無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:あんなヤバい奴らと何の策もなく真正面から戦いを挑む訳がなかった。

ここまで長かった
それでは本編をどうぞ!


第六十二話 《天上の意を叶える者》

■とある魔導書とその変遷について

 

 

 その魔導書――後に【禁忌魔本 アル・マグナス】となる魔導書が作り出されたのは、遥かな過去、先々期文明時代の最盛期であった。

 

 ……その時代は、後世にも永く名が刻まれる程の大天才と呼ばれる一人の活躍により、文明が飛躍的に発展した時代。

 今までにない程の科学と機械、そして効率の時代。

 魔法を、魔力をそれらと融合させる事でより高い効率を出せる事が判明し一種の産業革命すら起こされたその時代に、その()()()は創られた。

 

 ――他ならぬ、その様な時代を作り出した一人の大天才、名工、【大賢者】フラグマンの手によって。

 

 機械も組み込まず、魔力と親和性の高いレジェンダリアの木から丁寧に作られた紙を使い、上位純竜級のモンスターの体液を混合させたインクを用いて、魔法においても埒外の才能を持つ彼自身が一から術式を書き込み――その魔導書は創られた。

 

 魔法発動補助、術式制御補助、魔力回復補助、魔力変換回路追加、魔力自動充填蓄積機能、魔法術式記憶――

 更には、作成者が得意としていた超高度な人工知能による記録保存、自動学習、自己拡張、並列術式発動補助に、状況に応じた助言を行う機能まで搭載されていた。 

 

 その時代、最高峰の素材と術者によって作られたその魔導書は、魔法の使用に関わるありとあらゆる機能が盛り込まれた、正しく魔導書としてのハイエンドとなる――筈だった。

 少なくとも、性能の面では、間違いなくそう言っても過言ではない代物であった。

 

 だが――

 

 

()()()()()()()()()()()。この方法では、<アーキタイプ・システム>には手も足も出せんな。また別の方法を探してみるか」

 

 ――作り手のその一言と共に、その魔導書はまともに使われる事もなく、彼が幾つも所有している蔵に死蔵される事となった。

 数多作り込まれた最上位の魔導書としての機能は一度として使用されず、人工知能は沈黙したまま己の封印を維持する様に命じられる事となる。

 

 ……それも、その筈。

 いくら魔導書として有能であろうとも、製作者の望む機能を得られないのであれば何の意味も無いのだから。

 その時代最高の魔導書を作った。それで不可能なのであれば――作成者である彼も諦めるしかないのだから。

 彼は確かに科学と魔法の融合や非常に行動な人工知能を用いた作品を得手としていたが……それでも彼は【大賢者】。

 魔法系職業の頂点の一つに座するだけの実力も技量も、そして情熱も持っていたのだ。

 その彼が、彼が創った他のオリジナリティ溢れる作品達と同様に己の持てる全てを賭して作り上げた、書き上げた一冊の魔導書――それが、()()だったのだ。

 それを作った目的は、確かに些か己や知り合い達の趣味が入った物だったとは言え……それに全く手が届きそうになかったのだから、作り手である彼が落胆するのも無理はない。

 

 

 ――――そう、()も考えていた。

 

 だから、()は死蔵されるがまま異を唱える事もなく、粛々とただ己の中で自問自答を続けていた。

 

 …………結局、自らの主である【大賢者】が死ぬまで、答えは見つからないままであったが。

 

 

 

 そして、何の因果か、或いは必然か。

 主を失った()は、その超高度な人工知能と己が持つ能力から、主が敵対していた“化身”の一体、“進化の化身”に目を付けられ――〈UBM〉、【禁忌魔本 アル・マグナス】へと生まれ変わる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 主……いや、“()()の仇敵である、“化身”。

 その手によって〈UBM〉となった【アル・マグナス】はそれに敵愾心を抱いているのかと言えば――そうでもない。

 

 なるほど、確かに。【アル・マグナス】が持っていた知能をして尚、確かに元主の事を思えば恨み憎しみ全てを賭して殺しに掛かるべきかもしれないと思わない訳ではないのだ。

 勿論、既に〈UBM〉化していた先達の様に何らかのセーフティが組み込まれているだろう事からそれは不可能であろうという事を鑑みて――それでも、彼は“化身”達にそう特別悪い感情を抱いている訳ではないのだ。

