無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:グランバロアにまともなダンジョン? ないよ……

それでは本編をどうぞ!


第七十一話 【嵐竜王 ドラグストーム】

2/5(金)

 節分イベントのアイテム交換、お目当てのアイテムと交換した余りのポイントで【聖豆】を交換したんだけど、種族:天使だし試しに一つ実食しようとしたら、手の上で物凄い勢いで跳ねて海に落っこちちゃった……

 どうやら【邪鬼の籠手・ネイティブ】に反発したっぽい。そんな事あるの!?

 ちなみに、その後装備外して普通に食べたけど特に何もなかった。残念。

 

 気を取り直して、今回メインで交換したのは節分イベント限定アクセサリー――【鬼の心臓】!

 

 【鬼の心臓】

 『アクセサリー』

 強い力を秘めた黒紫色の宝玉が具えられたアミュレット。

 その宝玉には強い魔力が込められており、装備者にその魔力を分け与えると言う。

 ※『節分イベント』ポイント交換限定

 

 ・装備補正

 MP+5%

 SP+5%

 MP自然回復速度+5%

 SP自然回復速度+5%

 

 システム的な都合もあってMPはそれ単体としての価値が凄く高いから、最大MPを割合で増加させる《MP増大》が付与された装備は云億とか、他のデメリットがあってなお数千万とかそういうレベルなんだよね。

 上げれば上げるだけ大正義だからねー。イベント交換アイテムでこれは凄く偉いって思うよ……!

 少しだけ【マリンビーンズ】と迷ったけど、流石に市販の装備品である程度代替できる消耗品はここでは選べないね。

 

 

 さて、今日は掃海対象海域からグランバロア本船への帰路につく――つもりだったんだけど、生憎の悪天。

 現実での釣りとかだと雨天の方が釣りやすいとかそういうのを聞いた事ある様な気がするけど、デンドロの海での狩りでは必ずしもそうじゃないんだよね。

 それは何故って言うと、こんな雨天が、嵐が自然の物ならまだ良いんだけど――この世界において一定以上の規模の嵐がただの自然の産物と言うのはまぁ殆どないからだ。余波も含めて。

 それは例えば、風属性魔法特化型超級職【嵐王(キング・オブ・ストーム)】の仕業であったり、行ける伝説【天神】の仕業であったり――そして、今回みたいに【嵐竜王 ドラグストーム】がすぐ傍に居るからだったりするからだね!

 エメラダ曰く、嵐の化身、海荒らすモノ……グランバロアの特級討伐指定対象となっている〈UBM〉の一体だとか。

 当然、僕達も見逃す手はないとばかりに総攻撃したんだけども……流石に逃げられちゃったね。

 というか殆ど攻撃が届いてなかったり減衰されていたりでまともなダメージになってなかったね、あれは……

 相手側もこちらに、こちらの攻撃に気付いては居た様だけども、反撃すらせずに纏っている暴風を更に何段階も強くして過ぎ去っていっちゃったよ。

 グランバロアの風習では、危険な〈UBM〉相手に単艦での深追いは絶対に禁物と言われているみたいだけど……それすらも許さぬあの速度は圧巻の一言に尽きるね。

 

 ううん、速度だけじゃなく、あの超上空へ……それも、暴風吹き荒れる最中の中空を貫いて、更にその上で《竜王気》を突破できる程の威力じゃないとそもそもまるで脅威にすらならないんだから、ちょっと攻略方法が限られ過ぎるよね。

 改めて竜種の強さを思い知ったよね……強さの基準が亜竜級、純竜級と表されているだけあるこの世界における強者の種族――って、今思えば僕【黒竜王】の時も逃げられているんだよね。

 まさか【竜王】と相性が悪い……なんてそんな事ないよねっ。

 

 

 そんなハプニングがあったけど、それはそれとして予定通りグランバロア本船へ舵を切る――んだけど。

 ……【嵐竜王】の残した爪痕は大きい。僕らが乗る【ヴェパル】へのダメージという訳ではなく、海域の方へのダメージが、だ。

 通過の余波だけで海は荒れ狂い、雨風で視界は最悪になるし津波はあるわ強者の気配で海棲のモンスター達が千々に逃げ惑い散り散りになるわで……散り散りになられちゃ折角やった掃海の意味が薄れちゃうじゃないかやだ―!

 

 ……不幸中の幸いと言うべきか、遭遇したのが僕達だったからある程度は殲滅できはしたんだけども。

 索敵と高火力砲撃と高速艦の<エンブリオ>、やっぱりただシンプルに役目を果たすなら最適なんだよね!

