無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:格付けは大事、黄河民もそう言っている
それでは本編をどうぞ!


第八十四話 表・龍に挑む

□■<薬霊山> ティルフブレア

 

 

 <薬霊山>。それは言わずと知れた黄河が誇る霊山の一つにして火薬庫ならぬ毒薬庫の一つだ。

 モンスター、植物、土、空気に含まれる微粒子にまで、種々様々な毒性を有する諸々で構成されるその霊山は専門の対策を行わねば滞在する事すら難しいと言われ、しかしそれが可能である者にとっては宝物庫へと転じる事も少なくない宝の山とも言えるのだった。

 何せ毒、と言うのは()()が高い。

 中央大陸各国の裏の人間に、カルディナの闇市場に、海を隔てた天地の忍者に。

 そして表の人間にも。毒と言うとイメージが悪いかもしれないが、ただそれ単体では純粋な力の一種でしかないのだ。

 勿論、専門のジョブの者が調剤する事で強壮剤や活力剤、賦活剤や鎮痛剤、耐性剤(ワクチン)等も有用ではあるが――()()()()でだって、表にも需要はあるのだ。

 そう、対モンスター用として、だ。

 

 生態として基本的に人間範疇生物よりも強靭なモンスター(非人間範疇生物)であるが、アンデッドやエレメンタル等と言った例外を除けば当然毒は有効である。

 勿論毒を有していたり、その様なモンスターが近隣に生息している種等は特に毒に対する耐性が高い事もあるが、そうではないモンスターには十分に効果を期待できるのだ。

 中には特定の毒に対して特に脆弱性を持っているモンスターも居たり、ジョブスキル等で毒性を強化する事でそれ以上の凶悪性を発揮する事もある。

 だが、それもある種当然と言えば当然と言えよう。【毒拳士(ポイズン・フィスト)】【毒剣士(ポイズン・ソードマン)】【暗殺者】【忍者】【毒術師(ポイズンマンサー)】【漢方術師】【毒狩人(ポイズン・ハンター)】等々……毒を使うジョブも大量にあるのだ。それが有効でない訳がないのだ。

 毒の強度や種類によっては、上記の様なジョブでなくとも獲物に塗る事で相手の動きを鈍らせる事だって難しい事ではない。

 グランバロアでも海域を選び専用に調整し自分らに害が出ない様にした毒薬を海に撒く事で掃海の手助けとしている箇所もある程だ。

 表立って使うのはやはりイメージが悪いが、それでも毒は長い歴史の中で使われてきた、人間範疇生物が持つ確かな武器の一つである、と言うのは紛れもない事実であるのだ。

 であるからこそ、手に入れられる毒の質、量共に非常に良質なこの<薬霊山>の有用度は非常に高いのだ。

 

 ――勿論、脅威度も相応以上に高いのだが。

 短時間ならともかく、長期間の滞在や十分な素材の採取、モンスターの討伐ともなれば難易度は跳ね上がる。

 毒を含み視界を遮る霧が全体を覆い、いつその中から凶悪な毒を有するモンスターが飛び出してくるか。

 毒草、毒茸の中には触れるだけで危険な物も少なくない。生半可な耐性や防護を貫いてくる劇物もある。

 人間範疇生物では、素でそれらに対処できる耐性を得る方法は殆どない。ならば――

 

 

 

「いや、だからって【青竜王】が直々に認定者をやるのはどうかと思うけどね?」

「私達と黄河は協力関係にあるのだから、こういう仕事もするさ。こちら(竜種)にも色々事情があるからね」

 

 

 そんな風に、私――【青竜王 ドラグブラウ】と話しているのは私的に上位候補だと思っている少年の<マスター>、ジーニアスだ。

 此処は毒蔓延せし<薬霊山>の中腹。既に十分な対策や耐性を有している者でなければ行き着く事すらできない領域。

 そこで簡易なのぼりと認印を押す為の机を用意し、《人化の術》も使って待っていたのに絡んできたのがこの子、という訳だ。

 前回の邂逅の時もそうだが、やはりこの<薬霊山>での活動滞在を全く苦にしていない、と言うのは私からしたら稀有な子だ。

 普通の人間なら防護服やマスク、その他対策装備を複数装備してやっとまともに活動できる、と言うのが通説だ。

 

