無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:この養殖天災児、割とリアルラックの値が低い――

それでは本編をどうぞ!


第六十七話 朧の孤島・開拓作戦!

□■【月海純竜】

 

 吾輩は【月海純竜】である。名前はまだない。

 この名もなき島で生を受け、そして純竜として生まれた為直ぐにこの島のモンスター達の頂点となった者だ。

 生まれながらに高い能力と竜種としての知恵を兼ね備えるすーぱーどらごんである――!

 

 

 ……とは、流石に言い難いのはこの島が本当に何もない島であるからだ。

 私が生まれたのはおよそ五百年ほど前だったか。その時点では今以上にこの島には何もなく、生息しているモンスター達も下級モンスターやモンスターですらない野生動物が精々で、むしろこの純竜としての力を持て余してしまう程の寂れた島だった。

 あるいはただ巨大な岩礁なんじゃないかと勘違いしてしまうくらいにはこの島には何もなく。

 そして、生まれながらにして得ていた竜種の知識としては幼体の間は親竜に守られる筈が――吾輩の父母の姿は何処にもなく。

 もしかしたら吾輩はこの何もない島に棄てられた捨て竜なのかもしれない――――

 

 

 ……というのは、別にどうでも良い事だった。

 生きるのに全く困らなかったからね吾輩。実力的にも食物的にも。

 伊達に生まれながらの純竜ではないのだ――と、威張れるのはこの島でだけの事なのであるが。

 

 吾輩が生まれてから、もう五百年以上にもなるか。

 その間ずっと、戦闘を好む性質ですらない吾輩が頂点に立ち続けられる程の安穏としたこの島だからこそ……吾輩はその変わらぬ日々を甘受できるのだ。

 吾輩の他には亜竜級のモンスターがちらほら居る程度。

 潮流の関係か流れ着くモノも殆どなく、当然ながらこの島を覆う大海には吾輩を遥かに越える怪物級の海棲モンスターが犇めいており、生半可な実力で渡れるものではなく。

 新たにこの島に加わる種は稀に<アクシデント・サークル>で飛ばされて来る異邦の種のみ。

 それだってこの島の環境に適応できずに死んでいく者も多いが……それでも、そんな長い年月を経てこの島は立派な生態系を持つ一つの孤島へと成長していった。

 

 あるいは、大昔のこの島の姿を知っているだけにその島の成長自体も我が事の様に喜ばしい物と思いつつもその自然の恵みで腹を満たしていた。

 

 

 

 

 

 ――そんな、いつもと変わらぬ何事もない日だと思っていたその日に……吾輩の竜生史上最大の“脅威”がやってくるなんて、誰が想像できるだろう!?

 

 

 

 初めの異変は……圧倒的なまでの魔力の波動。

 何らかの魔法の発露による物であろう、吾輩の全魔力にも匹敵する程の魔力と“圧”が込められた魔法がこの島全域に掛け巡らされた事だった。

 この時点で島に居る気性の激しい子達(モンスター)が興奮して騒ぎ始め、幾らかはその魔力の発信地に向かい始めた。

 

 ……本来なら、この島のモンスター達の長を務める吾輩も事態の把握に努めるべく動き出すべきだったのだ。

 しかし、吾輩は……動かなかった。否、動けなかった。

 この“圧”の持ち主に敵対するのを、恐れて。

 

 ……そして、結果的にその判断は正しかった。

 何故なら、続く第二、第三の異変。

 

 魔力の発信地と見られる海岸付近の上空に、二つ目の太陽と見紛う程の輝きの光球が出現し――そして次の瞬間、光球から光線が乱射され……向かっていった、その殆どが殲滅されていた。

 

 

 ……いやいや、いやいやいやいや。

 亜竜級の子らが碌な抵抗も出来ずに瞬殺ってどういう事、どういう事なの!?

 確かに、彼らは気性は荒いとは言ってもまともな戦闘経験もない子達だったとはいえ、曲がりなりにも亜竜級の子らよ?

 それを瞬殺って……昔に飛ばされてきた【ゴブリン・ワイズマン】の上級魔法だって同格の亜竜級一体を仕留めるのに弱点属性の魔法を何発も放っていたのに、瞬殺って……

 

 明らかに、吾輩よりも――格上。それも、圧倒的なまでに!

