無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:やだ、僕のエンブリオ、リソースの無駄遣いし過ぎ……?

今回、若干ながら残酷な描写ありかもです。
それでは、本編をどうぞ!


第五話 人間範疇生物・出発

□<黒藤森林> 

 

 天地唯一の中立領にして、<マスター>が天地を選んだ際の初期スタート地点でもある都、慶都。

 その慶都に隣接する東西南北四つの初心者狩場の中で、<黒藤森林>は最も難易度が高い場所として知られている。

 

 高い木々と伸び放題な枝葉や草花によって制限される視界、地形や草木を利用して立体的に活動するモンスター、深部に進んでいくにつれて強くなっていくモンスターは亜竜級モンスターすら含まれる程だ。

 土地勘の無い者、考えなしの者、危機感の薄い者が年々、誤ってか己の実力を過信してか、深部に踏み込んでしまいその命を落とす事も珍しくない。

 

 しかし、その危険に見合う程には<黒藤森林>は狩場として優れていた。

 深部に踏み込まなければ、新人が下級職の一職目でも勝利できるモンスターの質と量。

 天地でも有数の都である慶都から程近い狩場としての利便性。

 自然魔力豊富な森の幸と錬金術やポーションの材料となる素材の宝庫。

 そして、深部まで踏み込めば熟練に近い武芸者でも糧とできる亜竜級モンスターが生息し、奥地にある泉から採れる清水は【巫女】や【聖職者】の作る【霊水】の材料にもってこいだ。

 更には、初心者狩場の中で唯一、モンスターが魔法や変化と言った特殊能力を駆使する点も、対処はそう難しくない為、今後のモンスターとの戦いへの糧となるだろう。

 

 

 勿論、それらはここを、<黒藤森林>を適性の狩場とできる程の地力がある者にとっては、であるのだが。

 浅部ですら、初心者狩場の中で最も強いモンスター達が蔓延り、他の初心者狩場では見ない魔法や特殊能力を操るモンスターが、木々を森林を自然を味方に付けた自らのホームグラウンドで襲い掛かってくる。

 そう、ここは天地の初心者狩場の中でも最難関――その推奨レベルは、ティアンであれば合計レベル40は必要とするだろう。ティアンであれば(・・・・・・・・)

 

 当然ながら<マスター>であればその限りではない。不死身の身体を持ち、エンブリオという埒外の力を操り、万能を熟す天性の才能を持つ超人達。

 彼らが持つエンブリオが孵化し、その固有スキルを十全に振るえるのならば合計レベル20代でも十分だろう。

 もしその<マスター>が稀なる戦闘技術を所持していたり、パーティを組んでいたりするのならば、合計レベル10代でも問題ないのかもしれない。

 

――何故なら、彼らは不死身のマスターなのだから。

 

 

 

 

 

 

 斬る、薙ぐ、突く、撃つ

 

 <黒藤森林>で、一人の少年が戦っていた。

 前後を挟み撃ちにしてきた【ファイアバグ】の片方を《斬魔剣》で袈裟懸けに斬って捨て、もう片方に《魔弾》を撃ち込み、怯ませる。

 その隙に自分から接近し、剣を大上段から振り下ろし、再度振り被って絶命させる。

 

 額に汗を滲ませ、息を整えながらモンスターが落とした戦利品(ドロップアイテム)を拾う。その質は、少年がつい最近まで戦ってきた敵と比べ一段と高い。

 更に稼ぎを増やす為に、事前に調べておいた良い値段で売れる薬草や香草、魔力を若干ながら秘めた石等を採取し、自らのアイテムボックスへ収納していく。

 アイテムの鑑定は《鑑定眼》や【採取師】のジョブスキル等がなければ詳細は分からないが――事前に、そう事前に時間を掛けて冒険者ギルドに置いてある図鑑や書物などで勉強しておけばこの様に稼ぎを増やす事も、その狩場に生息しているモンスターの事も調べる事ができる。

 彼は当然、初心者狩場である<黒藤森林>の事も調べていた。他の武芸者達が下級職のレベル上げの仕上げに利用してきたこの狩場を。

 

 

 (なんだ、俺でもやればできるじゃないか。こんな事ならもっと早く来れば良かったか)

