無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:そうだ、きょうt……大白宮に行こう

前回から少し遅れてしまい申し訳ありませぬ……
それでは、本編をどうぞ!


第六話 大会・初めての臨公

□<犀合山岳地帯> 【退魔師】ジーニアス

 

「――ジーニアス君!そっちに一匹抜けた!お願い!」

「おーらい、見えてるよ!」

 

 パーティ狩りの最中、前衛達と戦っていた鬼族の群れから一匹の【大鬼】がその乱戦の中から抜け出し、後衛――それを守る中衛である僕に向かって駆け寄ってくる。

 前衛の二人と一匹は上手く連携しながら鬼族の群れと戦っているが、流石に数十体もいる鬼族の群れに突っ込めば取りこぼしの一体や二体は出てくる。

 当然、それをさせない為に僕が中衛として配置されていたんだけど。

 

 【大鬼】は【小鬼】と比べて非常に大柄で体格が良く、ステータスも万遍なく上がっている上位種だ。おそらく力任せに前衛の連携を突破してきたのだろう、多少の傷は見えるがその戦意衰えずにこのパーティの後衛、【陰陽師】と【治療師】の二人を狙いに来ている事から知能もそこそこあるのかもしれない。

 防具は初期装備に毛が生えた程度の物しか装備していない典型的な後衛職である二人にこの【大鬼】が襲い掛かればまず間違いなく未だに数多の鬼族と戦っている前衛が駆けつける前にそのHP()を散らす事になるだろう。

 

 

――とは言え、大柄な事しか取り柄がない脳筋の鬼。AGI(素早さ)も低いし、僕としては役割を分担し様々な武具を用いて集団の利を是とする【小鬼】の方が面倒だと思うんだけど。

 

 

 そう考えながら、いつかの再現の様に【大鬼】の隙を突き抜刀でその首を斬る。……《居合い》等の抜刀術系スキルは【退魔師】にはないから形だけにはなるけど。

 しかし、斬り方が甘かったのか、相手のEND(頑丈さ)が予想以上に高かったのか、【大鬼】は首と口から軽く血を吹き出しはしても即死はしない。

 

 

「運の良い奴……いや、悪かったのかな?」

 

 

 だが、即死はせずとも致命部位が損傷した衝撃は変わらない。

 放っておいてもあの傷では数分と持たずに光の塵と化すだろうが――遠慮なくよろけた【大鬼】の首を《斬魔剣》による追撃で刎ね飛ばす。

 それで抜けてきた【大鬼】は今度こそ死に、光の塵へと変わる。

 前衛の方を見やると既に群れにいた残りの【大鬼】も大半が満身創痍で【小鬼】達もそんな【大鬼】を見て戦意を喪失しているか逃げ出しているかしている始末だ。

 あそこでへたり込むくらいなら逃げ出せば良いのに――と、思わないでもないが相手はモンスタ―で僕らは<マスター>。少しでも(経験値)を得る為に中衛の位置から《透魔閃》で逃げ出そうとした【小鬼】から狙って仕留めていく。

 既に大勢が決していたその群れとの戦いはそのまま群れを殲滅して終了した――

 

 

 

 

 

「いや、お願いしてたのは抜けてきた敵の足止めだったんだけど、なんで支援を受けた純前衛よりも早く倒せるのっ!?」

「首狩りショタ、えぐぅい……」

 

 

――何故仲間からそんな風に言われるのか。酷い話もあったもんだと思う。

 

 

 

◇◇◇

 

 

7月22日(水)

 今日は微妙に失敗した……とりあえず、昨日の日記の続きから書いていこう。

 日付が変わったくらいの時間で大白宮に到着した僕らを出迎えたのは、<マスター>でごった返していた慶都と比べられる程の人々の賑わいだった。

 まず驚いたのは人々の熱気とティアンの人達の多様さ……慶都の<マスター>達はちょっと違う意味で異様な多彩さに満ち溢れていたけど(鏡を見て絶叫している<マスター>とか、歩く度に転んでる<マスター>とか、はたまたまともな人型じゃない<マスター>もいたりした)またそれとは違った趣のある“異人”達だ。

 3m近いであろう巨体にモンスターの鬼族の様な角を生やした人、腕や脚の皮膚に若干ながら鱗を携える人、羽を生やしている人もいれば、慶都では見なかった物珍しい装飾品を身に着けている者も多かった。

 そして何よりも慶都と違っていたのは、大半の人が武器を何らかの形で携帯していた事。

 街の特徴か、杖や錫杖を持つ者がいれば儀礼剣を差す人もいる。半分くらいは見せかけ(ハッタリ)な様だけど、やはりこれが中立領との一番の違いだろうと思う。

 見せかけではないと思われる人達は一様に僕達の左手の甲に視線をやっていた。実力者でも<マスター>という存在は無視できないらしい。……どの様にその存在が流布されているのか気になる所ではあるけど、今日の所の本題はそれではない。

 

 本題、それは都の人達の間で最もホットな話題――【征夷大将軍】主催の武闘大会だ。

 公布された情報によると、概要は以下の様になっているらしい。

 

 

開催日:10日後の昼間(リアル時間で7/26)

参加条件:合計レベルが40以上50以下である事。

参加費:参加者一人につき【宝櫃】を一つ。入手手段は問わず。

賞金:各闘技場施設での開催毎に、優勝者に300万リル、準優勝者に50万リル、そして特別賞として備考に記した特定の条件を満たした者に50万リルの賞金を与える。

 また、参加者全員に参加賞を与える。

備考:大会形式はトーナメント方式とする。

 この大会は闘技場施設を保有するすべての都で同刻に開催するものとする。

 参加人数は都の闘技場施設の許容最大数を事前に告知する。

 闘技場施設の許容最大数を越える応募があった場合、応募者の中から抽選で参加者を決定する。

 闘技場施設の利用規定につき、戦闘開始時に【高位結界術師】の《封鎖結界》により安全確保を行う。

 上記以外の戦闘時のルールは決闘ランキング戦公式ルールに準拠する。

 《封鎖結界》を破壊する事ができた参加者には特別賞を与える。

 

 これはティアン・<マスター>を問わず広く参加者を募るものとする。

 

 

 ……備考の最後として公布の紙面の最後に載っていたのも移したけれど、これは明らかに<マスター>の参加を前提とした物だろうと思う。

 そもそも、武芸者として天地に住まうティアンで未だ合計レベルが50を越えていない者自体が非常に少ないのだ。ティアンだけでは天地に存在する闘技場施設すべてでトーナメント式の大会を行う事自体がまず人数が足りなくなってしまうだろう。

 しかし、ならばその目的は……?と考えると流石に推察するヒントが少なすぎて答えに窮してしまう。

 デンドロの公式ホームページに書かれていた世界観を見るに、国という大枠で<マスター>と積極的に敵対しようとはしないとは思うのだけど、今までティアンとあまり交流してこなかった僕にはそこら辺は断言しにくい問題だからね。

 

 ……気になってる場所の一点はその部分、この大会、いくらなんでも開催が早過ぎるのでは? という事だ。

 <Infinite Dendrogram>が始まってからこの大会開催までデンドロ内時間で約一ヵ月後となる訳だけど……正直な所、このゲーム、この世界において一ヵ月が経過した所でまだ足場すら固まってない現状では<マスター>の出来る事なんてたかが知れている。参加条件にある通り合計レベル50――この世界の戦闘者としての最底辺のレベルが精々といったところだと思う(レベル上げに適したエンブリオを持っている人はまた別かもしれないけれど)。

 この段階のマスターを大会に参加させて一体どんな目的があるのか――全く見当もつかない。

 ……掲示板等で話されている様に、《海の日キャンペーン》以来の運営(管理AI)のテコ入れによる天地限定のボーナスイベント、という可能性も十分にありそうなのがまた悩ませる。

 

 

 ――まぁ、結局今考えた所で答えは出ないのだから賞金目当てに参加する事には決めたのだけど!

 何らかの伝手になりそうな特別に交流しているティアンもいなければ参加して失う物なんて(参加費以外は)ないんだし。

 それに、まだまだレベルは低いけれど折角闘技場に、決闘の場に出られる機会でもあるのだから当たって砕けろの精神でチャレンジしてみたいと思う所存だ。

 

 

 と、思い立ったのは良いけれど大会に出るにはクリアしなければならない条件がある。

 参加条件である合計レベルを規定内まで上げる事と、参加費として要求される【宝櫃】を手に入れる事だ。

 合計レベルは既に30を越えている為、開催までの期間で狩りを行っていけばまず間違いなく40以上には達するだろうとは思う。

 問題は、そう――【宝櫃】の入手の方である。

 

 掲示板での情報によると、【宝櫃】とはボスモンスターを討伐した際にドロップされるアイテムで、主にボスモンスターのレベル帯に応じたアイテムがランダムに手に入るらしいのだけどそこは今は関係ない。

 問題は、このアイテムは基本的に亜竜級以上の実力を持つと言われるようなボスモンスターしかドロップしない点だ。

 当然ながらレベルも低くステータスもスキルも貧弱な今の僕が独りで戦って討伐できる相手でもないし、入手手段を問わないと言われても市場価格で10万リル前後する【宝櫃】を買う資金もありはしない。

 

 

 ならばどうするか――それはMMOで古来より行われてきた様に、同じ目的を持った人達と臨時パーティを組み、協力して目的を達成すればいい。

 一人で勝てないなら複数で、パーティの役割分担とエンブリオによる各々の固有スキルを組み合わせれば、効率良く今までよりも強いモンスターに勝てるはずだと。

 そう考え、僕は大白宮の冒険者ギルドへ向かってパーティの募集を掛けた。

 

 

 

 ……半日待っても誰も来ない所か、<マスター>を見かけすらしなかったけど。

 考えてみれば当然、先に書いたようにまだ<Infinite Dendrogram>がサービスを開始してからリアルで一週間、足場も固まっていないこの時期に、初期スタート地点の町から移動している人なんて殆どいなかったんだ……!