 

 

 

 (……凄く逃げたいなぁ。吾輩とか偉ぶってるけど実際大した事ないし。このまま動かなければ見逃してくれないかなぁ……?) 

 

 既に勝ち目の無さを悟り……そんな儚い願いを抱いたりするのも無理はないんじゃないかなと思う。

 そして――それが叶えられない事も理解してしまう。

 

 何故なら――次なる第四第五の異変で。

 突如その光球の傍に人間……人型範疇生物が出現して――あからさまにこちら(吾輩)の方を見ているからだ!

 

 そうなるよね、誰だってそーする吾輩だってそーする!

 理由は分からないけどこの島を襲撃しに来た輩が――この島唯一の純竜級である吾輩に目を付けない訳がないよね!?

 吾輩は無害な純竜であると言うのにィィ――ッ!?

 

 

 ――《月の湖沼》よ!

 

 即座に展開した防御スキル――真っ黒な半球の如くそれが展開されると同時に、四方八方から超音速で飛来した鉄杭の様な物が突き刺さる。

 直後、鉄杭は速度を大きく落とし、幾つかは静止し墜落し、まともに刺さらずに済む。

 

 

 ――《黒き海溝》……!

 

 次に逃げる為の一手を。

 攻撃を吸引(・・)する漆黒の球状の力場を囮としてその場に残し――自身は別のスキルの反動で低空を跳躍し距離を離す。

 

 (マズイマズイマズイ、逃げ、逃げられる? 無理、出来っこない!!)

 

 跳躍している間も、AGIにより引き延ばされた時間で……この状況を逃れる未来を考える。

 このまま逃げ続けるのは――不可能。

 スキルによる加速がなければ、吾輩はどちらかと言えば耐久系のステータス!

 まず間違いなく数分の内に魔力(MP)が尽きるし――そもそもこの島はそんな速度で逃げ続けられる程広くはない!

 海に逃げるのも論外――――

 

 

 ……よく考えなくても吾輩、詰んでないかな!?

 

 いや、きっと何処かに善い案が――「――ああ、これは重力を操ってるんだね。前に似た様なの見た事なかったら分からなかったよ」

 

 ぎくり。

 

 

 

 ……内心としては絶対に振り向きたくはなかったが――つい、反射的に振り返ってしまう。

 

 そこで吾輩を追っていたのは――煙を吹き出しながら飛行する瓜二つな二人の人型範疇生物の少年。

 そして――吾輩を凌駕する程の魔力を迸らせる、鮮やかな赤色に彩られた竜――純竜!

 その三者が三角形を描くかのように吾輩を囲もうと追随して……いや、追い抜いて、完全に囲まれた。

 

 ……初速の最大速度ではないとはいえ亜音速程度は出てた筈なのだけど――ッ!? 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

『――うむ。マスターよ、こやつが此処の首魁で間違いないだろう』

「うん、そうみたいだね。他に純竜級は居ないっぽいからね。さて、どう落とし前を付けて貰おうかなー」

『しょす? しょす?』

 

 

 そして、私を取り囲んだ襲撃者達はスキルを警戒してか一定の距離を保ったまま……その処遇を話し合っている様だ。

 ……スキルを発動して逃れる隙もなく、そしてそもそも逃げられる様な実力差、戦力差でも、ない。

 

 

 かくなる上は――――!!

 

 

 

『……こ、殺さないでくださぁい!』

 

 

『……こやつ、純竜の癖に命乞いしおったぞ!?』

「うわぁ凄いへt……新鮮な気分だね!」

『プライドはないのかー』

 

 

 吾輩は平和主義な竜なんですよプライドなんて命の為ならいくらでも捨てるに決まってるじゃないですかやだ―!

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

遭難日記1日目

 うん、そういう事で。

 遭難してしまったのは仕方ない、仕方ないので遭難したなりにこの島を探検して楽しもうと思うよ!