 だったのだが――

 

「ところでー……ここ(薬霊山)の認印ミッション(?)がないのはもしかして、僕が間引きしちゃったから、とかじゃないよね……?」

「いや、ここの間引きは基本的に私の仕事だから、いつもここの認印は到達だけで上げちゃう簡単な場所なんだよ。……なんてね」

 

 会話ではそう言う物の、当然実際とは異なる――そもそも、この<薬霊山>の中腹にまで到達するだけで、他のチェックポイントのミッション以上の難易度となるからだ。

 この“龍帝祭”は多くの思惑が交差して開催される祭典だ。

 国内外の事情によって年々様々な微調整が行われて開催される祭典なのだが、少なくともこの<薬霊山>に関する何某かが変わった事例は私が知る限り一度もなかった。

 

「――なんだけど、やっぱり<マスター>は凄いね。ここの認印はいつも人気がなくてスルーされるのに、前回と今回は<マスター>だけで相当数ここにまで到達してたよ」

「そうなんだ……霧が掛かってるし【僵尸(キョンシー)】系統とかかなり有利に来れそうだと思うんだけど」

「【僵尸】の人はここの認印取れても本戦でまともに戦えないからねぇ」

「……なるほど、確かに!」

 

 ちなみに言えば、【僵尸】は基本的にEND型の耐久ジョブなので神経毒の類は大丈夫でも溶解毒は喰らう為、囲まれたら普通に死ぬ。死んでいた。二重の意味で。

 ――ここに到達した<マスター>の中には【尸解仙(マスター・キョンシー)】も居るが、あれはある意味では例外だ。

 そして、()()()()()では最も正統派とも言える。

 ジョブに就き、レベルを上げ、技術を鍛え戦い抜いて超級職に就く。

 人間範疇生物としては実にスタンダードな成り行きだ。斯くあるべしとはそういう物なのだろう。

 

 そして、目の前の彼を含む上位ランカーの<マスター>の殆どは()()()()()()

 超級職と言う際限のないレベルと圧倒的な固有スキルを持つ人間範疇生物の頂点に座する者達。

 しかし、上位の<マスター>は、或いはランカーですらなくとも自らの<エンブリオ>を以てそれを打倒する事が出来る程の者も、決して少なくないのだ。

 総合的にか、特化してかは各々の差があれど、<エンブリオ>とジョブ、そして本人の技巧や創意工夫次第では容易にティアンの超級職を上回れるであろうという物の何と多い事か。

 ここへの到達だって、それに適した超級職でも無ければ余程の実力者でも対策装備は必須だ。

 しかし、<マスター>の中には目の前の彼がそうである様にそれすらも不要とする者も少なくない。……勿論、相応の実力を持った上で、だ。

 

 年長の竜達に言わせれば理外の力、あれこそがイレギュラーであると言う話だが、そこまで年行ってない(まだ千歳にも届きませんが?)私からしたら<マスター>は凄い、と言う感想しか浮かばないが。

 ……あの時(三強時代)も【覇王】や【龍帝】の強さの方が際立ってたからね。多分、本格的な<マスター>の時代と言うのは今この時を言うのだろうな、と思う。

 私個人としてはその様な形で強者が増えるのは当然()()だとは思うけどもね。

 定命の理。自然淘汰とはそう言う物だ。

 あるいは、更に彼らが強くなって行けば私達【竜王】や【龍帝】まで脅かされるのかもしれないが……その時はそれが時の流れと言う物だろう。

 遠い他国で現れたと言う<超級>相手でもない限り、そう簡単に負けてあげるつもりはないのだが。

 勿論、相性はあるのだが――

 

「そういう意味では、この子みたいなのが一番()()()()のかねぇ」

「えー? 僕なら【龍帝】にも勝てるって?」

「言ってない。……まぁ、かなり堅い上位候補だとは思うけどもね?」

「本当? やったね!」

 

 世辞――でもない、割と本心だ。

 私自身が知る、即ち此処まで来れた<マスター>はそう多くはないが先述の通り、そこそこ居る。

 全身甲冑の<マスター>、自作の特殊な薬剤で毒を突破した<マスター>、害毒を避ける結界を張っていた<マスター>も居れば正統派な【尸解仙】や融合でもしたのか竜身の<マスター>まで様々。