 勿論、それで全てのモンスターが仕留められたとは流石に言えないけど、それでも間違いなくあの場に居合わせたのが僕達だったのは幸いだったんだよね。

 

 だからあんまり暗い顔をしないで欲しいかなと言うべきか、まぁそんな感じ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2/6(土)

 今日は午前から集合して、時間を掛けて航行して――無事グランバロア本船へ帰還!

 やっぱり天地での間引き依頼との違いは大きかったけど、伝え聞く限りではパーティ単位でのこの時間での掃海としてはかなりの討伐数を叩き出せてた……はず!

 勿論、討伐ランカー勢以外と比べての話だけどね。

 ……あと、【嵐竜王】による悪影響も。不意の〈UBM〉との遭遇は殆ど事故だってのは通説だからね!

 まぁ、だからと言って気にしない気にしない、ドントマインド――なんて気楽には言えないけども。そう簡単に割り切れないよね普通は。

 僕と違って一団を率いるランカーだという自負もあるだろうけど、やっぱり責任は感じちゃうよねー……

 でも、いつまでも言っていたって仕方がない。そういう事で予定通り暫くはこの本船で解散して自由行動という事になったけど――

 

 ……まぁこれは明日の課題として、今日の所は本船での諸々――そう、主にお買い物をする事に!

 グランバロアで初めての本格的なウインドウショッピングだー!

 エメラダ達の事も勿論気になるけど、それは別としても僕だって水中水上戦闘用のお役立ちアイテムは買いたい、揃えたい!

 そんな訳でデンドロ内の半日も使って露店や商店を物色して色々買ってみたよ。

 まだ所属国家変更手続きが終わってないから、色々と煩雑だったりお高かったりする船は買えなかったんだけどねー……買う時の為のアタリは付けておいたけどね。

 

 そんな感じで、購入した逸品達、その中の一つがこちら――【フリーズランサー】!

 所謂マジックアイテム、魔法を……と言うより、魔法スキルを刻み込まれて作られた品物だね。

 名前の通り長柄の氷の槍というか銛なんだけど、予め魔力(MP)をチャージしておく事で、突き立てた相手に込められた魔力を使用して氷属性の魔法を発動して急速に体温の低下、凍結を引き起こせる凄い武器だね!

 魔力の許容上限はそこそこ多いけど、【符】や【ジェム】程に特化していないから僅かずつチャージされた魔力が漏出したりするから、何本も用意して【ジェム】貯蔵理論みたいにはできないんだけどね。

 それでも、人よりも比較にならない程に巨大で強大な体躯を誇る海のモンスターに対して、白兵戦用の個人用武器で有効な攻撃を与える為に作られたんだって。

 体温調節機能がない多くの海のモンスターには引く程効果があるんだとか。突き立てられるならそのまま貫通させて絶命させれば良いのでは……?

 物理型には到底不可能な魔力のチャージも、グランバロアの場合はパーティというか船員に複数のMP型が居るのは当然だから、そういう人に魔力を補充して貰う事を前提にして作られてる、のかな? 

 僕なら()()()()()()()()だって出来るけどね!

 普通に振り回しても良し、《シュートアロー》で射出しても良しとくれば結構使いやすそうだよねっ。

 海の巨大モンスターに【棒手裏剣】の連射は本当に不毛だったからね……特に回収が。

 後で知った事だけど、グランバロアの戦利品回収装置は本当に画期的な発明だよねー。

 

 お次に、計画上どうしても欠かせないもう一品のニューウェポン、その名も【ブラッディティアーズ】!

 幾つも棘が突き出した様な形状の、これまた銛で尚且つ魔力をチャージできる所まで同じ。

 だけども、これは【フリーズランサー】とは明確に違って……実は装備品であると同時に一回限りの消耗品なんだよね。

 一定以上の魔力を注いで且つ、一定以上の衝撃を伴って命中させる事で発動して……爆散する。

 そしてチャージされた魔力を闇属性の魔力に変換した上で、それが付与された棘が前方に凄い勢いで飛び散り、【流血】の呪いまで付与する超攻撃型の浪漫武装なんだよね。

 一本約五百万リルとお高いけどそれだけの価値はあって、特にダメージだけじゃなくて【流血】の呪いがこのグランバロアでは……海ではとても重要。

 余程の生命力(HP)が無ければ時間経過による呪いの消滅を待たずに失血死するし、そうじゃなくても流れ出た血に惹かれた他のモンスターに群がられて……と言う、実際の効果以上のえげつなさを発揮できるんだよね。

 そうでなくても闇属性の魔力の追加ダメージってだけでかなり有効だからなぁ……

 

 そして勿論、このほかにも海での戦闘を楽にする装備品を沢山購入――したいと思ったんだけど。

 ふと思ったら一番目を付けていた【ウイングドブーツ】と【マリンスパイダー】、装備部位が靴の脚部装備だから僕の特典武具の【エメル・リンデル】装備してたら装備できないじゃんっ!?

 勿論必要に応じて《瞬間装着》で切り替え、と言うのも考えたけど……正直、装備補正も装備スキルもとても優秀な【エメル・リンデル】外すくらいなら多分風魔法で自前でやった方が良さそうなんだよね……

 他にもアクセサリーで【水妖精の加護】とか【水神の祝福】とか超優秀だけど一見様お断りの店での取り扱いだったり最低でも億単位のお金が必要な論外な物以外は……消耗品ばかり、だし。

 出費と効果のバランス的に【水着】【潜水服】の類が一番良さそうと言うのは逆に原点回帰的な。

 まぁ、水着類の《水中行動(弱)》や潜水服の《圧力軽減》は普通に優秀だからねー……

 

 後は――

 

 ガチャ:

 D 【アイアンメイス】

 C 【海の幸特盛セット】

 C 【ジェム:フォースヒール】

 E 【森の幸セット】

 F 【SP回復ポーションLv2】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□グランバロア北々海・海上 【閃光術師】ジーニアス

 

 

 

「思えばずっと【ヴェパル】に乗ってたから、こういうのも風情があるよねー?」

『騒がしいのが悪いという訳ではないが、今の様にしているのもマスター()()()と思うぞ』

 

 

 グランバロア近海。本船付近の掃海が完了している安全な海。

 ……そこから遠く離れた、複数の視覚系スキルを重ね掛けしてすら船影の見えぬ程の遠海、その海上。

 

 そこに、彼らが乗る小さな小さなレンタル小舟はあった。

 

 固定化された重力によって波間に微動だにせず浮かび続けるその小舟の上にあるのは複数の影。

 ふらふらと宙に浮かびながらも、定期的に明滅して何らかの魔法を行使し続けている光球、【ルミナスエレメンタル】のリン。

 《人化の術》もせずに、危険な海上であるのにも関わらず集中した主の索敵能力を信じ露払いを行う【爆炎純竜】のイグニス。

 同様に海上で滞空しながらも小舟を固定しながらも……何故か身体を縮こまらせて震えている【月海純竜】のセレネ。

 

 そして、小舟の上に直立で立つ少年、ジーニアス――が、五人。否、本体と四体の影分身が眼を閉じて索敵魔法を行使していた。

 

 

 ――周辺探査、特記すべき対象なし。

 

 ――広域探査、嵐風領域確認。……感覚との齟齬はなし。

 

 ――連結、先鋭探査…………()()()()

 

 そして同時に、手元に光属性魔法で簡略化した地図を描いて探査や知覚の擦り合わせを行い……狙いを定めていくのだ。

 

 

 ――今回の標的、古代伝説級の竜王【嵐竜王 ドラグストーム】に向けて。

 

 

『ご主人ご主人、やめないか……? いくらなんでも相手が悪過ぎると思う訳で……田舎暮らしの私でも知ってるくらいのビッグネームなんだぞ!?』

「大丈夫大丈夫。流石に僕だって討伐できるなんて思ってないって……まぁちょっと一当て、みたいな」

 

 

 縮こまりながらそう促すのは当然、セレネだった。

 ジーニアスのテイム(従属)モンスターの中では最も新参であり、臆病でもある彼女。

 謂わば箱入り竜の彼女なのだが……それでも一つ小島の主だっただけあり、海を渡ってくる天竜種や怪鳥から断片的な情報を得る事もままあり……そして、そんな断片的な情報の中ですらも特に異彩を放つ代物なのだ。【嵐竜王 ドラグストーム】という竜は。

 

 空を制すモンスターの中でも最上位の天竜種……その中でも行動範囲、飛行速度、飛行性能、大空を支配するその能力の影響範囲と強度、どれを取っても隙も無ければ弱点もない怪物。

 空が荒れ、海が荒れる程度の事は【嵐竜王】の前では能力の全力行使になど全く届かぬ飛行の余波。命が惜しければ空模様が怪しくなれば直ぐに進路を変えろとは並の天竜種や怪鳥の中では常識として扱われる程なのだ!

 挑むだなんてとんでもない、本気を出した嵐の暴風の前では人間……いや、純竜級のサイズと質量を持ってすら木っ端の様に舞い散り堕ちるのみ。

 それが――

 

『それが【嵐竜王 ドラグストーム】、“大空の王者”って呼ばれる怪物なんだよ。な、いくら<マスター>とは言え命を粗末にするのは良くない、そう思わないかっ』

 

「それは中々に興味深い事だねー……でもセレネ、いくつか訂正しなきゃならない事があるね!」

『訂正…………?』

 

 

 一仕事終えた探査魔法を止め、思い返す。

 そもそも、ジーニアスとて【嵐竜王】の脅威はその余波と遭遇したからのみではなく……グランバロアの冒険者ギルドである程度は得ていたのだ。

 勿論、それはモンスターであるセレネとは全く違う視点での情報だ。

 ……少し具体的に言えば、空を自由に飛び回るモンスターの中でも、海以外に自らの領土を持たず、都市級艦の航海に多大なる労力を要するグランバロアにとっては他のモンスターと比較にならない程に危険視する相手とされているという事実だった。

 暴風を矛にも盾にもする【嵐竜王】の前には何隻戦艦を並べたとしても砲弾が相手に届く事はなく、魔法系超級職であっても【天神】や【大賢者】と言った規格外レベルの魔法の行使者でない限り打ち合う事は叶わず……そして当然、【嵐竜王】を補足してからその者らを招聘しても間に合う筈がなく。

 それで居ながら齎す暴風が海へ与える影響は多大に過ぎ、放置もできない……可能な限りの索敵と回避が推奨される海の大敵であったのだ。

 <マスター>の特化された<エンブリオ>次第ではそれでも討伐の目があるのでは、とされているがまだそれは果たされていない……と言うか、セレネに聞いた話からするとまだ未出の能力の応用がある様だからそれも難しいかもしれないのだが。

 

 だが――()()()()()()()

 

「勝算があってそれが必要なら命の一つや二つ安い物なんだよ。――リン、補助よろしくね!」

『あいあいさー!』

「《光子瞬移》――発射(ショット)ぉ!」

『あぁっ!? 話の途中だったのに撃ったこのご主人――!?』

 

 然もあらん。

 そもそも、ここまで準備を進めてきたジーニアスにとっては相手が調べていた情報と比べてもまだ未見の能力があるという()()では計画を止める理由になる筈がなく。

 いや、寧ろずっと天地で戦ってきた彼にとって、敵が強いという事は歓迎すべき事、望む所とまでは言わない物の……何時如何なる時であろうとも想定するべき物。

 殊更に騒ぐ程の事ではない。

 

「大丈夫だよ、確かに【嵐竜王】はすごーく強いんだろうけど、話を聞く限りでも計画に問題はない。十中八九上手く行くとも。それに――」

『それに……?』

「“空の王者”なんて僕は何百回と討伐した事があるんだから、皆は大船に乗った気持ちで待っててね!」

 

 

『…………ご主人が壊れたー! きっと私達もいつか特攻させられる運命なんだー! わーん!』

「失敬なっ!? ちゃんと成功させられるって言っているのにー!」

 

 喧喧囂囂。

 ……一先ず、何かの誤解をしていたセレネも含めて皆を【ジュエル】に格納し、小舟も収納し自前の飛行魔法で滞空し、虚空を睨む。

 

 ――準備が完了したからだ。

 

 光の速度で射出された影分身達により、超長距離観測射撃(もどき)も終え、特大の魔力を込めた《ウインドガード》の符の用意も、秘密兵器の確認も終え……後は、セレネが言った様に、()()()()()()()()特攻するのみ。

 

 誰に憚る事のない全力全開。

 ……思えば、今回のそれは主に天地で行ってきた今までのそれらとは随分と趣の違う物。主に自分の為ではなく――

 

 

「よし、それじゃ……始めようか! 【嵐竜王 ドラグストーム】、いざ尋常に――」

 

 ――――《光子瞬移(フォトン・リープ)

 

 ジーニアス本人の身体が光へと変じ、そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□グランバロア北々海・上空 【閃光術師】ジーニアス

 

 

 

「――勝負、ってね! ファーストァタック、行かせて貰うよーッ!」

 

GRYUAAAAAAAAAAAA!!!!

 

 

 

 四海上空、高度一万メテル――その超上空に、それらは居た。

 空の支配者、飛竜達の頂点に最も近きモノ……悠々と翼をはためかせ、風を操る力をも用いてその巨躯で飛翔せし竜、【嵐竜王 ドラグストーム】。

 先触れとして放たれた光の弾丸(影分身)で警戒していたのかそれはもう一方を見るや否や、即座に戦闘態勢に移る!

 

 その一方は《光子瞬移》の状態から目標の座標で自身の身体を再構築した天才少年――ジーニアス。

 

 しかし、ジーニアスの身体は既に全身が満身創痍のボロボロの状態だ。

 それと言うのも、【嵐竜王】の放つ全周囲の暴風の刃が原因――ではなく、如何な彼とて、やはり何のサポートもなく光に変換していた身体を完全に再構築するのは難しい物があったのだ。

 外面はその様に見えなくとも、身体の内部は脱落が激しく、再構築したその瞬間から複数の重度な傷痍系状態異常を併発し、HPも凄まじい勢いで減少し続けている。

 それでも彼が動き続けられるのは、その<エンブリオ>の固有スキルとステータス補正により並のEND型を凌駕する非常に高い耐久系(ENDとHP)のステータスと発動し続けている回復魔法に依る物であり……それで尚、仮に【嵐竜王】が何もしなかったとしても一分も持たずにデスペナルティとなる事だろう。

 

 

 当然ながら――相対する【嵐竜王】は全てが万端整っている。

 既に警戒態勢であり奇襲や不意打ちも通じず、生命力も魔力だって、その他何も損耗しておらず、己の力全てを十全に発揮できるフィールド(上空)

 距離は百メテル余りと、やや()()()()が――その程度で不覚を取るのであればこの世界の空で長年恐れられていないのだと気炎を上げる。

 

 

 

 ()()()()()だ。

 グランバロアも長年手を焼いていた上位の〈UBM〉。だからこそその戦果は何物にも代え難いだろう……!

 

 それ以上は余計な口を開く間も惜しいとばかりに放たれた幾条もの光線を開戦の合図として、【嵐竜王】との戦いが始まった――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

2/7(日)

 久しぶりのデスペナっ。でも目標達成、皆には感謝だね!

 無茶した甲斐があったね、色々と。

 

 今日は午前中は昨日に引き続いて準備万端を整える為に、本船で準備の続きと、Wikiや国別掲示板を見て予習する事に。

 そう――今回の標的、【嵐竜王 ドラグストーム】についての情報をね!

 古代伝説級上位の〈UBM〉、常に身体全体を覆う移動に攻撃に防御に万能な尋常じゃない程の暴風を発生させる力を主能力とする強力な〈UBM〉。

 固有スキルはシンプルにその暴風を操る力とその応用、そして《竜王気》のみではあれど……それだけで最大限の脅威となるからこその古代伝説級の中でも上位と言われている〈UBM〉だね。

 暴風の威力、範囲、精密性、燃費全てが高水準で隙が無く、本竜の知性も高くステータスもバランス良く高いAGI型と言った所。

 そして何より厄介なのが、主な発見場所が……およそ高度一万メテルの超上空域である事。

 僕達<マスター>やティアンだって飛行手段がある者はそりゃ居るし、<エンブリオ>を使えばその高度に対する対空攻撃が可能な者も少なくない。射程と言う意味では【ムスペルヘイム】の砲火だって届きはするからね。

 でも、その上で――【嵐竜王】の暴風領域と《竜王気》を突破できる者は限りなくゼロに近しい。

 超暴風を突き破って飛行して接近するのも、威力を維持したまま攻撃を届けるのも、難易度が高いし……それが出来てようやくかの【竜王】との戦いの舞台に立てるというだけ。

 前にも書いたけど、当然空だって海と同様に……人間範疇生物が生き残れる場所ではない、相手側(モンスター)の領域なんだから。

 

 

 

 ――つまり、そんな【嵐竜王】に一発ガツンと有効打を与えられた僕は超凄いという事だね!

 あんな特徴的かつ巨大な魔力を撒き散らしておいてこの僕から逃げられると思うなんて甘いんだよね……僕の天地でのクエストでの得意分野は失せモノ探しだったんだよ!

 昨日の内に頼んでちょっと小細工して貰った【ブラッディティアーズ】をブチ当てて、相当のダメージと共に棘の幾つかを取り換えた発信機(ビーコン)を埋め込んでやった。

 これで専用の探知機を使えば暫くの間は【嵐竜王】の行動経路が丸っと御見通しだよっ。

 

 ……まぁ、僕自身でも割と強引なやり方したなーって思うけど、僕に出来るのはこうやって戦闘力に飽かせたやり方くらいだからね。

 これで少しでも桑木さん達のグループの功績にできたらなーって。

 

 というか、僕だって相当な実力者なつもりだったけど、それでも相当苦労したんだから、それくらい報われて貰わないと困るっ。

 並のカンストの魔法職の数倍の魔力(MP)を持ち、【翠風術師(エアロマンサー)】である僕の飛行魔法でも到底近付けないし、《シュートアロー》だって全魔力を込めても足りるとは思えなかったから直接突き刺しに行かないといけなかったからね……

 やっぱり【エメル・リンデル】の短距離転移は最強だよねってよくよく思ったよ……

 予備の【ブラッディティアーズ】は一本だけ用意しておいたけど、使わなくて済んで本当に良かったね。流石の僕でも五百万リルは端金とはとても言えないからね。

 

 後は、照準と準備の為の周囲の露払いに皆にはちょっと無茶させちゃったね……基本グランバロアで十全に働けるの、リンだけなのにスペックだけで強引にお仕事して貰っちゃった。

 流石に海じゃ式神もまともに働けないし、今回は上手く行ったけど、うーん……

 でもグランバロアの【従魔師】ギルドじゃティン、って来るのが見つからなかったからからねー。

 まぁ、水棲の従属モンスターを連れて行くのはただ従属契約するだけじゃなくて、色々と準備が必要だから気に入ったのが居ても難しい所はあったかもしれないんだけどね。

 今後どうなるにせよ、グランバロアの後は中央大陸へ行くつもりだったし、ままならない……

 

 ……そういえば、グランバロアで割と見る魚人系の亜人の人達はどうなんだろうね?

 エメラダ達の一団の中にも水棲っぽい亜人の人は何人か居たけど、そこまで突っ込んで話せてなかったから、何か良いヒントになるかもしれないし次に【ヴェパル】の船旅に出た時にでもがっつり話してみたいね。

 ――僕の前では割と格好つけしいなエメラダ・オーシャンの面白い話が色々と聞けるかもしれないしね!

 まぁ、それはそれ、これはこれ。

 何はともあれ、明日は戦果報告。驚く顔が今から見物だよねっ。

 

 ガチャ:

 F 【椅子】

 D 【銀の矢束】

 D 【ジェム:フレイムアロー】

 E 【海の幸セット】

 C 【適職診断カタログ】

 

 ガチャの運気が一向に来ない……来なくない?

 

 

 To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

【嵐竜王 ドラグストーム】
種族:ドラゴン
主な能力:竜王気、嵐風
到達レベル:79
発生:認定型
作成者:なし
備考:ヘタレと傲慢の中間点。“大空の王者”の異名持つ自由気ままな放蕩竜な古代伝説級上位の【竜王】。
 実は空腹でもなければ積極的に人間を襲うつもりもないがグランバロアとしてはデフォルトで大迷惑なので凄く狙われるし当然の様に火の粉を払い続けていたら現状の様になった。
 〈UBM〉としては神話級モンスターに準ずる程の非常に高いステータスに使い勝手の良い固有スキルと《竜王気》を兼ね備え、それらを普通に行使しているだけで桁違いに高い討伐難易度を誇る事となる。
 並の超級職の飛行手段()()ではその空域でまともに戦闘行動が行えない程の強風を常時展開しているのだからそれも当然だろう。
 あらゆる物理的な遠距離攻撃は強風によって勢いと共に威力を大きく殺され、魔法的な遠距離手段はその高度に届かせるまでに消費する魔力が莫大となり、その分威力を出す為の魔力が足らなくなる。……そして、その上で《竜王気》による減衰が掛かるのだ。
 まぁ<エンブリオ>ならそれをも打ち破れるのもその内現れるだろう。おのれ<マスター>!

 なお、人間側には伝わってないと言うか使うまでも無かったから知られていないが、当然の様にMPを消費して強風の出力を超強化する事が出来る。
 その分だけ制御が難しくなり、風の鎧を超強化するか周囲の暴風領域を超強化するか……あるいは、自らの飛行速度を加速させる追い風を超強化するくらいしかできないが、元より自らの危機の時の為の緊急避難用の大技なので多分問題ない。
 
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