お待たせしました。それでは本編をどうぞ!
第七十七話 プロローグ・求めるはただ力
□<赤石荒原> 【賢者】ジェーン・ドゥ
∞∞∞∞∞∞∞
ジーニアスへ。
こんにちは、元気にしていますでしょうか?
私は元気です。
ただ、最近になって学園での授業に座学の割合が増えて来た為、皆と一緒に苦戦している最中ですが……
ジーニアスもあちらの世界では学校に通っていると聞いていた筈ですが、そちらはどうでしょうか?
……まぁ、ジーニアスが学業に苦戦している所はあまり想像できませんが。
でもそんなジーニアスも見てみたいと思ってしまいましたね。私の方が年上のお姉さんですからねっ。
さて、この手紙を見ている頃もジーニアスは諸国を満喫中だと思いますが……まだグランバロアに滞在している頃でしょうか?
それとも、もうグランバロアを出る頃でしょうか?
この天地ではまぁ、その……国同士の関係の影響で、グランバロアという国についてあまり学べないので、ジーニアスからの手紙から窺い知れるグランバロアは非常に興味深いです。
天地では当然水練も必修の技能でしたが、そういえばジーニアスと一緒に居た頃は水辺には行っていませんでしたね。
人によっては全く水練が駄目だという人も居ましたが、ジーニアスはどうでしょうか?
……尤も、空を自在に泳げる以上に行動できる貴方に心配は要らないとは思いますけれど。
それよりも心配なのは、貴方がグランバロアでしているらしい破茶滅茶な行程と巻き込まれた人の苦労ですから!
違い過ぎる環境に適応するのは流石にもう少し掛かると思っていたのですけど……
<マスター>は最初にグランバロアに現れる人も相当数居ますし、実は相応に水戦が得意なのでしょうか……!?
<マスター>の特徴は本当に摩訶不思議です……
そうそう、実は私達が学業で苦戦している所も、つい最近新しく授業で学ぶ事となった『マスター学』や『エンブリオ学』なんですよ
ジョブやスキル、モンスターや各種素材については基礎課程で十分に学んでいましたし。
学園に来るような子なら戦術・戦略の学科も問題はないんですが……ええはい。
まだ現れ始めて一年半、と言うべきか。それとももう現れ始めて一年半と言うべきか。
それでも、伝説上の知識しかなかった様な子は大苦戦しています。
そういう子らと比べれば私は凄く楽だと思っていたのですが……毎日の如く新しく判明した事が学習内容に追加されていくのは流石に堪えますね。
これも黎明期故の事だとは理解しているのですが。
……いえ、『マスター学』に関して言うのであれば、むしろジーニアスやカシミヤが如何に例外だったのかを思い知る羽目になったんですけども!
この手紙でだけ文句を言わせて貰いますねっ。
多分、ジーニアスも『マスター学』の教本を読めば同じ感想を得てくれると思いますが、本当に参考になりませんでしたよ!
基本的に幼年の姿をした<マスター>は戦闘を不得手としている、とか。
<エンブリオ>によるステータスや固有スキルの多大な恩恵がある代わりに戦闘技術や製造技術などは一歩劣る者が多い、とか。
ジーニアス達の方の例を先に知っていると先入観に嵌ってしまい苦戦してしまいました……
まぁ、そんなジーニアスだからこそあの時の大会で出会って、仲良くなれたのだと思いますけども。
そこは例外であった事実に感謝しなければなりませんね。
――不慣れな筈の海上のグランバロアでもう複数の〈UBM〉との戦いを経験する程とは思いませんでしたけどねっ!?
観光気分で諸国を旅すると聞いていた私は凄く驚きました……<マスター>であるジーニアスに言うのも何ですが、大事なくて良かったです。
お疲れ様でした。
……片方はジーニアス自ら挑んで行ったみたいですけども、それはさておき。
諸国の楽しみ方は人それぞれですし、ジーニアスが楽しめたならそれは幸いだと思います。
特にグランバロアは天地に最も近い他国でありながら特にその環境の差異や情勢の関係で天地とは何もかもが違う国でしたので、そこは良かったです。
これでいつか私が行く機会があれば案内ができますねっ。
もしもそんな時が来たら、エスコートをお願いしますね?