 ここ数日で数えれば数十人は<マスター>に認印をしたが、彼は間違いなく贔屓目抜きで上位三位に入っているだろう。

 

 尤も、ただ実力があれば勝ち進んで上位に食い込める――という程甘くはないのも確かだ。

 何せ龍帝祭はトーナメント制。途中で<マスター>にはままある意味の分からない特化型にやられる可能性があれば、上位候補同士で潰し合う事だってある。

 あるいはほぼ一位確定の【龍帝】とぶつかり合う事だって。

 これが今代の【尸解仙】の様に常からの有名人であれば運営側が忖度してトーナメント表が若干調整されたりもするのかもしれないが、彼の場合は最近黄河に来たばかりという事でそれもないだろうし。

 それ以外でも不慮の事故と言うのはどうしても起こり得る物だ。

 予選期間は残り二日強。既に死んでしまったら例え<マスター>であっても戻ってくる事ができない時間になっており――ドォォン!!

 

 

 

 ――衝撃と爆音。彼方より超音速を超える速度で打ち出された気弾が的確にジーニアスの身体を爆散させた。

 練りに練られた特大の魔力(MP)魂力(SP)が込められた気弾だ。傍に居た私への余波は驚く程に少なく(それでも竜王でなかったらダメージを受けていたかもしれない)、後に残るのは光の塵だけ。

 私でも非戦闘形態での直撃は受けたくない、そう思わせる程の気弾の使い手は――

 

 

「<マスター>との私闘は結構だけども周辺被害には気を付けて貰いたいかなって」

『……すまない』

 

 屈強な体躯と膨大な魔力を持つ龍身の魔人。【字伏龍面】を付けし黄河の象徴。

 当然ながら【竜王】である【青竜王】もご存知の人物である――【龍帝(ドラゴニック・エンペラー)】その人だった。

 【竜王】をすら上回り、この<薬霊山>であっても平気で闊歩し、<マスター>ですら敵わない真正の()()

 それが、他の参加者と同様に認印をして貰いに――そしてついでに見つけたジーニアスを殺しに来たらしい。

 衝撃で土砂が若干被った机の上を払いながらそんな話をする。

 【龍帝】ともなれば色々とあり、忙しいのだろう。認印を受けた後は直ぐにその場を後にするのだった。まぁ彼もシード権は貰いたいんだろうしね。

 

 

 ……いや、しかし。

 私が知る限り、今代の【龍帝】はまだ若く――いや、幼く、温厚な性格をしていると思ったのだけど。

 

 

「あの彼に狙われるって、何したんだジーニアス少年……」

「しっけーな。ちょっとこの予選の中で野試合を挑んで……逆鱗に触れた、的なー?」

 

 独り言に反応し、後ろの木陰から気配もなく姿を現すのは――先程光の塵になって死亡した筈のジーニアスだった。

 残像(影分身)だよ! と主張しているが物申したいのはそこではなく、この黄河で何の躊躇いもなく【龍帝】に喧嘩を売るその精神性である。

 ……本当に無事で済むのか少し心配になってしまった。色々と――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

3/17(木)

 昨日も言った通り、今日から連日で内部時間で十日掛けての“龍帝祭”の開幕――!

 正直、天地に居た頃だってこんな大規模な武闘祭に参加した事がなかったからかなりテンション上がってるよね……

 個人的には内容も僕向けなので俄然やる気が出る、と言う物。勿論今日から全力で()()()()()いったよ!

 

 そんな龍帝祭の前半戦の七日間(一週間)、つまり予選の演目はスタンプラリー、求められるのは期間内に黄河全域を駆け巡る為の機動力――だけでは、勿論ない。

 現実のスタンプラリーなら機動力全振りでも良いのかもしれないけどここはデンドロ。人の縄張り(市街地)から離れればそこは勿論モンスターの園。

 自衛手段が必要と言うレベルですらなく、そもそもこれは本質的には武闘祭なのだから十分な戦闘能力は当然の様に求められるという訳だね!

 そして――この大国、黄河最大の祭典である龍帝祭において求められるのはその二つだけではない、あらゆる能力が求められるのだ!