 

 

 そう、彼はつい最近までここよりも難易度の低い初心者狩場である<蘭曽根草原>を主な狩場としていた。

 ジョブに就く前から道場に通い、剣の振り方や身体作りの基礎を、武芸者としての心得を学び、ほんの半年前に初めてジョブに就いた新米武芸者だった。

 繰り返してきた<蘭曽根草原>でのモンスター狩りも安定しており、ジョブレベルは30を超えていた。

 このままならもう数か月も同じ様に狩りを続けていれば彼も晴れて【退魔師】のジョブレベルをカンストしていただろう。

 

 そんな時期に彼が見たのは――十日前に増え始めたばかりの<マスター>が、まだレベルが20に達したか達していないか程度の新人の<マスター>達が、<黒藤森林>へ向かっていき、そして<黒藤森林>で手に入る戦利品を換金している光景だった。

 

 マスターが特別だという事は知識では知っていた。だが、天地、慶都だけでも万を越える大勢の<マスター>が新たに現れているのを知っていた彼が、<マスター>個々の力を知識より低く見てしまっていたのも仕方のない事かもしれない。

 そして、そんな彼がこう考えてしまうのも無理はないのだろう。「<マスター>があんなに低レベルでも<黒藤森林>へ行けるのなら、自分も行けるのではないか」、と。

 

 故に、彼は数日前よりこの<黒藤森林>を己の狩場として狩りを続けている。

 彼にとって幸運だったのは、実際に今までの彼が行ってきた努力の積み重ねによって、十分にここのモンスターと戦える実力を持っていた事だ。

 油断さえしなければ、この狩場にいるモンスターならば一度に現れる二、三匹程度であれば戦い、勝利する事ができる。

 当然、それ以上に群れているモンスター達に手を出すという愚を犯す訳がない。モンスターの増援が現れた時にも直ぐに逃げ出せるようにと心構えだけは確りと保っておく。

 そして、天地に住まい、戦闘を生業とする武芸者達は、仮に下級職の一つ目の新人であろうとも“油断”や“慢心”とは程遠い事は語るまでもない事だろう。

 

――油断も慢心もしていなくとも、避けられない事はあるのだから。

 

 

 

 

 (おっ、運がいいな)

 

 少年が見つけたのは一匹の【闇狐】だ。彼に背を向け、鼻を鳴らしながら何かを探す様な仕草をしている。

 魔法を行使する【闇狐】を相手より先に見つけられた事は幸運だ。物理攻撃は揃えた初心者用の防具である程度防げるが、魔法は己の魔法防御力のみでしか防ぐ手段はないから。【退魔師】である自分ならば他の戦士職よりも魔法防御力は高いが、それでも物理防御力の方が高い傾向にある。また、HPの低い【闇狐】であれば不意打ちの《斬魔剣》の一撃で行動不能にできるのも美味しい。

 

 彼は慎重に近付きながら……十数メテルまでの距離まで近付き、一気に【闇狐】に向かって駆け出す。

 

 今頃気付いたのか、【闇狐】が勢い良く振り向くと同時に、取得していた低レベルの《危険察知》が反応する。

 

「遅ぇよっ!」

 

 当然、既に駆け出していた彼に【闇狐】の闇属性攻撃魔法が間に合う訳がなく、彼の一刀の元に【闇狐】が

 衝撃、浮遊感

 

「かっ……!?」

 

 

 【闇狐】まで後二歩という所まで接近していた所で、何者かに足を払われた。

 疾走の勢いのまま空中に投げ出され、無様に地面に叩きつけられる。

 

 (何が……!?)

 

 倒れ伏したままの彼が一瞬後ろに視線を向けると――草花に擬態していたその能力を解除した【千変狐】の、嘲るような視線とかち合う。

 記憶の中には確かに【千変狐】がこの<黒藤森林>に生息している事は覚えていた。しかし、生息数が少なくここ数日の狩りでは初期に一匹逸れていたのを討伐したきりであった為、記憶の奥に埋もれてしまっていたのだ。

 

 (まず――っ!?)