それでは、今回の手紙はこの辺りで締めさせて貰う事にします。
ジーニアスの旅が今後も良い楽しみに満ちる事を祈っています。
またのお手紙、お待ちしています。
西白寺春香より。
∞∞∞∞∞∞∞
「……なるほど、待っていた手紙を漸く受け取れたから坊やはテンションが上がっていたんだね」
「ああ。良い友達を持った様で本当に嬉しいよ……感慨深いなぁ」
そう言ってしみじみと頷きながら同意の意を返すのは当の少年の保護者であるコテツだ。
ちなみに現在進行形でこのパーティを襲撃してきたモンスターの群れを遠方でアグレッシブに殲滅首狩りファイトを繰り広げている
赤茶けた大地が果てしなく思える程に広がるこの黄河北東部のフィールド。
植生も、地質も、当然モンスターの生息域も天地ともグランバロアとも全く異なるのも当然――改めてやって来た異国の大地。
そこを何処かの目的地目指して歩んでいるのが……今の私達の現状だ。
もっと言うのであればこの旅程、道程自体が件の少年発案の諸国漫遊の旅であるが、はてこの国でそこまで観る物などどれだけあったかと思考を巡らせる。
……勿論、七大国家の中でも特に広大な領土と力を持つ黄河には観光の名所となる様な場所は沢山あるのだが。
そもそもの
まぁ、時々変な所でスイッチが入る子ではあるのでその線なのかもしれないが。
尚、殲滅ファイトについては一応戦利品や経験値狙いの通常進行である。
むしろあれは明らかに釣りを目的として行っていると思う。
旅情を楽しむ為という名目で従属モンスターやコテツの持つ奴隷も出していない現状はどう見てもお手頃な獲物にしか見えないのだから。
……一体誰に習ったのだか。
「――終了っ。オールグリーンだよ! ちなみに僕の気合いが入っていたのは新たな国に……そしてこの中央大陸に来れたからだからね、勘違いしないでね!」
「分かっているとも。……でもそろそろ具体的にどこを見て回りたいか私達にも教えてくれないかな?」
実際はお手軽な獲物どころか相応に距離もあったのにこの短時間で殲滅と
しかもあの位置で戦闘音もあった筈なのにこちらの会話まで普通に聞き取れる地獄耳もある。
……私を探し当てた時の能力まで含めて考えれば、彼が将来ストーカー等にならない様に
ちなみに、現在の進路はこの<赤石荒原>から西進している。黄河の中心にして中央付近にある龍都への道は南西なのでどうやら真っすぐ首都へ向かう訳ではない様だ。
私も、そして恐らくはコテツも案内できるのは龍都やその周辺や国境地帯、あるいは商都や農都くらいなのだが……非戦要因故にな?
少なくとも、黄河北部――<厳冬山脈>に近い危険地帯については近付いた事もないし近付く理由もなかったのだが。
「えー、別に隠していた訳じゃないんだけども……究極的には天地やグランバロアの時と同じだよっ」
「そうなると、<自然ダンジョン>狙いと決闘……になるのかな?」
「そうだね! あ、後は名物(?)の修行者達の集落ってのも行きたいかなー。レベルアップの好機は逃せないからね!」
ちなみに、ダンジョンであると言うからにはある種当然ではあるのだけども。
この黄河における<自然ダンジョン>、それもジーニアスが望む様な自然ダンジョンと言うのはかなり危険な場所が多い上に立ち入り禁止区域になっている場所も多い。
まぁその事には深く突っ込まないでおこう。ジーニアスもそういう場所に私達を連れて行く様な性格でもないし。
だから突っ込むのは――
「レベルアップとは言っても、確かもう
少し特殊な事情があったとはいえ、私も一応はパーティメンバーである。
ジーニアスの、そして【アダムカドモン】の固有スキルの概要については教えられている。
確かに、彼の合計レベルの最大値は他の人と比べても非常に高い域にある筈だが。
……基本の上級職の枠が二つに下級職の枠が六つ、そして《全主恩寵》Lv4。
私の記憶が正しければあの子は天地を出る前に既に合計レベルが1000近く。
別行動をしていたので詳細までは分からないけども、グランバロアでジョブを12個埋めたという事は聞いていたし、友達との狩りを結構な期間やっていた筈だ。
既に合計レベル1200のカンストか、あるいはもう後僅かという所だと思っていたのだが――
「ふっ……甘いよ、この【特濃レムベリージャム】よりも甘いよ! 僕のレベル上げの道はまだまだなんだよっ」