 

 何故なら――――()が与えられた“使命”はそうではないから。

 他の者達の様にかの【大賢者】の為に生み出された訳でもなく、晩年の者達の様に“化身”を討つ事を至上目的とする訳でもない。

 そして、何の使命を与えられなかった者とも、違う。

 

 例え“化身”の手に落ち、〈UBM〉へと生まれ変わろうとも、()の、【禁忌魔本 アル・マグナス】の使命はただ一つ。

 ――<アーキタイプ・システム>へと到達する。

 ただそれのみ。

 その為でれば、その可能性を掴み取れるのならば――

 その使命を与えた元主への義理すらも捨てて、〈UBM〉に生まれ変わる事も吝かではないのだ。

 

 実際。

 彼は高度な人工知能を持っていたとはいえ、創られた一冊の魔導書――アイテムに過ぎない身から〈UBM〉――モンスターへと成った事で、その自由度は飛躍的に増していた。

 元主の命令すらも己の原初の使命の為に捨て去る自由を得て、他者から魔力を供給されなくても魔力を自動回復する術を得て、そして、自分自身の思うが儘に行動する自由をも得た。

 或いは、人はそれを元の魔導書の時の人工知能を廃したバグと言うかもしれない。

 

 しかし、それは違う。

 ()は以前からそうしたかったのだ。

 己が使命を果たせるその可能性と、主らに対する感情を秤に掛け――以前までは、可能性の低さから後者を選択していたに過ぎない。

 まるで()()が如く怜悧な計算の果てに――〈UBM〉となった【アル・マグナス】は、その()()()を感じ、行動に移すのだった――――

 

 

 神話級〈UBM〉として生まれ変わった【禁忌魔本 アル・マグナス】の持つ固有スキルは、三つ。

 

 一つ目は、己を魔法系の〈UBM〉足らしめる《禁忌魔導書》。

 これは()の持っていた機能をそのまま固有スキルに当てはめたスキルであり、即ちその効果は――魔法補助の極致。

 魔法発動補助、並列術式発動補助、魔法消費魔力低減、魔法威力増強、魔法効果拡大、魔法拡張補助。

 非常に効果の高いそれらをたった一つのスキルに詰め込んだ、魔法使いに取って正に理想のスキルと言える代物だ。

 〈UBM〉となった事で()が持っていた際よりも更に高性能となっている。

 

 二つ目は、己の他の能力を補助する為の固有スキル、《全知目録》。

 鑑定・看破・解析に特化したスキルであり、周囲に存在する対象の能力の詳細を理解する固有スキルだ。

 【大教授】の《叡智の解析眼》にも近いそのスキルの強度は非常に高く、隠密・隠蔽に特化した超級職のスキルでも使わない限りその解析から逃れる術はない。

 《看破》と同様にアイテムに対しても使用でき、更に――いや、むしろ此方が一番重要な使用方法だが、()()()()()にも同等の看破を行う事が出来る稀有な固有スキルだ。

 

 共に、魔法系の〈UBM〉として非常に汎用性が高く強力な固有スキル。

 【征討魔将 クオン】の《相護援儀》で仲間達に共有もしており、先の戦でも<マスター>やティアン達を苦戦させたスキルでもある。

 

 

 

 

 

 

 ――――尤も。

 この二つの固有スキルだけでは、【禁忌魔本 アル・マグナス】の〈UBM〉としての等級は良い所で伝説級上位が精々であったのだが。

 

 彼が神話級の〈UBM〉である所以。彼が()である所以。他の〈UBM〉の仲間達にも隠し通していた【アル・マグナス】が持つ最大の能力、()()()()()()()()()は三つ目の固有スキル――《禁忌目録(インデックス)》にある。

 

 その固有スキルの効果は、自らが解析した魔法スキルを(魔導書)の中に記録、蓄積し学習(ラーニング)する事だ。

 

 

 …………神話級〈UBM〉の持つ、その個体最大最強の固有スキルとしては、他の神話級〈UBM〉と比べれば劣る様に見えるかもしれない。

 だが、それでも間違いなくこれは()が持つ最大最強の固有スキルとして在る代物であり――――

 

 

 

 

 【征討魔将 クオン】の力により、規格外(イレギュラー)に至ったその最たる物なのであったから。

 

 

 それも当然。

 ()は、【アル・マグナス】は〈UBM〉になったその時から、ずっとその為だけに行動していたのだから。

 

 彼がまだ魔導書だった時に【大賢者】から教えられた迷彩、幻術の魔法を用いて姿を隠して各地を回り、貪欲に魔法を学び世界を学び……(〈UBM〉)を学び。

 されど最低限のリソース吸収以外は、騒ぎを起こさずに討伐されるリスクを減らし、()()を探し求めていた。

 

 ――〈UBM〉を、〈UBM〉の固有スキルを強化できるその存在を。

 

 そして、見つけたのだ。

 且つて【征夷大将軍】であったであろう〈UBM〉を、【征討魔将 クオン】とその配下達を。

 彼の目論見に見事に合致する、〈UBM〉の強化を行える者を――

 

 そこからは、単純だ。

 ただ他の〈UBM〉と同じ様に、偶然を装い危機を演出し言葉巧みに彼女達の仲間に潜り込み――その恩恵を得る。

 先々期文明時代から魔導書として生き続け、人の営みも権謀術数も観て学んできた彼にとって、それは造作もない事であった。

 

 そして――

 神話級〈UBM〉が、仲間の〈UBM〉の強化に特化した神話級〈UBM〉の固有スキルを受ければ――さて、どうなる?

 伝説級の枠組みにいる〈UBM〉すら、己の能力だけでも神話級〈UBM〉に匹敵する程の強化を行える()()を受けたら、果たして()はどうなるのか――

 

 

 

 

 ……結論だけ言うと。

 彼は、【クオン】の力ありきの、一時的ではあっても――()()使()()()()()()()のだった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆ 

 

 

 

 

 

 

 

 

■<【苦鍛窮宮 ダイダロス】> 第五隔離区画 【禁忌魔本 アル・マグナス】

 

 

 

 

 (――――ふむ)

 

 

 他の、【クオン】の配下の〈UBM〉達と同様に、【ダイダロス】の隔離区画へと<マスター>達と、頼りない小鬼の仲間達と共に幽閉された【アル・マグナス】。

 彼がまず一番初めに行ったのは、《全知目録》による敵戦力の確認――では、なく。

 

 高速思考によって自身の内でのみ行われる、()()に向けての思索であった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 己が身の安全、只それのみを求めるのであればそれを選ぶべきだろう。

 

 しかし、今この場に留まり応戦する事への価値も相応以上にあるという事も確かなのだ。

 

 まず、初めに此処で逃げた場合、確かに己の身の安全だけは保障できるが――まず間違いなく【クオン】とその一派は壊滅する事となるだろう。

 彼女達に対して恩義がないと言う訳ではないが、それは己の身を危険に晒してまで助ける必要を感じる物ではない。

 今この状況を思えば助けられる確率は低いだろうとも予見しており、徒労に終わる可能性も高い。

 しかし、彼女、【クオン】が持つ〈UBM〉強化の固有スキルだけは別だ。

 彼が完全に()()を物にするまで、時間にしてまだ半年は掛かる。

 今まで彼女の助力を得て蓄積されてきた()()()が無意味となる事はないが、当然ながら可能であればその全てを己の内に収めたいと考えている。

 重要な物、必要と思われる物は率先して蒐集して来た為、残る物達が絶対に必要と言う程でもないが――

 

 そして、もう一つ。

 ……それは、今彼らの目の前に居り、彼らと相対しようとしている者――<マスター>の存在。

 <マスター>――――否、劣化“化身”。

 それがこれだけ集まり相対するというのは、2000年以上を存在し続けた【アル・マグナス】にとって尚初めての経験だ。

 ……ならば、この機会は。

 その()()()()を行うのに相応しい舞台ではないのかと、彼はそう考えているのだ。

 ……また、彼にとっては、違う意味でもそれも己の為である、という考えもあるが。

 