 

 このままでは死ぬ。先ずは起き上がり体勢を整えてこの二匹を始末する――そう考えた少年の身体に、横合いから二発の闇属性下級攻撃魔法である《ダークショット》が撃ち込まれよろめいてしまう。

 

 思わず視線を巡らせると先程の位置からでは見えなかったが、左右の奥の木陰に一匹ずつ、【闇狐】が隠れていたのが見えた。

 対生物特化である闇属性魔法は、ある程度の遮蔽を無視して対象のHPを削る事が出来る。

 故に、遮蔽の多い場所で闇属性魔法使いと戦う時は常に周囲に目を配り、相手に先手を許すな――そう、道場の師範に教わった事を思い出し

 

 正面からも《ダークショット》が撃ち出され、再び倒れ伏してしまう。背後には、【千変狐】の気配。

 

 

――師匠、姉さん、ごめ

 

 

 

 

 

 

 こうして、天地に住まう一人のティアンの少年の命は失われた。

 いったい彼は何処で間違えたのか。

 注意力が足りなかったのか? 観察力が足りなかったのか? 才能が足りなかったのか? 実力が足りなかったのか?

 己の適性を越えた狩場を選んでしまったその選択か、それとも<マスター>達を侮り、それに倣い狩場を変えてしまった事か、それとも《危険察知》から即座に反応できなかった事か……

 運も悪かったのかもしれない。丁度<マスター>が大量に表れた時期だったからそれに釣られてしまったのだと、知能の高いモンスター達が罠を張っていた場所に引っかかってしまったのも。

 

 だが、いずれにせよ彼がその選択を悔い、次こそはと改める機会はもう、ない。

 彼の――ティアンのたった一つしかない命はここに失われてしまったのだから。

 

 

 

◇◇◇

 

 

7月20日(月)

 今日も今日とて《海の祝福》を頼りに<黒藤森林>でレベル上げをしていこうと思う。

 ……いや、そう思っていた。

 

 事の始まりは本日午前、予定通りに<黒藤森林>へモンスター狩りに出向いた所まで遡る。

 コテツとはリアル時間の午後から合流する予定だと話し合っていたので、午前中、つまりデンドロ内で丸一日は一人でモンスター狩りに精を出す事にしていた。

 昨日一日での経験とレベルアップもあって然して苦労せずに戦利品と経験値を稼いでいたのだけど、狩りを始めてから約四時間後……それを見つけてしまった。

 

 それは人間の――僕より少し年上くらいのティアンの死体(残骸)だった。

 全身が獣の物と思われる歯形によって無残にも食い千切られており、付近には何らかの拍子にアイテムボックスが破壊されたのか、薬草やポーションといった消耗品が散乱している。

 正確な鑑別はできないけれど、腐敗はそこまで進行していなかったから経っていても死後数日、というところだと思う。周囲に多少ではあるが血も飛んでいるのに極近くまで接近しても何の匂いもしない、という事は破壊されたアイテムボックスに消臭剤の類でもあったのかもしれない。

 後に発見したけれど、微かに残っていた装備品は退魔師ギルドがお勧めしていたMP(魔力)の上がる前衛用装備品の物であり、死体の懐に残されていた冒険者ギルドの登録証には確かに【退魔師】であると記されていた。

 

――ほぼ間違いなく、先日退魔師ギルドで請けた新人退魔師の捜索依頼、その捜索対象だと確信した。

 この依頼を請けた時点で、その捜索対象である新人退魔師が“こう”なっている事は半ば想定していた。

 練達の達人であったりするならば兎も角、未だ未熟である新米が捜索依頼を出される程の期間、モンスターが多数生息している狩場で生存している可能性は低いだろう、と。

 ……その予想に反して、時間を逆算すると僕が依頼を請ける直前辺りまでは普通に生存していた様子なのは流石というべきなのか反応しにくい事ではあるけれど。

 

 匂いこそしなかったけれど、ある意味それが更にリアリティを引き上げていた様にも思う。あのリアル過ぎる感覚には流石の僕も若干冷静さを欠いて硬直してしまった程だ。

 ……なんとかギルドでの依頼の説明を思い出し、気を引き締め直す。周囲に他の気配はなかった為、彼を殺したモンスターは既にその場を離れていたのだろう。火傷や打撲痕が残っておらず、【影蟲】が大量に集った様な痕跡もなかったからおそらく死因は【闇狐】の闇属性魔法だろう。死体の損壊が少なかったのは襲ったモンスターが少数だったのか小食だったのか……どちらにしても、幸運だったとしか言い様がない。僕の精神的な意味でも。

