無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:人工天災児からは逃げられない!

短m……別に短くも無かった
それでは本編をどうぞ!


第五十八話 鍛冶の都・賢鏡

□<天地・将都>鍛冶屋・うぃふぃぬ 【刀匠(ブレイドマスター)】コテツ

 

 

 将都。

 

 それは、【征夷大将軍】擁する天地の政の中核となる領地――即ち、天地の中で最大の広大さを誇る領地という事でもある。

 当代【征夷大将軍】は<マスター>急増後からは未だ代替わりは起きていない事もあり、ティアンの実力が高い天地の国の中でも特にその傾向が強く、神造ダンジョンを擁しているにも関わらず<マスター>の定着率が高くないと言うのが最近の悩み事なのだとか。

 そんな将都であるが、勿論他にも掘り下げるべき所は沢山あるが――今回は関係ない為、一先ず置いておくとする。

 

 今回関係ある事は、そんな将都の一側面。

 そう――将都の鍛冶屋事情について、だ。

 

 【征夷大将軍】が天地のトップである、という物は名目上の物であり、実際は水面下や戦場で常に内乱を繰り広げられ何時代替わりしてもおかしくない物である――という物は周知の事実であるが、それでもトップはトップなのだ。

 相応の権力は与えられており、その使い道の一つと言うのが、鍛冶屋の招聘なのである。

 

 武具と言うのは戦いにおいて非常に重要だ。

 国土内における才能として、【鍛冶師】系統の才能を持つ者が中央大陸よりも多いと言う事を差し引いても、常に何らかの形で戦を続け、己を高める修羅の集うこの島国において、上質な武器という物はどんな宝よりも有難がられる物であった。

 自らの命を預ける相棒であり、己の武を存分に発揮させる得物でもあり、自身で振るえなくなったとしても弟子や子孫に受け継がせられる事もある、正に宝物なのであった。

 

 そして、当然ながらその様な武具を鍛えられる鍛冶師の存在もまた、国の宝と言って差し支えない。

 この天地であれば、上級職の鍛冶師でも有力な者も数多居るが――やはり、特にその技巧が抜きん出ている者は居る。

 

 一つ目は、超級職や特典武具に由来する者。

 【匠神(ザ・クラフト)】や【鍛冶王(キング・オブ・ブラックスミス)】に代表される生産系超級職や、数こそ多くない物の、生産に関わる特典武具を手に入れた幸運なる者。

 まだ<マスター>達が現れてからそこまで日が経っていない事もあり、それらの殆どはティアンであり、特有の本人のセンススキル(技術力)の高さも相まって安定して非常に高品質な武具を鍛える事で知られている。

 

 二つ目は、――その、まだ急増し始めて日が浅い筈の<マスター>達だ。

 その際限のない全職業に対する才能や、エンブリオによる超常的な力は特筆すべき点であり、特に生産に特化した上級エンブリオを用いて作成されるアイテムは時に超級職のティアンの作品に届く物も出来得る程の代物だ。

 ……そして、そんな各々違うエンブリオを持った<マスター>達が、各国に数万以上の数で現れているのだ。

 勿論、上級エンブリオに進化する者、生産に特化したエンブリオになる者はその中の極一部であるのだが、母数が大きいだけにその存在は同業者(生産職)の者であれば決して無視できる物では無い。

 ……だからと言って、不死身の<マスター>を相手に何ができるという訳ではないが。

 

 そして、三つ目。

 それは、ティアンの技巧者でも、超常のエンブリオ持つ<マスター>でもない、例外の事だ。

 例外であるのだから、本来はそんな存在が居ないと言う事も十分にあり得るのだが――今の天地には、その例外に該当する者が、一体居る。

 

 そう、それが今、一人の<マスター>――コテツが訪れている鍛冶屋・うぃふぃぬの店主である妙齢の女性。

 

 ――――【鍛竜王 ドラグフォージ】、神話級〈UBM〉その人なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 将都の大通りに位置する、しかし誰も客の入ってこない鍛冶屋の、更に奥の部屋。

 愛弟子も仲介人も廃し、そこで二人の男女が行おうとしていたのは……紛うことなき()()であった。

 

「――やあ、キミはお初のお客さんだね? 生憎とだけど私の腕は安くはないよ?」

「承知してますとも。勿論、その対価も用意しています」

 