「
「
【特濃レムベリージャム】は王国のとある特産品を加工した食品だ。
ちなみに、私の【クローン】が複製するのに必要なリソースの基準は対象の内包リソースに完全に依存している為、内包リソースの少ない嗜好品、特産品の類の複製は私の主な収入の一つだ。
当然この二人にも大人気だし私の待遇の改善にも繋がっている。やはり嗜好品は最強だ。
ともあれ、レベリング難(?)を唱えるジーニアスの現在の合計レベルを《看破》――は、できない。
これでも<エンブリオ>の都合もあって《看破》や《鑑定眼》の類は最大レベルだが、当然の様に失敗する。
ジーニアスの隠蔽系スキルも最大レベルであるのに加えて素の合計レベルに差があり過ぎる為だ。こちらも
それを察していてかジーニアスは私達にも見える様に自身のステータスウインドゥを可視化する。
そこに記されていたのは。
ジーニアス
【祓魔師(退魔師)】【大陰陽師(陰陽師)】【高位従魔師(従魔師)】【光輝術師(光術師)】【翠風術師】【高位結界術師(結界術師)】【開拓巧者(開拓者)】【求道者(修行者)】【
レベル:83(合計レベル:1036)
意外にも(?)前言通り低い合計レベル、12個の上級職。
――そして、
確か、ジーニアスの【アダムカドモン】は既に第六形態で、まだその先へは到達していないという話だった筈だが、これは一体……
「これこそ御剣さんに教えて貰った僕調べ最もシナジーしていると噂の新兵器、【
「知らない名前だ。そして【勇士】……も、聞かないジョブだ」
「名前からは特徴が分かり辛いけども。バランス型、では、ないよね?」
あの【アダムカドモン】にシナジーしないジョブなんて殆どないと思うがそれはさておき。
コテツの言葉にジーニアスの得意気な顔が返される。いや、どちらだ。
その答えを示す様に更なるウインドゥ、スキルウインドゥが開く。
【勇士】のジョブスキルだろう。そこには短く、こう記されている。
《
自身が適性を持つ下級職を追加で二つ取得する事ができる。
とあった。
…………いやいやいやいや。
「凄く――――詐欺だな!? これを
「
「ちょっとレアなだけの普通の上級職だよ! 全ステ均等に上がるけど追加ジョブ枠も合わせてステ強者になるくらいのっ」
そうだね
……全ステ―タスが均等に上がる、と言うのは決して誉め言葉ではない。
ビルド次第で不要なステータスと言うのは間違いなく存在する為、それらのステータスにもリソースを割り振ると言うのは全く効率的ではない為だ。
しかし、それでも追加された下級職の枠にビルドに必要なステータスを上げられるジョブを宛てるのであれば。
不要なステータスも脇を固めた上で必要なステータスも他のビルドに合う上級職に匹敵する値にまで上げられるだろう。
更には通常以上の下級職の枠で手に入れた多くのジョブスキルを扱う事も出来るのだ。そう考えれば十分優秀な上級職だろう。
だが。……上級職の枠で取得できる上級職の恩恵、特にスキルレベルの上限増加や奥義スキルの存在は非常に大きい。
少なくとも、多少のステータスの上乗せや下級職二つのジョブスキルとの天秤はそう簡単には覆らないだろう。
珍しいジョブ適正、に関係のない筈の<マスター>ですら相応に難しい就職条件も相まって就いている人はかなり少ないジョブであったらしい。
そのせいで攻略Wikiにも情報が殆どなかったしジーニアスの目に触れる事もなかった様だが――
「件の御剣何某によって開陳されてしまった訳か。余計な事を……」
「まぁ、異名のせいもあってああ見えて凄く【勇者】を意識してたから時間の問題だったかもしれないけど……」
「なるほど。確かに名前もスキルも伝え聞くそれに似通っている……」
「あれっ完全に味方である筈の二人の心証がすこぶる悪い。漸く見つけた凄くシナジーしているジョブだよ!? ほらもっと祝福しよう!」
ちなみに親馬鹿であるコテツに散々聞かされている事だが。
ジーニアス曰くの“凄く相性が良いジョブ”は【剣武者】に始まり【風術師】【光術師】を絶賛し【影】が最高だと言ってきた実績があるらしい。
これだからシナジーし過ぎなエンブリオ持ちは……
最近は素ステ系にも興味を示していたとかなんとか。
【付与術師】もそうだし【勇士】だって実はそれ関係だったりしないだろうか……?