 それを確認した後に死体の懐を探索し……ギルドの登録証ともう一つ、何も入っていないアイテムボックスを見つけた。

 

 それは棺桶――危険な場所へ臨むティアンが必ず持っていくという、自分を入れる為のアイテムボックスだ。

 本来であれば一人での道行でそれを所持していてもあまり意味は無いようにも感じるけど、依頼を請けていた僕にとっては都合が良い事でもあるからそれは横に置いておくとする。

 

 僕はそのアイテムボックスに死体を収納した後、すぐに<黒藤森林>を出て慶都に戻ってきた。狩りをする気分ではなくなっていたからね。

 退魔師ギルドまで戻り、アイテムボックスを――彼の棺桶と、発見した登録証を渡し、依頼達成の受理を願い出る。

 ギルドの彼らは気丈にも発見と報告をした僕に感謝して報酬の5万リルを渡してくれたけど……一瞬表情が翳ったのを見逃す僕ではなかった。

 ギルドの職員も依頼を出した時点でこの結末は予想していたのだろうし、この世界ではモンスターに殺されて死ぬのも珍しい事ではないだろう。それでも全くの無表情でいられる程、感情を抑えられる訳ではないという事だ。

 

 

 ……流石にそんな空気の退魔師ギルドに居座る勇気もなく、先の出来事を完全に忘れて<黒藤森林>での狩りを再開する気分でもなかった僕は午後、コテツと合流した後に事情を説明して拠点を変える事を提案した。

 慶都は初期国家として天地を選択した<マスター>の初期スタート地点ではあるけれど、多くのティアンにとっては大規模戦闘が禁じられた中立領である以上の事はなく、天地に所属している多くの実力者達は各々の庇護者たる大名の治める領地を拠点としているし……<マスター>もいずれかの大名の傘下に入るならば、この慶都から拠点を変える必要があるだろう。

 まだ僕は大名の傘下に入るつもりはないけれど、気分を変える為にも新しい町へ行ってリフレッシュしたいのだ。

 ……と、そう説明したら頭を撫でながら了承された。コテツが甘くて良かった……

 

 

 リアルで一時間(デンドロ内三時間)もの間協議した結果、僕達が向かう町は慶都から西、<白庭街道>を通った先にある都、西白院領、大白宮に決定した。

 西白院領は【陰陽頭】(オンミョウノカミ)西白寺泰央が治める領地であり、その都である大白宮には天地の【陰陽師】ギルドや【退魔師】ギルドの本部もある。

 【陰陽頭】が治める彼の都は【陰陽師】を始めとした術師にとっては天地でも有数の環境であり、また、慶都と<東海>を臨む港領との中継地点でもある為中立領である慶都程ではないが商業も盛んである事から観光にもお勧めである――と、冒険者ギルドのパンフレットに書かれていた。

 【退魔師】である僕にとっては確かに行ってみたい場所ではあったのだけど、【鍛冶師】であるコテツもが其処を希望したのは不思議ではあったけど……それを聞いてみたら、術師が治める術の都であるならその地に残っている資料にも期待できるだろう、と。つまり、仕事の関係であるらしかった。

 コテツがそれで良いなら話は決まり、早速各店舗で旅支度をして大白宮に向かう段となった。

 大白宮まで徒歩で約三日、二人旅である事とリアルでの食事や休憩を考慮して……明日いっぱいは移動に費やしても良いだろう。

 思えば、夏休みに入ってから、いや入る前も何処か遠くへ旅へ行くなんて事はなかったからある意味ではこれが初めての遠出、という奴になるのかもしれない。少しはゆっくりと旅を楽しんでも良い、はずだよね!

