無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:おい、デンドロしろよ

それでは本編をどうぞ!


第六十九話 大海魔海の・魑魅魍魎

 

□グランバロア首都船・波止場 【船長(キャプテン)】エメラダ・オーシャン

 

 

 

 

「おぉぉ、おおぉぉぉぉー…………!」

 

 

 

 規則的に打ち寄せる波に、極僅かながら揺らされる足場――数多の巨大船の甲板。

 鼻をくすぐる潮の匂い、水気を、潮気を含んだ風に、海鳥の囀り。

 この巨大船による波止場の直ぐ近くで他の船から降りてきた人達も屯しており、その中でも様々な悲喜交々があり。

 少し耳を凝らせば市場の賑やかな声が聞こえ、更に遠くからは様々な作業音。

 蒼い大海の上、蒼い大空の下。他に何も遮る物無き其処にありしこの海洋の大国こそが――

 

 

「――グランバロアッ! 漸く正式に入国できたよ、やったー!」

「おめでとうー。わーわー!」

「ありがとうありがとう! ……で、グランバロアに来てまずはこれ、みたいなお勧めの場所あるかなーっ?」

「えー、そうですねぇ……」

「いや、その前にあなた(ジーニアス)はやる事があるでしょーがっ!」

 

 

 (【ヴェパル】)から降りて、少し先行していたジーニアス(天野君)とアルビジアについそう突っ込む。

 「分かってるよー」と笑いながら言うので冗句の類みたいだけど……テンションの高さは私達から見ても、間違いなく本物だった。

 

 話を聞くに、ジーニアスはこのグランバロアが初期国家から出て初めての他国なのだとか。それならテンションが上がるのも無理はない……のだろうか?

 それと同調してはしゃいでるアルビジアは、本当に外見(アバター)不相応というか……というか貴女は何度も一緒に他国に足を踏み入れていたしここは私たちのホームでしょうがっ!

 

 

「ふっ……こうして見るとやっぱりジーニアスもまだまだ子供ね。他国に来るくらいであんなにはしゃいじゃって」

 

 私達はもう天地以外の全ての国に足を踏み入れた事があると言うのにね!

 

「いや、アタシらの場合は本当にログアウトの為に“足を踏み入れた”だけだから全く参考にならないからな? 殆ど滞在とか観光とかしてないし」

「その様な事は些事でしょうっ!」

「……まぁいいけどさぁ」

 

 そんなやり取りをしながら、【ヴェパル】を収納してマンリョウと共に二人の後を追う。

 あちらも視界内には留まる様に配慮してくれているし、アルビジアも居るから問題はないでしょう。

 

 ……若干、はしゃぎすぎな気はしないでもないけど実力的に問題は無い筈、ないよね……?

 

「……うん、私達も早く行くとしましょうか」

「そうだな。――それにしても、()、あんなにはしゃぐんだねぇ……」

 

 確かに。

 チャットやメールと言った間接的な交流ではなく、直接的に、あんなにも彼が感情を露わにしてはしゃいでいるのを見るのは……私達としては、初めてだったし、とても驚く物だった。

 

 

 

 ――何故なら、私達が知るジーニアス……天野理という少年は、この<Infinite Dendrogram>での彼は全くの別人と言っても良いものだったから。

 

 

 天野理、今年度頭に私達のクラスに新たに編入してきた転入生。

 既にクラス替えをして一年経っており、クラスの中で輪がほぼ完全に出来ていた時期の新しい顔。

 そんなイレギュラーな事態にクラス揃って沸き立ちもした。

 転入生が来るという話を聞いて、誰が一番に仲良くなれるかなんて事を呑気に言い合っていた事もあった。

 

 

 しかし、実際に転入してきた天野君の実態は……今だから素直にそう言えるけども、一言で言って()()()()()いた。

 