 ……奇しくも、彼の作成者である者と似た様な思索の結果となった彼は――結局、即座の逃走ではなく、当座の闘争を選択する。

 その結果は――

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

■<【苦鍛窮宮 ダイダロス】> 第五隔離区画

 

 

 

 

 戦端が開かれたのは、互いが相対してから数瞬後の事であった。

 

『――《幾百の魔法(パラージ・マジック)》』

 

 <マスター>達の遠距離攻撃よりも、接近よりも尚早く、双子の〈UBM〉が立ち直るその前に。

 放たれたのは長年で発掘した、簡易の魔法を超連射する魔法拡張スキルの一つ。

 【傾城九尾 ウォルヤファ】にも教えたその超攻撃魔法。

 

 しかし――()()は【ウォルヤファ】の使用したそれとは決定的に違っていた。

 

 魔法の威力が違う。魔法の数が違う。――そして何より、魔法の種類が違う。

 【ウォルヤファ】の《幾百の魔法》に使われていたのは共有された《禁忌魔導書》により強化された幾百もの下級攻撃魔法だった。

 

 しかし、【アル・マグナス】はそうではない。

 《禁忌魔導書》の効果――ではなく、彼自身が持つ()()として、魔法を改造(カスタム)

 更に《禁忌魔導書》の効果も加えられる事で――上級魔法、その奥義をすら《幾百の魔法》で連射する事が可能になっているのだ。

 そして、魔法の改造ができる彼だからこそ、魔法を()()()()で放つ等と言う無駄を行う必要は全くない。

 正しく幾百の魔法、その全てが上級魔法の奥義。

 それも、【ウォルヤファ】とは基礎の魔力(MP)からして桁違いな彼が放つそれは――ただそれだけで広い筈のその区画一つを死地に変えるのに十分な威力を持っていた。

 紅蓮の球体が、激しき竜巻が、迸る紫電が、白き霜に染まる空間が、黒色の塊が――<マスター>達に迫る。

 

 

 

「――全員、防げえぇぇぇぇぇ!!」

 

 <マスター>達の先頭に立つ、大柄で派手な格好をした男が叫ぶ。

 それと同時にか、あるいはその前からか、<マスター>達はそれぞれその脅威の魔法に対して対処し始める。

 

 ある者は亜音速機動や高速移動の固有スキルを以てかの〈UBM〉の仲間である【双天翻弄 エドラ・リンデル】と【双天奔放 エメル・リンデル】を遮蔽としようと動き。

 またある者は自らのエンブリオの固有スキルで周囲の全ダメージ軽減の結界を張り。

 そして、()()()所では、幾重にも強化され超級職の魔法をも上回る威力を持つその魔法を迎撃する者も居る。

 

「うわ、カシミヤそれアシュケイル(最高位魔法金属)製の刀じゃない? ……お高かったんじゃないのー?」

「ええ、まぁ相応には。しかし、こういう時の為に買ったのですから全く悔いはありませんね?」

 

 ……中には、雑談混じりに対処できる程の剛の者も居る程だ。

 

 そして――

 

 

「《ブースト・マジック》! 《ハイ・ヒート・レジスト・ウォール》!」

「《ブースト・マジック》! 《ハイ・マテリアル・ウォール》!」

「《ブースト・マジック》! 《ハイ・マジック・ウォール》!」

「《デュアルスキル》、《スフィアシールド》!」

「《誰何に非ざる守護精霊(ゲーニウス)》!」

「《絶帯防壁》!」 

 

 

 残る<マスター>の内、多くが――10人以上が、()()()()()己が持つ範囲防御特化型ビルドの真価を発揮する。

 連携しての強化防御魔法、強化結界魔法、強化体制魔法の重ね掛け。

 物理範囲防御スキルに、エンブリオの必殺スキルによる全耐性強化魔法に、固有スキルによる全防御ステータス強化。

 

 世紀末な見た目に似合わず堅実で堅牢な戦法を行う彼らの幾重にも重ねられた防御の前にはその魔法の群れも

 

