無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:ゴブリンには無限の可能性があるってデンドロが言ってた(言ってない)

それでは本編をどうぞ!


第八十一話 虹光が示す道標の先へ

3/8(火)

 〈UBM〉――【竜王】から依頼(クエスト)を受ける事になったよ!

 って話を桑木さん達にしたら凄く渋い顔をされた。

 グランバロアと黄河は別に関係悪くないんだけどこういうスタンスの違い大きいよね……まぁ境遇から考えれば当然なんだけどね。

 そういえば、グランバロアの前身は且つての【覇王】の国の奴隷達だった、ってデンドロの歴史(Wiki調べ)にあったと思うんだけど。

 現状では特に関係が悪いとかそういう流れは全くないんだよね。

 不思議な関係だよねー……

 

 そんなちょっとした疑問はさておき、デンドロでは上述の通りに【竜王】のクエスト……お使い依頼をこなしていくよ!

 最初に行くのは<薬霊山>と同じ黄河が誇る霊山の一つ、<湯霊山>。

 <薬霊山>からおよそ南西、つまり龍都からほぼ南に三日くらい掛かる場所にあるのが霊山の中では癒し(複数の意味で)と名高い<湯霊山>なのだ!

 うん、Wikiとか黄河の普通の人の感覚なら三日くらいは余裕で掛かる距離なんだよねー。僕なら内部時間で言えば半日足らずで飛んでいける距離だけどね。

 今ならイグニスと全速力で空中レースが出来る気がする……!

 

 さて、それはともかく――<湯霊山>はその名の通り、そこそこの規模で温水……温泉が湧いている霊山もとい火山だ。

 火山と言っても噴火する気配もなく、生息しているモンスターのレベルも霊山の中ではやや低め。

 この霊山を根城にしている【竜王】、【黄竜王 ドラグゲルプ】も鉱物食だから此方から攻撃を仕掛けなければ殆ど戦闘にならないとなるほど癒しと言われるのも納得できるぬるぬるスポットだよ。

 【黄竜王】は怒らせた時の戦闘力がヤバいって噂だけど僕はそんなヘマをするつもりはないからね、うん。

 ちなみに、この<湯霊山>は<薬霊山>と違ってそこそこモンスター狩りに来るティアンや<マスター>の人が多いらしくてモンスターの数はまぁそこそこと言った所。

 物好きな人がこの霊山の秘湯までの案内と護衛のクエストを出したりする事もままあるみたいだからね……平和と言っていいやら何とやら、だね。

 

 そういえば、あまり関係ない話ではあるけど当然このデンドロの世界にもお風呂に類する物、施設はある訳だけど……

 建物としての【風呂場】【温泉】の効果としては《汚染除去:〇(除去の程度の大まかな指標)》と《回復力強化》がポピュラーなんだよね。

 この《回復力強化》の内容がお湯や入浴剤(!?)によってまちまちで、疲労回復だったりHPMPSP回復力だったり、特定の状態異常の回復力を伸ばしたりと様々でそれを楽しみにしている人も居るんだとか。

 入浴剤の調合内容次第だったりこの<湯霊山>みたいな自然の温泉だったりだとまた全く別で特別な効果が得られたりととても興味心を擽る内容になってるんだよね。

 ……そういえば天地で入ったお風呂はシンプルな疲労回復力とHPSPMP回復力強化のばっかりだったなぁって今更思い出したよね。

 ある意味天地らしかったなぁ……あ、この<湯霊山>で僕が見つけた秘湯っぽい所は一定時間の火属性適正強化の効果がある温泉だったよって一応日記に残しておくよ。

 

 って随分話が逸れてたけど別に僕がこの<湯霊山>に来たのは温泉を楽しむ為ではなく、お使い依頼の為に来ていた訳で!

 そんな【青竜王】から言伝を頼まれたのは此処に住む【黄竜王】――ではなく。

 黄河にすらその名前が伝わっていないこの<湯霊山>に潜む【竜王】、【秘竜王 ドラグシークレット】だ。

 そんなの居るんだ!? って思ったけど知られてないけど居るんだよと普通に言われちゃったら仕方ないよね……

 当然ながらその能力特性は秘匿能力に特化している物。僕に見つけ出せるのか気になったけど仮の名前の中の仮の名前とか大体良く居る箇所を教えて貰ったからなんとか見つけ出せたよ。

 ちなみに、仮の名前の中の仮の名前は大抵はいつも人の姿(《人化の術》じゃないんだって)で人としての名前を持って活動しているんだけど、その間に彼女を知る者がそうだと伝える為の仮の名前、という事らしい。

 龍としての真名もあるらしいんだけどそれは【青竜王】も知らないんだとか。徹底してるよね。

 ……だけど、山頂付近の一番熱い所の湯に入り浸ってるのは正直どうかと思うけどねっ。

 ENDが低い一般人だったら肌が大変な事になっちゃうから一般人じゃないですよーって主張している様な物だからね……

 

 ――そんな訳で、さくっと【秘竜王】さんを見つけて一つ目のお使い依頼は何事もなくクリアしたのでした、と。

 【秘竜王】さんの仮(略)名とか言伝の内容は「他所に漏らさない様に」って契約してあるからこの日記には書けないんだよね。

 日記は大体勝や明日香にも見せてるから、だからそういう物に詳細を記すだけで「他者に漏らした」判定になってデンドロに入った途端契約のペナルティを負う事になる――って明日香が言ってたからね。

 でも僕の個人の感想を言わせて貰えばそんなに問題がある内容だった訳じゃないから多分気にしないでも大丈夫だと思うよ、という事にしておこう!

 むしろ何か問題があったら僕が全力で【竜王】に立ち向かうから勝も明日香も安心してね!

 

 

 

 

 

 

 

 

3/9(水)

 時空の法則が乱れる!

 今日クエスト先として向かったのは昨日の<湯霊山>より更に南西、黄河の南西端にあるフィールド――<歪絶山道>。

 僕が黄河に来て初めて足を踏み入れた所謂“汚染地帯”だ。

 

 ……なんだけど、此処は黄河に数ある汚染地帯の中でも特段に異質で()()なフィールドなんだよね。

 一言で言うのであればゲーム的な迷いの森(森ではない)って感じ。空間と空間の繋がりがグチャグチャで行きたい所、見える箇所に行くのも苦労する様な場所なんだ。

 それだけならその空間の隔たりと繋がりを覚えればゲームみたいに普通に進めるんだろうけど……

 何が危険って<歪絶山道>の空間異常、不定期に空間の絡まり・捻れが()()んだよね。

 勿論、その空間の歪みに巻き込まれたら巻き込まれたもの、箇所もぐちゃぁってなるんだとか――

 当然こんなヤバい一帯にティアンは滅多に近付きすらしないし、<マスター>でもここに来る人は限られるんだとか。

 それこそ、此処に生息しているモンスター達の様に何らかの形で空間異常を察知・知覚できる様な能力がない限りはね。

 

 そもそも何がどうなってこんな危険地帯が出来たのか……と気になるけどその大本はこの付近の山が且つて黄河の中でも屈指の霊山だった数百年前まで遡るんだとか。

 むかしむかし、非常に強力な一体の空間操作に長けた〈UBM〉が永い間縄張りとしていたのだけど、色々と悪さをした結果例の【龍帝】に調伏される。

 ……その時点では、まだ異常は全く出ていなかったんだとか。でも、表面化していなかっただけで多分潜在的には異常が蓄積されていたんだろうと思う。

 周囲一帯、フィールド、あるいはその空間の自然魔力がその色に――所謂、()()()()に染まってたんじゃないかなって思う。

 

 それだけなら良かったんだろうけど、元々屈指の霊山と言われていただけあって自然魔力が豊富だったせいか、その割と直ぐ後に“三強時代”に入って【覇王】と【龍帝】の直接激突した主戦場の一つになったり、とか。

 その後の内乱でも主戦場の一つになって、よりにもよって発掘したばかりの先々期文明時代の広域殲滅兵器とか三強時代に開発した自然魔力を利用した広域殲滅術式、とか。

 その他諸々が重なった結果、内乱の後期に突然山の一部空間が逝っちゃってそれに巻き込まれて大勢亡くなったとか、そんな来歴があるんだとか。

 とても……厄い!!

 こんな所にお使いに行かせるとか人でなしにも程があるよね。人じゃないけども!

 まぁ、〈UBM〉であろうと【竜王】であろうと、空間系に類する能力を僅かにでも持ってなければ即死の危険性があるってのは十分頼むに値するかもしれないけどねー……

 その点僕は<マスター>だから死んでも大丈夫――じゃないよ! 僕は空間異常程度では死なないからね!

 空間異常を探す為に使うのは初めてだけど、こういうのにも空間探査の術は有用だからねー。

 多分普通に他の黄河の人に頼むよりは適正があったと思うよね。

 

 ――そんな適性がある僕がお使い依頼と称してやってるのは採取(土いじり)なんだけどね!

 いや、分かるよ。多分異常がある自然魔力を内包したこの周囲の素材を取ってきて何らかの解析だか研究だか準備だかをしたいって事は。

 でもほら、折角の【竜王】からの依頼なんだしもっと重大! っぽさみたいなのが欲しいというか何というか、そんな我儘な心境。

 勿論、ちゃんと依頼はこなすんだけどね。

 ついでに少しの間モンスター狩りもしてたけど、結局僕が居る間には空間異常の再動は無かったしねー。

 ……まぁ、察知できても対応できるかどうかは分からなかったからそこは幸運かなって。

 

 メモ:

 【仙狸山精】

 所謂化け狸の妖怪のモンスター。だけど普通に単体で亜竜級上位くらいの実力はありそう。

 かなり多彩に色々と術を使うし知恵も働かせるからまともにぶつかるのは得策ではないかな。

 好戦的な方ではないけど何か理由でもあれば普通に襲ってくるからまぁ近付いてきたのは討伐するんだけどね!

 

 【ポータル・スライム】

 邪悪なカービィ。ぱっと見やや小柄で真っ黒なスライム。実際は黒い訳じゃなくて光すらも完全に吸収しているせいなんだけど。

 触れる総てを亜空間に取り込む超危険モンスター。基本的にどんな攻撃も吸収される為効果がない。チートじゃーん!

 地面を吸収してないから吸収し取り込むのは一応選択性だったみたいだから結局埋めて決着! 知性が低いらしく自分の足場となる大地と自分を覆う大地の違いが分からなくてそのままになっちゃうっぽい。

 その内餓死して僕に経験値だけ流れるんだろうなって。ところで、この<歪絶山道>には其処彼処に地面が盛り上がった箇所が散見されるんだけど……

 ……気にしない方がいいよね!

 そういえばログアウト後にWiki見たんだけどただのスライムなんじゃなくてスライムとエレメンタルの合いの子みたいな感じの存在らしい。なるほどね?

 

 

 

 

 

 

 

3/10(木)

 ふと思えばソロ狩り(?)の時間も随分長くなっちゃったよね……正直お使い依頼請けた辺りで一旦イグニス達と合流しても良かった様な気がするよね。

 道すがら向かってきてたのは倒してたけど、やっぱりお使い依頼の方を優先してたからその間はそこまで数倒せてたわけでもないしね。

 それよりも勝に聞かされるイグニス達が元気にやっている狩り風景を想像するとやっぱり一緒に狩ってた方が良かったかなーって……

 うんうん、やっぱり此処は初志貫徹、皆の頑張りを糧にして確り依頼をこなそう!

 

 ……まぁ、とりあえずは二つのお使いが済んだから一旦<薬霊山>の【青竜王】の所まで戻る事になるんだけどねっ。

 普通の人だったらこの行き来だけで相当な日数を使わされている所だけど、それはさておき。

 此処に戻るのは依頼達成の報告と三つ目の依頼――そう、実質的な報酬である【虹竜王 ドラグイリス】の居場所と言伝を聞く為だね。

 つまり依頼を達成した信頼による報酬って事だね。……一応余人に知られている【虹竜王】よりも全く知られていなかった【秘竜王】さん関連の方が教えるハードル低くて良いんだ!? と思ったけどね。

 【竜王】って不思議な思考してるよねー。まぁあれでも敵対的ではない〈UBM〉という事なんだしきっと良い方向に行くだろうという事で。

 ……僕じゃ<歪絶山道>の土とか素材じゃ何をどう調べて何の足掛かりにするのかとかすらも分からないんだけどね。やっぱり長命の龍は凄いなぁって。

 

 それはさておき、報酬でもある【虹竜王】の居場所だけど――なんと普通に人化して人里に紛れているらしい。

 【秘竜王】と言い古の時代に人と交わった古龍と言い黄河の龍基本人間大好きかな!?

 所在地は西、カルディナと黄河の国境付近の都市、通商の要である商都。

 僕の速度ならギリギリ今日中に向かえそうだから早速接触しに行ったんだけど……まぁこれは契約に抵触しないだろうから良いか。

 ――すっごく人の娯楽文化に馴染んでるぅー! 食、芸、劇、それに路上のいざござまで全力で楽しんでるよこの【竜王】!

 いや人の町に居る時は正体は隠してるんだけど、本当満喫してるよ……良い暮らししてるよね!?

 僕だって実は商都に来るの初めてだけど依頼があるし色々と満喫するのは後回しにしてたのに……と言うのはちょっとした嫉妬だけどもっ。

 それと言うのも、名前――【()()()】から予想はしてたけど、ただの《人化の術》だけではなくて、状況に応じて何らかの気配操作に更に光学隠蔽も駆使してたんだよね。

 ()を冠するだけあってやっぱりそういう能力だったんだね、と。うん、勉強になるよね……別に師事しに来たとかそういう訳じゃないんだけどね!?

 そんな訳でさっくり接触して【青竜王】からの依頼で来た事や経緯の説明、そして重要な報酬の要求をする事に。

 ……何故かすっごく笑われたけどね。「まさか本当にそれを聞く為に依頼を頑張っていたとは」とか言われたんだけど。

 僕は全然本気なんだけどね! 誰だってそうする……かどうかはさておき。

 まぁ笑われたのは報酬を快諾して貰えたから別に良いんだけどね、やったぁ。

 

 さて、そんな感じでここ数日のお使い依頼の報酬を()()と貰える事になったんだけど――具体的には、三つ。

 一つはアイテム、【虹竜王の光鱗】。鱗(非実体系)とは……? リソースにはなるよ、との事だけど。

 一つは助言、「君は回復魔法を習熟しておいた方が良い」と。

 最後の一つは情報。黄河のとある隠されし秘境の在処。そしてオマケに「秘境へ行くなら早めの方が良いよ」と言う追加のアドバイス。

 

 分からない事は多いけど、折角貰った報酬と助言を活かさない手はない、よね。

 まずは秘境に行って、それからイグニスやコテツ達と合流して他の事についても考えて行こうかなと。

 一体何が待ち受けているのか――今から楽しみだよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

□黄河<幻霊山> 【高位練体士(ハイ・エンハンサー)】ジーニアス

 

 

 轟轟と雷鳴が鳴り響き、視界の中で雷光が煌めき続ける此処は秘境、<幻霊山>。

 

 且つての【幻竜王】が深く関わったとされるこの霊山は、まるで夢幻の如くあらゆる手段で以てその存在すらも隠されていた。

 六感七感は勿論の事、()()としても隠蔽され続け国の文献にすら残っていない、二つの意味で()()()()()()()()()()()

 

 何故ならこの霊山、この山は<歪絶山道>が存在するその山に更に重なる様に別空間内に存在するそのままの似姿なのだから。

 空間操作の極致の一つ、亜空間の創造。

 それを為した要因、そして今も<歪絶山道>が存在し続けている禍因、此処が且つて至上の霊山だった主因、更には今も轟雷が響き続ける原因は、この山の山頂にある。

 一言で言うなれば非常に濃い自然魔力の塊。この山の核と言っても良い代物。

 その特徴は単純にして純粋――非常に()()()()()()という事、ただそれのみだ。

 それも、そこを支配する実力の者の魔力に自動的に染まる程の代物だ。そこのヌシにとって非常に都合の良いフィールドになりやすいと言い換えても良いと思う。

 きっと、火属性のモンスターが此処のヌシになればこの山は火山に、氷属性のモンスターが此処のヌシになればこの山は雪山になるのだろう。

 

 そして――そんな単純にして純粋であるからこそ、空間を支配する神話級の〈UBM〉によって亜空間を作る礎にすらされ、その中に格納された過去を持つ、特異なる秘境だ。

 その後は色々あってその〈UBM〉は討伐されるがこの空間はそのまま残り……様々な影響を漏れ出しながらもその存在を時の【竜王】や【龍帝】らに危険視され隠蔽され、今に至る。

 それからは偶発的な要因でこの中に転移してしまった不運な生物達だけで歪な生態系が構築されるに留まっていたのだが――

 

「そもそも高い感知能力に空間探査と空間転移を兼ね備える存在じゃなきゃ仮に教えられても気付けないし入れない……って、何処まで知ってるのか怖くなるよねあの【竜王】めー!」

 

 ――轟!!

 

 雷光が槍となって、幾重にも分たれて僕に向かって来る。

 《ライトニング・トライデント》とでも名付けようか。この攻撃の主は想像の通り、今現在のこの<幻霊山>のヌシであるモンスターだ。

 名前は――【幻獣索冥】。四足と角持つ上位純竜級の魔獣だ。

 僕的にはその白雷に白い毛皮も相まってとてもキリンっぽいんだけど麒麟じゃないのかな……?

 

「おっと」

 

 ――バチィン!

 

 大きな音と共に僕の眼前で雷光が弾けて消え去る。

 これはヌシであるキリン(仮名)が容赦とか加減をしてくれたとかそういう訳では全くない。相手は興奮と戦意を隠そうともしていない。

 

 ――それを防いだのは、僕の前方にいくつも展開された光球、僕が最近開発した()()()()()()()だ。

 

鏡球(ミラーボール)は問題なし、と。さて……」

『珍妙な術を使う人間だ。何をしにここに来た!』

 

  ――轟ゥ!!!

 

 問いと共に更に数を増やして雷槍が襲い掛かる――だけではなく。同時に上空の雷雲から僕に向かって一直線に極雷が降り注ぐ。

 非常に強力な攻撃だ。自らの魔力の色に染まった自然魔力を利用して威力を増幅(ブースト)、物理防御は意味を為さず、回避は不可能な雷速の同時攻撃。

 本人(本獣?)に戦闘慣れしている気配はないものの、問いと同時に行う事で僅かでも意識を分散させる事で雷速への対応を更に難しくさせている事も伺える。

 だが。

 

「なるほど、()()ね!」

『……っ!? グゥッ!?』

 

 既に、そこに僕は居ない。

 そこにあるのは雷で焼けて黒焦げになった紙切れ(式神)のみ。

 違和感を察知してか【幻獣索冥】は咄嗟に横跳びしようとするも――光球に擬態して遠隔起動された《グリント・パイル》がその側面を焼く。

 しかし、それは雷光を纏う幻獣にとっては軽傷も良い所。即座に飛び退き、全く違う方向に居た僕を見つけ、静かに警戒する。

 

 ――ボゴボゴォ!

 

 そして、その警戒はただ自身を休めていた時間という訳では、ない。

 数瞬後には地面から岩塊が幾つも剥離し、【幻獣索冥】を隠す様に守る様に漂い始める。

 その岩塊の周囲には雷電が迸っているのが確認できる。――どうやら、僕の鏡球の防御を電磁力を使って模倣再現した様だ。

 

 ――実に良い。

 

「何処まで見通されてるのか分からないけど、うん。僕は気にしないよ。それよりもこの出会いに感謝したいくらいだからね!」

『……? お主、何を言っているのだ』

 

 粗削りながらも自身で考え適応し、有用と思えば即座に対応模倣するその思考と戦闘センス。

 このフィールドで色々と増幅されているのであろうが、十分過ぎる実力と知性。

 【虹竜王】の思惑、その他諸々はともかく――僕の行動は既に決まっていたのだった。

 

 

「――ティン、と来た! 此処を出て僕と頂点を取りに行こうよ!」

『……は、ハァ!?』

 

 僕の言葉に【幻獣索冥】は驚愕を隠せない様だが――とりあえずはその隙を付いて攻めかかるとしよう。

 まず最初にするのは格付け。僕が主、そして君が従。

 《従属契約(テイム)》を行う為の十分な条件を満たす為に僕は嬉々として【幻獣索冥】に襲い掛かるのだった――

 

 

 To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

【幻獣索冥】:
 純竜級の種族:魔獣のモンスター。
 黄河の霊山にはままいる【幻獣麒麟】の亜種種族。
 相応の体躯を持つ四足の獣、という以外微に入り細に入り様々な違いがあるが、どれも黄河に生息する魔獣の中ではトップクラスの実力を持つという点は共通している。
 風を操る原種の黄毛の【幻獣麒麟】、炎を操る変種の赤鱗の【幻獣炎駒】。
 純粋物理能力に特化した異種の黒角の【幻獣角端】、怨念を喰らう希少種の青皮の【幻獣聳孤】等も確認されている。
 魔獣のモンスター、という分類ではあるが種族として非常に強力であるからか、概ね知性も高い傾向にあり、人間に敵対的でない個体も多い。
 そして、その知性と力ある種族故かより強い者には恭順の意を示す事もままあり、歴史の中では【龍帝】や皇帝側近の超級職に侍っていた記録が複数ある為、一部では神聖な獣として扱われる事もあると言う。
 だが、それらは勿論ただの傾向であり、かの種はモンスターである為、必ずしも非敵対的であるとは限らないという事はこの世界で暮らす者は皆理解する必要があるだろう……

 余談ではあるが、<Wiki編纂部>の黄河支部では勿論このモンスター群のデータも蒐集しており、その高い能力に太鼓判を押している。
 その調査の際に面白い点として挙げられたのが彼ら<マスター>の現実における幻の獣、“麒麟”の故事との共通点だ。
 曰く――「一日に千里も走る素晴らしい馬」である、と。
 千里とは約四千キロメートルであり――それは実際に純竜級の身体能力を持つ彼らが全力で走って約六時間で踏破できる距離であるのだ。
 そんな偶然の符号こそが面白い、と黄河支部のオーナーが言ったという噂が流れているとかいないとか……

 だが、多くの<マスター>はその様な細かい共通点よりも前に声を大にして言いたい事があるのだとか。

「いやあれ色合いと言い能力と言いどう見ても原種キリンじゃねぇ!!??」
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