりだけとは言え教えて貰ったのは収穫だったのだけど!

 

 さて、忘れない内(?)に、一応だけど日記の方にも教えて貰った“野試合の作法”の一部抜粋でも書いておこうと思う。

 多分、いやどう考えても“組織”の仕事とかコテツにも必要はないのだけど……僕はこれからもするかもしれないし?

 別途まとめる程の物でもないし、言語化しにくい所は省略するけど仕方ないよね。

 長々と説明されてたから僕なりに短くしているけど……まぁ、僕が分かればいいかな。

 

 

 一つ、野試合は互いに真剣に行なう事。

 これは心意気の方の問題と、更に“真剣”――つまり、命を奪う武器で行うという二つの意味で掛かっているらしいね。

 

 一つ、一言でも良いので、互いに挨拶や承諾の言葉を入れる事。

 アイサツは実際大事。可能なら互いに名乗り合った方が良いけどそこまでは別に必須でもないらしい。

 

 一つ、双方が決闘ランカーである場合、勝者が可能な限り野試合後一ヵ月以内に闘技場施設の受付に申し出る事。

 これは決闘ランキングのあるこの世界独特な気がするよね。……まぁ、少なくとも今の僕にはあまり関係ない。

 

 一つ、互いに野試合が終わった後に無様を晒さない事。

 つまり、敗者を嘲ったり勝者を詰ったりするなという事だね。憤る物があっても、その場は無言で済ませておいた方がいいんだって。

 

 一つ、野試合に明確な意思を持った闖入者が乱入して来た時は、それ即ちその者も野試合に参加する者とする事。

 中断とかじゃないんだよね……まぁ、でもほぼ先に試合してた人らが速攻で乱入者を始末しにかかるらしいよ。

 

 一つ、野試合は参加者と参加者との戦いであるのだから、野試合に参加していない者を意図的に狙わない事。

 意図的に狙わない事と広範囲攻撃の時に配慮するしないは全くの別。まぁ、観戦している方も大体覚悟しているだろうって。

 

 一つ、試合を行う前に互いに“棺桶”を用意する事。

 ちなみに、開始前に互いに相手の方に投げる。“お前を今からこの棺桶に入れてやるぜ”的な意味……らしい!

 本当に入れられるかどうかはさておきね!

 

 一つ、互いの命を尊重する事。

 ……まぁ、色々と考える事はあるけど、凄く真剣に言われたね。

 これもあって【救命のブローチ】を装備してやるのが一般的なのだとか。

 

 一つ、もし野試合で死者が出た場合、勝者がその供養を行う事。

 なお、供養として死者の所持品をすべて持っていく事は常識なのだとか。供養って……そりゃ、“棺桶”は用意してやるのだけど!

 

 

 とりあえず、大まかにはこんな感じでいいかな?

 ……僕が最初作法を習う前に考えてた野試合をやる場所とか、開始の合図とか、野試合の戦闘におけるルールとか、勝敗条件とかには全く触れてなかったね!

 そこら辺は野試合する時々によって互いですり合わせるもので特に決まっている事はないらしい。

 【ブローチ】を付けている場合は【ブローチ】が破壊された時、という勝敗条件になりやすいみたいだけどね。

 

 ……総じて、確かに正しく“作法”だった、と言うべきか。

 多分、これらは天地の歴史の中で培われていった、必要な作法なのだと思う。

 特に感じた事は――以前の想像と比べて、非常に命という物事、そして命を奪うという物事を重視しているのだと感じた。

 武芸者――この世界における戦闘型ジョブに就いている人と言うのは、僕達の現実(リアル)の世界のそれとは違い、命を奪う事が大前提にある。

 モンスターや賊という、僕達の世界には存在しないそれらと常日頃から命の奪い合いをする存在だから、命を奪うという事に対して真摯でいなければならない――と、言外に言われた気分だったよ。

 まぁ、十中八九僕とカシミヤの年齢も関係してるんだと思う。

 そりゃ春香よりも年下、つまり僕もカシミヤも一桁歳なんだから、その心配も当然なんだろうけどね。

 指導の最中に具体的にそういう言動があったという訳ではないけど、なんとなーくそんな雰囲気が伝わってきていたから。

 流石にここまでやられたらそう簡単には反故に出来ないよね?

 

 ……って思っていたらこの作法は天地だけで通じるろーかるるーるだし、元々決闘を好み参加する様な正々堂々とした面々が行う物。

 奇襲闇討ちを生業とする者達は当然やらないし、時と場合に応じて自由にせい、とか言われたっ!

 指導が終わった直後のちょっとだけしんみりした気持ちを返して欲しいよねっ!?

 

 それにしても、【ブローチ】……棺桶はまだ普通に買える値段だけど、【ブローチ】は流石に高い買い物。

 僕はまだ数個くらいなら買えるお金はあるけど…… カシミヤは金策、どうするんだろうね?

 意外と野試合(PK)での稼ぎが多かったりするのかな?

 

 ちなみにそんなカシミヤも今日こそやっと指導が終わって慶都を出発する事になったのでした、と。

 多分、慶都や天地の各地で今回教わった野試合の作法を実践してくれる事だと思う。

 ……うん、<マスター>の方にも上手く浸透してくれる事を祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月3日(土)

 今日は土曜日だけど、学校で文化祭の準備に駆り出されちゃって少し時間を取られて帰宅が遅くなっちゃった……

 まぁ、その分という訳でもないけど当日は仕事ないから良いんだけどね!

 うん、一緒に文化祭で遊ぶ友達も居ないんだけどね……

 良いし。これでも夏休み前よりは改善してるし……

 

 そういえば、桑木さんに聞いたんだけど、同学年の別クラスにも数人現在進行形でデンドロをやっている子が居るらしい!

 別のクラスだと話す機会はあまりないけれど、これは声を掛けるしかないよね!

 ……その内に!

 

 

 さて、それはそれとして帰宅後は今日もデンドロにログイン。

 【陰陽師】ギルドでの用事は一段落着いたので、この土日は【従魔師】ギルドでのジョブクエストに取り組む予定。

 ……本当は僕もカシミヤみたいにレベルを上げたらまた慶都で決闘に参加しようかな、とも考えていたんだけど。

 ここ数日は経験値効率的に旨味の大きい間引きクエストどころかのモンスターの討伐クエストの数が激減している有り様だ。

 そして、それはこの大白宮や天地――否、それだけではなく、グランバロアとかレジェンダリアの一部を除く七大国すべてで最近噴出し始めた問題だった。

 そう――つまり、戦闘型の<マスター>が暴れ過ぎてモンスターの生態系がヤバい(意訳)という事だった。

 

 まぁ、それも当然だよね……

 大体平均して現実(リアル)で一ヵ月か二ヵ月もすれば上級エンブリオになれるマスターが、上級エンブリオに上級職も取って合計レベルが200程度まで上げれば、戦闘に有用なエンブリオであればその時点で(全国的に見て)ティアンの実質的な最強格である500レベルのカンストの猛者と同等の実力になり得るのだから。

 まぁ、天地にはそんな<マスター>でも普通に対応してくるティアンばかりなんだけどそれはさておき!

 

 そんな<マスター>達が、各国に万単位の人数で出現し、各々のライフサイクルに合わせて三倍時間をふんだんに使って自分の経験値や戦利品の為に狩りまくっているのだから。

 しかもそのモンスター達は〈神造ダンジョン〉製でなければ自然にリポップしたりはしないのだから……うん、遅かれ早かれこうなるよね。

 それに、エンブリオやジョブの組み合わせ次第では広範囲……どころか、詳しい範囲はさておき()()()()を攻撃したり影響を及ぼしたり出来る人も上級エンブリオの増加に合わせて少しずつ現れ始めているんだとか。

 実際、幾つかのモンスター種は絶滅し掛けたり、もしかしたらもう絶滅しているのもいたりとかいう噂だ。

 特にセーブポイントのある町近郊の狩場……通い易くモンスターが弱い狩場のモンスターは少し行って体感できる程にモンスターが少なくなってきているんだとか。

 まぁ、数の多いけどよく狩られる下級モンスターは種族にもよるけど繁殖しやすい(?)らしいのですぐに絶滅するという訳ではないらしいけど。

 

 この世界としては、モンスターは基本的に人に害成す害獣と同じ扱いなのでそれでも問題ない、という論調もあるらしいけど……それでは困る人も大勢居るというのも事実だ。

 そう、それは当然【従魔師】ギルドの人とか【騎兵】ギルドの人とか……いや、困ると言うならばほぼすべてのジョブの人が困るんじゃないかなと思う。

 モンスターが居なくなれば経験値と戦利品を得る手段は非常に少なくなり、戦闘職の初心者が育たなくなってモンスター素材を前提とした生産職全般に影響がある。

 更に、マスターが大量に狩り尽くせる程度に弱いモンスターが減って来れば――食物連鎖の上に立つ純竜級モンスターが群れをなして餌を求めて動き回る様になるだろう。

 そしてそれは純竜級モンスターだけではなく、もしかしたらティアンとマスターが力を合わせても倒せない様な〈UBM〉だって人里に現れる様になるかもしれない。

 故に、種を絶滅させる程の勢いで狩りをするべきではない! ……と、言うのが【従魔師】とか【学者(スカラー)】の人達の言い分だ。

 僕はまぁ六割方賛同と言う感じ。言い分は分かるのだけど、現状実効力がないからなんともねー……

 究極的には〈神造ダンジョン〉があるから問題ないだろ、って返されるのが多かったりする。

 仕方ないよね。

 

 ……でも、そんな状況でも各専門ギルドの意向もあってか、ここ最近は狩りを控えめにして戦闘を介さないジョブクエストとかギルドクエスト、生産とかも積極的に行なっているマスターは増えているんだとか。

 僕も含めてね!

 

 ……もしかして、『収穫祭』イベントで各地のモンスターが狩り尽くされるのも併せて運営(管理AI)の掌の上だったりするのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月4日(日)

 今日は昨日に引き続いて<群白森林>で【従魔師】ギルドのジョブクエストを頑張った!

 昨日の日記の続きになるけど、<群白森林>はモンスターの狩場としてあまり効率が優れている訳ではないからか、大白宮のセーブポイントに近いのにそこまでマスターによる生態系の影響はないらしい。

 その分浅層では素材を採取していたりモンスターではない普通の動物を捕まえているっぽいマスターを何人か見かけたけどね。平和……!

 そんな<群白森林>でも今後はどうなるか分からない。そんな訳で【従魔師】ギルドの人達がジョブクエストとしていつもより緩めの基準でテイムモンスターを買い取ってくれる事になっているのだ!

 ……ただし、常識の範囲内でね!

 誰か常識の範囲外でやらかしたのが居るのかな。居るんだろうなぁ……

 僕も大概《従属契約(テイム)》をするには都合の良いエンブリオを持ったマスターだと思うけど(地味に大白宮の【従魔師】ギルドの人にばっちり指名依頼出された事もあるし)、マスターによっては僕以上にそれに特化しているのも居るだろうからね。

 

 と、そんな感じで今日も狩りとかジョブクエストをこなしていたんだけど――久しぶりにエリーシア、つまり烏丸達のパーティから通信魔法で連絡があった。

 どうやら、狙っている〈UBM〉が居るのだけど一緒にやらない? というお誘いだった。まさかのお誘い!

 一も二もなくそのお誘いに乗る事に。……勿論条件とかは聞いておいたけどね!

 実際、条件も普通に良かったから間違いじゃない筈。

 

 今回の相手は僕が<群白森林>でテイムした事のある【老賢古木(エルダー・トレント)】の進化系だか突然変異だかの樹のエレメンタルの伝説級〈UBM〉である【虚樹錆香 ホロゥラストル】。

 元は掲示板の〈UBM〉スレで話題になっていた〈UBM〉で以前から存在はマスターにも知られていたのに倒されていなかった〈UBM〉の一体だ。

 その固有スキルは錆化と腐蝕。

 金属製であろうと木製であろうと皮製であろうと近付いた相手の装備品を悉く腐り落とし錆び付き朽ち果てさせて使い物にならなくする装備品殺しの固有スキルを持った〈UBM〉らしい。

 しかもそれだけではなく、【老賢古木】と同様、いやそれ以上の高い魔法行使能力と魔法防御力を兼ね備えているから装備の必要ない魔法で攻めるのも無理筋だ。大体魔法系超級職に一歩劣る程度の実力はあるんじゃないか、とか。

 ならばと装備品を諦めて全裸で挑んだ【格闘家(グラップラー)】の人も居たらしいのだけど、その時はトレント種由来の【森祭司(ドルイド)】の魔法スキルに酷似した状態異常魔法や地属性の魔法で普通に殺されてしまったらしい。

 総合戦力としてはおそらく伝説級の〈UBM〉としても上位の難敵という事だね。

 

 それで、そんな難敵にどうやって戦うのかと言うと――そこに用意したるは弥生のエンブリオである【エイヴィヒカイト】。

 すっごいメタになってるよねどう見ても! つまりは、そういう事だった。

 ちなみに僕はアタッカー役の一人として参戦する。烏丸達のパーティってば【トツカノツルギ】以外は攻撃力低いからね……

 固有スキルを封じても普通に上級職より明らかに強いレベルの魔法で普通に負ける可能性だってありそうだからね。

 ここは久しぶり? に【退魔師】のスキルを存分に使っちゃってMVPを狙うしかない!

 

 ……ピンポイントにメタエンブリオを持ってる弥生に貢献度で勝てるかというのはさておきね!

 

 

 

 

 

 

To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

《真闘滅却》:パッシブスキル
 【イナバ】が上級エンブリオに進化した際に習得した複合防御スキル。
 戦闘中、自身(カシミヤ)に中程度の熱量変化耐性と傷痍系状態異常耐性を付与し、更に極大の精神耐性と幻術・幻惑耐性を付与する。
 また、自身に作用するあらゆるステータス低下効果を半減する。

《縮地(抜刀)》:アクティブスキル
 【剣鬼】等で習得するスキル。
 納刀状態の時に抜刀する直前に一歩踏み出すと同時に数メテル超高速で移動する位置調整用のスキル。
 どう考えても《居合い》と組み合わせる用のスキルだがジーニアスは足踏みと同時に使うだけで自由に数メテル瞬間的に移動できる便利スキルとして使っている。
 ちなみに瞬間的な移動で一見瞬間転移の様にも見えるが実際にはただのスキルによる超高速移動で障害物があったりすると不発する。

《明鏡止水》:パッシブスキル
 【剣鬼】等で習得するスキル。
 スキルレベルに応じて自身の《心眼》《精神統一》《痛覚耐性》等のスキルの効果を向上させる。


 今話も最後までご覧頂きありがとうございます!
 重ねて今話が遅れてしまい申し訳ないです……
 字数も全然減ってないですしね! ちくせう。

 それでは、少し振りな〈UBM〉戦の描写となる次話に続きます!
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。