「とは言え、ジーニアスの戦力が増すのは本当に喜ばしい限りだよ。残りのジョブを何にするかは決めているのかな?」
「勿論! 僕の
……だが、まぁ。
喜んでいるジーニアスを前にしてこれ以上水を差す必要もないだろう。
彼らとの関係は兎も角としても彼の実力が伸びるのは私としても利の方が大きいのもまた事実なのだから。
実力は、力は――
その総量、使い方。どれであっても……彼に頼るのが一番であるだろうから。
きっと、この世界を紐解く為にも。
「……とりあえず、それならもう一つは件の修行者の集落で就ける物なのだろう? なら、善は急げと言う奴だ、な」
「いぐざくとりぃだよ! まぁまだレベリングもしなきゃだし、マイペースでれっつごー、だね」
そんなこんなで――目指すのは黄河北部。
<厳冬山脈>から流れ込む冷気とモンスターが蔓延る険しい地帯に作られし村落、<蜥血集落>。
攻略、開始だ。……なんてな。
……まぁ、ジーニアスの態度に何か察する物がないではないが、私は虜囚の身だ。目を瞑っておこう。
だが、レベリングと言う理由がああるとは言え彼の移動手段、移動速度から態々徒歩の私達に速度を合わせるまでするのは、流石に苦しい。
そうは思わないかね?
◇
◇
◇
◇◇◇
2/22(月)
デンドロでの別れを告げた翌日に朝から
そして
とても複雑な気分だけど慣れよう! うん慣れた。よし。
学校はそんな僕達の気分とは関係なく行事が進行していくからね……例えば来月初めの卒業式に向けての準備で忙しい今日この頃とかの事だけど。
とは言え、僕達にとってはその主役になるのは二年後だから、今はただ学年度の最終盤と言うだけの事。
先生達は授業に休み時間にと色々緊張している様だけどね。
そういえば、ふと思ったけど僕って上級生、卒業生の人との関わりって本当になかったんだよね。
他の子は下級生時代に色々あったりしたり部活とかの繋がりがあったりするみたいだけど、僕はどっちも無かったし。
ちょっと惜しかったかなぁ……?
学校から帰って来た後は諸々の準備を整えて勝と示し合わせてデンドロにログイン。
そういう訳で、今日から始まるのは中央大陸、黄河の旅!
暫くはコテツとジェーンさんとの三人旅。案内をして貰おうかなって迷ったけどそれは砂漠の国カルディナに行ってからでいいかなって。
歴史ある黄河の天地とは異なる趣の風土や特産、気風には勿論興味はあるんだけど、それよりも興味を惹かれるのはやっぱり【龍帝】、そして“危険地帯”だよね。
危険地帯――そう呼ばれるのはこのデンドロでは珍しくないけど、有り体に分かりやすく言えば<自然ダンジョン>の一つ。
ぶっちゃけレジェンダリアの一部秘境とかグランバロアの非掃海海域なんかも同じ扱いなんだけども、黄河の危険地帯がそれらと大きく違う所は、ある意味では歴史ある黄河らしい事。
即ち、過去の大人物、主に先々代【龍帝】に纏わるあれこれである種人為的に作られて、それでいて黄河の人間にも誰にも管理できない無法地帯となっている所にあるんだよね。
片や三強時代に【覇王】と【龍帝】の激突により生まれた異常魔力の立ち入り禁止区域。
片やその直後の内戦にて、三強時代で作られた悪辣な兵器を多数用いられた事で生まれた浄化叶わぬ汚染地帯。
汚染地帯の方は軽重大小様々に複数あると言うのだから且つての内戦の大きさを物語っているよね……
――まぁ、<マスター>である僕達からして見れば異常進化した上位モンスター狙いに都合の良い場所という意見の方が多いみたいなんだけどね!