 才色兼備、眉目秀麗、文武両道……あるいは、もっとチープに言えば――完璧超人。

 私達から見た天野君と言うのは、そういう人だった。

 授業で当てられればどんな問題もすらすらと解き、テストが出されれば百点満点。

 あるいは、全く理解できない様な事すら先生と言い合っていた事すらあった。

 初めての体育の時間なんて、一人で相手チーム全員に勝てるんじゃ? と思わせるぐらいに活躍してもまだ余裕の表情すら崩さず。

 容姿も言うに及ばず、常日頃から隙を見せない、そんな孤高な存在。

 私達と同年代とは信じ難い程の近寄り難い新入生。特に、身体能力を比べられてた男子なんかは余計に仲良くしにくい子だった。

 あまりにも周囲と隔絶していて、誰も彼もがどう接していいのかも分からないで遠巻きにするしかない程……そんな、印象とも言い難い印象を抱かせる程に、私達とは“違う”存在だった。

 

 授業中は勿論、休み時間だって何らかの本を読んでいたり、放課後も直ぐに帰っちゃう、と言う程ではないけれど隙の無さは健在で、誰も話しかけられないまま。

 

 そんな状況が変わったのが夏休み明け……そう、<Infinite Dendrogram>のサービスが開始してからの事で――

 

 

「やっぱり、彼も普通に男の子だったって事ね!」

この国(グランバロア)ならともかく、他の国で決闘に精を出している時点で普通じゃないんですけどそれは。しかも……天地じゃない?」

「……天地だって良い所はあるわよ。多分

「当初の彼のイメージ的には合ってる気はするんだけどねー」

 

 ちなみに、客観的に見ればグランバロアも天地とは違う意味でヤバい(危険な)事は他国からすれば周知されているのだが、それはさておき。

 

 

「まぁ、折角の機会なんだし精々歓迎して……って、何やってるのさ?」

 

 二人してジーニアスとアルビジアに追いついていくと……何故だか二人が(と言うよりジーニアスが)(甲板)の縁から海を覗き込んで不思議がっていた。

 ……いや、本当に何をやっているのだろうか?

 

「あ、二人とも来た。いやちょっとね。Wikiとか見て、この首都船(グランバロア号)で気になった事があったからちょっとした――調査?」

「えっ、お上に睨まれる様な事してないでしょうね……!?」

「してないけどっ!? 僕の事を何だと思っているのさ!?」

 

 ……埒外だけど面白い反応をする友人、かしら……?

 

「それはともかく、気になる事って何かしら。私達に答えられる事なら答えるけど」

「ともかく……いや、この国、グランバロアを選んだ場合の初期スタート地点ってこの首都船じゃない? それがちょっと気になってねー」

「……? それって普通じゃないんですか? カルディナと天地以外は基本的にその国の首都がスタート地点ですよねー?」

 

「そうだね。でもそれは理由があっての事。【征夷大将軍】や国の特性上、首都が何回も変遷する可能性がある天地、そして――【ドラグノマド】の上に在るカルディナの首都ドラグノマド」

「……! ああ、そういう事。つまり、グランバロアの首都もカルディナと同じ様に動いているんだから、その初期スタート地点も同様になるんじゃないか、って事ね?」

「いぐざくとりぃ! そういう事だよ!」

「「……なるほどぉー!」」

 

 二人に先んじて話を理解できた事を少し得意気に思う。

 確かに、グランバロアの首都はカルディナの首都同様移動を続けているものね。

 それなら不思議がるのも自然。…………?

 

 

「……あら。でも実際はこの首都船が初期スタート地点よね? なら別にそれでも問題はなかった、という事なんじゃないかしら……?」

「そういえばそうだよな……? つまり、どういう事なんだジーニアス君!」

 

「えっと、つまりこの話は初期スタート地点の役割とは、と言う話なんだよ。それはつまり、新規の<マスター>が活動しやすいようにする事――つまり、町の周辺のモンスターの分布が重要って事、即ち“初心者狩場”だね。

 多分そこが首都であるのは因果関係が逆で、殆どの国はセーブポイントに適している(周囲のモンスターが弱い)から、安全なそこが首都になったと言う事なんだね。実際、七大国以外の他の小国だってWikiで見る限り国の基盤は安全な地域にある事が殆どだからね。

