無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:やりたい放題(いつも通り)のジーニアス

分割分後編です!
それでは本編をどうぞ!


第五十話 その名の所以は

□功刀領・街中 【剣鬼】ジーニアス

 

 

 

『まずは、第一段階――行くよ、リン!』

『あいあいさー!』

 

 リンに通信魔法でそう声を掛ける傍らで――僕の方も()()()を欠かさない。

 多重に作られた数多の影分身達を使い、手に持った武器の数々で不動さんに襲い掛かるのだ。 

 

 紫電(【エレメンタルブレイド】)が閃き、猛火(【フラムウェイブ】)が走る。

 大剣(【ジャイアントバスター】)が地を砕き、その隙を突いて第一次影分身の持つ本物の白銀の斧(【ミスリルアックス】)が背後から――【ミスリルアックス】ごと左右に断ち割られ霧散する。

 しかし、その一太刀の間にも何本もの鋼糸(【ミスリル鋼線】)が肌を削り移動を阻害し、銃弾と魔法が数十数百発も乱れ飛び足を止める事を許さない。

 その銃弾の中のどれが本物か、彼のENDをも貫く芸当ができる物なのか、判別が付かないからだ。

 

 しかし、回避の為に一瞬の跳躍の後に――僅かに、ほんの僅かだけその動きが鈍る。

 【退魔師】の《退魔封印》、【陰陽師】の《鬼門封じ》、【結界術師】の《束縛結界》の重ね掛けだ。

 流石に影分身のそれらとは重複しない為に本体で可能な限りのMPを使って行使しても、僅かにステータスを下げるのが関の山だ。

 

 ……まぁ、どれも下級職のスキルなのだから、僅かだけでも鈍らせられたならば十分という物だよね。

 そして、武器攻撃によるダメージも、最もステータスが高い第一次影分身に、本物の武器を持たせて襲い掛かって尚――当然の如くダメージは入らない。

 不動さんの高過ぎるENDを相手にしては、影分身で行使する《ハイブリッド・バレット》ではどう足掻いても薄皮一枚傷つけるのが精々。

 

 

 当然ながら、こんな事をいくら繰り返したって、ちょっとした時間稼ぎにしかなりはしない。

 既に【魂捧】に操られた不動さんだって気付いているだろう、影分身は幾ら数が多かろうが全く脅威にならず、と。

 

 それは、ある意味で正しい。

 僕の《ハイブリッド・バレット》を含む幾つもの攻撃手段は、基本的に僕本人のステータス、もっと言うと【アダムカドモン】の基礎能力の高さが基にした物達だ。

 特に攻撃威力に直結するMPとSTRとAGI。

 他の<マスター>と比較しても尚平均以上のこれらのステータスに僕は常に助けられており――つまり、それが非常に低くなっている影分身は()()()()()脅威には成り得ないのである。

 

 だから、不動さんが次に取る行動は当然――影分身達を無視して、何らかの手段によって僕の本体を探し出し、殺す事だ。

 本人が持つ直感を頼りに探し出すのか?

 それとも【斥候】や【冒険家】みたいな索敵系統のスキルを所持しているのか?

 はたまた神通力でそういう事が出来る可能性だってある。……いやまぁ、今まで使ってきてない以上可能性は低いけども。

 

 だけど、どれにしたって実際僕としてはたまった物ではない。うん本当に本体が弱点だから当然だね!