 どうせ桑木さん達のデスペナが明けるまで結構時間あるし、まぁその間ログアウトして他の事してても別に問題ないんだけど……

 逆に考えるんだよ、こんな(遭難する)機会なんて滅多にないんだからこれは楽しまなきゃ損であると!

 こうやってウィンドウのメモ機能を遣えばデンドロ内でも日記は書けるからね。

 ここから僕のたのしい無人島生活が始まる――!!

 

 ……とは言っても、やっぱりまず必要なのがこの島の全景とか生息モンスターとか諸々の把握や安全確認なんだけどね。

 流石に無いと思うけど、この島がヤバい島で僕までデスペナ、なんてオチになるのは嫌だからね!

 デスルーラは本当にどうしようもなくなった時だけの最後の手段、ゲーマー的になしではないけど<マスター>的に推奨はしないのだっ。

 僕には飛行魔法も探査魔法も、島を駆け抜けられる超音速機動もあるんだから、調査もお手の物だね。

 

 

 ――と、意気込んではいたんだけど実際には小一時間程で調査は完了したんだよね。

 掲示板とかでも言われてたけど高レベル<マスター>は世界を縮めるよね……いや、ゲーム上で現実と同じだけ時間を掛けて世界を開拓しろと言われても困る人の方が多いんだけど。

 さて、この島の全長は……大体数十キロメテル、生息するモンスターはレベル30前後の魔獣、魔蟲、怪鳥、あとは多少のエレメンタル系統の下級モンスターが主で、食物連鎖の上位には亜竜級がちらほら少なめ。

 島のヌシは純竜級っぽい【月海純竜】という未見の純竜種だったね。首長竜的な……僕はあまり見た事ないけど確かに海竜種! って印象がするフォルムの相手だった。

 とりあえずクラゲ(海月)とはあまり関係なさそうな感じだった!

 島で採れそうな素材は……どうなんだろう。そこまで魔力を含んでいる物は無かった感じ。

 鉱物等は、あまり見ない奴ではあるけど確か海辺の付近で採れる特有のものが多めなのは海に囲まれた無人島なら納得できて、諸々を含めてモンスターも素材も毒性を有していそうなのも殆ど無し――

 

 ……凄く、すっっごく普通の無人島だった!?

 えぇぇ……こういうのって大抵凄く特徴的なモンスターとか素材を発見したり、実は〈UBM〉が支配している島で僕がそれを討伐したり、やっばい原住民とかモンスターとかが居たり超希少な素材を手に入れたり秘密組織の秘密基地があったりするんじゃないのっ!?

 まさか極々普通の何もない無人島だったなんて、やっぱりそういう夢のある話はふぁんたじーだからこそ許されるのか……っ

 そりゃ確率的にはこういうデフォルトちっくな島の方がありえるだろうし、僕だってデスペナしたくないんだからその方が都合は良いんだけどもこのもにょもにょした感情の行方――!

 

 ……まぁ、一応、懸念していたデスペナの危機がない事は安堵すべきではあるし、それならそれで楽しみ様もあるから別に良いんだけどね。

 うん、良かった良かった……さて。

 

 それじゃあ――無人島開発、行ってみよう!

 

 

 

 

 

 

遭難日記2日目

 そんな訳でっ! 僕が立地決定、設計、素材調達、建設まで全て行って作成したマイハウス(自作小屋)がこれである!

 わーわー!

 ……イグニスとリンが居るとは言え、大半が僕自身の影分身ではしゃぐのは精神的にちょっと疲れるね。

 

 それでも……うん、僕頑張った!

 インターネットで教材を探す事一時間(デンドロ内三時間)、多重影分身を動員して適した木々の採取伐採に加工に組み立てに、はて何時間だったか。

 まぁ、多重影分身で作った影分身でもステータス的にはリアルの一般成人の身体能力を軽く凌駕しているってのは凄い事だよねって。

 それでも、複数操作して教材の見様見真似でこんな意外としっかりした小屋を作れるなんて、流石僕だよね!

 持ってる素材とこの無人島で採れる素材の限界で質素な造りになってるけど、しっかり雨露を防げてゆっくり休めるこの広さなら十分じゃないかな。

 ふっふっふ、ビルド(ジョブ構成)的には純戦闘型なのにこんな事もできるなんて僕の天才性は留まる所を知らないのだ……!