 でも、その唯一の例外がこの危険な海を住処とするグランバロアなんだ。

 絶対的な安全地帯なんて無さそうなこの海の上に国を、そして初期スタート地点にされるというだけで驚かずにはいられないけど……だから、もしかしたらこの船か、あるいはこの国のスタート地点のセーブポイントに他の国とは違う何らかのモンスター除けの機能が備わっているんじゃないかって思ったんだけど、確認してみる限り船の機構でモンスター除けの魔法みたいなのはあるけどそれも常識的な範疇だしセーブポイントも天地のそれと変わらない様だったから――」

 

「長い長いっ!?」

「…………?」

 

「あれっ割と分かりやすく説明したじゃんっ!?」

 

 分かり、やすく……? 因果関係の辺りからもう着いていけてなかったんだけど……っ

 まぁ、そういう事もあるわね、ジーニアス(天野君)だし!

 

「つまり、何が問題なのかしら!」

「……問題って訳じゃないけどー、この周辺(初期スタート地点)のモンスターが弱い理由がちょっと分からなかったなって。時節とか海流とか海域とかの都合でそういう周期を見極めてたりする、のかなぁ?」

 

 なんだ、そういう事だったのね。

 それなら――簡単な事よね!

 

「「「そんなの勿論――皆で掃海を頑張っているから(だな)!」」」

「まさかのすっごい人力じゃん……これだからグランバロア人はっ!?」

 

 その言葉天地(修羅の国)出身の貴方に言われたくはないわー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

1/30(土)

 ようやく――ようやくっ! グランバロア首都……首()と言っていいかは分からないけど、首都グランバロアに到着っ!

 これで胸を張って他国に旅しに来た、って言えるようになるね! ……多分。

 僕の旅はまだまだ始まったばかりだ――なんて言っちゃってみたりして。勿論打ち切りにはしないけどっ。

 

 

 ……いや、うん。書いた通り本格的に天地から出て他国に旅しに来るってのは今回が初めてな訳だけど――

 なにこの船、というか大陸っ!? えっこの本土というか本船どうやって作ったの???

 天地の超級職は、生産職の人も合わせてそこそこ知ってはいるつもりだったけど、ただの超級職じゃとてもじゃないけど作れそうにない規模だよ!?

 しかも波の揺れも……極僅かにはあるけど違和感が生じる程でもないし――エメラダ曰く、「高波とか〈UBM〉が来た時なんかは揺れるわよ?」って普通海は常時高低の違いこそあれ波は生じている物なんだから断続的に揺れているのが当たり前だと思うんだけどっ!?

 この船(?)の質量で粗方の波を相殺しているのかなとも思ったけど、それだけじゃない数多の兵装や航行能力も十分にあるらしい事を付け加えると……

 うん、深く考えなくともこの船と言うか、この国自体がとんでもないレベルのオーパーツなんじゃない……?

 普通のゲームのフレーバーとしてならともかくここはデンドロだよーっ!?

 

 ……これ以上考えると沼に嵌りそうだからここまでにしておこうか!

 グランバロアはレジェンダリアに次いでWiki系クラン、考察系クランの参加人数が多いらしいとかそういうのは考えないようにしないとね!

 

 ――さて! ようやくグランバロアに到着した訳だけど、直ぐに自由行動――という訳にも行かない。

 それじゃ何をするのかと言うと、それは当然船乗りの国に当然のように首都船にあるガチャをって違う違う。

 まずはそう――国の公共施設、役場に行って所属国家変更の手続きをするんだよね。

 まぁ、<マスター>は究極的には外様でしかないし、別に滞在して国内で活動するのに国家所属は必須ではないんだけど。

 でも、国に所属する事で即物的にも将来的にも国に多様で多大な恩恵を与えてくれる<マスター>という存在に対して、国としても様々な優遇措置を取ってくれる様になるという事もあるのだ。

 常識にも疎く、実力も、頼れるコネも何もない初心者<マスター>への支援や救済措置なんかは特にそうだよね。

 

 ……天地ではあまりそういうのが無かった様な気がしないでもないけどそんな筈はないのだ。

 ただそういう体制が整う前に僕が初心者という殻を一瞬で脱ぎ捨てただけだから……!

 実際、国単位じゃなくても領地、大名単位で色々優遇措置があったり、僕が最初に参加したあの新人用の武闘大会だって一応国家所属が条件に入ってたりはしたんだしっ。

 他にも、冒険者ギルドとか専門ギルドの利用も多少は簡略化されている――という事を藤村さん(受付のお姉さん)に聞いた覚えがあるよ。ありがたやありがたや。

 

 まぁ、そういうのがなくともグランバロアに居る間はエメラダ達に同行して、一緒にグランバロアの決闘にも参加したいなって思ってるから国家所属になる必要はあるんだけど。

 そんな訳で所属変更の手続きをしたのだけど――様々な審査があるので結果が出るのはそこそこ時間が掛かるのだとか。

 僕も結構な量の質問とかされたね、あれは多分《真偽判定》を交えた公的な奴。

 間諜とか諜報員が紛れ込んできても困るから仕方ないし、諸々の都合で一人一人手作業で確認していかなきゃいけないから国の人は本当に大変だろうねー……うん、これは仕方ない。

 

 仕方ないので――明日以降は審査がきちんと終わって大手を振って決闘に参加できるようになるまでグランバロアのダンジョン巡りとかしたいと思うよ!

 エメラダ達は船を用いた戦闘がメインという、僕としても未知の領域。

 向こうも僕みたいなのと組む経験は殆どないだろうし、互いに良い機会になったらいいなって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1/31(日)

 昨日は時間の都合でエメラダ達の拠点の酒場でログアウトして、後はMHFDやったりWikiや掲示板とか読むついでにグランバロアのダンジョンについて予習してたんだけど……

 ――グランバロア、普通の行ける自然ダンジョンすっごく少なくない!? というか無くない!?

 

 いや、ちょっと語弊があったね。

 ――グランバロア、常識的に普通に行ける場所にある自然ダンジョンすっっごく少なくないっ!?

 まぁ、そりゃこの四海全てが行動範囲だと考えて、そして広大であるからと言ってその範囲に何十個も自然ダンジョンがある訳でもなし。

 今この首都船がある地点から行ける距離範囲でって考えると少なくなるのは当然なんだけど。

 それ以前にグランバロア――海の国の自然ダンジョンというと海底洞窟染みた奴とか竜宮城っぽいのとか、後何故かある海底研究施設みたいなのだからね……

 ぶっちゃけ、海中とか深海に潜れる能力がないとどうしようもないのばっかりなんだね!

 あとは潮流とかの関係でできた特定の海棲モンスターが超密度で群棲してる海域とか(定期的に艦隊を用いて殲滅されて消滅する)。

 あとは海の【漂竜王】とも呼ばれる【島竜王 ドラグアイランド】の背中とか……そんな所だね!

 

 また、そういう自然ダンジョンに関係ない普通のモンスターの分布に関しても混沌とした海の生態系に数多潜む〈UBM〉の例外要素に潮や海流に深海の魑魅魍魎にと、陸上でのお馴染みのに追加要素が多すぎて格段と流動的。

 ……本当にこんな状態で船を大陸代わりにして航海続けられているのか不思議でならないよね。凄すぎない?

 ギルドや公務員の人大変過ぎるってもんだよ……

 

 そして、そんな国であるからこその歪みがあるっぽいんだけど、それはさておき。

 そういう事情があるグランバロアは仲間内での結束が非常に固い傾向があって……そして、他の国以上に“敵”に対して苛烈。

 それは例えば国の、海の国であるグランバロアの領分を侵して犯罪を行う海賊に対する処断であったり、危険なモンスターに対する駆除の方策であったり。

 あの天地と比べてすら処分や駆除の閾値が随分低いし、それらの討伐の褒賞も多い傾向にあるみたい。

 まぁ、そうやってこの海で活躍できる強者を取り込んでいかないとやっていけないという事情もあるかもしれないけど。

 そして、そんな事情を隠す必要もつもりもない、と。

 変に腹芸するより素直に接して取り込んだ方が良いという判断何だと思う。――特に、僕達みたいな<マスター>に対してはその方が有効なのも事実だしね!