 その片方は、この鍛冶屋の店主にして、神話級〈UBM〉でありながら《人化》し、人の業(鍛冶)を極めた奇特な竜。

 【鍛竜王 ドラグフォージ】――センススキルやジョブスキルの補助も得られぬまま、他の手段で超級職が鍛える武具に並び立つ程の武具を鍛える、天地でも一目置かれる()だ。

 一見はただの気の良い女性にしか見えないが、意識して観れば隠しても居ないその〈UBM〉としての名が見れるし、そのステータスが神話級の水準を越えているというただそれだけで十分災厄に値する存在である。

 

 そして、彼女が優れているのはただ神話級としてのステータスと、鍛え続けてきたその鍛冶の腕だけでは、ない。

 

「へぇ、自信満々なんだ。――流石、この天地の人をも買収しちゃう様な子は言う事が違うね」

 

 それは――長年の経験則と観察眼。

 遥か昔から生きる超常の長命種として、鍛冶の腕以上に磨き抜かれた“それ”は最早上級職のセンススキルを越える精度で物事を把握する事を可能としていた。

 

 ……尤も、今回の件については非常に簡単な話なのだが。

 

「ええ、そうですね。――できれば、貴方もそれで解決出来たのなら幸いなんですが?」

「あっはっは。言うねえ! それは、内容次第、って奴かな?」

 

 対するもう一人の男は、天地の<マスター>である装備にも外見にも特に特徴のない青年――コテツ。

 【ドラグフォージ】と比べれば余りにも戦闘能力も、鍛冶の腕も貧弱である一般<マスター>だ。

 

 しかし、彼には――否、<マスター>にはそれらの条理を覆す力が、エンブリオの固有スキルがある。

 つまりは、そういう事だ。

 

 

 息子の様に可愛がっている少年には決して見せない様な悪どい笑顔を浮かべながらアイテムボックスから出したのは――

 

 

「――これは驚いた! これだけ確保するのはちょーっと簡単じゃない筈だけれども」

「そうでしょうね。ですが、それが()()()ですので」

 

 (インゴット)として積まれた、いくつもの純赤色の【ヒヒイロカネ(神話級金属)】。

 その量は全身鎧すら作成可能な程――実に100㎏は優に超える程の驚くべき総量だ。

 

 

 神話級金属。

 それは、武具を鍛える上で一部の特殊な金属を除けば世界中で見ても最上級の金属だ。

 カンストした熟練の【高位錬金術師】でも僅かな量の作成すら容易ではなく、自然産出量も一部の地域で少量採れるのみ。

 それで鍛えた武具を持っている、というそれだけ大きなステータスになる程の代物だ。

 

 【ドラグフォージ】も最上級の鍛冶師の端くれとして、その産出の動向については常にアンテナを張っているつもりではあった。

 しかし、彼女が知るこの量の【ヒヒイロカネ】を何処か<マスター>が手に入れた所か、一度に産出された記録すらない。

 ならば――

 

「ああ、ちなみにこれはちょっとしたお気持ちのつもりです。――()()の為の、ね」

「……なるほど? そう来るんだ。……確かに、それは私としてもちょっと惹かれるモノがあるかなぁ」

 

 言葉少なく分かり合う二人。

 それは、即ち「今後も賄賂(希少鉱石)を送るから、()()()()でいて貰いたい」という、誘い。

 

 ……【ドラグフォージ】は、考える。

 これだけの神話級金属を用意したのは――間違いなく彼の劣化“化身”(エンブリオ)による物。

 己の嗅覚が、間違いなくこれは自然の産物ではないと告げている。そして、彼のジョブも【錬金術師】系統を習得している様子がない事からも確定だろう。

 他の知り合いとは違い、彼女自身は劣化“化身”に対して隔意はない。

 しかし、彼のこれまでのこの手腕と、この短時間の間で測った事からすると――恐らく、彼も何らかの集団に属している一員でしかなく、この“契約”もそれに関係してくるであろうも察した。

 

「……ちなみに、他の鉱石はどうなのかな? 私はこれでもグルメなんだよ」

「一通りはありますし、()()です。言ってくだされば、特殊な物であろうとも」

 

 と、他にも幾つか質問をしながらもそのメリットとデメリットについて考えてみる。

 彼女自身にとって、どう選ぶのが最善か、熟考を――

 

「――ならありがたい。とりあえずお試しで暫く付き合ってあげようじゃないか!」

 

 ――別にせず、気楽に即答するのであった。 

 

 