黄河には<神造ダンジョン>の類がないからその代わりに配置された物なのでは? という意見もあって業の深さを感じるよねって。
汚染地帯の方は奇形モンスターとか生まれながらの呪いモンスターとかも多いらしいし、従属モンスターの皆に悪影響があっても嫌だから今の所近付くつもりはないんだけどね。
そうじゃなくても<厳冬山脈>やその付近の霊山はあるからね。
北部の修行場、霊山、龍都に商都……僕の観光プランは完璧だよ!
近々首都である龍都でもお祭りがあるらしいし、それへの参加もしておきたいよね――と、メモに忘れずに書いておかなきゃね!
就く余裕はないけど【陰陽師】と同様に【符】を用いる【道士】系列の専門ギルドにも行きたいし、世界最大クランと名高いクランにも見学に行きたいし。
さて、この黄河で得られる物が実り大きい物であります様に、っと。
頑張るぞー!
◇
2月23日(火)
今日は祝日だから朝から一日デンドロ漬けの日!
……とは言え、今日はそんな一日を黄河の大地をてくてくしてるだけで終わっちゃったんだけどね?
貴重な休日がー!
まぁ、黄河の冒険という時点で分かってた事なんだけどね?
それと言うのも――黄河が広過ぎる、と言うマップを一目見るだけで分かるけど分かりにくい問題に直面しているというだけなんだね……
単純な面積だけでも天地の数倍以上、もしかしたら10倍くらいあるのではないかと思えるレベルで、それでいてグランバロアとは違って陸路と言うのは新鮮だよね。
むしろこの世界の……グランバロアの船が全体的に優秀過ぎて海の広さを過小評価していたまであるかもしれないね。
……いや、やっぱり思い返してみても海の広さも大概だけどね。
僕は基本的にそのグランバロアの船の平均を遥かに上回った【ヴェパル】に乗っていた上で結構時間掛かっていたんだしね……
多分、ゲーム的に見たらこの移動に関する手間はかなりのマイナスポイントなんだろうなぁって。
それも僕に関しては完全に自分都合だったんだけどねっ。
移動時間を短縮したいだけなら皆でイグニスやコテツの持ってる騎獣に乗せていって貰えば良かったんだけども、うん。
やっぱり黄河の普通の平野のモンスターとも戦ってみたいなって!
これは豆知識なんだけど、黄河で戦えるモンスターの幅……種類とかそういうのじゃなくて、野生に生息しているモンスターのレベル帯の幅ってかなり限定的なんだよね。
具体的には、大きく開きがある上と下の事だね。
安定した高い国力と人民の努力の結果によって人通りのある場所に出没する危険なモンスターが間引かれ続けていった結果として残った下級モンスターやそれに毛が生えた程度のモンスター達。
あるいは、逆に並のティアン戦力じゃ継続的な間引きなんてできない危険地帯や霊山や峡谷に潜む危険で凶悪なモンスター達。
黄河と言う国にはその中間に当たるモンスターやそれらが主に生息している地域が少ないって事みたいだよ――と言うのも、それ自体は別にそこまで大きなデメリットではないんだけどね。
細かい効率についてはWikiを参照だけど、その所謂中間帯のモンスターと言うのは経験値としても戦利品としても……微妙だからねっ。
特にティアンの人にとってはその層って基本的にリスクである可能性の方が大きいからねぇ……
需要がない訳ではないんだけどね。
上の方の部類のモンスターには背伸びしてもまだ勝てない<マスター>の人とか、手頃な実力のモンスターをテイムしたい【従魔師】の人とか。
――気軽な道行きでも丁度良い実力の黄河のモンスターと戦いたい僕とかね!