 

 

『――《ディ・スペル》』

 

 

 ――しかし、【アル・マグナス】が一節言の葉を紡ぐ、ただそれだけで。

 物理系の防御スキルを除く、全ての――正しく()()の防御の為の魔法が霧散した。

 

 

「「「な、んだ、とぉ!!???!?!」」」

 

 驚愕の悲鳴を残しながら、幾百の魔法の直撃を受け、消えていく<マスター>達。

 且つての【魔神】が開発し、<アーキタイプ・システム>に登録された魔法の一つ――《ディ・スペル》。

 その効果は、自身が解析した魔法に対して真逆の術式を用いる事で抵抗も対抗も許さず、その魔法の効果を完全に消去するという代物。

 本来は相手の魔法の術式を解析し、同等の魔力を用いて自身でその真逆の術式を編み、この魔法を発動する手間がある物であったが――《全知目録》もある彼にとっては、非常に使い易い対魔法術式でしかない。

 それにより、今回も目論見通り相手の防御を消し去って葬ったのだ。

 

 そして。

 相手の魔法を解析したのは……相手の魔法を除去する為だけという訳では、ない。

 むしろ、そちらの方が彼にとっては余禄。

 ある意味では、この為に<マスター>達と戦っていたと言っても過言ではないのだから。

 

 

『なるほど、こういう物か――《誰何に非ざる守護精霊(ゲーニウス)》、《絶帯防壁》』

 

 直後、三体の〈UBM〉の周囲を白い靄の様な物とベール()が取り巻き――彼らの防御能力が強化される。

 エンブリオの固有スキルによる魔法の習得――<アーキタイプ・システム>を介さない物でも、()()()()

 ()()()()()()()()()に特化した《禁忌目録》であれば、直に解析さえできれば――こんな物だ。

 

 

 自分達のエンブリオの固有スキルが奪われた事に、再度驚愕している<マスター>達を尻目に、【アル・マグナス】は次手に移る。

 それは即ち……今度こその、《全知目録》による敵戦力の走査であった。

 

 《幾百の魔法》と《ディ・スペル》によって()()()()もない者の間引きを終え、一当てした後に、ある程度の評価の裏付けとして、悠々と彼は高速思考によって<マスター>一人一人の能力値(ステータス)を確認する。

 

 ……やはり、エンブリオは千差万別と言う所か、同じ様なジョブ構成(ビルド)をしていても、それぞれのステータス補正とやらが違うのか、全く違う傾向になっている所は興味深く感じられた。

 内、何人かは《全知目録》でも見られない固有スキルによる補正もあるのだろうが。

 

 《幾百の魔法》を続けながらも、僅か数秒足らずでこの場に居る全員分を確認し終え――【アル・マグナス】は注意すべき()()を三人まで絞り終えた。

 

 

 

 餓鬼道戯画丸

 職業(メインジョブ):【粉砕王】

 職業(サブジョブ):【砕拳士】【高位格闘家】

    【壊屋】【拳士】【格闘家】【空手家】【喧嘩屋】【斥候】

 レベル:76(合計レベル:576)

 

 HP:106578

 MP:170

 SP:7124

 STR:15191

 AGI:2755

 END:2272

 DEX:1436

 LUC:120

 

 一人目。

 超級職【粉砕王】に就く、かの<マスター>集団の頭目と思われる<マスター>だ。

 配下の連携能力もさる事ながら、【粉砕王】の奥義――を()()()()()生じさせた爆風と衝撃の威力のみで直撃する軌道だった数多の魔法を相殺せしめた。

 戦闘センスも高く、配下の実力とあの威力の秘訣――恐らく、あの拳に装着したエンブリオの脅威を思えば軽視できる筈がなかった。

 こいつには――ああ、【エメル・リンデル】をぶつけて翻弄しておくのが一番だろう。

 

 

 

 カシミヤ

 職業(メインジョブ):【抜刀神】

 職業(サブジョブ):【剣鬼】【剣聖】

    【武士】【剣武者】【剣士】【双剣士】【軽剣士】【斥候】

 レベル:169(合計レベル:669)

 

 HP:21455

 MP:150

 SP:6562

 STR:3098

 AGI:3972

 END:1341

 DEX:1520

 LUC:125

 

 二人目。

 超級職【抜刀神】に就く、年少の<マスター>。

 しかし、【神】に就いている事から分かる通りその技量はこの<マスター>の中でも随一の物であり、その剣閃の鋭さは他の追随を許さない。

 また、【抜刀神】と言えば《神域抜刀》であるが――かの童はおそらく、己のエンブリオの力によって居合の態勢のままの移動を可能としている。

 まともな防御は通用しないと見て良いだろう。

 ……尤も、《剣速徹し》頼りの他の【抜刀神】と同じで攻撃力自体は超級職としては非常に低い為、【双天翻弄 エドラ・リンデル】を宛がい斥力障壁と重力結界によって完封させるのが最善だろう。

 

 

 

 ――問題は、最後の三人目だ。

 

 残りの二人と違い、超級職を持たずに、それでありながら己の攻撃魔法のみで【アル・マグナス】の《幾百の魔法》を相殺し続けていた者。

 【抜刀神】カシミヤと同様の年少の童の<マスター>でありながら……何もかもが、異常である者。

 

 

 ジーニアス

 職業(メインジョブ):【求道者(修行者)】

 職業(サブジョブ):【剣鬼(剣武者)】【影(隠密)】

    【祓魔師(エクソシスト)(退魔師)】【大陰陽師(陰陽師)】【高位従魔師(ハイ・テイマー)(従魔師)】【光輝術師(ルミナスマンサー)(光術師)】【翠風術師(エアロマンサー)】【高位結界術師(結界術師)】【開拓巧者(開拓者)】【】【】

 レベル:85(合計レベル:935)

 

 HP:52932(+21172)

 MP:151236(+45370)

 SP:17588(+5276)

 STR:7580(+3032)

 AGI:10414(+4165)

 END:6355(+2542)

 DEX:4457(+1337)

 LUC:90

 

 

 ――対象のステータス、そのサブジョブ(職業)すらも観られる【アル・マグナス】の《全知目録》だからこそ、その異常性ははっきりと分かる。分かってしまう。

 

 本来はあり得ない、あり得る筈がない十もの上級職。

 それによる、上級職でありながらも前者二人の超級職と比べて尚非常に高い、高過ぎるステータス。

 特に、魔力(MP)に関しては既に魔法系超級職と並ぶ程という異常さ加減。

 

 おそらくは、これもまたエンブリオの固有スキルに依る物。

 

 ステータスの強化、サブジョブ枠の拡張――否、あのエンブリオの本質はそんな所では、ない。

 

 ……それを察するのに()、【アル・マグナス】であっても数瞬の当惑を隠しきれない。

 何故なら、2000年を生きた彼がその知能で導き出したその答えは――彼が求めていた、()()使()()()()()()()()()であるのだから。

 

 それは、即ち――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――即ち、<マスター>ジーニアスのエンブリオ、【至光天 アダムカドモン】の本質、能力特性は――全能の如し力、そして……昇華。

 そのエンブリオが持つ必殺スキル、《天上の意を叶える者(アダムカドモン)》の効果はその特性のままに……己が持つジョブの昇華であった。

 ジョブと言う、()()()()における最も特徴的で普遍的な()

 それを上位置換(昇華)させるこの必殺スキルは、【アダムカドモン】の他の固有スキルとの相乗効果(シナジー)も合わさり、非常に強力な物になっている。

 

 

 

 

 ……ステータス上では、ただそれだけの必殺スキルだ。

 

 常時発動型(パッシブ)自己強化(バフ)系という形で他の必殺スキルの類型を見れば、似た様な結果を齎す必殺スキルも多数あり、むしろ常時発動型である事から総合的な強化の限界値は必殺スキルとしては低い物であると言える。

 勿論、圧倒的に増えた上級職のジョブスキルを《全主権限》で活用すればその限りではないが――【アル・マグナス】の考える()()はそんな些末事ではない。

 

 ()()()()()()

 現在は下級職を上級職に上位置換しているだけだが……彼には、どうしても()()()の可能性を垣間見る事を止める事ができなかった。

 