「――――良いんですか? 正直、もう少し積む用意はあったのですが……」

 

 困惑しながら、コテツはそう返した。

 それも当然だ。相手はこの修羅の国でも最上位の鍛冶師の一人。

 その重要度は重々承知しており、今回の交渉にも彼としてはかなり気合いを入れて臨んだつもりだったのだから。

 ……追加で用意してあるつもりだった同量の【ヒヒイロカネ】は虎の子でもあったので、これを使わないで済んだのは助かったのは事実ではあるが。

 

「良いの良いの。いや、私もね、いろいろ事情はあるんだけど――一番は、君が“鍛冶師”だったから、かな」

「……それが、何か?」

 

 【鍛冶師】だったから、と言われてもやはりその意味はよく分からない。

 確かにコテツは上級職も【高位鍛冶師】と【刀匠】で埋めている、生粋の鍛冶師ビルドであり、この世界ではそれを生業としている。

 事前に入手していた情報では、彼女は既に弟子を数名抱えており、別に新たな弟子が必要と言う訳でもない筈だ。

 競合――になる実力こそない、木っ端の一鍛冶師なのだ。

 故に、それがこの交渉に何の意味があるのか――

 

 

「分からないかな? つまり、キミ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()なんて思っている欲張りさんなんでしょう?」

「なッ――!?」

 

 まるで子供に言い聞かせる様なその物言い。

 しかし、それが当たっていたのかそうではないのか、彼も一瞬狼狽し――直ぐに平静を取り戻す。

 ともあれ、此処に交渉は成立したのだ。

 今はそれで良しと――

 

「――それじゃ、依頼も請けてあげるけどちゃんと自分でも鍛えられる様に実力の方も磨かなきゃだね。頑張ってくれたまえ弟子見習い君!」

「……えっ」

 

 

 訂正。

 

 やはり、一線を画した者というのはそう簡単に思い通りに動いてはくれないと言う事を、改めて実感するコテツであった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

1月7日(木)

 今日から漸く、漸く<絡繰り屋敷・忍>に突入――!

 いやぁ、【死毒純竜(デッドリィポイズン・ドラゴン)】とその後始末は強敵でしたね……っとそれはともかく。

 一応復興の為の協力なのに支援少ないよ泰央さんー!

 向こうも向こうで凄い修羅場みたいだから仕方ないけどもっ。

 あれなら例の黒幕の所在が判明する日も近い――と、いいんだけどなーって。

 

 さて、そんな訳で散々待たされた<絡繰り屋敷・忍>の攻略だね。

 昨日に続いてジェーンさんがゴネていたけど、今回のは先々期文明の遺跡でもない人造の代物だから難易度はそんな高くないと思うから、と説得して結局一緒に入る事にしたのだけど――

 

 先に結論だけ言うと全くそんな事はなかったね! 普通に難易度かなり高かったね!!

 

 事前に概要だけは聞いていたんだけど、予想以上のあまりのトラップハウスっぷりに僕もカシミヤも脱帽せざるを得なかったからね……

 明らかに罠の質と量、そしていやらしさに関しては神造ダンジョンである<修羅の奈落>を上回る程とか、ヤバくない……?

 まぁ、当然これの作成に協力した朧さんや泰央さん達も天地の神造ダンジョンである<修羅の奈落>で修業して罠についての造詣を深めて、その上で彼らなりに改良したり、よりされたくない事を罠に盛り込んだりしていったんだろうねって容易に想像がつくよ……

 ある意味で人間の悪意が牙を剥く自然ダンジョンだと言っても過言ではないね!

 特に罠の隠蔽なんかが凄くて、科学的に隠したり、魔法で隠されてたり、技術で隠されてたり……僕の探知系の魔法やカシミヤの《殺刃圏》だけじゃ、かなり精度を上げて探さないと見破るのが難しいレベルの物もあったりして、しかもそれが大体致命的な罠(デストラップ)だったりするんだから困り物。

 ……うん、やっぱり最後に頼れるのは自分の直感だよね!

 というか、多分それ(直感)で行ける僕ら二人がちょっとアレなんだというのは言わぬが華という物。

 ある程度の実力はあるジェーンさん(ある程度とは言っても天地の平均よりは少し下かな?)も早々にトラップに引っかかって死にかけて戦力外になる羽目になってたし……うん、やっぱり難易度高かったね!

 あれほど僕かカシミヤが通った跡を歩いてって言ったのにー……

 

 本当に予想以上、期待以上の難易度。

 最近行った自然ダンジョンでは相手(モンスター)の実力やスキルこそ厄介だったけど、ここみたいな緊張感を味わうってのはちょっとなかったからね。

 まぁ、罠ばかりでモンスターが少なめだから経験値の入りが少ないと言う難点もあるけど――こういう経験も活きて来るという物。

 今回みたいに、ね!

 さて、罠はともかく、モンスターの実力はそこまで高くないから僕らなら三日、いや二日もあれば聞いていた通りの深さなら踏破できるんじゃないかな!

 よし、頑張るぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月8日(金)

 勝った! <絡繰り屋敷・忍>編、完!

 

 ……二回くらい全員揃って死にかけたけどね。

 これだからデストラップダンジョンはっ!

 

 結局後半は危なっかしすぎてリンもイグニスもずっとジュエルの中だったし、ジェーンさんは外で復興の準備している大白宮の人達に合流して貰ってお任せで行動して貰う事になるちょっと無様な有り様だったけど、ギリギリ目標通り三日で攻略完了!

 ……あの屋敷の事だからもしかしたら見つけられなかった隠し部屋とか隠し通路とかがあったかもしれないけど、自然ダンジョンとしての核となるアイテムは回収して届けたんだからダンジョンとしては完全攻略完了ってもんだよ!

 

 いやぁ、それにしても圧殺はやっぱり厳しいね。

 ダンジョンとしての傾向自体は僕らに相性が良かったと思うんだけどなぁ……

 後、道中の雑魚モンスターがそこそこ湧いた後と最後のボス部屋っぽい所で【児雷也】倒した直後ぉ!

 部屋中に劇毒液がぶちまけられるのと同時に今までのモンスターとは桁が違うレベルでスキルが嫌らしい隠行のモンスター複数に不意打ちさせるのは殺意高くない!?

 僕とカシミヤじゃなかったら大体死んでたよねあれ!

 

 ……確か聞いていた話だと、あれは元々修行中の忍者の為の場所だって話だったと思うんだけどー……まぁ防衛機構が働いていたんだよねそうだよねっ。

 それだとしても過剰な殺意だった気もするけど、まぁ天地の大名の作品だしね。

 ――それに、僕やカシミヤは大いに満足させて貰ったからね!

 

 

 さて、<絡繰り屋敷・忍>の攻略を完了して、大白宮に戻って核とかを予定通り泰央さんに渡して依頼(クエスト)完了(クリア)した事だし……ついでとばかりに例の件についても進捗を聞いてみる事にしてみた。

 ……話を聞いてみた所によると、ティアンの術師(陰陽師)達の方はもう大体儀式の準備は出来ていて、後は秘密裡にそれ(察知索敵)に特化したエンブリオの<マスター>を募って一挙に全て丸裸にしてやろうと画策している所なんだとか。

 さっすがー! でいいのかな?

 僕にも手伝える事があれば良かったんだけど、僕だと他の職員さん達みたいに術師の中に混ざるだけしかできないからなぁ……

 僕の【アダムカドモン】は基本的に器用万能、故に特化型の真似事はどうあがいても無理だからね。

 それよりは今まで通り天地のモンスター達を倒して(間引いて)くれていた方が助かるとの事らしい。まぁそりゃそうだよねっ。

 ちょーっと残念だけど、仕方ない……

 

 そういう事で、明日からはまた将都辺りを拠点にして天地北部の自然ダンジョンとかモンスターの巣とかを回ってモンスター狩りに精を出すとしようー!

 ……それと、ついでにカシミヤからの要望で人が居たら対人戦もやりたいな、と。

 年末から組み始めてからそういえば決闘とか練習試合もあまりしてなかったからねー。

 まぁ、先日の件で天地全体の治安も少し悪化してきているし、少し探せば野盗も割と見つけちゃったりするし、そういうのもやっていこうか。

 それがなくても、ノリが良い天地の<マスター>なら大体申し込めば受けてくれるしね!

 二人と行くぶらり斬り捨て御免の旅に、いざ出発――!

 

 

 ……明日からの連休で冬休みも終わりだし、うん。後は悔いが残らない様に準備を確りして待っているのが良いよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月9日(土)

 

 …………!?

 ちょっと凄い事があって今のテンションも凄い事になってるけど、それはともかく今日の日記今日の日記!

 今日は予定通り、また皆である程度の旅支度を整えてからイグニスに乗ってびゅーんって飛んで行って将都付近、天地北方での狩り――

 の、予定だったのだけど早々にジェーンさんがギブアップ。まさかの渾身の拒否。

 なんでも、今までは戦闘なんて最低限しかしていなくて、戦闘する場合も十分なマージン(余裕)を確保してからの戦闘ばかりをしていた為、天地で僕やカシミヤと一緒のペースで狩るのは難しい! との事。

 僕的には十分素質はあると思うんだけどなー……

 まぁ、戦闘を続けるのって何にしても慣れとか適性が必要不可欠だし、ジェーンさんが全力で狩る時は金食い虫だから、そこは仕方ないかなって。

 金が無限に湧いてくるエンブリオがほしーい。僕だってコテツやジェーンさんが羨ましいんだけど……!

 

 そんな訳で、ジェーンさんがそこまで言うのであればと言う事で少し狩り場を変えて将都の冒険者ギルドでも採取依頼や討伐依頼をやれそうなのを片っ端から受けてフィールドに狩りに向かう事に。

 ふふふ、僕とカシミヤの索敵能力に加え、現物が一つでもあれば幾らでも複製できるクロが居ればあの手のクエストはいくらでも達成できるのだー!

 

 ……と、割と楽しく長閑に狩りを楽しんでいたのだけど。

 うん、運が付いてきたと言うべきか付いていなかったと言うべきか。

 僕とカシミヤが求めていた“相手”が向こうからやってきてくれたのだから、運が良かったでいいかな!

 ――そう、そんな時間を過ごしていた僕らの周囲にPKのお出ましだったのだ!

 

 

 ……まぁ、その相手は三度の彼女達(カシミヤの追っかけ)だったんだけど。

 彼女達の執念深さは今更言うに及ばず、だけど人数も実力も十分厄介なんだよねぇ……でも、今のカシミヤを相手にするには少し足らなかったみたい。

 以前と比べてまーた少し人数が増えていたからね、それでも斬り捨てられるカシミヤもカシミヤだけど。

 彼女達も今までの様な奇襲戦法のみに拘らず、戦法を洗練させて奇襲が見破られるのなら、と人数を活かした包囲殲滅に即座に切り替えて打倒しようとしてきたけど――残念ながら(?)及ばず、と。

 判断は悪くないよ判断は。カシミヤ基本的に範囲攻撃とかまるでないしね。

 本来ならかなり厳しい戦いになっていた筈。……先日の戦いの前だったなら、もしかしたら1回デスペナになってたんじゃないかっていうくらいには。

 彼女達も何人かはカンストに達していて実力も連携も実戦経験も十分で、あれなら天地の<マスター>であってもかなりの相手を倒せるんじゃないかってくらい――まぁ、つまり極一部に該当するカシミヤが相手だったというのが一番の難点だったのだけどっ。

 

 今どきのPKとして、彼女達も彼女達で凄く正統派なのは好感が持てるんだけど、まぁ野盗もやっているという噂なので戦利品等は遠慮なく貰っておく事にする。

 臨時収入やったー!

 ……掲示板とか見てるとBPKとかHPKとかSPKとか、殺伐とした報告もちらほらあるからね。

 やっぱりやるなら直接的なPKかせめてMPKまでだよねって。

 

 さて、そんな正統派な彼女達だったけど。

 今回は僕達が勝利して彼女達が敗れ――それで終わりじゃなかったんだよね。

 なんと、その直後にカシミヤに再戦の申し込みと戦利品の買い戻しについて打診のメールがあったんだって!

 ……狙う側と狙われる側なのに何時メールまでする仲になってたの!? 一人で居た時かな!?

 ま、まぁそれはともかく! ちょっと忙しないけどカシミヤも僕も異論はなかったからその申し出は受ける事にした。

 そういう事で、明日は目指すは彼女達が共通のセーブポイントとして設定していた慶都。

 そして、慶都の闘技場で再戦の対人決闘祭りだー!!

 

 まぁ、ジェーンさんは決闘はちょっと……って断られたんだけど、ちぇー。

 

 

 ガチャ:

 D 【アイテムボックス】

 F 【HPポーションLv2】

 S 【水晶之賢鏡】

 

 【水晶之賢鏡】

 『頭部』

 透き通った水晶を素として作られた魔法の片眼鏡(モノクル)

 装備者に明晰な視界と数多の視界を授けると言うある名工の試作品。

 完成品追加予定効果:《視力矯正》《遠視》《透視》

 

・装備補正

 DEX+10%

 MP+10%

 

・装備スキル

 《魔力視》

 《スキル解析》

 《構造解析》

 

 まさかのS! 初めてのSだよ!

 今まで結構な数を回してきたけど、それでもまさか出るとは……これも僕の日ごろの行いのお陰だよね!

 ……まぁ、どう見ても生産型用の装備なんだけども!

 ガチャで出るアイテムってエンブリオとか特典武具と違ってアジャストしない、全くのランダムだからこういう事もあるよね……

 どうしようかな、これ。コテツに上げるのが良いのかなー……?

 

 

 

To Be Continued…………

 




水晶(クリスタル)の石言葉――純粋・明晰・冷静沈着・完璧

ステータスが更新されました――――

BPK:バインド・プレイヤー・キル。
 PKの手法の一つ。何らかの方法で相手を拘束し、システムによる“自害”を強要する殺し方である。
 主に個人生存型で直接殺す事が非常に難しい相手に行われる手段ではあるが、そうでなくとも私怨で行われる場合もある。
 広義では圧倒的実力差により拘束し、性的行為を強要する事もこのBPKに該当すると言われている。
 被害者は“自害”をするか、抜け出す方法を模索するか選ぶ事が可能であるが、これはVRMMOである以上<マスター>であれば誰にも等しくリアルの事情という物はある。
 相手のリアルの時間を最大限浪費させる事に悦を見出したり憎い相手にこれを行うという事も稀にある様だ。
 “自害”であれば戦利品の数も増える為、それを目的に行われる事もあるのだとか。
 ただし、どうしても長期戦になる事も多い為、これを行う側の方こそ多大な時間の余裕を問われるし、時間効率は最悪。
 更に時間経過で相手が抜け出せる可能性や相手側に救出しにきてくれる仲間等の可能性もあり、あまり流行らなかった。

HPK:ハート・プレイヤー・キル。
 PK(?)の手法の一つ。<マスター>のプレイヤー保護機能をすり抜ける形で相手に強大な精神的ショックを与えて<マスター>のリアルにダイレクトアタックを行う殺し方である。
 プレイヤーの保護機能により、痛覚の遮断や精神系状態異常は実際には<マスター>の精神には影響しない物の、それ以外の精神活動については基本的に何の干渉もされていない。
 つまり、ホラー・ゴア・グロテスク・ショッキングな画像、映像、光景やそれら(視覚)以外の方法も用いて相手に徹底的に精神ダメージを与える行い全般がこれであると言える。
 その手法は非常に幅広く、寄生虫のモンスターやエンブリオを相手に寄生させたり、蟲の大群を相手の服の中に潜り込ませて全身を這わせたり、ショッキングな断末魔を聞かせ続けたり、【シュールストレミング】を相手の顔面に投げて破裂させたり――
 専門的な方法によってそれを為す者も居れば精神的ハラスメントを行い続けてそれを為す者も出て来る、<マスター>同士の行いは運営は完全に黙認しているのもあり、一時期は尤も手軽な“<マスター>の殺し方”として<マスター>のみならずティアンでも行う様な者まで出てきた事もあった。
 ……しかし、それを悪戯の様に行いまくる<マスター>が増えて来るのに連れてそれを諫める良識派の<マスター>が出張るのもまた自然な流れであった。
 結局愉快犯達は良識派<マスター>に駆逐される事となり、残った少数のガチHPK勢以外は使う事も少なくなった。

SPK:ソーシャル・プレイヤー・キル。
 PK(?)の手法の一つ。冤罪で相手を監獄に送る非常に被害が大きな殺し方の一つ。
 相手を社会的に殺す。最も手間が掛かる殺し方であるが、その相手側の被害の大きさも相まってこれを狙う者は後を絶たない。
 最も、《真偽判定》のあるこの世界において冤罪で相手を陥れると言うのは非常に難しい。
 ……それ故に、それを完遂させられる者は大いに恐れられるのだが。


 ……はい、今話もご覧いただきありがとうございます!
 神話級金属ドヤァ、の予定でしたが閣下がそんなの鼻で笑える様な超錬金できていたという罠。さす閣!
 結構今章クライマックスが近付いてきている筈なのに全くそんな気がしない今日この頃。
 この後はちゃんと盛り上がる……といいなぁ!

 なんて事を呟きつつ、それでは次話もよろしくお願いします!
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