 天気模様が若干危うかったから先に作ったけど、なんとなく今までにない達成感。

 これが生産職の楽しさ――そうなんだね勝、明日香!

 

 

 ……まぁ、流石にジョブもない完全な素人仕事だから魔法も使ってズルはしてるんだけどね。

 防音とか、耐蝕とか、大丈夫だと思うけど水も漏れないように結界魔法でちょちょいとね。

 この程度の小細工は愛嬌という事で。

 【建築家】系統のジョブスキルのない、完全に自力の手作業で作った奴だから、建物として特異な防御力とか補正みたいな能力はないけど、それはそれ。

 最早気分は遭難じゃなくてキャンプとか合宿みたいなもので、ついでとばかりに影分身で生っている木の実とかなんか無人島っぽいの採取して【アイテムボックス】に保存したりしてみる。

 良いお土産になったらいいんだけど。

 ……遭難ってお土産って概念のある物だったっけ? まぁいいよね!

 

 桑木さん達のデスペナはまだまだ明けないだろうし、明日はイグニスやリンと一緒に気ままにゆっくり島を散策しながら採取の旅でもしようかな、っと。

 

 

 

 

 

遭難日記3日目

 実際はあまりインしてないけど実質的に今日は遭難3日目の筈。

 ……なんだけど、こういう時くらいちゃんと現実の方でしっかり睡眠取っておきなさいって言われちゃった。

 確かに休日は家族の時間以外殆どずっとデンドロにインしっぱなしって事も結構あったし、一理も二理もある……という事で、現実(リアル)では深夜である今日はログアウトしておやすみの日。

 丁度、という訳じゃないけど僕のいる無人島の周辺も雨が降って来たしね。

 別に僕らはEND的に雨で少し身体が冷える程度でどうにかなる程やわな身体してないんだけどね!

 

 ……いや、END高くても普通に風邪は引くしどれだけ耐性が高くても<流行病>に掛かったりするから用心するに越した事はないとか聞いた事あるけどそれはさておき!

 実際、耐性が全く機能しないと噂の<流行病>ってどんな感じになるんだろうね?

 僕、現実の方でも正直体調を崩す、っていう経験が例外を除けばなかったから良く分からないんだよね……興味深い様な、若干怖い様な。

 まぁ、健康でいるに越した事はないよねって事で。それじゃおやすみなさーい!

 

 

 

 

 

 

遭難日記4日目

 朝起きてログインしたらバラバラになった木屑の上だった。

 折角作ったのに、絶対許さない……生態系なんて知った事か、この島のモンスター根絶やしにしてやるー―!!

 

 

 

 

 

 

遭難日記5日目

 根絶やしはしてないけど、僕の力作小屋の復讐は多分完了!

 まぁ、あの場所の状況と痕跡からして、犯人は【亜竜轟猿】【亜竜致命兎】【亜竜沼竜】辺りだとは分かっていたけどね!

 小屋の素材の強度と防御用じゃなかったとはいえ結界の強度的には、下級モンスターには無理な芸当だったからね。

 付近に泥も残っていたから怪鳥系でも(多分)なかっただろうし。

 他にもただの建築物を攻撃する気性の粗さから言っても、間違いなくそれらの近縁種――この島にはそれくらいしか該当種が居ないからね!

 数はそんな多くはないとはいえ、僕頑張った!

 

 

 ……まぁ、それはそれとして色々と迷惑を掛けたヌシの【月海純竜】には本当にゴメンだけどね!!

 

 僕も気が立っていたから――こういう事も、ある!