 最低でもあの《荒魂》の効果時間が切れるまでは、僕としては不動さんには影分身達に集中して貰いたい所だ。

 

 

 ――だから。

 

『いつでもおっけー! ――かがやきよ』

 

「「「――輝きよ!」」」

 

 

 切り札の一つをここで開帳する。

 それは、上級魔法相当の光魔法を使用できる僕のリン(従属モンスター)を基点とした――()()()()

 

 

『ほしぼしのかがやき、よぞらをてらすもの』

「「「空を染める一条の光芒、闇を晴らす救いの光輝」」」

 

 魔法を構成する術式のパーツ(素材)を分解、見分し……計200枚の【符】に分割して魔力(MP)を込める。

 そして、屋根の上などに退避した100を越える僕自身の影分身によってそれを自身とリンの自力の魔力(MP)で以て組み上げる――

 

『だいちにふるは、あかるいひかり』

「「「地に立つ敵撃つ光の矢よ――!」」」

 

 

 その一度の魔法に込められた魔力(MP)の総計は、数字にして約50万程。

 《詠唱》に、数多の光魔法スキルによって支え、形作られた――極光の光線。

 

 遥か上空にて、《インビジビリティ(不可視化)》の魔法によって隠れていたリンが形作る光球が――膨れ上がる!

 

『「「「星光(スター・ライト)」」」』

 

 

 放たれるのは――まさしく()()の超級攻撃魔法。

 触れた相手を溶断する、一条の光が放たれた――!

 

 

 

『――――シィァ――ッ!!』

 

 

 ――しかし。

 胴体を狙ったその光芒は……辛くも不動さんには命中しない。

 極光の光線が発射される一瞬前に形成された光球を目視した不動さんにより……()()()()()()()()()()()()()()で横跳びに回避されてしまう。

 それでも、流石は光速と言った所か脇腹を軽く抉りはした物の……当然ながら重傷には程遠いダメージだ。

 

 

 ――これだから天地のティアンの人達はっ!? 勘が良すぎるんだよっ!

 ()()()()()()()()とは言え、実際に切り札をあそこまで綺麗に避けられると、流石の僕も冷静では居たくなくなる。

 

 あれ一発分の【符】を用意するのに、どれだけのMPと時間と霊紙を費やしたのかを考えれば、それも仕方ない。仕方ないっ!

 しかも、切り札というのも全く嘘ではなく、用意していたのは先の一発だけだったのだ――本来であればそれで十分すぎる筈だったし、コストや手間の面からも一度分だけで妥協したのは僕自身ではあるのだけど。

 

 それにしても……これで、《ハイブリッド・バレット》の限界も併せて、いよいよ後が無くなってきた。

 切り札をも費やして、成果は脇腹の傷一つのみ。

 

 

 

 ――十分だ。

 

 これで、今の一撃で、不動さんは僕を――いや、()()()()()を無視できなくなる。

 本当は今の一撃をもう一度行使する事はできなくても、相手にはそれは分からない。

 実際、本体である僕かリンが基点になれば強力な上級広域攻撃魔法レベルなら再現は出来る()だからあながち的外れでもないしね。

 ……まぁ、リンは直ぐにまた《インビジビリティ》で避難させているし、僕だってMPの消費は抑えたいからしないんだけど。

 

 それでも……そう、それでも不動さんは影分身を狙わざるを得ないだろう。

 ほぼ無尽に湧き出る分身でも……一定以上の数を集めれば、同じ様な事ができる()()しれないのだ。

 

 

 

 

 だけど――そこまでで予想以上に、()()()の消耗が早かった。

 僅かながらも頭痛がして来て、視界の片隅に体調不良を伝える黄緑色のアイコンが点滅する。

 

 ――流石に、ぶっつけ本番で300を越える数の分身を操るのはきっつい! こんな事ならもっと練習しておけば良かった……っ。

 ――《星光》も、理論上は今の半分くらいの時間で撃てた筈なのに――!