 

 

 

 

 

7月21日(火)

 今日はずっと歩き通しだった為、合間のこの時間に日記を書こうと思う。

 昨日慶都を出発し、<白庭街道>を抜け、<桑川街道>も半ばまで進んできた。この調子ならリアルで日付が変わる前後には大白宮に到着できると思う。

 僕達の旅は徒歩での行脚による道中だったのだけれど、これが中々に風情があった。街道こそ代わり映えがなかったものの進むにつれて変わっていく景色、近くを流れる河川のせせらぎ、自然を住処とするモンスターでもない小鳥や小動物に和んで草花の息吹を全身に浴びる。

 モンスター狩りをしていた時は意識の外に置いていたそれらを存分に味わいながら道行きを楽しむ。

 途中でティアンが乗っていた馬車とすれ違ったり、天地に似つかない様な乗り物――おそらくチャリオッツのエンブリオ――に乗ったマスターに追い越されたり。はたまた怪鳥かドラゴンかも判別できない程遠くの空に大きなモンスターの影を見つけたり、全力疾走で街道を走り去って行く人影を見かけたりしたのも旅の醍醐味だと思う。

 

 ……いや、後者二つは違うような気もするけれどそれはともかく。

 この旅路の途中、確かにそんな風に旅を楽しんでいたのだけど……それだけではなく、モンスターとの戦闘も幾度もあった。

 当然、街道は道こそ整備されているが初心者狩場として使われてるのを見れば分かる通り、町の外だからモンスターも普通に自然に生息している。

 その殆どは【小鬼】の集団だったのだけど……なんと、戦闘職である僕と生産職であるコテツで同じ量のモンスターに囲まれていても戦闘時間は殆ど差がなかった。

 地味にショックを受ける。そりゃまだSTRやAGIは3桁に辛うじて届く程度でしかないが、それでも戦闘用のスキルもそこそこ充実しているのだから、むしろ僕がコテツを守って戦うくらいはしようと思っていたのに。

 

 ちなみにその絡繰りは単純で、一言で言えばコテツは【鍛冶師】である自分で作った高品質な武具を装備しているのと、彼自身のリアルスキルによるものなのだけど……勿論ただのティアンの【鍛冶師】が同じ様な真似をしたら即座にモンスターの餌になるだろうと思う。昨日見た彼の様に。

 

 それを成功させた理由は――どちらも<マスター>だから、という事に集約される。

 まず一つ――コテツが装備している防具は上から下まで、武器と装飾品を除くすべての装備を自作の装備で埋めている事だ。

 そう、昨日まで行われていたイベントで、《海の加護》が付与されていた防具で、埋めていたのだ!

 装備可能箇所で防具に該当するのは頭部、上半身、下半身、外套、腕部、脚部の六箇所。その六箇所を《海の加護》が付与された装備で固める事で――モンスターから受けるダメージを60も軽減していたのだ!

 初心者狩場か、それに近い場所に生息している下級のモンスターの攻撃力はおそよ50前後、多少高い個体がいたとしても80~100前後しかない。そんなモンスターの攻撃を防具の防御力やENDで軽減した後に60も軽減していては全くダメージが通らないのも然りだと思う。

 

 これはバランス的にはどうなのか、とも思うがまだ<Infinite Dendrogram>はリリースされた直後であり、<マスター>の鍛冶師や他の生産職達もこの短い期間で全身の防具を作成するだけの素材を集める事自体がまず難易度が高かった筈なのでそこまで普及はしないだろう、と言われた。

 

 ……まぁ、コテツはその絡繰りを知って拗ねた僕にも一式の《海の加護》が付与された防具を渡してくれる程には余裕があったのだけど。

 コテツになんでそんなに余裕があったかと言えば、それも<マスター>の特権の一つ――エンブリオが理由だ。

 コテツのエンブリオ、【金土銀灰 カナヤマヒコ】は小型の即席鉱山を出現させるTYPE:キャッスルのエンブリオだ。

 その固有スキルは鉱山の姿をしている事からも分かる通り、キャッスルの内部に時間経過で自動的にランダムな鉱物を出現させる物で、種類こそ選べはしないものの素材の供給元としては最適な能力を持っていた。

 第二形態に進化した現在では既に少量ではあるものの【ミスリル】(逸話級金属)も生成されるというのだから驚きだ。……というか、何時第二形態に進化したんだろう? 多分、昨日合流する前には進化していたと思うんだけど。