 それにしても、驚いたのはこの島のヌシである【月海純竜】の実力だった。

 まぁ正直に言って……僕は舐めていた、格下に見ていたと言っても良いよね。

 Wikiでも未発見の種だったとはいえ、ステータスも問題なく《看破》済みだったし。

 いくら純竜級とは言え、この島には他に亜竜級までしか居ない、唯々その純竜級としてのステータスを振るうだけでこの島の王者になれる環境でもあった。

 

 ……そこに、数多のスキルを使い、ステータスだけ見ても倍以上ある、並の純竜級なら幾重にも手加減しても尚初手で勝負を決められる実力を持つ僕ならば――そんな感じに、油断(・・)していたんだよね。

 でも、それは違った。奇襲のつもりだった初手も次撃も完全に凌がれて、そこから全力を出さなきゃ危うく撒かれる所だった。

 風属性の普通の飛行魔法じゃいくらAGIが高くても速度には限界があるからね。天地で新技を開発しておいた甲斐があったよ……

 察知能力も、防御能力も、瞬間的な判断力も、そしてあの速度も全て予想外。実に天晴れだよ!

 そりゃあ、あのヌシが才能のある個体だったという事もあるんだろうけど…………うん、何となく、目が醒めた気分だね。

 

 今思えば、天地を出たあの瞬間から、僕は何処か半端に浮足立っていたんじゃないかな。

 【ウォルケートゥス】と会敵したあの瞬間も……その気なら、あの状況でも僕ならいくらでも攻撃手段はあった筈だし、合流の瞬間なんていう一番警戒しなきゃいけない時に不意打ちを許すなんて、僕らしくもないっ!

 しかも、自分に色々言い訳して安全策に……自分だけは安全にデスペナを免れる様に逃げて、結局にっちもさっちも行かなくなってこうやって遭難する羽目になって……全く情けないよね!

 

 気合いを入れろジーニアス、天地を出た漫遊の旅というのは何も言い訳にはならないよ!

 そんな事じゃジーニアス(天才)の名が泣くよ!

 精神論に傾倒するつもりはないけど……僕はジーニアス、天才。だから、特に必要な時に失敗なんてする筈がない。そんな心持ちで頑張ろう。

 

 

 うん、こういうのはいつもの日記には書けないから何となく新鮮だね――まぁそれはともかく。

 折角ヌシの【月海純竜】と和解(?)して、邪魔なモンスター達も間引いたんだし、天気も少なくともに三日は晴れが続きそうだし……

 桑木さん達もデスペナはもう明けてて、明日の夜半頃には合流できるみたいだから、この無人島でのバカンスは後一日が限度という事。

 本格的な撤収準備は明日の午後からでも十分間に合うから、それまではここでのーんびり、かな。

 ずっと精神を張り詰められるのは不可能じゃないけど苦じゃないという事ではないからね。

 必要な時と、そうじゃない時の区別をちゃんとつけないと……ずっと天地に居たからその緩急の切り替えの経験値が低かったんだよね。

 コテツやアスカと合流した時に情けない姿は見せられないからね。ここはこの無人島で、正しい緩急の付け方というのを学んで見せようじゃないか!

 僕の学習能力なら清く正しいだらけ方を習得する事も――容易!

 さぁ、全力でだらけるぞぉー!

 

 

 

 

 

 

遭難日記6日目

 とうとうこの無人島遭難日記も今日で終わり……うん、改めて見返してみても好き勝手してたと言う他ないね!

 何なら今日も多重影分身で枯れない程度に採った素材を【アイテムボックス】に詰め込みまくる作業に没頭していたからね。

 僕はモンハンでもやれる時はそういう事するタイプ……!

 いや、ほら。この島は別に他に採取する人も居ないしそこまで特殊な物じゃないから危急に必要になるって事もないだろうし、そういう素材でもコテツやジェーンさんなら普通に有用に使えるからねっ。

 その上で野生のモンスターの生態系にそこまで影響が出ない様に配慮している僕は凄いし偉い!

 ……まぁ、その為の情報は割とWikiからの引用や【月海純竜】頼りなんだけど。

 多分問題ない筈。Wikiの人達は優秀だし【月海純竜】もこの島では最古参に近いらしくて才能もあるっぽいからね!

 

 最後にこの島を出る前にその【月海純竜】に餞別でもあげよう――と思ったんだけど、ここでちょっと変な事になったね!

 何でも、この島の外の世界を見てみたいから連れ出して欲しいって……自力での渡航ぅ!

 当然の如くの様に突っ込んじゃったけど、実はヌシの【月海純竜】、割とへたれだからね……才能はあるのに!