 こうしてこの国を見ていくと、グランバロアの中核を為す四大船団が貿易船団以外戦闘色が強くなるのも致し方ないかなって。

 

 

 で、そんなグランバロアで僕ら戦闘系の上級<マスター>の主な役割はと言うと――そう、掃海だね!

 エメラダ達も得意気に言っていたけど、この首都船の周囲や進行方向に住まうある程度以上の脅威度のモンスターを掃討して安全圏を作る、グランバロアの実力者として欠かせない重大な仕事なんだって。

 セーブポイントの影響下にない時点から人力で安全圏作るとか力業過ぎない!?

 簡単に見ればやってる事は僕も天地でやってた間引きクエストと同じだけど――その難易度も、重要性も、全くの桁違いで比較にならないレベル。

 まず海棲モンスターの強さや多さは言うに及ばず、一定以上の水深以下のモンスターは専門のクランの人達がやる事にはなってるけど、それ以上ならちゃんと海中のモンスターまで完全に仕留め切らなきゃならなかったりもするからね。

 

 何せ、この掃海が確実にこなされないと被害を食うのはこの国の未来を担う若人、新人、初心者達、そしてこのグランバロアの国体と言っても過言ではない首都船なんだ。

 それを護る為に漏れは許されないし、基本的に相応以上の実力と信頼を得ている者達が、高い報酬を貰った上で何重にも依頼が出される程の重大案件という訳だ。

 

 そして――そんな重大な仕事を請け負う一翼が我らがグランバロア決闘ランキング第二十三位、【船長】エメラダ・オーシャンが率いる一団なのだ――!

 ……まぁ、割り当ては多くないんだけどね。ほら、ログイン時間の関係があるから……

 それでも、【ヴェパル】とそれに接続する事を前提とした<エンブリオ>の合わせ技もあって適役ではあるから張り切っているんだよね。

 僕も折角の海の戦闘、慣れてない不得意分野であるというその前提はとりあえず置いておいて!

 慣れてないなら実戦あるのみ、借りもある事だしここは一つ抜群の貢献で返したい所だよね。

 それじゃ、頑張って行こうー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2/1(月)

 ふと気付いたんだけど、いくらリアル船舶と比べて圧倒的高速航行が出来るとはいえ、この海を一パーティか二パーティくらいの人数で自在に航行できるって割と普通に凄い事だったんだよね……

 建国神話(かなり忠実)時点では大型の船五隻で数百人とか乗船して海に繰り出していた事を考えれば、グランバロアと言う国のノウハウの蓄積や技術の進化の程が伺える――というだけではないんだけども!

 何せ、現代というか<マスター>増加前でも普通に数十人は必要だったりするんだからそりゃそうだよね。

 特に普及している魔力式の艦船なんかはMP補給用にいくら船員がいても十分って事はないからね。交代要員としてもどうしても数は必要なんだね。

 

 それじゃ、なんで僕達はそんな少人数で航行できるのかと言うと――つまりそれが<マスター>の、即ち<エンブリオ>の力という事だ。

 もっと言うならば艦船系のTYPE:チャリオッツ系統の優秀さだね!

 非<エンブリオ>の船と比較して性能差が凄いの何のって。TYPE:アームズ系統だと武器としての性能は劣る事も多いのにね。

 <エンブリオ>学会に参加する程の造詣はないんだけど、やっぱり基礎性能にも十分なリソース振ってある型の方が美しい気はするよねって。

 更に大抵の場合固有スキルで更に一般の船と比べて優位を取れるのは流石<エンブリオ>と言ったところ。

 天地では正直チャリオッツ()()()チャリオッツ系統ってそんなに馴染みがなかったから新鮮だよね!

 Wikiによるとグランバロアの<マスター>のチャリオッツ系統の比率は七大国の中でトップという話だし……やっぱりそんな感じで艦船の類がすっごい多いらしいね。

 これまたWikiにあった文言だけど――<マスター>の選択もまた<エンブリオ>を形作りパーソナリティの一助であるならば、グランバロアという極限の海上国家を選択する事もまたパーソナリティ也……という事だね。

 【ヴェパル】みたいな巡洋艦の様な物の他にも巨大な戦艦クラスの物もあれば木舟もあるし、潜水艦や変わり種ではサーフボード型とかビート板型……いやビート板型はアームズじゃないの!? って思ったけどこれもチャリオッツ、つまり乗騎らしい。乗騎とは……?