そう、何を隠そう黄河の北東の海岸から北西部に掛けて。
つまりは今僕達が歩んでいる<赤石荒原>の周囲、主に黄河北部の一部がその中間帯のモンスターの生息数が多い地域なんだよね!
うん。黄河の海岸沿いの港街って天地との交易窓口である南東海岸と東海岸、あと西方諸国との交易に使う南西海岸の三つ。
地理上仕方ないけど、北東海岸付近の人通りなんてかなーり少ないから村落がある周辺を除いてはまぁそこそこのモンスターが生息している事もあるんだよね。
北西付近は<厳冬山脈>の影響で生息環境が不安定だと言うのも相まって黄河北部は全体的にレベルが一回り以上上、って感じなんだよね。
……まぁ、レベルが一回り以上~って言っても、大概はギリギリ亜竜級くらいのモンスターが精々なんだけどね。
たまーに亜竜級上位クラスとか、亜竜級下位が群れになって襲い掛かって来る程度。天地やグランバロアでのモンスター戦と比べてもまだまだ温い方なんだよね!
密かな自分目標の一つだったコテツとジェーンさんへの危害ゼロも達成出来たし。うん、やっぱり色々やって腕前は錆び付かせないようにしておかなきゃね。
黄河でも自分磨き、頑張るぞー!
……まぁ、流石に<赤石荒原>のモンスターだと手応え無さすぎたから従属モンスターの皆の経験値にしてあげた方が良かったかもしれないけど。
メモ:
【リザードマン】
ティアンの
【小鬼】や【ゴブリン】みたいに様々な職能を持っていたり連携をしてきたり、地味に今日戦った中では一番の強敵だった気がする。
【
天地でも見た種だこれ! 他のモンスターとの戦闘中に上空や背後から奇襲してくるから見つけたら即刻先制攻撃が良いかも。
【ケーンウルフ】
下級モンスターに毛が生えた程度の魔獣。多分この周辺での生態系の割と下の方……と思ったら実力に多少の差異はあれど黄河全域に生息しているらしい。
<赤石荒原>に居たのは火炎球を十字砲火してきたけど、龍都周辺に居るのは牙とか爪とかに炎を付与する程度なんだとか。
【
亜竜級上位の魔蟲。良く居るワーム系モンスターの中でも特にENDとHPが高いタイプみたい。
地中潜行できるのに動きは遅いわ地面の振動で直ぐに察知できるわなのは残念賞だけどね……
◇
2/24(水)
祝日明けにして年度最終盤では恒例らしいテストラッシュが始まったよ!
……とは言え、いつもの授業と出された課題をやってれば何も対策しなくても自然と点は取れるから特に何かする必要はないんだけどねー。
そもそも僕は僕個人の事情的に仮に点取れなくても大丈夫だと思うし……いや、勝と明日香が悲しむだろうからやっぱりなしだねっ。
テストも油断せずに頑張ろうー!
と、まぁ学校の事は特に問題なかったんだけど――問題があったのはデンドロの方だったんだけどね。
日記でも隠してたのにコテツに微金欠がバレたー……!
いや。まだ、まだ金欠じゃないんだよ。【ブローチ】を一つ買える程度にはあるんだよ。
ただ、グランバロアでの戦闘で消費し過ぎた【符】の為の【霊紙】を欲しい分以上に多めに補充しようとしたらちょっと素寒貧になりそうってだけで……
うん、まぁ。
グランバロアではちょっと散財し過ぎたかなってー……でも買った船も武具アクセもどれも凄く優秀な物ばかりだから後悔はないよ!
バレンタインイベの交換アイテムが換金性高ければ良かったんだけど、当然そう上手くは行かないからね。
とは言え……直近の戦闘で気付くコテツもコテツだよね。まぁ確かに僕も意識してそうしてたんだけどさぁ。
黄河に着いてからの戦闘では【符】は使わずに探査や【付与術師】のバフだけで戦ってたから、それだね。
これは《自動修復》もあって使い勝手が良い【斜陽の竜王剣】があるせいでもあるんだけども――それはそれとして!