 

 ……そう後悔する物の、それは後の祭りという物だ。

 禁じ手とし、決闘でも使わない秘密兵器として可能な事を確かめた後は練習もせずにいたのは僕自身だし、そもそもこんな目立つ技を人目に隠れて使える場所なんてそれこそ狩り場の奥底へ潜らなければありはしない。

 この技を使うかもしれないと考えて不動さんとの戦いをこんな遠くまで誘導したのもその関係であったし――

 

 そして、更にただ自身の分身体をマニュアル操作してぶつけているだけという訳でもなく。

 各々の分身体で異なる所持アイテムの管理や分身体からの【符】による魔法の発動、弾丸や魔法の弾幕を考えて軌道や他の白兵戦を仕掛ける分身体の動きを調整。

 白兵戦を行う分身体それぞれの異なる武器に合わせた動き方の変化にそれぞれの分身体が他の人が使う影分身とは違いスキルを十全に使用できる為、それらも併せて演算していかなければならない。

 先の《星光》に至っては【魔術師】ギルドにあった資料を基に実験感覚で作った物の延長線上。本当はもっと何度も何度も練習しておかなければ十全に発動できないかもしれなかった物だ。

 リンには魔力の変換と術式の“器”に専念して貰い、従属モンスターに詳細に命令し行動させる【従魔師】のジョブスキル、《従属命令》を精密に精密に精密に――影分身すべての操作と共に術の構築・制御を実行。

 天才の僕でなければ構築か制御に失敗してリンごと爆散していたかもしれない荒業だった。

 

 ……いくら才持つ者(ハイエンド)であっても当然の如く個人として、限界はある。

 事前に練習していれば、きっとまだまだ余裕があった筈だと後悔した所で……遅い。

 きっと、それならばこの何倍もの時間を稼いで《荒魂》の効果時間が切れるのを待てたし、相手の消耗も誘えた筈だけれど……

 

 

 ――それでも、弱音は言っていられない。

 

 

 

『第二段階――今』

 

 目に見えない、しかし極大の神通力に50体ほどの影分身がまとめて磨り潰されたのを意に介さず、八方に散らばった第二次影分身達が持つ【ヘビィデリンジャー】(影分身)から弾丸が発射される。

 八方から撃つ程度では、それまでの銃弾と同じ様に回避されるが――それで問題ない。

 

 ――《フラッシュ・バレット》

 

 徹甲榴弾ではなく、閃光弾。それもドライフ等で開発されているそれではなく――光属性魔法の《フラッシュ・バン》。

 それを極限まで()()させ、一定時間の【盲目】どころか【失明】を引き起こせるまでに弄った(改造した)その魔法を込めた【ジェム】を弾丸状に加工した改造品。

 随分コテツに無茶を言って作って貰った数の限られたそれを、ここで使い尽くす。

 

 それでも尚――超級職の不動さんは、数秒足らずの超短時間、【盲目】になるに留まる。

 

 僕は、それを確認した直後に後方から不動さんの頭部に目掛けて《ハイブリッド・バレット》を撃った――

 

 

 

 そして――その《ハイブリッド・バレット》の徹甲榴弾は、直後に不動さんの全身から放たれた渾身の神通力(魔力)によって、着弾の数メテル前で炸裂する。

 目が見えないから、素直に攻撃を受けるしかない?

 ……当然、そんな訳がある筈がない!

 全周の防御や攻撃によって迎撃が可能ならば隙を埋める為にしない筈がないし、視力を失ったとしても動き続けるだけで不動さんのAGIなら回避の目は十分以上にあったのだ。

 同時に、不動さんがこちらに振り向き――《隠行の術》で気配を全く感じさせていない筈の僕の方へ、全速力で向かってくる!

 気配が漏れていたのだ――――必殺の機会を逸した僕を()()に来たのだ――!!

 

 

 

 

 

 勿論、そこまで僕の作戦だったのだけど。

 

 当然、罠を張るよね。

 技を磨いて、幾つもの策を練り、何重にも罠を張って、隠していた切り札をも何個も用いて――勝つ為に、全力で、だ。

 だって、相手は不動さんだよ?

 超級職、圧倒的なステータス差と合計レベル差と技量差を持つ……僕の()()――だった人だ。

 切磋琢磨していた他の<マスター>達とも、未だ勝ち目が見出せていないあの〈UBM〉とも違う。

 

 間違いなく僕の格上で――そして、様々な要因が重なった今、僕が()()()()()()()()()相手だ。

 ならば……負けてられない。負けられる筈がないんだよね絶対に。僕として……()()()()()()()()

 作戦としての時間稼ぎは既に完遂している様な物だけど――それ以上に、僕のリベンジの戦いとして。

 明確に格上だったカシミヤとの戦いとも似た、僕の()()を証明する為の儀式として……!

 

 だから。

 

 

 

『悪いけど――勝たせて貰うよ』

 

 

『GRRRRRRUUUUAAAAAAAAAAAAAAAA――――――!!!!!』

 

 

 《ドラゴンロアー(竜の咆哮)》。

 一定以上に成長した竜種が習得するスキルの一つであり、その名の通り魔力を乗せた咆哮を発し相手を威嚇する為のモノ(スキル)だ。

 

 だが、ただの威嚇と侮るなかれ。

 竜種――ドラゴン族は、この世界における最強種たる古龍の流れを継ぐ者達。

 殆どの場合生まれながらにして生態系の頂点に立つ種族――種族としての最強種であると言うのは、現代であっても変わりはしない。

 その竜種が、魔力を乗せてスキルとして放つ咆哮は、一人前の戦士だろうと【恐怖】で竦み上がり、上位の竜であれば相手の魂すら砕くと伝えられる程だ。

 

 そして――その咆哮を、意識の外から不意打ち気味に増幅させて直撃させればどうなる?

 

 遠方に《喚起》したイグニスに付けた第二次影分身から――《ウィンドボイス(彼方よりの声)》によって、正真正銘遥か彼方より声を届けさせ。

 一時的に視力を失い、直感や残りの数少ない感覚――特に、視力を除いて最も情報量が多いとされる聴覚を用いている不動さんに。

 ――僕式の、《ウィンドボイス》から()()()《七色の声》で咆哮の声量を何倍にも増幅する――!!

 

 自分の周囲のみ、《サイレンス(無音空間)》を用いて――この罠を仕掛ける。

 不動さんを怯ませる為に、一瞬でも意識を逸らさせる為に。

 ……そして、僅かでも同じ精神系の効果である【魂捧】を揺らがす為に。

 

 その効果があったかどうかは分からない。

 不動さんの足は一瞬たりとも止まりはしなかったから。

 

 ――僕も、次の手を打つのに行動を止めはしなかったから。

 漲る力も、意思も、輝きも……ただ一刀の元に斬り伏せんと迫る不動さんを前にして。

 

 

 

 僕は()()()()()

 

 未だに光がそこらで煌めき、咆哮で周囲の空気が震えている中で――気配も、姿も、まるで幻であったかの様に。

 しかし、未だ【盲目】が解けていない不動さんにはそんな事は関係ない。

 気配が消えようが、先程一瞬漏れていた気配のあった場所を、超音速の4倍以上の速度を持って叩き切るのみ――!!

 

 最も、それは身代わりの様に置いた、影分身の一体を斬り捨てるに留まる。

 

 その懐に、姿を消した僕が――僕が持つ最も攻撃力が高い武器、【十六夜】を構えた僕が居るとも知らずに。

 

 

 

 

 ――――《無影一閃》

 

 そして。

 不動さん自身の速度と、僕の加速による多重の加速によって衝突の威力を極限まで強化された一太刀が。

 

 不動さんの胴体を深々と斬り裂いた――――――――

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 ――――かに見えた。

 

 

『―――――ァッ!!!』

 

 僕の方にも《居合い》や《無影一閃》によるAGIの強化が掛かっていたとはいえ、それでも尚AGIは《荒魂》の不動さんの方が上。

 だからだろうか。不動さんは太刀が身体を斬り裂く直前、倒れ込む様に無理矢理身体を捻り体勢を崩して致命傷を避け……僕の必殺の太刀は不動さんの左腕を半ばから斬り飛ばす事となった。

 

 左腕を失い、その体勢のまま不動さんは勢いよく地面に倒れ伏す。

 

 

 

「あ、危なかったぁ……っ!?」

 

 斬った直後、数歩下がってから……《無影一閃》、いや《シャドウストーク》を解除し、安堵の溜息を吐く。

 数多くの分身体を操りながら本体で不動さんと斬り結ぶのはかなりの困難を予想していたが――多くの保険の甲斐もあり、どうにか勝利を得る事が出来た様だ。

 

 ギリギリだった。

 ……本当に、割とギリギリだったのだ。

 大見得を切った挙句に不動さんのステータス(主にEND)が厄介過ぎて、自身の多大な消耗と危ない橋を渡り。

 その上で数多くの消耗品を使いまくって、リンとイグニスを戦場に出して危険に晒して、ついでにエンブリオが進化してステータスが上がって尚――紙一重の勝利だった。

 

 不動さん自身の経験や能力により《無影一閃》の気配隠蔽が察知される可能性や、身代わりの影分身を斬った直後に再度の全身からの神通力の放出。

 あるいは相手のAGIやその強化がもっと高ければ、必殺の一太刀をも避けられたかもしれない……それを防ぐ為に最も避け難い胴部を狙ったのだが。

 

 

「だけど――それでも、勝ちは勝ちだよね。うん」

 

 そう、勝ったのだ。

 最初は、為す術もなく負けていたあの不動さんに。

 様々な状況が味方したとはいえ――勝利できたのだ。

 それも、ある種幸運にも、致命傷を負わせずに済む方向で。

 

 ……《生体探査陣》で調べてみた所、あっち(本隊)の方はまだ決着が着いていない所か、何人もやられている大苦戦状態みたいだし、僕も早く援軍に行こうと思ってたからね。

 だから、殺さずに済んで――

 

 

 

 そう思い、不動さんの方を見た時――目を疑った。

 

 

 右肩と右腕から肉が弾け、骨が見えている有り様で、左腕は半ばから亡い状態。

 抉られた脇腹からは他の攻撃の影響もあって《星光》を食らった時よりも傷が拡大している程。

 全身には避け切れぬ弾丸や攻撃魔法が着弾した事によりダメージこそ少ない物のズタボロの身体で。

 

 両腕が使えず、最早戦闘能力なんて殆どない筈なのに――使い物にならなくなった右腕を支えにして、不動さんが起き上がっている姿を目にしたから。

 

 

 《看破》をしてみても――【魂捧】の状態に変わりはない。

 

 つまり………不動さんは、まだまだ()()つもりだ、という事だ。

 

 うっそでしょ……今ので【気絶】しないの!?

 やっぱり、ENDの差って奴――と、考えている場合では、ない!

 

 連発された神通力を、残っていた影分身で身代わり()にさせて凌ぎながら――現状を考察する。

 

 

 ――どうやら、《荒魂》の効果は今の一合辺りを境に切れたみたいだけども……それでも、不動さんのMPはまだまだ残っている。

 ――……そして、数多の傷痍系状態異常によってHPは減り続けている状態なのに。

 ――戦う手段なんてもう白兵戦の補助用の筈の神通力しかない筈なのに、それでも向かってくる。

 ――不動さんのHPは【鬼神武者】のジョブスキルのお陰もあってまだ尽きる気配はないけれど――それでも、僕だって、そんなに時間を掛けたくは……ない。

 

 

 

 戦う前は、確かに覚悟をしていた――と、そう思っていたのだ。

 何度も、何度もその時を想像していたし、実際戦っている場面でも上手くやっていたと思う。

 

 故に当然、こういう覚悟だってしていたとも……不動さんが死ぬまで戦い続けるという、その可能性を。

 

 

「…………」

 

 再び連発された神通力の攻撃を、自身のAGIで左右にステップして回避する。

 

 ……操られたままの不動さんでは直線的に神通力の攻撃を繰り返すしかない。

 自分のAGIよりも、圧倒的に劣る速度のその攻撃しか既に攻撃手段は残っていないのだ。

 

 あるいは……己のHPとEND、そしてAGIを活かして体当たりでも僕を殺せるかもしれない。

 流石に、両腕があんな状態でバランスが取れないであろう不動さんの体当たりに当たる僕ではないけれど。

 それでも、【魂捧】状態の不動さんは死ぬまでそれを続けるだろう。

 【ウォルヤファ】の所へ向かっても、自身の身体を犠牲にしてでも結界を突破し、僕を追ってくる事だろう。

 腕と同じ様に足を斬ればそうは行かないかもしれないが――そこまですれば、【鬼神武者】である不動さんと言えど死の足音がやってくるのではないだろうか。

 

 その様子は、思考は――酷く僕を苛つかせた。

 

 

 それは……そんな様を見せても尚それを止めない、不動さんを?

 それとも、不動さんをその傷を負わせた張本人である自分自身がそんな感傷を抱く事を?

 

 

 ……どちらも違う。

 

 不動さんを斬った事は、そうしなければ勝てなかったし、そうした事に後悔なんてない。

 仮にあったとしても……僕ならば割り切れるし乗り越えられる筈だ。

 

 

 だから、その原因は――【ウォルヤファ】だ。

 不動さんをこんな不甲斐ない状態にし、そしてこの状況と相成ったその元凶。

 

 

 

 

 

 ――だから、()()()()()()

 

 

 ムカつく、苛つく、胸がざわざわする。

 【ウォルヤファ】の思い通りに、命令通りに不動さんが死ぬまで戦うと言うのが()()()()()()のだ。

 

 ――だから、それを覆そう。

 

 大丈夫だ、できる筈だ。

 神話級の〈UBM〉の固有スキルによる状態異常を解除する――なんて無茶は言わない。

 ただ不動さんが無事で、それでいて僕を追って来れない程度に身動き出来ない様にするだけの簡単な仕事だ。

 

 僕の力を――僕の才能を持ってすれば簡単な事だ。

 

 何故なら、僕は造られた天才(デザイナーベビー)……ジーニアスなのだから。

 

 

 そう、その名を――ジーニアス(才ある者)の名を付けた者として。

 造られた完璧な存在なのだから、出来ぬ事などありはしないとそう自分に言い聞かせるのだ。

 天才である僕だから、()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()、その筈だと。

 

 

 

 ――――それこそが彼の、そして()()()()の名前なのだから。

 

 

 

 

「――《天上の意を叶える者(アダムカドモン)》」

 

 

 

 そうして、神の似姿(アダムカドモン)の名を持つエンブリオが、その本領(必殺スキル)を発揮した――

 

 

 

To Be Continued…………

 




ステータスが更新されました――――

《無影一閃》:アクティブスキル
 ジーニアスが作成したオリジナルスキル。
 その正体は複数のスキルの並列行使によるスキルの昇華である。
 【影】の奥義にして隠蔽隠行行動の《シャドウストーク》に自身のAGIを強化して攻撃する攻撃スキルである《閃》。
 更に風属性魔法スキルによる加速を加え、《シャドウストーク》により気配と姿を消しながらのAGIを倍化して放つ攻撃スキルとなった。

 一見地味だがジーニアスの場合これで接近攻撃を行う事で自動的に《居合い》で更にAGIが倍になり、更にその4倍化したAGIにより《剣速徹し》が乗った、気配もなく影すら見えぬ斬撃になる。
 実質ほぼほぼ必殺剣。



 《天上の意を叶える者(アダムカドモン)》:??スキル
 【至光天 アダムカドモン】の必殺スキル。
 詳細不明。


 ……はい、不動さんとの決着編、最後までご覧いただきありがとうございました!
 ようやく勝利&進化!  ……なのですが。
 【アダムカドモン】の必殺スキルは今暫くお預けになります。申し訳ありません……!
 色々と出せない事情がありまして、ゴメンナサイ……

 それはそれとして、これで今章も大詰めです!
 残った結果はさてはて……
 次話も見て頂ければ幸いです!
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