 ……ちなみに、グランバロアの決闘に出場できるのは前述の中では潜水艦みたいなものまでが限度なんだって。そりゃビート板じゃね……

 空中戦艦とか飛行船とかの『空飛ぶ船』もダメなんだとか。面白いと思うんだけどなぁ。

 

 

 ……随分脇道に逸れたけどそれはともかく、今日はそんなすごーい戦闘艦でもある【ヴェパル】に乗って本格的に掃海、参加していくよ!

 とは言っても、僕は言わばエメラダ達のグループのオマケみたいな物だから、やり方も合わせてやる必要があるんだけどね。

 ……ログイン時間とかね!

 僕は船持ってないし、エメラダが責任者として請け負った依頼だから当然なんだけどねっ。

 一面海で船がないとまともに一人で行動できないグランバロアではこういう事もある……どちらにしろ、まだ所属も変えられてない木っ端<マスター>なら致し方ない事だね。

 

 さて、そんな木っ端<マスター>が加わった決闘ランカーエメラダのパーティ構成はと言うと……

 

 船員指揮と船の強化、そして多少の補助系に特化したジョブ構成にして【ヴェパル】の主にしてパーティリーダー、【船長】エメラダ・オーシャン!

 パーティの火力担当、【大砲撃手】に砲撃火力強化系のジョブスキルを満載し、極大の砲火を行う<エンブリオ>【ムスペルヘイム】の主であるマンリョウバンカ!

 パーティの探査担当にして火力担当その二、水中での視認性の低さを利用して魔法系の上級職で作った【ジェム】や爆雷を【アプサラス】に持たせた自爆特攻を自ら思いつき実現してる色んな意味で凄い子、アルビジア・アンフィニー!

 そしてお馴染み万能担当、僕!

 残りはエメラダ達と行動を共にしているティアンの【蒼月の牙】団の皆様によるいぶし銀な(一般的な)砲撃や爆雷による援護射撃が加わって――

 

 ……凄く火力偏重! なんでデンドロのパーティはこうもバランスが悪いのが集まるのかっ!?

 って突っ込みたくなったけど、これに以前は後クラスメイトが二人居て、その片方が障壁を展開する<エンブリオ>持ちなんだって。引退しちゃったけど……悲しいなぁ。

 ティアンの人々が何人か海属性魔法の上級職だったりしてそれで補っていたみたい。もしくは【アプサラス】を常時広く展開して先制攻撃を叩き込める様にしたりとか。

 

 そんな訳で、このパーティにおける僕の役割は――ずばり防御役!

 【高位結界術師】の結界魔法を駆使して【ヴェパル】に被害が行かない様にするのが役目だね。

 ……まぁ、【ヴェパル】は普通の同サイズの戦闘艦より余程頑丈だし、そもそもそんな攻撃来なかったんだけどね。

 折角のお役目だからセレネにも手伝って貰って慣れて貰おうと思ったけど……まぁ結果オーライ、だね。

 

 ……特に目を惹いたのは【ムスペルヘイム】の火力だね。

 殲滅、攻撃、火力特化の<エンブリオ>が居るだけでこうも楽になるとは……うん、隣の芝は青いなぁ。

 僕は今日は多少《レイ》等で援護射撃しただけだし、明日からはもうちょい積極的にやってみようかな?

  

 

 メモ:

 Wikiに載ってるけど遭遇した中でも強かったモンスター達!

 短時間の掃海なのに当然の様に複数回純竜級に遭遇するとか……

 

 【ジャイアント・ホエール】

 純竜級。サイズ以外は何の変哲もない狂暴鯨だね。サイズ以外はね!

 特異なスキルを使ってくるという訳じゃないけど、やっぱり質量体積は武器だよねって……

 

 【グレーターデビル・フィッシュ】

 純竜級。悪魔じゃなーい! のになんで蛸墨に瘴気が混じってるのさ……届かないで爆散したけども。

 でもかなり大型だったし、【アプサラス】が無かったら海中から船を引きずり込まれたりしそう。

 

 【アークエンゼル・クリーオー】

 純竜級。天使じゃなーい! 僕の期待を返せー! ……様相は嫌いじゃないけどね!

 ありがちな擬態タイプじゃなくて完全な魔法戦タイプ。直感に来てたらテイムしたかったかも……

 

 【超速超鮪】

 上位純竜級。小舟くらいのサイズがある超音速遊泳鮪。爆雷の威力が伝わる前に通り抜けるレベルの速さ。

 多分今日僕が一番仕事した相手。三重の物理結界が破れかけたけどね……

 

 【嵐風純竜(ストーム・ドラゴン)

 純竜級。空を飛ぶ典型的な風属性の天竜。類似種は天地でも見た事あるね。

 襲撃して来そうだったから光魔法で迎撃しようと思ったらその前に【ムスペルヘイム】で撃ち落とされてた。

 海上の空も容赦なく掃海の対象だから仕方ないね!

 

 

 

 

 To Be Continued…………

 




ステータスが更新されました――――

名称:【操海魔船 ヴェパル】
<マスター>:エメラダ・オーシャン
TYPE:ワールド・ギア
能力特性:水流操作
到達形態:Ⅴ
スキル:《アクア・フロー》《ルサルカ・ハンド》《満ちる魔海(ヴェパル)
モチーフ:水域を支配すると言われるソロモンの悪魔の一柱“ヴェパル”
紋章:三つ連なった渦巻
備考:グランバロアでは有難がれる一般的な艦船タイプのチャリオッツ系統の<エンブリオ>。
 その中でも巡洋艦級……戦闘艦のタイプであり、エンブリオのリソースとしてはステータス補正が低く、固有スキルは並み、基礎性能が高いタイプ。
 また、一般的な戦闘艦に配置するタイプの艤装を配備する為の拡張性を十分に有している。
 固有スキルも【ヴェパル】を中心とした約100メテル以内の水流を操るという、グランバロアのおいてはかなり汎用性の高いタイプ。ただし相応にコストが掛かるが。
 実はエメラダ本人のビルドまで含めて攻撃手段が固有スキルで高速航行の後の【ヴェパル】の前部の悪魔の角を模した衝角(ラム)攻撃(アタック)しかない。
 その為、総合的な評価は割と船員次第な所があるのがご愛敬と言った所。

 ちなみに、TYPE:チャリオッツ系統の<エンブリオ>はこの様に殆どの場合グランバロアの一般的な艦船を上回るが、グランバロアの船でほぼ標準搭載されている魔力隠蔽や探査用のレーダーを配備する拡張性がない場合なども多く、この世界の海において完全上位互換とまでなる物は少なかったりするのだとか……

名称:【白熱砲火 ムスペルヘイム】
<マスター>:マンリョウバンカ
TYPE:アドバンス・ウェポン
能力特性:砲火
到達形態:Ⅴ
スキル:《バーニングアロー》《スプリットブラスト》《ギガントブレイズ》
モチーフ:北欧神話における巨人が住まう灼熱の国“ムスペルヘイム”
紋章:弾ける火の粉
備考:アイアムダメージディーラー! と言わんばかりの火力特化型の砲塔型の<エンブリオ>。
 【ヴェパル】の追加武装として装備される事を前提としているが、一応素の状態でも固定砲台として使えなくはない。固定される時点でよっぽどのリアルスキルが無い限り使い辛さMAXだが。
 その能力は魔力(MP)を費やしての火炎弾による砲火。しかもジョブスキルで(ある程度)コントロールできる!
 上級<エンブリオ>である現在は《クリムゾン・スフィア》レベルの火力を連発できる凄まじい威力を発揮する。
 固有スキルによってスタンダードな通常火炎弾、広範囲複数の相手をまとめて焼き尽くす拡散火炎弾、大型強力な相手に使う特大火炎弾とシンプルな使い分けが行える、基本【ヴェパル】前提な事を除けば素直な性能の<エンブリオ>である。
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