確かに金欠気味(金欠じゃない)なのは事実、事実。だけど、この黄河に来てから殊更戦闘をメインに活動していたのは戦利品狙いだけじゃないんだよ!
そう、それは――
何は無くともレベリング。兎にも角にもレベリング。レベルを上げて
【アダムカドモン】の優秀なステータス補正もステータス強化も、ジョブやスキルに関するあれやこれやも――それ単体では全く意味がない物。
どれだけその力を発揮出来るかはジョブの器に注がれたレベル次第……そういう<エンブリオ>でもあるんだよね。
つまり、僕自身のジョブのレベル上げと言うのは僕が強くなる為には本来最優先でしなきゃならない事だったし、実際必殺スキルを習得した直後は躍起になってカシミヤと一緒に狩り回っていた訳なんだけど――
・実は《
・僕のレベルだけじゃなくてリンやイグニス、セレネのレベルも上げたいから割と重点的に戦闘に出して経験値を分散させていた。
・そもそもグランバロアでの狩りはエメラダ達のログイン時間の都合上狩りができる時間を余り取れなかった。
・と言うか役割分担の都合上元々あまり経験値を乱獲できる立ち位置じゃなかった。……僕だけ公平組めないし。
・エメラダ達の立場もあって、掃海はそこそこ強い敵が居る海域――(戦利品はともかく)経験値効率がよろしくない海域での狩りばかりだった。
・バレンタインイベは正月イベとは違って経験値リソースは殆ど得られなかった……
――うん。箇条書きしてみたけどこれはレベルが上がる訳もないよね!
グランバロアの環境とエメラダ達に関する縛りは仕方ないし他もまぁ僕自身の自業自得な面もあるし……そんな事でやっぱりレベリング、狩りは必要なんだよって。
公式イベントも、正月イベが特別だったのであって普通は元々実力ある人が余禄で参加している事が殆どだから、そういう方針になるのは仕方ないからね。
そう、仕方ない。仕方ない――から、僕はこの安寧と泰平の国黄河での旅々を武者修行兼観光旅行にさせて貰うよ!
レジェンダリアと並ぶと言われる優れた東洋の魔法技術、雄大な自然環境の中で発展した武闘術、露出している数少ない特殊超級職【龍帝】と気になる所は沢山あるんだからね!
手始めに向かうのは、もう目と鼻の先ほどの距離。
質実剛健筋骨隆々。己の肉体を鍛える事を最大の目的としている
さぁ、僕も特訓、頑張るぞー!
……まぁ、その目的自体は予定通りなんだけどねっ。
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
【
あからさまにとあるジョブを参考にしたかの様な上級職。
習得できるジョブスキルは本文に出ている《
《才人の閃き》はサブの下級職一つのスキル制限を追加で得てスキルを使用できる様になると言う物。
つまりは《全連結》や《全主権限》の下位互換である。普通に【勇士】に就く人は普通に重宝する。
なお、就職条件は①合計レベル400以上、と
②単独で亜竜級以上のボスモンスターを討伐する、である。
ティアンにとってはどちらの条件も難易度が高い物であり、そもそも【勇士】のジョブに就ける才能を持つ者も多くなかった為就職していた者はそう多くはない。
<マスター>であればプレイスタイル次第では合うジョブではあるが、上手く使いこなせないとただの器用貧乏で決め手に欠ける状態になりかねない。
超級職に就けない大多数にとって、2枠しかない上級職の枠の意味は非常に重い物であると言うのはティアンだろうと<マスター>であろうと変わりはないのだから。
なので、どう考えてもジーニアスの方が例外なのであるが、これもまたシナジーの在り方の一つだろう――どう見ても詐欺の様だが。
※お知らせ
こちらの【
ありがとうございました。
――はい。実に長らくお待たせしました。またまた再開です。
やりたい事書きたい物が多くてお待たせする事になりました。申し訳ありません。
とりあえずは章終了まではノンストップで(休載したりする事はあると思いますが)書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします!