無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:他国と比べて黄河とカルディナ広過ぎでは……?

それでは本編をどうぞ!


第七十八話 限界を超えろ

□■<蜥血集落> 【求道者】モョモト

 

 

「噴ッ! 破ッ! 斉ッ――!」

 

 ――そぉい! そぉい! そぉい! そぉい!

 

 ――てーりゃ! どーりゃ! どっこい!

 

 ――ぶるぁぁぁぁああああああああああ!!

 

 ――ヒュ‐……スゥー……

 

「おおぉー……」

 

 

 朝っぱらからそこかしこから気合いの声が聞こえるのが此処、“修行者達の集落”と名高い<蜥血集落>での風物詩だ。

 ()()と言うには中々に大きい広さと人口を持つ一風変わった集落。

 <厳冬山脈>から流れ込む冷気によって黄河の中でも平均気温は非常に低い方――だが、そんな事は関係ないとばかりに熱気に包まれた老若男女が集う所。

 

 【修行者】【求道者】【練体士】【高位練体士】に【筋肉鍛者(マッスルビルダー)】、【育体家(トレーナー)】【走行練者(スプリンター)】【修行僧(モンク)】【修験者(マントラ)】etcetc……

 所謂、この集落にあるジョブクリスタルにより肉体鍛錬に特化したジョブに就いた者達が集い、そしてその過酷な環境でそのまま同好の士達と共に鍛錬に励む。

 そんな理想郷(地獄絵図)こそがこの村落、<蜥血集落>なのだ――!

 

 

「つまり、努力、YU‐JO、勝利、の村って事だね!」

「勝てるかどうかは、まぁさておきだがな?」

 

 

 そして笑顔で頷きながらその集落の説明を聞いているのが、俺の天地時代の知り合いである天災児、ジーニアスである。

 何故こいつがこの集落に来て、そして何故俺が一緒に鍛錬する事になったのかは……まぁ色々とあったんだ。色々と。

 以前【修行者】に関して勧めたのも俺だしなぁ……

 

 ちなみにこんな会話をしながらではあるが、双方共に数百キロ以上のダンベルを高速で振り回している。

 こいつ小技も化物的に上手なのにステータスも高いんだよなぁ。

 

 

「あー……集落の人達のレベル的に?」

「戦闘技術的にも、だけどな」

 

 そして、どうやら目敏さや抜け目の無さについても天地に居た頃から変わっていないらしい。

 ひっそりと集落の人達に《看破》をして、鍛錬の成果を見ていたりしたのだろう。

 ……そして、ある意味では驚愕したのだろう。

 現実的に考えて明らかに身体能力が高く見える彼らの、予想以上のレベルの低さに。

 

 

 ――彼らのレベルについて説明するには、まずこの黄河での宗教観から解説していく必要がある。

 まず、この世界に広く普及している宗教が一つある……所謂、“クリスタル教”などと呼ばれている宗教だ。

 何の力も持たなかった人間範疇生物に大きな力を齎すジョブ……それを授けてくれるジョブクリスタルを信仰対象として崇め敬う宗教だ。

 クリスタルから与えられしジョブの力を以て脅威に立ち向かいましょう。とか、世界に平和を齎しましょう、とかそんなお題目を掲げる、まぁまぁ普通の宗教だ。

 モンスターという直近の脅威があるこの世界においてジョブに、そしてジョブレベルによる力を頼らないと言うのはティアンであろうと<マスター>であろうと自殺行為に過ぎず、実質的にほぼ全ての国が国教に上げられている大きな宗教だ。

 ……その宗教としての大きさに反して存在感はそこまで大きくないのが宗教としては珍しいが、それはさておき。

 

 世界的な宗教としてはクリスタル教が席巻しているのだが、黄河に関してだけは少し毛色が違う宗教……と言うよりも、信仰が登場する。

 それは龍信仰……“古龍信仰”に他ならない。

 古くからこの黄河を、そして世界を守ってきたと言われている、今は姿を見せない超常的な存在、古龍。

 それを祖に持ち、実際に古龍と人間とのハーフである古龍人達によって統治されている黄河ならではの信仰だ。

 そして、その信仰の根幹にあるのは――()()()()()()()()()、そういう物なのだ。

 

 人間がジョブで得られる、それまでの人間とは比べ物にならない程に強大な力。

 ――それを以てしても、到底及ばない至高の存在……それが最上位のモンスター、古龍の持つ力なのだから。

 故に、古龍を信仰する事が当然であると言う論旨だ。

 だが……一言に信仰と言っても、古龍を信仰する者の中でも、その行動は様々だ。

 古龍の血を引く古龍人。かの者らの統治を至上の物として、規範的な臣民であろうとしたり、貢ぎ物を用意したり。

 その統治と安寧を古龍の加護、守護であるとして感謝の祈りを捧げたり。

 そう言った温和的な者が殆どだが……当然ながら(?)、中には過激派も存在する。

 

 そう。伝説に謳われるその圧倒的な力に近付きたいと。その力を我が身に降ろさんとする者達が現れたのだ。

 決してこれは印象にある様な邪悪な思想による物ではない。モンスターの脅威は国として非常に安定している黄河であろうとも変わらない。

 ならばそれら身近な脅威から自らを、そして周りの大切な人達を守る為の力を愚直に追い求めるのも当然と言うものだ。

 

 だが。……これまた当然ながら、人は古龍にはなれない。

 物理的にも、そして実力的にも遠く及ばない。ジョブによる力を得て、才能がある物であろうとも。

 埒外の才能により超級職に至る者であろうとも……古龍に伍する程の力を持てる者は存在しない。

 それが人だ。弱き人の限界なのだと、幾度となく辛酸を舐めながら鍛錬を続ける彼ら。

 

 ――そして、世界が発展し、様々なジョブが再発見されていく中で彼らは光明を得る。

 その弱き人の限界を超える方法がある事を。そしてそれこそが、彼らが行い続けてきた鍛錬なのであると――!

 

「別に良いんだけど結局ジョブの……クリスタルの力使ってるんだよねー」

「そこは流してやれよ……」

 

 ()()()()()

 彼らが発見し、光明としたのは一部の適正ジョブで特定の行動――鍛錬を行い続けた際に得られる、各ステ―タスを上昇させる汎用スキルの存在だ。

 経験値にも、ジョブレベルにも関係なくステータスを上げる、まるで現実における筋トレと同じ結果を疑似的に発揮するスキル。

 他にも適性ジョブによる特定の行動を行う事で獲得できるスキルは沢山あり、一応これらのスキルもその範疇内のスキルではあるが……多少の特殊性はある。

 まず、他の行動で獲得できるスキル群と比べても適正ジョブの数が多くない事。

 他のスキルは適正ジョブの範囲が比較的広い事に対して、各ステ―タスに応じた鍛錬スキルの適性は驚く程に狭い。

 例えばSTRを上昇させる《筋力強化》のスキルに関しては、内容からすれば殆どの物理系ジョブが適性がありそうに思えるが、実際に適性を持つジョブは極僅か。

 【格闘家】系統等は辛うじて適性を持つが、効率が著しく悪い、等だ。

 だが、しかし……【修行者】や【筋肉鍛者】【育体家】等のこの鍛錬スキルに特化したジョブにおいて、その効率は飛躍的に上昇していく。

 そして、それらの適性ジョブにより効率が上がった鍛錬スキルだからこそ、古龍信仰の彼らが目に付ける理由がある。それが――

 

「それが()()()()()()()()()()()()()()、という特性。つまりは鍛えに鍛え続けていけば人の限界を超えて古龍に近い力を得られる! ……っていう、()()()なんだよね?」

「あまり大きな声でそういう事言うなよ……」

 

 ほれ、近くに居た<マスター>がギョッと驚きの顔芸してるじゃねぇか……

 ティアンに聞かれてたら村八分……は流石にされないだろうし、されてもコイツなら問題ないだろうが俺が困るからやめて欲しい。

 

 コイツ……ジーニアスに関して。俺は多くを知らない。

 しかし。同じ天地から始めた<マスター>として、大会で克ち合い、野試合を行い共に戦った事もある身として、知っている事も少なくはない。

 外見年齢相応の実年齢であろうという事。それに見合わぬ才気と実力を持つ、正真正銘の()()である事。

 そして――強者である彼だからこそ一種の“ノブレスオブリージュ(強者故の責務)”を自らに、そして無意識にか周囲にも課しているという事だ。

 義侠心、等の様な高潔な精神による物ではない。純粋に力を、才能を腐らせるのが惜しいと思っているのだ。

 力が、才能があるのだから、それを磨き鍛え更に上を目指し、そしてその力を遺憾なく使うべし、と態度で高らかに語っているのだ。

 ジーニアス自身も常に自らを更に高める方法を、そして自らの力や才気を発揮できる場所を探している様に思えるのは気のせいだろうか。

 

 そして、そんなジーニアスだからこそ、噂のこの集落の人々に落胆し、若干辛辣になっているのだろうと予想できる。

 だが、それは仕方のない事だ。()()にとって。

 

 ……光明であった鍛錬スキルの存在や特性が広く知られ、長い時が過ぎ……しかし、その鍛錬スキルや鍛錬スキルに高い適性を持つジョブを主にして活躍する者は、余りに少なかった。

 その最たる理由が――圧倒的な、効率の悪さとそれに由来する結果的な弱さだ。

 

 確かに、鍛錬スキルのスキルレベルの上限はなく、超級職ならぬ身でも際限なくステータスを上げ続ける事が出来る。

 ()()()()()

 ……他のジョブよりもスキルレベル上げの効率が良い下級職、【修行者】。

 そのジョブに就いた者が、毎日全力で筋トレを行えば……数日もあれば鍛錬スキルのスキルレベルが合わせて一つ二つは上昇するだろう。

 ――その鍛錬スキルによる各種ステータスの上昇量は、スキルレベル1に対して一桁程度の上昇量なのである。

 

 ハッキリ言って、安全マージンを確保した上で普通の戦闘職でモンスターを討伐し、ジョブレベルを上げた方が……数倍以上ステータスが上昇する。

 勿論、合計レベルをカンストしてからも際限ない上昇を続けられる。続けられるが。

 一年間、全力で毎日欠かさず辛く苦しい筋トレを行い続け……上がるステータスの合計は500前後、と言った所だ。

 筋トレに明け暮れているのであれば疲労困憊となり、他に出来る事なんて何もなくなってしまう。

 モンスターを狩る事も、他の仕事も行う余裕なんて無くなる。鍛錬というのはそういう物だ。

 更には適正ジョブの多くが戦闘スキルも乏しく、センススキルも殆どない事も足を引っ張る。

 いくらステータスが高くとも、それを十全に使用する難易度は非常に高い。

 更には度重なる鍛錬の果てに戦闘勘は衰え、集団からは孤立し、モンスターの間引きにも参加する余力もない穀潰し――そう言われてきた過去が【修行者】達にはある。

 

 故に。ここに集まるティアンの人々は修行を“全力”で行えない。

 最低限この集落の近辺に居るモンスターは自分達の手で処理し続ける事で生計を立てて、“余力”で修行を行う。

 見る者によっては中途半端に過ぎると、そう思っても仕方がない事だ。事実その通りだろうし。

 勿論、順番に全力で修行を、鍛錬を行っている者は居るが……どうやらジーニアスの御眼鏡には適わなかったらしい。

 レベルが低い者が多いのも理由の一つだと思うが……比べる相手(天地)が悪いとしか言い様がない。

 他の集落と比べたら平均はレベルもステータスも練度も数段上の筈だが、多分期待値が高かったんだろうな……

 

 

「だがそれはそれとしてだ。お前も鍛錬の辛さを味わえば彼らの気持ちも少しは理解できるさ……」

「まぁでも、こういう筋トレがジョブクエスト扱いにならないのは辛いよね……」

 

 確かに。

 自分の身体を鍛えているだけなのだからクエストになる筈がないのは理解できるが……その為のジョブなのにな! と言う気持ちも分からないではない。

 他の普通の戦闘職は討伐依頼とかがジョブクエストになるのにな?

 鍛錬で疲労困憊になればモンスター狩りもできないから結局ジョブレベルは上がらず、と中々に扱いが不遇だ。

 だが――本当に不遇なのは、この先だとはジーニアスはまだ知らないのだが。

 

「さて、それじゃ――そろそろ今日の鍛錬の本番に入るとするか!」 

「あっ、やっとお待ちかねの“きつい修行”だねっ。待ってたよ!」

 

 ジーニアスの喜色の籠もった返事だが……残念だがまだ、“きつい修行”ではない。

 と言うよりも今俺達がやっている、数百キロのダンベルを振り回しているのは“普通の修行”ですらない。

 ただ分かりやすく説明する為にやっていただけだ。

 

「えっそうだったの!?」

 

 そうだったのだ。

 ところで――レベル的にも、経歴的にも、俺よりも戦闘経験が豊富なジーニアス君。

 戦闘である程度は身体を使い続けてきたと思うが……何故今までの戦闘で自分の鍛錬スキルの類のスキルレベルが上昇していないのか、分かるか?

 

「んっ!? んー……システム的な制約、とか。あるいは戦闘の場合必要な閾値が高い、とか?」

 

 どちらも否だ。

 鍛錬スキルの上昇に戦闘に対する制約はないし、スキルの上昇に必要な閾値も、()()()()()()()()()()でしかない。

 

 

「ならどうして――」

 

 

 非常に高いステータスを持つ俺やお前にとって、この程度の重さのダンベルなんて小石に等しい程度の加重しか感じないんだ。

 現実的に考えようぜ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………………嘘でしょ?」

 

 早々に察してくれて助かるぜ!

 それじゃ始めようぜ……高ステ者限定地獄鍛錬1時間セット(ペナ装備マシマシ追加加重マシマシ鬼畜修行)をなァ――!!

 

 

 

 ――この後めちゃくちゃ修行した。

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

◆◇ 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

2月25日(木)

 今日は昨日の日記でも書いていた通りに、無事<蜥血集落>に到着っ!

 危険地帯でも無ければ早々僕の実力で苦戦する様な敵なんて……〈UBM〉との不意の遭遇でもしない限りはありえないしね。

 グランバロアでの旅路では、いきなり〈UBM〉の強襲からスタートだったけどあんなの普通は起こらないからね。

 ……グランバロアじゃなきゃ普通は起こらないからね!

 

 さて、やって来た修行者達の集落と名高い<蜥血集落>だけども――個人的にはすごーくコメントに困る感じかなぁ。

 想像以上に広い敷地に大小様々な広場……鍛錬の為の広場が付設されていて、集落中のティアンも<マスター>も分け隔てなく健全な鍛錬に汗水流している、みたいな。

 すごーく健康的に筋トレとかしてる人ばっかりだよ! 専門ギルドに申し出れば器具も貸し出してくれるんだって。

 ――トレーニングジムだこれ!? この、何と言うか……想像していたイメージと全然違ったからビックリだよ!

 

 いや、うん。そりゃ生死に関わる様な特訓したからって劇的に強くなれたりする訳じゃないんだから、そりゃそうなんだけどねっ。

 天地の死生観を考えたらそういうのもあるかなーって思ったけど、この世界の人達が強くなる為の主な理由は外敵から自分や仲間を守る為なんだから、そう簡単に命を粗末になんて出来る訳ないからね……!

 鍛錬は身体を壊さない程度に、安全に! ……回復魔法とかもあるから無茶が出来ない訳じゃないんだけどね?

 

 とは言え。……とは言え、鍛錬で強くなると言う、現実(リアル)では至極常識的で当然の行動はこのデンドロの世界ではとても非常識で異常な行動、なんだよね。

 それは何故かと言うと考えるまでもなく、この世界の人間の力はジョブの力とほぼほぼイコールだからだね!

 鍛錬、筋トレで得られるステータス――鍛錬系の汎用スキルで上昇できるステータスは、ジョブレベルを上げる事で上昇するステ―タスと比べて非常に低い。

 世界の理として、()()そっち(ジョブレベル上げ)なんだろうね。

 そして鍛錬(こっち)は脇道……むしろ寄り道、みたいな感じなんだと思う。

 だから本来は双方を両立してやるのが賢いんだろうけど――それもティアンの人には中々に難易度が高いんだよね。

 まぁ、僕も偶然(でもないかな?)この<蜥血集落>で再会したモョモトに言われるまで気にしていなかったけど……世間一般的なティアンの人にとって、上級職と言うだけで敷居が高いんだよね!

 

 合計レベルの上限やジョブ適性に関してもそうなんだけども、場合によってはそれ以上に、就職条件が、ね。

 むしろ前者二つの影響でより難易度が上がっている、という側面もあるんだろうね。

 この集落ではメジャーな物理系ステータス全般の鍛錬に高い適性を持つジョブ、【修行者】、そして僕やモョモトも就いているその上級職【求道者】。

 【求道者】の就職条件は【修行者】のジョブレベル50と、素の物理ステ―タスの合計値が一定以上、の二つだけ。

 僕もモョモトも、そして他の<マスター>達も、【修行者】から【求道者】に就こうと思えば割と直ぐに就職できる程度の難易度の条件だ。

 ……【修行者】系統を選ぶ時点で物理系に優位な<エンブリオ>を持っている<マスター>からすれば、簡単な難易度。

 でもそれは、ティアンの人からすれば物理系ジョブでレベルを400まで埋めた上で更に物理系ステータスを合計1000程度の上乗せが必要な数値。

 全力で鍛錬を重ねて言っても、下級職の【修行者】の時点の効率だと2、3年は鍛錬漬けしないと達成できない高難易度になるんだよね。

 

 ――そして、レベル上限やジョブ適性の関係でジョブもそこまで埋められず、鍛錬だけに明け暮れる余裕がないティアンならば、この集落で10年以上鍛錬を続けてても鍛錬系の上級職に就けないって事も珍しくないんだって。

 諸行無常、茨の道過ぎる……そうじゃなくても鍛錬スキル上げるの大変なのに。

 

 そして……茨の道なのは実は<マスター>も変わらないんだよね。

 現実では効果のないガチ筋トレを延々と続けられるのは多分ティアンの人以上に変態なんだよ!

 ――まぁ僕もやるんだけどね。折角来たのにやらないなんて言う選択肢がある訳ないよね?

 【鍛錬王の腕輪】に【鍛錬王の足輪】2セットでSTRとAGIが-95%を一週間レンタルで一万リルなんて安い物だよねっ

 健全な汗、流さざるを得ない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月26日(金)

 今日は学年度末テスト最終日――と言う事はさておき!

 ポケットモンスター聖剣/神盾、発売決定やったー!

 えーと、リメイク前の剣盾が発売されたのが2019年だから……25年越しのリメイクかぁ。

 なんでポケモンはリメイクが発売するまでの周期をどんどん長くするんだろうね……BWで18年、XYで20年、SMで22年だっけ?

 関連作品の数が数え切れないくらい多いから仕方ないと思うけど流石に期間開きすぎだよね!?

 楽しみなのは変わらないけどねっ。当時のシステムと今の環境をどういう風に調整していくのか。

 ワイルドエリアもVRで再現――とかはまだやらないみたいだけどもー。

 むしろ2046年の50周年と言うとても大きな節目に来るであろうビッグタイトルの為の助走期間なのでは、とか言われてるけども。

 それでも期待しちゃうよね……僕は禁止伝説ではムゲンダイナが一番好きだからね!

 

 さて、デンドロでは今日も引き続き<蜥血集落>で鍛錬――だったんだけど。

 大体モョモトのせいでデスペナになったよ! <蜥血集落>を離れる際には野試合を挑んで怨みを晴らしてやるんだー!

 

 事の発端は僕的に短期で集中的にこの集落での鍛錬をしたいと思ってギルドの人に紹介されたのがモョモトだった、というこの集落に来た初めの方に遡るんだけど。

 そこでモョモトに鍛錬スキルの仕様について説明されたんだけど、ある意味で驚くべき事に現実での筋トレ、鍛錬と似通っているんだよね。

 その最たる部分で言えば、ちゃんと鍛える人の力にあった負荷を掛けて鍛錬しないと、鍛錬スキルは全く上昇しない、という点。

 筋肉ムキムキなマッスルが5キロとかのダンベルで筋トレをいくらしても全く負荷が掛からずに筋トレにならない様に。

 デンドロでも、ちゃんと合った負荷で筋トレしないと効果がないんだけど……

 そう、()()()()()()()()()()()、ね。……だからこそ、この点が一番厄介なんだよね。

 

 現実で筋トレをする人達は全力で筋トレをしている。時間を決めて、汗を沢山流しながらも休憩と鍛錬を交互に行っていく。

 短時間で休憩と交互にやらないと続けられない、それくらいの負荷を掛けて筋トレを行わないときちんと筋肉を成長させられないという事。

 持久力や瞬発力に関しても休憩の仕方とかは多少の違いがあっても同じ事でまず大事なのはその個人や目的にあった負荷を掛ける事なんだよね。

 運動不足の人は散歩や軽いジョギングで、鍛えている人は全力のトレーニングで……ちゃんとそれぞれの負荷で疲労しながらも効果を出している。

 

 そして。罠の様でいて当たり前の事なんだけども――戦闘技術、と言うのは如何に効率的に身体を動かすか、にかなりの比重を置いているんだよね。

 それは戦闘技術を疑似的に獲得できる戦闘系のセンススキルも同様。

 その上でステータスもある事からデンドロの世界の戦闘職の極まった人は何時間も何十時間も、時には何日も戦闘を継続させ続ける事が出来る。

 ――効率良く、疲労を極限まで抑えて自らの力を発揮する術をほぼ無意識で使っている。

 当たり前なんだけど疲れると言うのは非効率の極みだからね。

 そりゃ呼吸法、身体捌きに武器捌き、攻撃の型。無駄をなくし効率を極めて疲労を軽減させる方向に行くとも。

 

 ――だから戦闘ではそうやって鍛錬スキルのスキルレベルは上げられないし、鍛錬の中で負荷を掛けるのも一苦労なんだよね!

 いや、そうと言われれば、教えられれば戦闘の中で意識して負荷を掛けて鍛錬スキルを上げる一助には出来ると思うよ?

 でもそれは戦闘の中では効率良く動けないし、戦闘の度に疲労困憊になるのと同義。まぁ絶対にやりたくないよね……

 だから鍛錬スキルのスキルレベルを上げるのはこういうちゃんと意識や設備が整った集落が凄く、すごーく大事なんだよね……一見じゃ分かりにくいから他の人達も体験して欲しいよねっ。

 ステータスマイナスの装備や全身の各部位に装備できる超重重石の装備とか! 多分これ何時かの代で生産系超級職が関わった的なあれだと思うんだよねっ。

 

 さて、そんな鍛錬スキルの仕様だけども。

 現実と同じ部分が多いのはそれだけではなく。スキルレベルの上昇についても同じ部分がある。

 軽い鍛錬ならばそれ相応に、厳しい鍛錬ならばそれ相応に、それぞれスキルレベルが上昇しやすくなるんだよね。

 勿論、スキルというシステムの都合でジョブの制限もあって上げやすさに補正があったりするのだけど。

 

 ――僕が希望したのは短期で効果があるであろう“きつい修行”。そして紹介されたのがモョモトだった訳だけども――

 なんでモョモトはガチで()()()()()()()()のやり方を知っててしかも実践できるのさー!?

 これだから元天地の<マスター>はっ。

 慣れればギリギリのラインを反復横跳びできる様になるのだとか。その秘訣、掴み取ってやるんだよ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月29日(月)

 二月最終日……ふと思ったけど今年はうるう年だったんだねって。

 一年が一日延びるのはお得なのかどうなのか……はてさて。

 

 ともあれ、半日の学校から帰ってきたら今日は早速デンドロにログイン!

 モョモトとの鍛錬は中々に板に付いてくる様になったね。鍛錬の後のご飯が凄く美味しい……

 そういえば、現実での鍛錬は当然食生活も大きな影響を与えるんだけど、デンドロの鍛錬もそういう側面があるらしい、らしい。

 なんでらしい、を強調するのかと言うと、食事が影響を与えるのは間違いないんだけどその詳細はまだ分かってないんだって。

 ただ現実の様に蛋白質! というだけじゃなくて料理の中に内包しているリソースとかも関係があるとか。

 更にモンスター肉ならモンスター毎の特性もあるとか……デンドロでの筋トレって実はただの脳筋にはできない複雑な代物なんだよねー(現実でもそうかもしれないけど)。

 でもとりあえずお肉はメジャー、鍛錬においてもすっごいメジャーなんだとか。

 まぁ黄河の中でも比較的戦闘民族的で地理的にもモンスターとの戦闘多いからモンスター肉の入手が多いからってのもあると思うけどねー。

 そういえばジェーンさんも微妙な顔しながら食事処のお手伝いのクエストやってたけど、あれ自体は【クローン】の複製使ってないんだとか。多芸っ。

 ……と言ってもこの集落だとジェーンさんもコテツも近辺での素材集めくらいしか出来そうにないのはちょっと申し訳ないけどね。

 <エンブリオ>を使う機会に恵まれない<マスター>は悲しいからね……<蜥血集落>も中々に滞在したし明日か明後日にはまた旅立つ事になるからそれまで待っていて欲しいっ。

 コテツは鍛錬用のデメリット装備の増産や補修で色々仕事していたから余計にねー……

 

 鍛錬に関してもそろそろ一段落。まぁ反復横跳びまではできなくても三歩前を安定して、くらいは出来る様になったんじゃないかな。

 後はレンタルしかしてなかったデメリット装備をコテツに作って貰って、日課と鍛錬を同時進行出来るくらいには慣らさないとねー。

 

 そして集落を発つ前に忘れちゃいけないのがこの集落に来た最大の目的……は鍛錬で間違いではないんだけど。

 鍛錬に感けて忘れていた訳じゃないんだよ。どの道鍛錬はしようと思ってたしジョブクリスタルは逃げないから後回しにしてただけなんだよ。

 ……さて、そんな訳で忘れてなかった僕はちゃんとギルドに行って目的を果たした訳だよ。――新たなジョブ就職と言うね!

 

 新たに就いたジョブは……物理戦闘ビルドの頼れる味方、自己バフ強者の優秀サブジョブ筆頭の【練体士(エンハンサー)】だよ!

 特殊な呼吸法によって体内の魔力を活性化させる事で自身の肉体に様々な強化変容によるバフ効果を齎すジョブスキル、練技を使用する事が出来るジョブだね。

 体内の魔力を、って言うけどこの消費する魔力(MP)と効果のパフォーマンスが凄く良い事が評判を呼んでいるんだね。

 具体的に言うと短時間のバフなら物理ビルドのサブの【練体士】によるMPだけで普通に十分な効果を発揮できる所とか、だね。

 物理系のアクティブスキルに使うSPを消費しない上にバフを考慮しないでも他の物理ステ―タスもまぁまぁ上がるからお得感が大きいんだろうねー。

 

 割と特徴が似てるジョブでSPを消費して自己バフを含む多彩なアクティブスキルを使える【気功士(オーラバトラー)】とも迷ったんだけど、最終的には好みと将来性で【練体士】を選ぶ事にしたよ。

 【大気功士(グレイト・オーラバトラー)】は【気功士】の純粋強化という側面が強いけど【高位練体士(ハイ・エンハンサー)】は強化バフと言うよりも魔力による身体変容の方に重きを置く様になるんだよね。

 一時的に翼を生やし空を飛んだり、尻尾を生やして()()を増やしたり、牙や爪の硬化、鋭化であったり、特定部位のピンポイント強化であったり……

 他のジョブの都合でMPが高い僕ならそれらも十全に使いこなせるんじゃないかなって思うよねっ。ふっふーん使い出があるよね!

 

 ……とは言っても、まだ就いた直後の下級職のまま、《天上の意を叶える者(アダムカドモン)》の昇華も出来てない状態なんだけどね。

 黄河内なら複数個所のジョブクリスタルで転職できるから、まずは黄河に居る内にジョブレベルを上げて就職条件を達成出来る様にしないとね。

 新しいジョブにも就けたし、ここはしっかり準備してまた<自然ダンジョン>に繰り出したりしたい所だね!

 

 To Be Continued…………

 




 ザマゼンタはボディプレスの上位互換の専用技を引っ提げて帰って来るんですよ間違いない(盾購入者並感
ステータスが更新されました――――

練体士(エンハンサー)】:練体士系統下級職。
 エンハンサーは嗜み。
 呼吸法による体内魔力の活用により身体強化・変容を得意とするジョブ。
 その特性から鍛錬系スキルへの適性も全体的に高い。
 【修行者】系統と違い体内魔力を用いる事からMPを鍛える鍛錬スキルへの適性もあり、あらゆる意味で万能選手だ。
 しかし上級職の【高位練体士】のジョブスキルによる身体変容はモンスターのそれに酷似している様に見える為、ティアン<マスター>を問わず就職する者の数はがくんと減っていく。

 ……本来の彼らの信仰を思えば、その先にこそ彼らが求めた先があるのかもしれないが。

【求道者】:修行者系統上級職。
 アイアム全力で自分の身体を鍛えますと主張しているジョブ。
 【修行者】の時程の制限はないがそれでも武器戦闘に関する適性が低いのが玉に瑕。
 ティアン基準では就職条件が難しい方であるからか、普通に上がる物理ステ―タスにパッシブの物理ステ―タス強化スキル、そして物理系の鍛錬スキルへの高い適性を併せ持つのに優秀とは言われないジョブ。
 痛覚遮断しても疲労やそれに伴う苦しさは軽減できないのが一番の原因である(それでも一部の物好き<マスター>がこの集落に集まっては居るが)。
 ティアンとしてもレベル上限に達した後に更に鍛錬をやるくらいなら生活の安寧に精を出す方が道理に適っている為、やはり全体としては全く人気ではない悲しいジョブだ。
 

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