 その理由は当然、スタンプラリーの認印を手に入れる為のミッションの為に他ならないんだよね!

 

 改めてこの予選のルールのおさらいをするんだけど、スタート地点である龍都で貰った手製の用紙に黄河各所の関係者に認印を貰うと言うのが基本ルール。

 全部で20箇所の指定箇所の中から本戦参加に必要な認印の数は半分の10。半分も手に入れられれば合格だなんてとてもイージーだよねー―とはならないんだよね。

 まず、大前提として……黄河が広大過ぎるという大問題があるんだよね。

 国土の広さで言うなら余裕で天地の5倍以上。普通の馬車じゃ北端から南端まで移動するだけでも余裕で二十日掛かる事もざらだとか。

 少なくともこの時点で特別な移動手段のないEND型はほぼ詰んでるよね。普通のAGI型だってかなり頑張らなきゃ厳しそうだけども。

 スタート地点は龍都固定だから予め準備しておく訳にも行かないからねー……

 

 とは言っても、そんな機動力死んでる人の為の救済措置なのか当然近場にもいくつかのスタンプポイントが設置されている、されているんだけども――

 此処で出て来るのが認印を貰う為のミッションなんだよね。……ある意味、予選での最大の関門と言っても過言ではない、ね。

 読んで字の通り、ミッションを達成しなければ認印は貰えないんだけど、その内容はスタンプポイントが僻地であればある程簡易に、そして逆であれば当然難易度が激増していく物なんだとか。

 このスタンプラリーのスタンプポイントは市外市内両方の黄河の名所に散らばっているんだけど、安全な市内の認印を貰う為のミッションはそりゃもう大変、と言うか複数のミッションを課される事もあるくらい。

 具体的には冒険者ギルドの塩漬けクエストの達成を求められたり、黄河やその名所に纏わる謎解き(リドル)を求められたり、他にも都の特色に合わせた難題を出されたり、ね。

 それならまだ市外のスタンプポイントのミッション――主に周囲のモンスター一定数の間引きとか素材の採取とかをやった方が手早く終わる可能性があるって僕は思うんだけどね。

 ……うん、奔走している最中にもちらっと思ったけどやっぱり例年のこの龍帝祭にかこつけて間引きとか必要素材の収集とかクエストの消化とか国の事業いくつかやらされてるよね!?

 公然の秘密だろうし、仮にそうであってもこのお祭りに参加する様な人達ならそんな気にしないんだろうね。

 上手い事やるなぁ! 

 

 そんなミッションだけど移動時間やミッションに掛ける時間を考えたらまぁどれもかーなーり大変だと言うのは変わらないだろうね。

 当然片方だけで10の認印を集めると言うのも無理筋だろうし、確実に立ち寄れたスタンプポイントの認印を手に入れる為に総合力を養わなければならないのだ……と言うのもあって、本来は黄河の民の中でもエリート中のエリートしか本戦に進めない大会だったんだけど。

 そこに現れたる<マスター>のチート<エンブリオ>が炸裂したり裏ルールを駆使して色々あったりして大変だったりする過去もあるんだけど、さて今年はどうなるかってね。

 強者達を楽しみにしながら()()に期待に胸を膨らませなきゃね!

 

 ――僕の龍帝祭初日、実働二日弱の成果は認印11個。

 僕にお誂え過ぎるルール、だからこそ全力でやらなきゃ勿体ないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

3/18(金)

 今日は昨日に引き続き龍帝祭の予選の後半戦!

 予選がもう龍帝祭の前半戦なのにそれの後半戦というあれだけど、それだけ大規模って事なんだよね……ガチで。

 そんな今日はなんと目的の一つだった【龍帝】とバトる事に成功したよ!

