やだ……文字数過去最多とかマジかよ。
それでは本編をどうぞ!
□<富落森林> 【剣鬼】烏丸
走る。
走る。
走る。
息を切らして、全力を賭して、足場も悪いこの森を背後を気にしながら走るのは想像以上に精神を消耗させる物だったけれど――
それでも構わない。どんなに不格好だって、ここが仮初の世界だとしても――誰だって、勿論
辺り一面に敷き詰められている腐葉土に足が沈み、背の高い木々の上では【亜竜禿鷹】がギャアギャアと煩く鳴き声を上げる。
早く死ね、早く死んで俺達に喰われろ、と……生憎と<マスター>である僕達の死体は衣服の一つだって残らないのだけど、今はそんな事を考えて現実逃避しなきゃやっていられないくらいだよ……っ!?
「「右へ!」」
直感を信じて声を上げるとジーニアス君の声と被ってしまった。同時に大きく右前方へ向かって脚力を全開にして跳躍する――
――GYGOOOOOOOOOOOOOO!!!!!
数秒前まで僕達が走っていた道筋を、猛風――否、爆風が駆け抜けていった。
その射線上にあった木々も他の植物もまるでミキサーにでも突っ込まれたかのように木っ端微塵に切り刻まれている様子から、もし避けなければ自分達がああなっていたのだと否応なく悟ってしまう。
「烏丸烏丸! ああいうのは僕聞いてないけどっ!?」
「僕らだって予想外だよ!? まさか、
僕と一緒に少し前を走っているジーニアス君にそう言われるが、今回の事は本当に予想外だった。
<富落森林>の主、
それが
◇
【虚樹錆香 ホロゥラストル】。
それは、天地の西南西に位置する<富落森林>を縄張りとする〈UBM〉の一体だった。
攻撃能力は
そもそもの【虚樹錆香 ホロゥラストル】の性格自体はモンスター……否、〈UBM〉としては比較的温和な性格で、仮に森に人型範疇生物が侵入したとしても、自身に敵対しなければ不干渉を貫く物だった。
近隣の領では書物すら残っていない大昔には、彼自身を崇め奉っていた村人には恩恵を与えていた、という話すらある。
そんな性格であるから、ティアンの間では長い長い時間、彼には手を出さずに周囲の生態系の“蓋”として機能して貰う事になったままの時間が緩やかに過ぎて行った。
……だが、その安穏も多くの、余りにも多くの<マスター>が現れるまでの事だった。
大半の<マスター>にとって〈UBM〉とは、エンドコンテンツと称しても問題ない程に
それでなくとも【ホロゥラストル】は今までの経緯から暫くはティアンから襲われていなかったが、だからと言って【鍛竜王】などとは違い、何らかの益を出していた訳でもなかった為、特に国の法に守られても居ない。
故に、この<Infinite Dendrogram>が開始されてある程度の時間が経ったこの最近では、<マスター>達が一定の戦力を手に入れて、この世界に慣れてから、どの様な状況になっているのか、彼は魔蟲や怪鳥のモンスターから聞き及んでいる。
――ティアンの人達に名前や居場所の知られている〈UBM〉の情報を聞き、それを嬉々として狩っているのだと。
彼も長い時を生きた〈UBM〉だ。その理由も目的も十二分に理解している。……自分もその対象だと言う事を。
何故なら彼らはユニーク・ボス・モンスター。
ただのモンスターとは違い、唯一にして絶対。人とも他のモンスターとも違う隔絶した力を持つ超越存在であり――討伐される事で“特典武具”なる唯一無二の秘宝を手に入れられる稀有なる存在。
獲得欲、優越感、達成感、危機感、顕示欲……それらを挙げるまでもなく、彼らは特典武具を、ひいてはそれを入手する数少ない機会である〈UBM〉を求めている。
そして、長く、とても永い時を生きた彼は知っているのだ。
――不死不滅にして強力な力を持つ<マスター>に目を付けられたならば、最早逃げる事は叶わない、と――
そう。
既に彼は手遅れだった。
人間に手を出していないとは言っても、彼も間違いなく駆除対象のモンスター……〈UBM〉の一体である。
今からでも人間に媚を売れば生き残れるかもしれない――が、その選択は<マスター>達が大量に表れ始めた時点で既に一手遅かっただろう。
彼も伝説級の中でも上位に位置する実力を持った〈UBM〉だ。実力は十分だが――それでも不死身にして〈エンブリオ〉を持つ<マスター>を相手にして生き残れると思える程自惚れられはしない。
それが出来るのは多分、古代伝説級の中でも上位以上の実力を持った者達だけだろう。
故にこそ、彼は詰んでいた。独力ではもう<マスター>に狩られる未来しか見出せない程に。
既に亜竜級のモンスターが多数徘徊する自身の庭である<富落森林>にも多数の<マスター>が足を運びにやってくる様になり、その中には彼に挑戦してくるのすら居る程だ。
辛くもその挑戦者は撃退した物の、相手の<マスター>の力も相当な物だった。
決して、伝説級の〈UBM〉である彼を以てしても楽勝とは言い切れない程に。
その戦闘結果に彼は、生き残った事による安堵と、それ以上の――<マスター>の実力に対する畏怖と、遠くない未来に狩られるであろう自らの姿を幻視させた。
だから、彼は■■■■■■■■■…………
【虚樹錆香 ホロゥラストル】
レベル:69
HP:327423
MP:853212
SP:13062
STR:9532
AGI:7630
END:14850
DEX:10705
LUK:2253
◇
【虚樹錆香 ホロゥラストル】
レベル:69
HP:327423(+664846)
MP:853212(+1716424)
SP:13062(+36124)
STR:9532(+98064)
AGI:7630(+25260)
END:14850(+39700)
DEX:10705(+31410)
LUK:2253(+14506)
◇
□<富落森林> 【剣鬼】烏丸
走る。
走る。
暴風の魔法――それも特大の呪いも付与されていた。避ける。
走る。
走る――
「全く。〈UBM〉の中では温厚だって聞いていたのに、アレの何処が温厚だと言うのか、理解に苦しむ……!」
「も、もしかしたら前に来てた<マスター>の人が怒らせてしまったのかも……?」
全力で走りながらも苛立つ様に弥生がそう言う。
全員に掛けている【エイヴィヒカイト】の固有スキルの維持に精一杯で息も絶え絶えと言う様子だ。……体力的に、このまま逃げ続けるのは悪手だと、弥生だけではなく、全員が理解できているだろう。
エリーシアと一緒に【タラスク】に乗りつつも、それに返していたレインも疲労の色が濃い。
現在の五人パーティの中で唯一の純支援
……しかし、レインは正直に言ってこういった重圧に強い方ではない。
だから、こういう時こそ僕が、僕がしっかりしなければ――っ!?
まず――
「っ! 次、
ジーニアス君がそういうのが早いか、既に数多くの木々に阻まれて欠片も伺えない程の遠方から――
超音速を越えた速度でやってくる――超々高威力にして超広範囲、超大質量の《
「――《
「ぁー、お、《厳かなる儀式》!」
「タラスク! 《堅牢の甲羅》を! ――《守護結界》!」
着弾までのほんの僅かな間に、仲間達が範囲防御スキルや防壁展開スキルを重ねて使い、パーティ全体を守ろうとする。
しかし――
――GAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGA!!!!!
一つ一つが拳大の石礫が、数百を越えてなお続く物理的な破壊の暴力。
相手の――《看破》しただけで既に
防御スキル強化の効果を持った《厳かなる儀式》により強化されたいくつもの防壁展開スキル。
しかし、それでもなお《簡易結界》と《守護結界》は数発分を受け止めただけで破れてしまい、今までは破られた事もない【タラスク】の《堅牢の甲羅》もその役目を果たしきれずに、前半分のみを受け切り突破されてしまう。
そして、残る半分が――
「させ、るかあぁぁっ!!」
足を止め、迫りくる石礫達に向き直り、剣を――【トツカノツルギ】を掲げる。
途端、先程の結界達にぶつかった時の様に石礫達は次々と不可視の障壁にぶつかり続け――ついにはすべての石礫を防ぐ事に成功した。
しかし、喜んでばかりもいられない。
ここで一日に一回しか使えない虎の子の《蛇比礼》を使い切ってしまった。
単発防御型の固有スキル。範囲防御性能としてもこの様に頼りになるのだが――つまり、それは持続していた《蛇比礼》の効果を失ってしまった事を意味する。
じわり。
再び逃走劇を再会しようとした刹那、足元の違和感に気付いてしまい……つい舌打ちをしそうになってしまう。
靴が、ボロボロになっていたのだ。
勿論、長年使い続けて擦り切れてしまったとかそういう事ではない。この靴はまだ買い替えて一月も経っていないし、そもそも僕達のパーティは今全員弥生の【エイヴィヒカイト】の《不壊なる願い》によって装備品も含めて破損も摩耗もしない筈なのだ。
そして、それを突破してくるからこそ、今僕達がこうやって逃走しているのだ。
――伝説級の〈UBM〉だと思っていた相手の、詳細不明な、急激な成長。
――ステータスは間違いなく神話級モンスタークラス。その固有スキルも――人から伝え聞いた事のある神話級〈UBM〉に相応しい絶大な効果。
――それに特化した
――単発にして一撃必殺の《八拳剣》で相手の初撃を相殺し、範囲防御に加えて、状態異常防御の効果もある《蛇比礼》を使っていなければ、こうして逃げる事も難しかったかもしれない。
――――うん、即座に逃走を選ぶのも致し方なしだよ。今考えても!
靴が不味い事になっても、逃げる足を止める訳には行かない。
追撃を警戒しつつも、再び逃走劇の幕は上がる。否応もなく。
「――さて、皆! 速度は緩めないままで頼むよ。良くない話が二つあるけどどうかな!」
「聞きたくなーい!」
「……僕もジーニアス君に同意したいけど、聞かなきゃ不味いんだよね?」
走り出して少しして、【タラスク】に乗っているエリーシアが……式神で【ホロゥラストル】の監視と周囲の警戒をしていたエリーシアが声を出す。
……嫌な予感しかしない。
「そりゃもう最悪に。まず一つ目として……奴さん、まだまだ諦めるつもりはなさそうだ。何をしようとしているのかは分からないけど、敵意がバリバリ感じられる」
「まぁ、それはそうだろうね……」
然もありなん。
あれだけの魔法を使える、固有スキルだけでなく魔法をメインにして戦う〈UBM〉なのだ。
先の一撃でこちらを斃せなかった事くらいとっくに把握しているだろう。むしろ即座に追撃をされていないだけありがたいとも言える。
……何をしようとしているのか、本当に怖いけどね。
そう納得し、視線で次を促す。
「そして次が本当に最悪だな――この森、出口が存在しない」
……なんだって?
……それは、凄く不味い。
「……それは迷いの森、的な意味で? それとも、また別の何か?」
「後者だねぇ。バッチリガッチリ森の切れ目に沿う様に結界を展開されてやがる。いつ張ったのか、気付いたか?」
「ううん、僕も分からなかった。もしかして、《魔法隠蔽》と同種のスキル? 流石に多彩に過ぎるよー……」
ジーニアス君とエリーシアが雰囲気を変えないままそう話し出す。
……が、その事実ってもっと重い、かなりヤバイ事実では!?
《八拳剣》を使っていなければまだ結界を破壊できたかもしれないけど、所謂単発スキル特化の僕の【トツカノツルギ】はつまりその単発スキルを使い切ったら何も出来ないと言っても過言ではない。
えーと、他に、他には……!
「ふ、二人共!? それじゃわ……もうどうしようもないって事!?」
「うーん……タラスクが頑張ってくれれば、数分あれば壊せると思うのだけど」
レインの慌てた声に努めて冷静にエリーシアが答える。
……そうだった。こういう時は頼れる【タラスク】!
ステータスだけなら伝説級モンスターにも匹敵する彼ならば……!
「吃驚した……なら、僕達の仕事はタラスクが結界を破壊するまで持ち堪えればそれで――っ!?」
――《殺気感知》に感有り!?
また魔法――――
そう思った直後だった。
「こ、ふ……っ」
視線を背後に廻すが――居ない。
あるのは、ただ僕を貫いた木の枝が――まるで
「烏丸――!《嘆きの奇蹟》を!」
「ばっ――く、空間跳躍攻撃っ!? うっそでしょ……!」
倒れそうになる身体を、気合いで押し留める。
しかし、ステータス欄に複数表示された傷痍系状態異常によってHPが急速に0に向かっていく――
――が、それも【タラスク】の身体より立ち上る光に照らされて即座に回復へと転じる。
回復が間に合ったのは嬉しい。嬉しいけど――!
「……どうやら、逃がしてくれる気は全くないみたいだね」
ジーニアス君がそう呟くのと同時に。
僕らの前方数十メテルの空間が歪み。
その歪みから【ホロゥラストル】が……
◇
(あっはっは……冗談きついねぇ!)
――
――仲間達。先の逃走劇の疲労が抜けきっていない。特にレインは……恐怖で青い顔をして震えている。
レイン以外はまだ戦意はある様だけど……あの
――
むしろ、此処まで接近したせいで尚腐蝕・錆化の力が強まったのか、また少しずつ装備品が損耗してきている……!
――仲間の切り札たる【タラスク】。……今の固有スキル、《嘆きの奇蹟》は確かMPだけでなく、HPとSPも大きく消費して放つ大技だった筈だ。
パッと見、まだ余裕がある様に見えるが……少し息が荒い。どの道、長期戦は不可能だろう。
――つまり、埒外のステータスと固有スキルを持つ〈UBM〉を前にして、更に強固な結界と転移能力を持つ相手から、消耗している現状でどうにかこの場を切り抜けなければならない――
全く、本当に冗談としか思えないひっどい状況だ。
<マスター>だから、いやティアンですらも絶死を覚悟する場面だろう、と思う。
それも、特典武具狙いの襲撃戦でこの有り様なのだから自業自得としか言い様がないのがまた辛い。
――最も、だからと言ってそう簡単に諦める気は毛頭ないのだけど。
【タラスク】以外の仲間達は精神的な消耗こそあれ、ステータス的な消耗は先程の《嘆きの奇蹟》で回復している。
皆なら最悪、直接相対できなくても僕の援護だけならば確実に遂行してくれるだろう。
なんとか、相手の
そして、勝機はもう一つ。
――そう、先程から油断なく周囲と僕らの様子を見ている、ジーニアス君。
そのジーニアス君と、視線が合う。
――……!
――……!!
「……よし、
「まっかせといて!」
よしきたぁ!
ジーニアス君がそう言い、懐の【アイテムボックス】に手を入れるのと同時に。
戦闘は再び開始された――!!
「すまんタラスク、頼む――《守護結界》!」
「《時の鎧》よ!」
「――清め給え、祓い給え!」
【タラスク】と共に前に――【ホロゥラストル】の眼前に躍り出た僕に、数多の支援スキルと防御スキルが飛ぶ。
それと同時に、鋭い枝が、極彩色の花粉が、暗黒の球体が僕と【タラスク】を葬り去らんと迫りくる。
【ホロゥラストル】本体の枝じゃないのか、速度は遅かった枝を避け、《舞剣士》のスキルである《春風の舞》で花粉を吹き飛ばす。
しかし、200万を越える莫大な
流石は【タラスク】。庇って直撃したのに小動しかしない!
業を煮やしたのか、【ホロゥラストル】から生えていた太く長い枝がしなり、超音速の数倍以上の速度で襲い掛かる――が、それを待っていた。
更に前身し、《沖津鏡》でその太い枝を反射させて【ホロゥラストル】の樹の顔面と思しき場所を直撃――はしたのだけど。
どうやら、本体の体表のすぐ近くにも結界を展開していたようで、その結界が破壊された気配はあったんだけど結局最終的な威力はかなり減衰されていた様だ。
多少は傷ついている様にも見えるけど、その傷もすぐに修復され始めていて特に致命傷でもないみたいだ。
…………
「ジーニアス君ー! 少しってどれくらいーっ!?」
「大丈夫、もう十分だよ!」
必死にジーニアス君に問いかけると、彼は手に持った球――【ジェム】だろうか?――を掲げて唱える。
「起動――《
◇
◇
◇
◇◇◇
10月5日(月)
やーらーれーたー!
見事に【ホロゥラストル】から敗走……うん、デスペナにならなかっただけマシではあるけど、こんなにこっぴどくやられるとは思わなかったよっ。
【ワグシェム】に続いて〈UBM〉運が悪い……いや、【ワグシェム】は公式イベントだったし、【ラスリルビウム】には順調に勝てたんだしそんな事はない筈っ。
……多分ね。
いや、でも今回のは流石にどうしようもなかった。
伝説級の〈UBM〉だと聞いていた【ホロゥラストル】が実際には最低でも古代伝説級、もしくは神話級という最上位の〈UBM〉に近い能力を持っていただなんて……誰にも想像出来る訳がないんだから。
烏丸の話ではステータスは限りなく所謂神話級モンスターの水準に達していたらしく、しかもその固有スキルの出力も古代伝説級の域を出ていただろうとの事。
それだけではなく、多彩な魔法に空間転移、結界作成も使ってきたのは本当、何事かと思ったよ……
一体、何がどうしてああなったんだろうね?
僕らは何とか逃げ出せたけど、人里からそこそこ離れている森の奥とは言え、あんな〈UBM〉が野放しだとは……
とは言え、烏丸によるとどうやらあの【ホロゥラストル】の能力は何らかの
《看破》でそれらしき
……何処ぞの<マスター>が悪意とか遊び半分でやらかしたのかな? 《看破》だけじゃ自バフとの区別が付かないからアレだけど。
掲示板のエンブリオスレとか晒しスレとか見てるとそういうエンブリオも結構居るらしいからね。
――問題は、いくらモンスターや〈UBM〉を強化できる〈エンブリオ〉があったとしても、あそこまでの強化を施せるエンブリオの固有スキルと言うのは、流石の僕でも見た事も聞いた事もないんけどね!
……ちなみに、掲示板でついでに調べてみたのだけど、件の【ホロゥラストル】との最後に抗戦した<マスター>達は普通に
その交戦した日付は
たった一ヵ月であの領域まで自力で成長したっていうのは……ないよねぇ?
とりあえず、烏丸達とは一緒に軽く反省会したからそれで良いんだけど、後はコテツにこのボロボロになった装備の修繕お願いしないと……
これ、直るかな?
◇
10月8日(木)
今日は久しぶりにモンスターを狩る事を目的とした遠征!
とは言え、無秩序に狩り回るだけでなく、元々<マスター>を含めた人気が少ない狩場で細々と、だけどね。
そんな不人気な狩場である今回の目標……それは、大白宮から南西に位置する場所にある<富落森林>。
そう、数日前に戦った【ホロゥラストル】が縄張りにしていた森だね!
縄張りに
誰か他の人かモンスターに倒されたのか、移動したのか、それとも別の何かなのか……あの根まで生えているトレントみたいな〈UBM〉が自分の縄張りから出るかな? とも思うけど、空間転移までするくらいなんだから移動くらい余裕で出来そうだよね。
うん、一応気になる事が多過ぎたから隠密全開で様子を見ようとも思っていたんだけど、宛てが外れたというのも事実だったね……
まぁそれはともかく!
そうでなくとも<富落森林>は人里離れていて近辺にセーブポイントもない僻地であり、<Infinite Dendrogram>開始前から不人気狩場だった事もあって<マスター>増加による生態系への影響が少ないから久しぶりに周囲を気にせずモンスター狩りに精が出せるというのも厳然たる事実!
目標は僕――だけでなく、リンとイグニスを含むレベルアップ!
最近はリンとイグニスを同時に《喚起》して一緒に狩りをする機会が殆ど無かったら、頑張って成果を上げたいね!
でも、ここが人気ないのって多分全く違う理由だよね
ちなみに、ここは不人気ではあるけど狩りをしている間に少ないけどたまーに同じ考えをしていたっぽい<マスター>と遭遇したりした。
<マスター>には各々の〈エンブリオ〉があるから、多分どんな場所でもそこに合ったエンブリオを持った一定の数の<マスター>は居るんだよね。
……羨ましいなぁ。
まぁ、深く考えるのはそこまでにして、明日からも頑張ろうー!
メモ:
Wikiに載ってないのは書いておく事にするね。
【ロッツ・グレーターワーム】
亜竜級。腐蝕液を吐き出す数十メテルのでっかいミミズ。多分魔蟲。
ステータスは高い方だけど動きが単調だから一番やり易いと思う。
【
亜竜級。腐肉を食らう怪鳥種。
特殊なスキルは持っていないみたいだったけど他のモンスターと比べて少し頭が良かったと思う。
【亜竜土狼】
亜竜級。全身茶色の毛皮の狼。名前からして土属性魔法でも使うのかと思ったらそんな事無かった。魔獣種の筈。
でも総合的に<富落森林>で一番ステータスが高いと思う。勿論ボスモンスターとかは抜きにして。
【アインアント】
亜竜級に近い方の下級モンスター。硬質な質感の蟻。どう見ても魔蟲。
ENDだけはすっごい高い。リンとイグニスのカモ。僕の下級の光属性魔法でも普通に倒せるけど僕らならそれを使うまでもないよねっていう。
でも上記の連中より数が多いのは面倒。
【レッドロッツスライム】
亜竜級。赤いスライム(そのまま過ぎる……)。凄く珍しいスライム種!
物理攻撃が通用しないけど僕らなら普通にカモだった。【亜竜土狼】にも完勝してたみたいだけどね。
多分、ノーマルなスライムと比べて凄く溶解速度が速い。でも触らなければ何の問題もない。
【マゴット・カンパニー】
純竜級よりヤバイ下級モンスター。蛆虫の群れ。魔蟲でしかない。
イグニスが居なかったらヤバかった……
単為生殖でもしているのか、戦闘中でもポコポコ増えるし一匹一匹が素のステータスで平均100前後。
――そう、ジョブに就いていない大人の人間のステータスが10くらいしかないのに小さな小さな蛆虫のステータスが一匹100前後。
◇
10月11日(日)
今日も今日とて<富落森林>で狩りの日々!
ふっふっふ。今日は大猟だったね!
<富落森林>に来てから数日のレベルアップに笑いが止まらないという物だ。
……それ以前に九月中はあまりモンスターの狩りに出てなかったというのもあるけどもそれはさておき!
この調子なら【従魔師】だけじゃなくて【隠密】のレベルもカンストまで上げられそうかな? 【ジョブクリスタル】、持っておいて良かった!
ここまで美味しく狩りが出来るのもこの<富落森林>に他の<マスター>の姿があまり見えなかったと言うのもある。まぁ、零ではなかったのだけど。
それでも、三連休なのにここまで少ないとは思わなかった。いや、三連休だからこそ、時間を掛けてもっと美味しい狩場にでも籠っていたりするのかな?