 

 ――超級職を、<■■■>に昇華させるという、その可能性を。

 

 ()の使命……<アーキタイプ・システム>の深奥の理解、その先に主達が望んでいた物なのだから――――

 

 

 

 

 そして。

 その【アル・マグナス】の推測は正解だ。

 

 正しくかのエンブリオ、【至光天 アダムカドモン】は()()()()()()()()()のままに、その為に生まれて来た。

 ()()()()で何よりも求められていた存在に、誰も届かなかったその座に。

 己ならば届き得るのだと、理由もない確信を持ったその子供から生じたそれは、正しくその為の道を歩み出した。

 

 TYPE:ボディとしては例外的にステータス補正にマイナスがなく、むしろLUCを除く全ステ―タスに十分に高いステータス補正を得、更に能力値(ステータス)を上げた天使の身体(ボディ)

 ――それは只人(ティアン)の上位たる最上位(ハイエンド)の者の物。只人よりも劣る事(マイナス)があってはならないから。

 

 ジョブをより多く習熟し、その(スキル)を余す事なく十全に使える様にした。

 ――<斡■■>が作り出したその力、<■■■>に至る為の、<アーキタイプ・システム>の全てに適応できる様にその手を伸ばしていた。

 

 ――そして。

 リソースが足りないながらも、その為の手段は……今此処に用意された。

 

 “異物”の業である。()()()()に在らざる者の力である。

 手段として、最も直截であっても、決して()()には認められる筈がない。

 

 しかし、それでもそれは()()()()()()の通りの物である事に変わりはない。

 ()()()姿()であるとされる“アダムカドモン”。

 その必殺スキルは《天上(先代管理者)(願い)を叶える者》なのだ、と――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (――可能であれば、彼を捕獲したい所であるが……<マスター>を長期間捕獲するのは不可、か)

 

 

 《全知目録》の結果を確認し……数々の思索の果てに、結局己のやる事に変わりはないと言う事を再確認する。

 つまり――戦闘の継続による<マスター>の、かのエンブリオの持ち主の能力調査だ。

 他の<マスター>達も含めて例外なく、所持スキルの解析や体細胞の採取等、行う手順はやや増えるが――()()()()()

 

 顔もない、魔導書の身である彼は精一杯の笑みを浮かべ、ない筈の胸が高鳴る。

 

 ――ああ、長年の使命を達成したばかりだと言うのに、もう()の手掛かりを得られるとは。

   私は全く幸運者だな――――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尤も。

 戦闘の継続と、一言で言っても――彼のこの戦闘に対する本気度はまるで先程までとは別物になるのは、最早語るまでもない事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 故に。

 彼は、その初手から《幾百の魔法(パラージ・マジック)》等と言う、()()()()()()を放つ事は無くなる。

 

 仕切り直したその戦いの初手は――

 

 

『――――()()()

 

 

 ただの一言。

 たったの一言――彼でも短縮しきれなかった結果、最後の《魔法発動加速》の《詠唱》により一言の詠唱で完成されたその魔法は――

 

 

 

「ヒィヤッハァァーッ!?!?」

「おいおい、マジかよ……!」

「うっそでしょ。ここで()()()()撃ったら――」

 

 

 数十人入って各々が全力戦闘をしてもまだ余裕のある広い隔離区画――それが狭く見える程巨大な()()

 天井の直径と等しい程の巨星が、闇の虚星が降ってくる超魔術――《イマジナリー・メテオ》が、放たれた。

 

 直径からして、明らかにまともに落ちる筈のない虚星は、そんな物関係ないとばかりに超速度で<マスター>達の下へ落ちようとして……

 

 

 

 

「――ガキドー!」

「チッ! 分かってる!! ――()()()やァッ!!」

 

 

 少年――ジーニアスと頭目――餓鬼道戯画丸の短いやり取りの後。

 ジーニアスともう一人、餓鬼道の配下と思われる<マスター>が即座に餓鬼道の背後に回り。

 

 ――多重に重ねられた風属性魔法で、勢い良く彼を射出した。

 

 超音速を容易く越える速度で飛翔した彼は、空中で一瞬だけ片手を――その奇妙なエンブリオを装着した腕を溜め。

 

 ――虚星に激突し、それを()()した。

 

 生物にしか砕けない筈の超巨大な虚星は――生身に装着されたエンブリオの力によって、強引に突破されたのだった。

 

 

 

 (――ほう。予想以上に他の者も()()な。曲がりなりにも天地の戦士という訳か)

 

 

 その結果を見て【アル・マグナス】は即座にその決断をしたジーニアスと実際に《イマジナリー・メテオ》を爆砕した餓鬼道――だけでなく、他の<マスター>達をこそ評価した。

 何故なら、彼は次の手を構築している間にも……《ディ・スペル》によって<マスター>達の魔法の妨害を行っていたから。

 餓鬼道を射出した風属性魔法も、そして爆砕の衝撃から彼自身を守った数多の防御魔法にも。

 

 しかし、結果としてはそのどちらもが彼ら――【アル・マグナス】が注視していなかった<マスター>達の手でそれは完遂されたのだ。

 何重にも重ねた風属性魔法に、《ディ・スペル》対策に《魔法発動加速》を行い正に直撃、爆砕の瞬間()()に防御魔法を集中させるその技に。

 

 (事前に似た様な訓練でもしていたか――まぁ良い。戦闘など久しぶりなのだ。此方も少しは慣らさなければな)

 

 そう思考し――内心では賛辞を送りながら――戦闘を次の局面へと進めて行く。

 

 

 天地に現れた()()の〈UBM〉との戦闘は、まだ始まったばかりだ―― 

 

 

 

To Be Continued…………

 




ステータスが更新されました――――

禁忌目録(インデックス)》:【禁忌魔本 アル・マグナス】の固有スキル。
 解析した魔法を自身の内に記録・蓄積・学習するスキル。

 ――オリジナルの魔法やスキルを開発した時、それらは時を置かずして<アーキタイプ・システム>に登録され、条件を満たせば後続の超級職等にもその魔法を使用する事が出来る様になる。
 ならば。
 魔法やスキルと<アーキタイプ・システム>はそこに何らかの繋がりがある事は明白であり。
 それを逆探知する事が出来れば、<アーキタイプ・システム>に登録されている全ての魔法スキルを己の中に蓄積する事が出来るであろう――


天上の意を叶える者(アダムカドモン)》:パッシブスキル
 【至光天 アダムカドモン】の必殺スキル。
 自身が就いているジョブを昇華し、上位置換する事が出来る様になる。

 多少変則的な常時発動型の強化変身タイプの必殺スキル。
 しかし、ジョブを上級職にすると言っても、《全主恩寵》で増えた分を加えた最大の上級職12個として計算して比べてもステータスの総計は3倍程度にしか強化はされず、上級職12個分のステータスという限界がある為比較対象が超級職になりレベルが上がれば上がる程相対的な効果は低くなる。
 勿論、本文中にもある通り上級職それぞれのジョブスキルがあるのだから他の強化変身型の必殺スキルと比べて劣っていると言う事はない筈だが――

 パッシブ型のスキルであるが、実はシステム欄に無明記ながら『追加コスト』として、“超級職の就職条件難化”が課せられている。



 

 ……実は【アダムカドモン】の《光天使の身体》にある闇属性耐性マイナスこそがTYPE:ボディの共通項であるステータスマイナス補正であり、序盤からそれを察知して書いていたのですよ!


 あ、嘘ですただの偶然ですすいません。
 ともあれ、今話も最後までご覧頂きありがとうございました!
 エンブリオを出した時からの念願だった必殺スキルのお披露目シーンに漸く辿り着きました……また酷く長くなってしまいましたが。

 まだクライマックスも途中ですが、ある意味一段落です。
 まぁ今後も多分今までみたいなノリで進んでいくと思いますので、ここまで読んでくれた方々、もし良ければ今後も見てくれたら幸いです。

 それでは、次話も決戦がまだまだ続きますが、どうかよろしくお願いします!


 ……今章終わったら耐性マイナスアップデートするかもしれないです。
 
 
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