 

 その発端はこの龍帝祭の裏ルールにある。裏ルールと言うのはルールには明記されてないけど、明記されていないからこそ禁止されていない事のルール。

 暗黙の了解を以て前々から一部では行われていた事だね……代表的なのと言えばこの予選では特にパーティを組むのは制限されていない所とか。

 当然、認印のスタンプラリーを巡るのも認印を貰う為のミッションをこなすのにもパーティで協力して連携すればその難易度はがくっと落ちるからね。

 勿論、人数分の認印を貰うには人数分のミッションをこなさないとダメだし、結局本戦は個人戦なんだけど、それでも場合によってはライバル同士が手を組むのもありだし頼れる仲間が居るならそれに越した事もないからね。

 お貴族様が高レベルな配下に諸々を任せて本人は全く力がないまま本戦に出場した、って事もしばしばあるらしいよ。……まぁ、その後の結果はさておき。

 国としても誰がミッションをこなしてくれても構わないだろうし、わざわざそういう地位のある人を排斥する理由もないし。

 財力や権力、そして仲間を募れる魅力も力の一つだよと言う事で特に御咎めはなしなんだとか。

 

 ただ、これはあくまで武闘祭。ライバル同士が一時協力するのは良いけど裏切り騙し討ち等はスポーツマンシップとはちょっと違うけどやっぱりフェアじゃないからね。

 だから、参加者は武芸者としての最低限の格式を求められるし、仮に何か参加者やその仲間達で何らかの諍いや私闘があっても大事にならない程度に留める様に、と通達されている。

 仮に過剰だと判断されたらペナルティ、とまで明記されてね。

 

 ――つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事! 

 そして、この予選は偽造防止の為の特殊な術式を組まれた用紙を龍都で渡され、それに認印を押して貰う事で進行していく訳だけども、その用紙は特別頑丈、という訳でもない……

 そう、即ちこの予選はただスタンプラリーに注力するだけではなく、ライバルから自分の認印用紙を守り抜く戦いも含まれた、まさに龍帝祭予選の様相を表しているんだよね!

 卑怯な行いは禁止だから相手も真正面から宣言して向かって来るけど、それも戦闘開始前まで。

 宣言をして、戦闘開始後に死角から強襲してもそれは卑怯ではないからね。まぁ勿論龍帝祭なんて大舞台に立つ人はそれくらい弁えてると思うけどね!

 ちなみに、ティアンだけの時代では後遺症が残る様なダメージを与えるのは禁止されてたけど<マスター>の場合デスペナもOKなんだって。うーんこの黄河……

 

 そんな些事はさておき、僕や一部の人に重要なのはそこではない。唯々参加者間での私闘は問題ないという所が一番重要なんだよね。

 何せ、この武闘祭は()()祭。

 勿論、この予選にも【龍帝】はちゃんと参加してくれているのだ! 想像以上にフェアでビックリするよねっ。

 まぁ、このお祭りの趣旨は【龍帝】を祭り上げる事だから参加しなかったら色々と台無しになっちゃうから是非もないよねって。

 

 ――そして、上記の裏ルールからトーナメント形式になる本戦より予選で【龍帝】様とバト(決闘)る方が確実だと考える層が一定数居るんだよ!

 僕もその一人だけどね!

 

 結果的にボコボコにされたんだけどね!!

 

 他の人(主に<マスター>)にも遠慮なく挑戦されていたにも関わらず疲労の色を見せない【龍帝】と対峙した訳だけど……うん、良い線行った。戦いにはなった。でも、()()にはなってなかったね。

 【龍帝】の特徴は伝説級モンスターを軽く超える非常に高いステータス、《竜王気》、そして――尋常ではない再生能力。

 他にも徒手空拳、格闘技の技巧だったり龍身としての各種耐性だったりはあるけど、やっぱり一番厄介なのは再生能力だよね。うん、今の僕だとちょっとアレは突破は難しそうかなって。

 《竜王気》を貫くのも罠に掛けるのもできるけど、流石にステータスも含め全て貫いてその上で再生が追いつかないレベルの威力なんてあらゆる意味で出せないよ!?

 それを含めてこその黄河が誇る最高戦力にして象徴なんだろうし勝てないのは当然なのかもしれないけどさー。流石にあれは厳しかったねっ。

 あれに勝つ為の策はー……まぁ、無くはないんだけども、少なくとも今は無理だよ多重に!

 それでも本戦なら、本戦の決闘ルールなら勝負にはなるから――本戦を待つよ!

 

 そういう訳で、本戦開始まではゆっくり認印を回りながら生存重視の立ち回りに切り替える事に。

 本戦出場はもう揺るがないから、後は何処まで得点を増やせるか、だよねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3/19(土)

 今日は“龍帝祭”本戦、即ち黄河が一年で最も盛り上がった日――!

 正直日記に書き切れるか不安になる程色々あって濃かった一日だったね……僕がデンドロで最初に出場した武闘大会の時にも劣らないくらい楽しめたね!

 大会の熱気だけじゃなくて激戦あり、強敵あり、お祭りあり、事件あり、大捕り物ありと今日一日だけで本当色々あったからね。

 

 まぁ、当然僕的に語りたいのは大会に関するあれこれなんだけども!

 天地とはまた違った、そして確かな強者達との戦い、心躍るよね。

 

 さて、そんな龍帝祭だけど、当然僕は誰かに認印用紙を破られる事もなく本戦への出場権利を獲得!

 晴れて本戦トーナメントに参戦したんだけども――ここで重要になってくるのが認印の得点、なんだよね。

 実は予選の認印には各ミッションの出来やその他のプラスポイントによって同じ場所の認印でも若干違う印が押されるんだけど、運営内で密かにこれらが得点付けられているのだ。

 ミッションの出来が良い程に、ミッションの難易度が高い毎にその得点は加算されて行って……最終的にその得点次第でトーナメント表のが形作られたりシード権を得られたりする、という訳だね。

 まぁ一応興行だし、上位候補同士が早期に潰し合って残りの試合が塩試合になっても困るし。

 ――そして、黄河の象徴たる【龍帝】が戦う相手や順番にもとても気を入れて調整されるのだとか。まぁ【龍帝】の戦いが塩試合だったらブーイング待ったなしだしね!

 僕は先日の二周年記念の時に冒険者ギルドのお兄さんに教えて貰ったけど、知らない人も多そうだよねー。……知らなくてもそこまで影響がない奴だけどね?

 その他にも色々と思惑がありそうなルールだけどもそれを深堀する必要はないよね。だって僕は正統な手順で大量得点をしただけだし!

 その甲斐あってか新参ながらにシード参戦。やったね! ……とは言っても、普通に試合数多くても楽しめたかもしれないけどね。

 

 何せ、龍帝祭本戦に参戦できる時点でティアンだろうと<マスター>だろうと上澄みなのは確定的に明らか。観戦だけでも分かる程に――血沸き肉躍る熱戦を繰り広げられただろうね!

 今でも興奮冷めやらない程の良い戦いばかりで、本当に参加して良かったと思うくらいだよ。

 特に思い起こせるのは準決勝。

 

 そう、あの【尸解仙(マスターキョンシー)】迅羽との戦いだよね――

 

 

 

 

 To Be Continued…………

 

 




ステータスが更新されました――――

【青竜王 ドラグブラウ】
種族:ドラゴン
主な能力:竜王気・血液支配
到達レベル:80
発生:認定型
作成者:ジャバウォック
備考:<薬霊山>に住まう古代伝説級の龍にして【竜王】たる〈UBM〉。
 黄河に根を下ろす龍達の中では中堅レベルの【竜王】であり、穏やかな気性で知られている龍の一体でもある。
 実際は普通にモンスターとして、強者()として普通に間引き戦闘とかも容赦なく行っているが、モンスターでありながら積極的に人を襲わない時点で人視点からすれば穏やか判定を受けるに十分なのだ。
 それに至る契機は古の【龍帝】との約束があったのだとか……

 《竜王気》の他に持つ唯一の固有スキルにして最大の特徴は特性付与の《竜王気》、血液支配の固有スキル、《尊き青血(ブルー・ブラッド)》。
 敵者であれば血を通して重篤な状態異常を発症させられるし、味方に対しては身体能力(ステータス)強化や重篤な傷痍・病毒系統の治療すら行えたり、他にもいくつかのバリエーションを持つ強力な固有スキルだ。
 強固な身体能力やレベル、他にも血液に干渉するスキル等でレジストは可能であるが、元より古代伝説級の固有スキルなだけありその難易度は高い。
 ゴーレムやアンデッド等血液支配が効かない相手が苦手――と思いきや一番の戦い方は《尊き青血》を最大効率で使える自身への身体能力増幅による白兵戦だったりする。
 物理は大体を解決するからな……

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