美味しい狩場の情報とか、ティアンの人から聞いた、
……ただし、色んな意味でレジェンドな〈神造ダンジョン〉は除くけど。
そういえば、ここ最近は僕の従属モンスターであるリンもイグニスも出して狩りをしていて気付いた事があるんだけど……ズバリ、イグニスの《火炎ブレス》の事だ。
【
この世界でも種族:ドラゴンのみならず他の種族のモンスターも使う事のあるポピュラーな存在みたいだけど、やはりドラゴンは殊更得意としている。
中でも、天竜種……つまり、空を飛ぶタイプのドラゴンは好んで使うらしい。空中から
さて、そんなドラゴンのメインウェポンであるブレスだけど……イグニスに説明されてWikiとかも見て漸く知ったのだけど、これは特異なタイプを除けば凡そ三種類に分けられるらしい。
一つ目は、ブレス……自身で生成した炎や光や風などのエネルギーを線状にして放つブレス。
防御型の敵が前を塞いでいる時なんかも使えそうなタイプ。まぁ、その分消費や上手くエネルギーを線状に収束させる為のセンスが必要なのだとか。
……グラビ〇ムだね! イグニスが使っているのに合わせて熱線タイプと呼ぼう!
二つ目は、エネルギーをそのまま扇状に放つ、放射状に広がるタイプのブレス。
エネルギーの変換に特化したタイプで、指向と制御が疎かなドラゴンだと大体これになるんだって。
エネルギーの変換に特化したと言っても、見ての通り放出する際にエネルギーが拡散しちゃうから三種類の中じゃ一番攻撃力が低いみたい。
ただし、エネルギーの性質のままに拡散するのだから……それはつまり、攻撃範囲が広いという事に他ならない。
他のモンスターと比べても間違いなく強者であるドラゴンの
その攻撃範囲と言う一点だけを見ても利点は十分過ぎるよね。……攻撃範囲、本当に大事だよねぇ。
……炎じゃないけど、フ〇フルのブレスかな。放射タイプと呼ぶ事にする。
そして三つ目は、エネルギーを生成した直後に口内等で射出しやすい球状等に加工して、弾丸として放つブレス。
エネルギーの制御に特化したタイプのブレスで、最も僕達人型範疇生物が使う魔法と似た形式のブレスだ。
これは他と比べて何処が優れているか――それは、効率。
線状に解き放つよりも、唯々エネルギーを拡散させるよりも、エネルギーを制御して一つの塊に収束させる事で一発当たりの魔力の消費が非常に抑えられるんだとか。
勿論、その分相手も避けやすくなるのだから上手く命中させる為の方策は必要なんだけどね!
命中させなくても着弾させた場所で収束させたエネルギーが衝撃で炸裂させる、なんて使い方もあるのだとか。
露骨に難易度が高そう……まぁ、イグニスなら余裕だけどね!
見た目的にどう見てもリ〇夫妻の火炎のブレス。火球タイプ……球状とも限らないらしいから、弾丸タイプって言った方がいいのかな?
イグニス曰く、天竜の……【炎竜】の《火炎ブレス》は大体この三種類に分けられるらしい。
その他分類みたいな特異なタイプもあるらしいのだけど、今回はそれはさておいておく事にする。
さて、それで何故そんな話になるのかと言うと。
この三種類のブレス、大体の【炎竜】は使えるのは一種類か二種類だとモンスター図鑑とかWikiには載っているのだけど……
なんと、イグニスはこれを全種類、状況に応じて使い分けられるのだ!
まぁ、イグニスは前から
流石イグニス! 主である僕も鼻が高いよ!
これは魔法の応用とかにも使えないかな? なんてね。
……まぁ、僕が主に使ってる【光術師】の光属性魔法は、放射状にして撃ったら全く威力が無くなるから使えないんだけど。
【マゴット・カンパニー】許すまじ……
◇
10月12日(月)
今日は三連休の最終日の体育の日!
……デンドロ内ならすごーく運動してるよ。
まぁ、それはさておき!
今日は久しぶりに<富落森林>から大白宮への帰還っ。
デンドロ内でログインしていた時間だけでも十日近くあそこで狩りしてたんだね……
従属モンスターであるリンとイグニスをカウントしなかったら、一人でこんなに長時間狩りをしたのって何時振りだろう? もしかして初めてかな?
そのせい……という訳でもなく、どう考えても<富落森林>のせいだけど、ちょっと鼻が利かなくなっているかも。帰り道は意識して深呼吸したりしたんだけど……
【コモンルーン・《クリエイトウォーター》】が無ければ即死だったね……社会的に。
ログアウトしても装備品に着いた悪臭は消えてくれないからなぁ。狩りをしている時はあまり気にならなかったのに。
長期間、
二度目はあまり行きたくなくなるね。やっぱり不人気狩場だったか……
ちゃんと大量の水で洗ったりしたけど、大白宮の知り合いに臭いを気にされていたりしないか、凄く気になって仕方がなかった。
ぐぬぬ……一応、大白宮にはちょっとした補充とかで寄っただけだったのに。
うん、とりあえずは特に何も言われなかったし一応大丈夫だと思っておくとして!
ほら、あんな世界だし酷い状態で町に帰ってくる人とか結構多そうだし僕の状態だって問題なかった、問題なかったからね!
そういう感じで早足で大白宮を出て、<犀合山岳地帯>――大白宮から霧影領の忍びの里へ向かう道筋の途中で今日はログアウト。
大白宮に帰って直ぐだったけど、こっちの用事も早く済ませたかったからね。
そう――僕の二つ目の上級職、【隠密】系統の上級職である【影】に転職する為にね!
【隠密】のジョブレベルもカンストして他の転職条件も満たしている筈だから、今から楽しみ……!
……まぁ、そうやってトントン調子に転職できてもまだコテツの方が合計レベル高いんだけどね。
僕がモンスターを狩っていなかった間にもコンスタントにジョブクエストをやってたみたいだからね。羨ましい……
一番はログイン時間の差の気がするけどね!?
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
【虚樹錆香 ホロゥラストル】
種族:エレメンタル
主な能力:錆化・腐蝕・劣化・風化・崩壊
超剛力・
最終到達レベル:
発生:認定型
作成者:
備考:昔々から生きてきた通常のモンスターから
その固有スキルはTYPE:テリトリーのエンブリオと似た様な周囲の領域に作用する物。彼の場合は周囲の存在を腐蝕・錆化させる固有スキルを保有していた。
しかし、彼が今この時代まで生き残ってきたのはその固有スキルや魔法能力を背景にした実力ではない。
実力だけなら伝説級の〈UBM〉としてはそこそこ上位ではあっても、それでも歴史を振り返ってみれば彼に単身で勝てる様な猛者は幾らでも居たからだ。
そんな彼が生き残っているのは、ひとえに彼の性格に依る物が大きかっただろう。
……最も、そんな事は大半の<マスター>には関係ないのだが!
何があったのか、現在は神話級〈UBM〉と同等の存在と貸している。
元々持っていた固有スキルは更に進化し、錆化、腐蝕だけでなく劣化、風化、崩壊の域にまで達した。
仮に今回のジーニアスや烏丸達が【エイヴィヒカイト】の加護なく接敵していたならば、逃げる間もなく固有スキルによって装備品だけでなく、全身が腐り崩れ落ち死滅していたであろう。
それだけではない、数多の固有スキルと思われる物を使用しているが、詳細は不明。
なお、上記の欄に記載しているのは今話で使用した固有スキルのみで、これ以上のスキルを所有している可能性も否定できない。
まだ得た力を使いこなせていない。
はい。今話もご覧いただきありがとうございます!
次話こそは土曜更新したい……!
次話にて漸くジョブ欄を埋める時が来ました。【影】、いいですよねぇ……