 ティアンはティアンで、僕と同レベル帯の人が仮にいたとしても、一パーティの人数で亜竜級に挑むなんて真似をする奇特な人はいなかったようで、その時間はただ冒険者ギルドの資料を眺めて暇を潰すだけの時間となってしまった。

 

 結局、今日はその後もパーティの募集の申請だけギルドに残しておき、デンドロ内で二日間また今までと同じように街の近辺でレベル上げに勤しむのみとなってしまった。

 【退魔師】のレベルは上がったけれど、これは大会までにパーティを組めるんだろうか……?

 

 

 

 

 

7月23日(木)

 パーティが見つからないから、最悪コテツと一緒に亜竜級モンスターと戦う覚悟を決めていたけど、なんと今日ログインしたらパーティ募集に応募が来てた!

 応募してくれたパーティは既に固定パーティを組んでいたらしい<マスター>の四人組。

 ……四人のジョブも【剣客】弥生、【剣武者】烏丸、【陰陽師】エリーシア、【治療師】レイン、ととてもバランスが良く見えるパーティなんだけど、四人の内、半数以上のエンブリオが現状戦闘に使える物じゃないしレベルも30前後しかなく、ボスに勝てるかどうか分からなかったから補強の為に、という事らしい。ちなみに、四人はリアルでも友達同士でその内の一人……パーティの紅一点、【剣武者】烏丸が今回の武闘大会に参加を希望しているそうだ。

 ……まぁ、四人の態度や口調から本当に紅一点なのかは疑問だったけど、そこを聞くのはマナー違反だよね。 

 既に前衛二人と後衛二人で役割分担はできている為、【退魔師】である僕には中衛にて遊撃と後衛の護衛をお願いされる形となった。

 

 大白宮に到着していた<マスター>がまだ殆どいなかったのもあり、話はトントン拍子に進み、互いに自己紹介をし合って今回のパーティ結成の目標――レベル上げと、ボスモンスター討伐による【宝櫃】の複数確保を目指して大白宮の北方、鬼族と魔獣の巣窟である<犀合山岳地帯>に向かう事となった。

 <犀合山岳地帯>に生息しているモンスターは【鬼熊】【火狼】【大鬼】【小鬼】、そして妖怪である【鬼火】が若干、という所だ。更に、ボスモンスターとして【小鬼英雄】も出現するらしい。

 物理ステータスが非常に高い【鬼熊】と【大鬼】。《物理攻撃無効》を持つ厄介な【鬼火】に今までの狩場以上の数と連携で襲い掛かる【小鬼】達と、全体的な難易度は<黒藤森林>と比べても間違いなく一回り以上高い。

 今日は遭遇しなかった【小鬼英雄】の存在を加味すればそれ以上となるのは言うまでもない。

 

 武闘大会が始まるまでリアルで残り三日しかない。パーティを組んでより効率の良い狩りができる様にはなっても、時間に余裕がないのは変わらない。

 とは言っても、組んだパーティは元の四人はともかく僕は臨時メンバー。ある程度の連携もできなきゃ一人混ざった所で亜竜級に挑むなんて真似はできないからリアルでの今日一日程度は狩場の奥にも踏み込まず、連携の練習とある程度のレベル上げを行う事にした。

 

 

 ……デンドロ内とはいえ、二日も共に狩りをしてると色々と思う事はある。まずはこのパーティ――アタリだ、と。

 確かに追加メンバーを募集するのに納得できるような隙も所々ある。後衛二人の防御能力が貧弱だから突然のバックアタックや奇襲に弱い面やエリーシアのエンブリオの固有スキルの関係で《物理攻撃無効》を持つ【鬼火】に対処するのが難しいところなんかはまさにそれだったけど、そこに一時加入したのが《危険察知》を持ち、【鬼火】も《斬魔剣》で簡単に討伐できる僕だったのは互いにとって幸運だと思う。

 だが、それ以上に彼らの実力と能力は良い物を持っていた。

 特に前衛の二人、烏丸と弥生はおそらくリアルでも剣道を修めていたのか、その剣術は慶都近辺の初心者狩場で狩りをしていた時に見た他のマスターと比べても間違いなく上だろうと確信できる。達人級とまでは行かなくともその心得があり、更に気心の知れた二人で連携を取れるのだからそれも当然と言った所か。

 更にエリーシアのエンブリオ――【暴慙竜 タラスク】の存在も大きい。僕には縁がなかったTYPE:ガードナーのエンブリオ。強大な地竜型のガードナーであるタラスクのステータスは亜竜と比べても更に数倍は高いというのだから驚きだ。

 ……そんなステータスを持っているならば一人でボスでも狩れるのだろうけど、彼のエンブリオであるタラスクはその高いステータスを持つ代償としてか、「生物を殺傷した数に応じて永続的な全ステータスの低下」というデメリットスキルを所有しているらしい。

 その影響で四人の中でほぼ唯一の魔法攻撃が可能な【陰陽師】であるというのに【鬼火】の一体すらも倒せないのだけど。

 だが、攻撃はできなくてもその巨体と高すぎるステータス、そして進化して習得したらしい防御スキルを生かしてパーティの壁役となる事はできる。

 実際にタラスクと前衛の二人を抜けて後衛までモンスターが迫ってきたのはこの二日で三度しかない。それも全て数の多い鬼族の群れが相手だった。

 

 二つ目に、レインのエンブリオである【安穏静殿 エレクテイオン】の存在。

 安全な住居である一軒家を出現させるTYPE:キャッスルのエンブリオ。出現させるのに五分もかかり、戦闘用の固有スキルは一つもなく、生産系統の能力にも乏しい、確かに戦闘に使えるような物ではない事は事実だ。。

 しかし、都から離れたモンスターの生息するこの狩場でも安全に休憩できる場所となるこのエンブリオは長期間の狩りをする際、特にマスターがリアルでの小休止をする時等には最適のエンブリオだと思う。

 ……正直、僕も自分のエンブリオと比べて羨ましいという感想が拭えない。特にあのモンスターから襲われなくなるスキル、どういう理屈で発動しているのだろう……?

 

 そして、最後にそれら以上に狩りを快適にさせたのが――【陰陽師】のジョブスキルである《生体探査陣》だった。

 範囲内の特定の生物の位置やレベルを探る索敵用の魔法スキル。

 この魔法のお陰で僕の予想以上に無駄なく、テンポ良くモンスターを狩っていく事ができたのは嬉しい誤算だった。それでこの日記を書く頃にはパーティ内で最もレベルが高かった僕のレベルは40にまで達していた。

 

 この調子なら明日、明後日はボスモンスター――【小鬼英雄】に挑める事となるだろうと思う。

 その後はどうするにせよ、実りのあるパーティが組めて本当に良かった――

 

 

 

To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

名称:【安穏静殿 エレクテイオン】
<マスター>:レイン
TYPE:キャッスル
能力特性:快適で安全な場所を作る
到達形態:Ⅱ
スキル:《害意霧散》《環郷改禅》《聖域(サンクチュエリ)
モチーフ:ギリシャの神々に捧げられたとされる神殿、“エレクテイオン”
紋章:笑顔が描かれ、両側に手を広げた家屋
備考:何処でもセーフハウスなキャッスルのエンブリオ。
 《害意霧散》のお陰でモンスターやティアンには破壊されないがマスター相手なら耐久力も殆どないので普通に破壊される。
 《環郷改禅》によりキャッスル内の家具や寝具、調度品のグレードを上げる事もでき、一応は料理系統の生産に多少のボーナス修正を得られる効果もある。
 更に《聖域》によりHPSPMPの自動回復速度が数倍になる……以上にキャッスル内にBGMや空調調節機能が働く事もあり、快適な休息を取るという事に特化されたエンブリオである。
 ……欲しい(作者談

《封鎖結界》:アクティブスキル
 指定した範囲に結界を展開し、内外の出入りを不可能にする。
 そこそこ長いクールタイムと待機時間を要し、消費MP次第で強度や範囲、持続時間を調整させられる【陰陽師】派生下級職【結界術師】の基本的なスキルの一つ。
 なお、カンストした熟練の【高位結界術師】の展開する《封鎖結界》は数値に換算しておよそ1000程度の硬度(END)と10000程度の耐久力(HP)を持つ。
 当然ではあるが合計レベル50以下のティアンじゃ余程に尖った効果の特典武具でも所有していない限り破壊する事は到底不可能。


 そんな訳で、今回は武闘大会の説明と臨公PT結成編でした。……それだけの短い話のつもりだったのに文字数そんなに減ってないとはこれ如何に。
 時系列的に次々回には武闘大会始められると良いな……!
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