 それでもこの島の頂点の座に居たのはただヘタレであっても圧倒的な実力があったからな訳で――この島の中では、の話だけど。

 つまり、海のモンスターが怖いって事だね。まぁそれは理解できるよ……〈UBM〉は珍しいにしても、ああいう出来事自体は割とあるっぽいしね。

 しかも、この島の周囲には割と強力な……この【月海純竜】じゃどうしても勝てない上位純竜級のねぐらもあったりして、迂闊に海に出たらおやつにされちゃうんだとか(というかされかけたんだとか

 そんな訳で、この島を出れる宛てがある僕ならば、と一時的な同行の為なら【ジュエル】に入る事も辞さない覚悟で頼まれた訳だね。

 僕としても、世話になったのは事実だし否やはないし、快諾して遠慮なく《従属契約》する事になったのだ。

 

 

 ――一時的で済むかどうかは別だけどね!

 まぁ、それは多分向こうも理解しているとは思うけども。あの子もあの子でへたれな割に……へたれだからか、自身の身の安全の為により強い力を求めているっぽいニュアンスがあったから。

 あるいは僕と一緒なら安全に過ごせると思っているのか――だけども世界は広いから僕より強い相手なんていくらでも居るんでした!

 色々大変だろうけどテイムしたからには一蓮托生、一緒に頑張っていこうね!

 

 そんな一幕もあったりして……日が沈む頃には桑木さんの【ヴェパル】と合流する事に成功っ。

 ……この島に辿り着いたのはただの事故だったけど、色々と今までにない経験だった気がして感慨深いよね。

 割とやらかしが含まれていた様な気がするけどデンドロだから致し方なし、という事でいつもの日記にも書かないからノーカンという事に……ならないかな!

 まぁそれはともかく、いつになくまったりとした日々で、若干名残惜しい気持ちもあるけども――さらば、名もなき無人島!

 そして、新たに仲間を加えて、いざ行かんグランバロアの大海へ――!

 

 

 

To Be Continued…………

 




ステータスが更新されました――――

月海純竜(ルナマリア・ドラゴン)】:
種族:ドラゴン
クラス:純竜級
備考:多分エスパー・ドラゴン。種の時点でドラゴンの中でも希少種。というより実質この個体しか確認されていない。
 強大な竜より生まれた生まれながらの純竜であるえりーとなドラゴン。かの島の誕生の経緯に密接に関係しているが本編には多分関係ない。
 実は海って種族名に付いているのに水中行動適正はないし泳げないし海竜種ではなく地竜種。
 生まれる前に周囲の魔力を取り込んだ結果海の魔力の影響か海属性魔法の防御魔法の適性を獲得した様だ。水中行動用の魔法は……?
 前述の様に海属性の防御魔法と重力を操るスキルを有し、ステータスとしてはAGIが低くENDがより高い以外はバランス良く高い。
 純竜級としてのステータスもあり実際のスペックは高い――が、本人が有用に使う気があるかどうかはまた別問題である。

 長い間かの島の頂点に君臨し続けていたが、圧倒的強者(ジーニアス)と会敵しあっさりその下に降る。
 実際、この時の【月海純竜】は知らなかった事であるが大<マスター>時代である現代において今まで人間範疇生物にとって未見の島であったかの無人島はもはや安全圏ではなく、いつ<エンブリオ>の力によって辿り着いた<マスター>が来るとも知れない為、予断を許さない状況だった。
 そしてその場合、希少種である【月海純竜】は素材目的で狩られるかドナドナされるかの二択となっていた可能性が高いだろう……この天然天災竜、割とリアルラックの値が高い――
 


 ……はい、今話もご覧いただきありがとうございました!
 プロットと本文書いていたらテイムモンスターが湧き出ていた。何を言っているのか分からねーと思うが僕も分からない。
 鎧の如くの防御力を持つポケモンが居る孤島に辿り着いちゃったので仕方ないのでしょう。
 さて、グランバロア編はそんな感じでジーニアス君の強さ描写が増えると思いますが……準<超級>の強さをお見せ出来たらなと頑張りたいですね!

 次回からようやくまともなグランバロアの海での船旅の話なのですが……?
 それでは、どうか次話もよろしくお願いします!

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