無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:準<超級>はジッサイ凄い

これにて今章、今部終了です
それでは本編をどうぞ!


第六十五話 エピローグ・“行方”

□■<先ヶ原平原>

 

 

 

 天地における、歴史にも残るであろう強大な〈UBM〉達との戦いが終わり、一週間も経ったその頃。

 巷では未だに戦勝を祝しての催し事が多々開かれている天地であるが……

 その天地のどの都からも離れたこの<先ヶ原平原>に、二人の童が対峙していた。

 

 互いに見知った間柄でありながらも――

 

 

「――――――――」

 

 片や、<マスター>としては非常に早いこの時期に超級職【抜刀神(ジ・アンシース)】の座に就く、天稟の剣才を持つ子――カシミヤ。

 

 

「――――――――」

 

 片や、エンブリオの必殺スキルによって超級職ではないながらも、その領域に自力で到達した天性の才能持つハイエンド――ジーニアス。

 

 

 互いに、<マスター>達の間では準<超級>と呼ばれるのに相応しい程の猛者。

 その二人がここに、巷の祭りにも碌に参加せずに対峙しているその理由は――

 

 

 

 ――――勿論、決闘(野試合)である!

 

 

 今までにも二桁にも渡る程の回数、互いの実力を成長を確かめ合うかの様に野試合を繰り返してきた二人だ。

 故に、今回も同じ。

 二人は無言で対峙し、構えて――

 

 ――しかし、今回はいつもとは()()()()違った。

 それは、一言だけ。

 

 

 

「――今日は僕が勝たせて貰うよ」

「――それは此方の台詞です」

 

 

 

 その言葉を皮切りに――戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 (――勝負は一瞬。ならば……()()しかないよね!)

 

 

 そうして決闘が始まり、ジーニアスが選択するのは――速攻だった。

 自身が編み出した新スキル、その一瞬の一撃で以て勝負を決する、と。

 そして、対するカシミヤもそれは同じである。

 【イナバ】を用いて即座に鯉口を切り――抜刀の態勢に入り、その剣気を隠そうともしない。

 口で語らず、目を見ずとも雄弁に語っているのだ――一瞬後には斬り捨てる、と。

 

 しかし、その判断もある意味当然である。

 其れまでの戦い、技と技をぶつけ合い、高め合うあの戦いも彼らにとっては良い戦いではあったが――今戦うのは、今現在目の前に居る相手なのだから。

 それほどまでに、準<超級>となった彼らは今までとは一線を画す実力を持っているのだから。

 

 殆どの人類(人型範疇生物)では影すらも掴めない超々音速機動。

 更にその数倍の速度によって防御も回避も無為と化し敵対者の首を落とすカシミヤも――

 

 現時点で超級職に就いた数少ない<マスター>達をも上回るステータス、総合力を有し。

 更に特典武具の力も合わさり、以前とは比べ物にならない攻撃能力をも手に入れたジーニアスも――

 

 どちらも並大抵の相手では神速の抜刀術と光速の魔法によって瞬殺される程の猛者であり……それは、一歩間違えれば互い同士であっても変わらないのだから。

 

 総合力が高いジーニアスと言えど、カシミヤの抜刀術による法外の殺傷力を受けて耐えれる程の異常性は持ち合わせていないし。

 超々音速を越えた速度で行動できるカシミヤであっても光を避けたり斬ったりする事などできる訳ないのだから。

 

 そして、その事を直感でも、理でも理解している二人であるのならば、その結論は当然――相手より先に討つ。

 先手必勝こそが最大の勝機であると、そう確信しているのだった――

 

 

 

 故に、ジーニアスは初手で、己が開発したばかりの新魔法を開陳する。

 それは当然、カシミヤの神速に対抗できる――光の、光速の魔法。

 カシミヤにも勝ち得ると確信している魔法である。

 

 

 しかし、何もジーニアスがその魔法を選んだのは、この決闘で勝ちたいから――という理由も大分占められているが、それだけではない。

 

 不利になる事が分かっていながらも、先日の戦いで新技を披露してくれた友達に自分も新技を見せて上げたかったし、それで勝って勝ち誇って自慢してやりたいし。

 

 そして、やはり何より、勝ちたかったからだ。

 もしかしたら、()()()()()()()()()()()、この戦いを。

 

 

 

 

 ――さて、それじゃ行くよカシミヤ。

   本邦初公開――――《光子瞬移(フォトン・リープ)

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 (なるほど、これは――!)

 

 

 《神域抜刀》の効果により、既に超々音速に相応しい行動速度と知覚速度、思考速度に入っていたカシミヤは、()()を見て、ジーニアスの新技の概要を悟った。

 ……それは余りにも()()()()()であったのだから。

 

 何せ、ジーニアスはカシミヤの見ている前で――その総身を、()()()()()()のだから――――

 

  

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 《光子瞬移(フォトン・リープ)》。

 ジーニアスが開発したそれは――言ってしまえばただその為だけの魔法だ。

 つまり、己の身体(ボディ)を光に変換する。

 そして、その身に秘める熱量(MP)で触れる者を焼き尽くし、その身のままに光速の移動を可能にする――そういう魔法である。

 

 言葉で言うだけならば確かにそれだけで、非常に強力な魔法であるかのように思える……が、しかし。

 通常の人間が身体を光エネルギーに変換するなんて荒業を行えば当然の様に思考の残滓のみを残して、ただの光の塊に成り果てるのみである。

 ほぼほぼ、最終奥義に等しい自滅技にしかならない。なる筈がない。

 そもそも、身体をエネルギー体に変換してまともな思考が残るなんて、エレメンタルでもない限り在り得ないのだから。

 更には、移動、行動の後に光となった身体を元の身体に再構築する所まで含めるのならば――それこそ【神】でもなければ不可能な技量を要求されるだろう。

 即ち、《光子瞬移》とは幾つもの“不可能”が重ねられた筈の魔法なのだった。

 

 

 ――それを行うのが、意識のみアバターを通してこの世界に来訪している異邦人、<マスター>でなければ。

 ――それを行うのが、埒外の才覚を持ち存分にこの世界の術理に適応し使いこなす天才児、ジーニアスでなければ。

 ――それを行うのが、主のパーソナリティに応じてその有り様を千変万化させるエンブリオ、それにより形作られた身体(ボディ)である【アダムカドモン】でなければ。

 

 どれか一つが在り得なかったかもしれない、成し得なかったかもしれない程の綱渡りの末に作られたのが――この《光子瞬移》であった。

 尤も、そんな彼であってもまだ開発してから日が浅い代物である。

 実験だって碌に出来ておらず、実践投入は当然ながら今日が初だ。

 それでも尚、彼は確信している。

 

 これでカシミヤに勝ってみせると――

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 ――全細胞の光子への変換、完了。

 

 ――魔力(光エネルギー)の流出制御、……成功。

 

 ――形を為す指向は……リンと同じみたいな感じ。こう、かな? よし、出来た。

 

 ――此処までは練習通り、問題なし!

 

 

 カシミヤの見ている前で1メテル大の光球に変じながらも、当然の様にジーニアスはその自我を確りと保っていた。

 自身の細胞を別の物に入れ替える感覚は形容し難く、人の形すら失っても変わらない自分を自覚しながら――ジーニアスには、気楽にそれを楽しむ余裕すらもあった。

 

 ()()()()やれる<マスター>なんて、自分の他には早々居ないだろうと言う優越感。

 構想していた、カシミヤにも通じるであろう必殺の魔法を成功させた達成感。

 感覚の違い、身体の動かし方の違いを一瞬毎に味わい、噛み締めて。

 身体を変えた影響か、訳も分からず得られた高揚感と解放感。

 

 AGIによって加速した思考の中でそれらを賞味し呑み込んで。

 

 ……ジーニアスは、その光の塊は――カシミヤに向けて激突する!

 

 ――――さぁ、行くよカシミヤ!  

 

 

 そうして、光球が、それこそAGIにして億を凌ぐ速度、音すらも遥か遥か遠くに置き去りにする光速の域で、抜刀を始めたカシミヤに向かって飛翔した――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (あっこれむr)

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 確かに(ジーニアス)は《光子瞬移》を成功させ、その身体を光と化して、カシミヤであってもまともに反応できない光速の行動を可能としたが――

 光と化したジーニアスが光速で移動できるという事と――彼のAGI(思考速度)には、何の関連性もないのだ。

 当然ある訳がないだろう。

 

 つまり、彼は超音速程度の思考速度で、光速で移動する自身の身体を制御する必要があり…………

 

 ……その速度倍率の差は、実に一万倍以上。

 幾ら天才と、自他共に認められるジーニアスであっても制御しきれる訳がないのであった。

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

「「―t」」

 

 

 

 

 激突。衝突。

 衝撃、爆音爆風炸裂―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

【致死ダメージ】

【致死ダメージ】

【パーティ全滅】

【パーティ全滅】

【蘇生可能時間経過】

【蘇生可能時間経過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□地球 某所チャットルーム

 

 

【天才☆少年がInしました】

【刀剣一筋8年がInしました】

 

 

刀剣一筋8年:さて

 

刀剣一筋8年:何か言う事はありますか?

 

天才☆少年:HPとMPとENDの差からして間違いなく僕の勝ちだったよね!

 

刀剣一筋8年:衝撃音がありましたね?あれは僕が【エドラ・リンデル】で作った結界です

 

刀剣一筋8年:貴方がそれにぶつかった結果死んで僕は衝撃に巻き込まれてデスペナになっただけです

 

刀剣一筋8年:つまり勝ったのはどう見ても僕です

 

天才☆少年:【エドラ・リンデル】のデータ的には今のそっちの作った結界じゃ光になった僕との衝撃で耐えられない筈だから

 

天才☆少年:最終的には僕と君がぶつかってるんだよね

 

天才☆少年:つまりやっぱりここは僕の勝ちなんじゃないかな?

 

刀剣一筋8年:待ってください。その場合そっちだって結界との衝突でダメージを負っていた筈でしょう。条件は不利になりますよ

 

天才☆少年:……あー、【死兵】の《ラスト・コマンド》があればなぁ

 

刀剣一筋8年:奇遇ですね。死んだ時には僕もそう思いました

 

 

天才☆少年:……………………

 

刀剣一筋8年:……………………

 

 

天才☆少年:今日の所は引き分けという事にしよっか

 

刀剣一筋8年:仕方ないですね。これは貸しにはしないでおきましょう

 

天才☆少年:うん。だから

 

 

天才☆少年:この決闘の決着は、また次の機会に決めるとしようか!

 

 

刀剣一筋8年:ええ、そうですね。勿論僕が勝ちますが

 

天才☆少年:おっと言ったね?全国を回って僕が何も学ばないと思ったのかな!?

 

刀剣一筋8年:それは此方の台詞です。次に遣り合う時は、光くらい斬ってみせますよ

 

天才☆少年:へぇへぇ!ふふん、期待しておくからね!

 

刀剣一筋8年:まぁ僕も其方が国を回っている間ずっと天地に居るか分かりませんが

 

刀剣一筋8年:もしかしたら共に旅中の戦いになるかもしれません。月夜ばかりではないのです

 

天才☆少年:これだからPK好きはっ!

 

天才☆少年:というか、あれ天地出る予定だったんだ?なんか凄い様になっていると思ってたし、天地を根城にするんだと思ってたけど

 

天才☆少年:やっぱり一つの家に仕えたりするのは性に合わなかったりするって奴かな

 

刀剣一筋8年:そんな所です。それでも暫くは天地で戦っていると思いますが

 

刀剣一筋8年:まだ戦えていない天地の猛者も大勢居ますし、他に勝ちたい相手だって居ますし

 

天才☆少年:いやいや、正直あれは相手が悪いんじゃないかなって思うよ

 

刀剣一筋8年:……自分で言っておいて何ですが、まぁそれは頷くしかありませんね

 

天才☆少年:何でも、今回の件の首領である【クオン】の特典武具を手に入れたのもあの人なんだって

 

天才☆少年:巷では僕達マスターだけじゃなくて天地のティアンの人達からも“最強”の名で呼ばれてる程とか

 

天才☆少年:僕は直接戦った事はないけど観戦しただけでもちょっと頭おかしかったよねー

 

刀剣一筋8年:貴方にそう言われるのも多分心外だと思いますけど

 

 

天才☆少年:まぁ僕ならいつか勝てると思うけどね!

 

刀剣一筋8年:結局それですか!

 

天才☆少年:もっちろん!だって僕だよ?

 

刀剣一筋8年:其方のブレなさは本当に感心する程ですねえ

 

天才☆少年:……えっ

 

刀剣一筋8年:どうかしましたか?

 

天才☆少年:いやまぁ別にいいんだけどね!釈然としないけども!

 

刀剣一筋8年:なんですかまったく

 

刀剣一筋8年:所で話は変わりますが、もう準備は終わっているんですか?

 

天才☆少年:それは勿論。旅支度も挨拶回りも終わらせてるよ!

 

天才☆少年:ちゃんとやらないと怒られるし……

 

刀剣一筋8年:それはそうでしょう……そうでなくとも何故か楽観的に見えますからね、貴方は

 

天才☆少年:楽観的……そんなつもりは別にないんだけどなー?

 

天才☆少年:ただ僕なら何とかなるかなって思っているだけで!

 

刀剣一筋8年:ほらそれですよ!自信が過剰過ぎるでしょう!

 

天才☆少年:適正な自信なのに……!

 

刀剣一筋8年:まったく……

 

 

刀剣一筋8年:さて

 

刀剣一筋8年:それでは、暫くのお別れですね

 

天才☆少年:そうだね。まぁ別にどっちも心配する事なんてないと思うけど

 

刀剣一筋8年:別の意味で心配はありますけどね。各国で迷惑掛けたりしそうで

 

天才☆少年:ブーメランの天才かな?君だって割と天然トラブルメイカーなのに

 

天才☆少年:一緒に狩りしてるだけで3回はPKに巻き込まれたし5回は一緒に因縁付けられたし名指しで決闘もさせられたよね?

 

天才☆少年:全部勝ったけど!

 

刀剣一筋8年:なら良いじゃないですか

 

天才☆少年:良くないけど!?まったくもー

 

 

天才☆少年:それじゃ

 

天才☆少年:そっちも元気でね!

 

天才☆少年:次は僕が勝つからね!

 

刀剣一筋8年:其方も全国行脚、頑張ってくださいね

 

刀剣一筋8年:あと、勝つのは僕です

 

天才☆少年:どちらにせよ、次は絶対決着が着く様にやるんだからー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

□■???

 

 

 

<エンブリオ>:【逆討狼剣 ナポレオン】

MVP特典:逸話級【剛力鬼手 スートラヴァン】 

 

【虚樹錆香 ホロゥラストル】

最終到達レベル:71

討伐MVP:【剣豪】弥生 Lv100(合計レベル 500)

<エンブリオ>:【永劫時転 エイヴィヒカイト】

MVP特典:伝説級【虚無永布 ホロゥラストル】

 

【夜蛍壁礫 リップルラップ】

最終到達レベル:49

討伐MVP:【山賊王】ビッグマン Lv102(合計レベル 602)

<エンブリオ>:【巨霧通天 ブロッケン】

MVP特典:逸話級【蟲蛍怪腕 リップルラップ】

 

【戦竜王 ドラグバトル】

最終到達レベル:85

討伐MVP:【大戦士】モョモト Lv100(合計レベル500)

<エンブリオ>:【極天覇道 ハジュン】

MVP特典:古代伝説級【戦竜鎧 ドラグバトル】

 

【双天翻弄 エドラ・リンデル】

最終到達レベル:51

討伐MVP:【抜刀神】カシミヤ Lv169(合計レベル669)

<エンブリオ>:【自在抜刀 イナバ】

MVP特典:伝説級【双星手甲 エドラ・リンデル】

 

【双天奔放 エメル・リンデル】

最終到達レベル:51

討伐MVP:【求道者】ジーニアス Lv85(合計レベル935)

<エンブリオ>:【至光天 アダムカドモン】

MVP特典:伝説級【双星脚甲 エメル・リンデル】

 

「重畳、重畳。これは中々の成果と言えるだろう。私も鼻が高いという物だ」

 

 或る空間。数多のウィンドゥに囲まれた管理AI達の作業スペースでその男――管理AI4号、ジャバウォックは人知れず歓喜の声を上げていた。

 彼が今幾つものウィンドゥに分割し、閲覧していたのは〈UBM〉の討伐情報。その戦闘ログだ。

 

 〈UBM〉の討伐情報や、そのログの閲覧確認、そしてそこから着想を得て更に新たな〈UBM〉を、<マスター>達を成長させ得る障害を強敵を獲物を作り上げるのが彼の常の業務である。

 が……今回のこれは、些か事情が違った。

 

 それは、彼が主導して実行した『ハーフアニバーサリー』イベントにおける〈UBM〉と<マスター>達との戦闘ログ。

 常の〈UBM〉と<マスター>との戦闘以上に直接彼の成果がはっきりと出るこの場に、彼らしくもなく期待をして閲覧していたのだが――

 

 その結果は――彼の反応を見ての通り。

 期待以上の結果を得られた、という訳だ。

 

 <マスター>の一人の活躍により、有利な場での戦闘になったとはいえ――〈UBM〉は〈UBM〉。

 それも、分断され逃げ場のない、死に物狂いの〈UBM〉との戦いである。

 更に区画数の制限もあり、首級でありジャバウォックとしてもメインであった【クオン】を除き、最低でも2体ずつ以上との戦闘。

 この半年の間で<マスター>達も成長しているとは言え……それでも苦戦は免れない。

 苦戦があり、ドラマがあり、死線と死闘の狭間で――殆ど全ての区画で、その様な激闘の末に〈UBM〉は討伐されていたのだ。

 正に、製作者冥利に尽きる、という奴だろう。

 

 更に、今回の一連の騒動と戦闘を主な契機(トリガー)として進化しているエンブリオも複数あり、彼個人ではなく、管理AIとしても十分に過ぎる戦果であった。

 また、彼の本来の業務の一つとしての〈UBM〉の着想を得る、と言うのにも今回の件は大いにプラスに働いている。

 ……ある意味、それも当然だ。

 これだけの激しい死闘が幾つもの場面で発生しているのだ。

 これを見て何もインスピレーションを得られない様な管理AI4号(〈UBM〉担当)ではないのだった。

 

 ――それに、非常に有望な<マスター>も幾人も見つけられたのは僥倖だ。元々目を付けていた者も居るが。

 

 ――特に、あの二桁を越える〈UBM〉の固有スキルを有し、戦闘力だけで言えば神話級の域を越えかけていた【クオン】を斃したアレは……別格だ。今後がますます楽しみという物だ。

 

 ――他にも、予想通りだった者、予想外な者も……ふふふ、やはり天地は良いな。()()()()者達が集まってくる土壌が既に完成しているのだから――

 

 

 ……その様に、無意識で笑みを浮かべながらログを閲覧していたジャバウォックであるが――ある事に気付く。

 

 それは、【クオン】の配下だった唯一の神話級〈UBM〉【禁忌魔本 アル・マグナス】が見事に<マスター>集団から逃げ遂せている事。

 

 ――――そして、今現在、〈UBM〉担当であるジャバウォックでさえも、【アル・マグナス】の行方が全く掴めない、という事だった。

 

 討伐された記録もなく、ログでは転移で【ダイダロス】から抜け出した直後に、あらゆる反応が消失(ロスト)しているという結果だけが残っていた。

 当然ながら〈UBM〉担当であるジャバウォックは■■■■■を介する事によって全ての〈UBM〉の動向を把握する事が出来、■■■■■を持つ〈UBM〉が討伐され、特典武具へと変じた際には自動的に通知される様になっている。

 もしや、転移した直後に何らかの事故に因って死亡し、特典武具に変じる事なくリソースに還元されたのでは――と一瞬考えたが、それでもそのリソースの流れをジャバウォックが察知できない筈がない。

 

 何せ――彼はこの世界において、仲間達以外では他に並ぶ者無き<無限エンブリオ>なのだから。

 専門分野において、その彼の眼をすり抜けられる存在なんて、この世界に数えられる程度しか居る筈がない。

 

 

「――ああ、なるほど。そういう事か」

 

 一瞬だけ思考し……その答えに辿り着く。

 

 つまり――答えは()()()()()なのだ。

 【アル・マグナス】が【クオン】の助力を受け()()()()()()()()()()()()()()()()()――それだけの事だ。

 何せ、彼ら管理AIはそれが可能な存在を認知しているのだから。

 

 ――対“化身”(異物)隠蔽結界。()()に在ったか。

 

 ――【アル・マグナス】の能力からして、<アーキタイプ・システム>に登録されていた力。しかし、彼奴が手に入れられたという事は<終焉>の系列とは別。()()()()()()()()が使っていた代物だろう。

 

 

 ……対“化身”(異物)隠蔽結界。

 如何様によってか、この世界にありながら、実質的にこの世界を掌握している彼ら管理AIの目から逃れ続け、何らかの活動をしている者が使用している力の事をそう呼んでいた。

 それを扱う者の存在は、己の存在を隠蔽するだけで此方に直接干渉してくる訳ではなかったとは言え、<マスター>を招いている今となっては可能ならば排除したい相手であった。

 しかし、その特性から特定と排除は難航していたが――

 

「これは、捜索の手を幾らか絞れるかもしれんな。望外の成果となるとはな」

 

 そう考え、早速他の管理AI達――取り分け、それらの捜索に適している6号、7号、11号、13号に伝えておこうと立ち上がり……ふと立ち止まる。

 

 それは、本来〈UBM〉担当として最重要視するべきかもしれない存在――彼の腕から逃れ出た初の〈UBM〉、【禁忌魔本 アル・マグナス】の事を思考しての事だ。

 かの存在の転移からロストに至るまでの一連のログと、今まで行ってきた戦いとその固有スキルについて、管理AIとしての演算能力で高速で読み取り、……更に数秒考え込む。

 

 〈UBM〉担当管理AIの手から逃れた〈UBM〉。

 そのレベルはまだ100の壁を越えていないとは言っても、その能力を考えれば【クオン】の助力を得た時点で既に半分規格外(イレギュラー)と言っても過言ではなく。

 その上で制御下を離れているのだから――かの存在は、既に他の<イレギュラー>と同列に扱うべきだろう。

 更に、その対“化身”隠蔽能力により、他のイレギュラーにする様な対策を取るのも難しいと来ている。

 その対策を行う為には広域の探査・広報が行える7号、11号、13号の手を借りるしかないだろう、とも。

 

 だが――

 

「――ふ。らしくもない感傷だ。だが――()()()

 

 ――幸いにも【アル・マグナス】はそこまで好戦的な〈UBM〉ではない。

   捜索と対策の依頼は必要だが――最早私の手を離れたならな、それ以上は不要だろう。

   元より、<マスター>を招いた後は殆どの事柄は彼らの自由にする予定だったのだ。

   ()()()()の刺激は望む所だろう?

 

 そう結論付け、ジャバウォックは再び歩き出す。

 

 ……今度は、自覚して笑みを浮かべながら。

 

「――寿ごう、【アル・マグナス】。良くぞ私を出し抜いてくれたな。

 だが、果たしてその先に何を為すのか……精々期待させて貰うとしよう――」

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 そうして、今回の一幕は完全に終わりを迎える。

 この先、この世界に何が起こるのか。

 

 それを知る者は、まだ誰も居ないのだった―――― 

 

 

 

 

To be Next Episode…………

 




ステータスが更新されました――――

光子瞬移(フォトン・リープ)》:アクティブ(魔法)スキル
 ジーニアスが作った頭おかしいオリジナル魔法スキル。
 自分の身体(ボディ)の細胞全てを光に変換し、その状態で行動するスキル。
 実質的に物理攻撃無効・光速移動・光熱反撃が行える超スキルになる……と思ったら意識が残っているからなのか光の塊としての形を保てなくなった時点で死んでいた。
 どう考えても最終奥義系のそれでありこんな所で実行してしかも失敗するのは色んな意味で頭がおかしい。
 しかも命名的に本人は「カシミヤの超々音速機動に負けない速度が欲しい!」って思って移動スキルとしてこれを作っていたとか。
 流石にハイエンドであるジーニアスであっても光速を制御する事は出来なかったし出来る気配もない為、暫く封印する事になった。残念。

【双星手甲 エドラ・リンデル】
 <伝説級武具(レジェンダリーアームズ)
 星の力を操る稀なる対の武器の概念を具現化した伝説の武具。
 装備者に斥力の結界を操る力を与える。

・装備補正
 SP+10000
 STR+15%

・装備スキル
 ・《双天結界》
  SPを消費して斥力によって知覚範囲内の最大二箇所に自在の形状の結界を作成する。
  結界の強度は(STR+AGI+END)の半分を基準とする。
  クールタイムは1分間。結界の規模と持続時間に従って継続してSPを消費する。

 ※譲渡・売却不可アイテム
 ※装備レベル制限なし


【双星脚甲 エメル・リンデル】
 <伝説級武具(レジェンダリーアームズ)
 星の力を操る稀なる対の武器の概念を具現化した伝説の武具。
 装備者に数多渡る転移の力を与える。

・装備補正
 AGI+15%
 END+2000

・装備スキル
 ・《双天転移》
  MPを消費して自身を含む最大二人までを知覚範囲内の任意の地点に空間転移させる。
  簡易に転移できる基準となる一定の距離は(STR+AGI+END)のの500分の1メテル。
  クールタイムは1分間。一定距離を越えると加速度的に消費MPが増大する。

 ※譲渡・売却不可アイテム
 ※装備レベル制限なし



 ――――はい、今章も最後までご覧いただきありがとうございました!
 これにて今章……今部、第一部終了です。
 本当に長々とご覧いただきありがとうございました!

 次章、次部は本編でもちょっと言っている様に諸国漫遊編です!

 ……ですが、正直情報が少ないのとか諸々の事情でまだプロットが全く出来上がっていない為、これまで以上に暫く更新休止する事になります。
 あ、アニメ一期が終わる頃には次章第一話をお届けしたいなと思っております。
 それでも良ければまた更新した時に見に来て貰えれば幸いです。
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