 そんなコテツが自分で作成し、装備している武器はミスリルソード――武器攻撃力だけで僕のSTRと装備攻撃力を合わせた値よりも高いそれを携え、被弾しても殆どダメージとならないならばこの結果も納得せざるを得ない。

 

 

 ……それでも悔しくない訳ではない、という思いが通じたのかは分からないけど、道中の戦闘中に僕のエンブリオも第二形態に進化した。

 意外と進化が早いと思っていたけど、むしろ掲示板で集めた情報によると第一形態に孵化してから第二形態の進化はデンドロ内で一週間前後で行われる事が多く、孵化してから約十日掛かっていた僕のエンブリオの進化は遅い方らしかった。

 その進化の内容はと言うと……固有スキルの追加はなく、ステータス補正のSTR、AGI、END、DEXの四箇所がEに上がった事。

 そして、《全主相応》のスキルレベルが上がったんだけど……

 

 

全主相応(オールド・アヴァター)》Lv2:パッシブスキル。

 自身の各種ステータスを強化する。

 Lv2ではHP・MP・SP・STR・END・DEX・AGI・全状態異常耐性・従属キャパシティに10%のステータス補正を与える。

 

 

 流石にこの方向性での進化は予想外と言わざるを得ない。

 というか、僕はこれまで一体もモンスターを従属も召喚もした事がないし、状態異常に掛かった事もない筈なんだけど、このエンブリオは僕をどういう方向に導こうとしているのだろうか……?

 

 まぁ、エンブリオについては自分ではどうしようもない為、今後のジョブのビルドの参考にするしかないとして、今日はこのくらいで筆を置こうと思う。折角の新都市なのだから、新鮮な気持ちで楽しみたい。

 和の国、天地一の術師の都。そこで僕を待ち受けるのは……なんてね。

 

 

 

 

 

 追記:

 リアルで日付が変わった直後辺りで大白宮に到着した(まぁ、デンドロ内だと普通に午前中だったんだけど)。

 都の入り口から少し行っただけでも出店も人も多く予想以上の活気に圧倒される。

 これも大都市だからかと思っていたらそうではないようで、どうやらつい昨日に【征夷大将軍】(コンクエスト・ジェネラル)からお触れがあり、その話題でこの大白宮だけでなく天地各領で話題になっているらしい。

 そのお触れの内容は――「闘技場施設を持つ全ての領地で武闘大会の新人部門を開催する事」――なんだって。

 

 お触れや武闘大会の詳細な内容について書く事が多いのだけど、それはまだ纏め切れてないから明日にしようと思う。

 とりあえず、これは良い気分転換の種になりそうなので武闘大会に出る準備を進めていこう――

 

 

 

 

To Be Continued…………

 




ステータスが更新されました――――

名称:【金土銀灰 カナヤマヒコ】
<マスター>:コテツ
TYPE:キャッスル
能力特性:鉱物生成&??
到達形態:Ⅱ
スキル:《鉱物現出》《魔力供給》
モチーフ:日本神話における鉱山の神、“金山彦神”
紋章:鉱石が突き出た様な山
備考:
 《鉱物現出》によってキャッスル内部にランダムに鉱石や岩石、宝石を生成するキャッスル。基本的にクールタイムによって連発はできないが、《魔力供給》によって自分のHPSPMPやアイテム(リソース)を捧げる事によってクールタイムを短くしたり一定時間の間生成される鉱物のランクを引き上げる事ができる。
 なお、採掘は自前で行わなければならない為、むしろ逆に【採掘師】や【採取師】のジョブに就けば更に効率的に鉱石を集める事も可能となるらしい。


何故ストーリー的には軽く流しても良さそうな前半部分をノリノリで書いてしまったのか……業が深い(自分の

 そして、前話で詳細出したばかりなのにエンブリオ進化。早くない……?と作者も思ったのですが日記形式でやってるから時系列的にこれでも多分遅い方という現実に泣きたくなってきますね。もっと上手く小説を書きたーい。
 はい、ではそんな訳で次回から武闘祭新人部門に向けてストーリーが展開される筈です。優勝目指して頑張ってくれるでしょう!
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