無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:複雑な生まれをエンジョイ勢vs複雑な生まれで不幸勢。相容れる訳がなく……
それでは本編をどうぞ!


第八十五話 <準超級激突>前編

■<龍都・闘技場>“龍帝祭”本戦準決勝 【高位従魔師(ハイ・テイマー)】ジーニアス VS 【尸解仙(マスターキョンシー)】迅羽

 

 

 

 ――コイツ、強イ――!

 

 黄河の武芸者の大一番。栄えある“龍帝祭”の、()()()。【龍帝】に次ぐ決闘ランキング第二位を冠する猛者の中の猛者。

 未だ殆ど居ない、超級職に就いた黄河の<マスター>の中でも頂点に近い位置に居る【尸解仙】迅羽はしかし――この準決勝で大きな苦戦を強いられていた。

 

 戦闘開始直後の【符】のばら撒きによる熱線の乱打。

 ――同様に【符】のばら撒きによる光線の乱射で相殺される。

 四肢(【テナガアシナガ】)を活かした四方八方から襲い掛かる長距離亜音速格闘戦。

 ――本人のステータスと戦闘技術(リアルスキル)で防がれる。

 従属モンスター(暴雷)による妨害・足止め。

 ――より強力な従属モンスター(爆炎の純竜)を喚起され、その速度を活かしてせめてもの主の戦闘を邪魔させぬ様にする事しか出来ていない。

 

「チィッ! やり辛いったらないゼ……!」

「お褒め預かり恐悦至極だよ! それはこっちの台詞でもあるんだけどねっ!」

「はッ。そうか――ヨ!!」

 

 地中から潜り忍ばせ、背後を突く左足先。上方から側面から襲う二撃との三方からの挟撃。

 ――それすらも、本命は軽く避けられ、一方は長剣で防がれ、もう一方は不可視の衝撃(恐らく風属性魔法)で弾かれ逸らされる。

 その結果に舌打ちしながらも次の、その次の、そのまた次の伏線()を練る事を忘れはしない……両者、共に。 

 

 (――オイオイ。超級職のオレと地力で渡り合うなんテ、化け物かヨ!)

 ()()も、そして戦う為の思考も止めずにその隅でそう思わざるを得ないが、それも当然だろう。

 多少の才能と多少の努力、そして幸運に見舞われた結果超級職を得て黄河の戦闘系<マスター>の中でも最上位であるという自負があった。

 この龍帝祭でもまともに相手になるのは【龍帝】を抜けば極々僅か(主に五支将くらい)だろう、と。

 しかし、蓋を開けてみれば全く事前情報の無いこのダークホースだ。頭の中で愚痴りたくもなるという物だ。

 

 (術に関しては此方の方が上の筈だが、<エンブリオ>か特典武具か。多分特典武具の方の増幅(ブースト)が掛かってやがるナ。

 その上で物理ステータスは総じて一万以上、戦闘技術も明らかに相手が上でその上従属モンスターでも完全に上回られているとかギャグかヨ! 暴雷はあれでも亜竜級上位だゾ!?)

 

 暫定、全ステ―タスに強烈な補正を得られる<エンブリオ>――と言うだけではないだろうが、そう仮定して尚高い敵手、ジーニアスと言う少年のスペックを図り切れない。

 噂では他国から旅してやってきたらしいが……全く世界は広いとしか言い様がない物だ!

 

 (チマチマと、やってくれるゼ……!)

 

 ――戦況は膠着している。

 互いの下級魔法の弾幕は双方にすり抜けた物が命中している物の、致命傷には程遠く。

 従属モンスター同士の戦いは暴雷不利のまま推移して居るものの速度に特化しているだけあり今暫く時間を稼げるだろう。

 長距離白兵戦も……相手方(ジーニアス)は距離を詰められないまま、しかしこちらの攻撃も全く的中させられていない。

 どちらが有利か不利かと言えば――

 

「この【戸解仙】を……削り切れるつもりかヨ!」

「――――」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 迅羽の熱線とジーニアスの光線。ただそれだけを見れば特典武具による増幅を加味して尚、直裁に魔法型超級職である迅羽の方に軍配が上がる。

 最終的な継戦能力も迅羽の方が上回るであろう。結界術による防御を行うジーニアスと【テナガアシナガ】で防ぐ迅羽でもそう差は生じない。

 

 差が出ているのは【戸解仙】のデメリット――キョンシー、アンデッドとしての()()だ。

 

 【戸解仙】、マスターキョンシーは【僵尸(キョンシー)】のデメリットを完全に克服したジョブであり、弱点は存在しないと言われている。

 基本的なアンデッドの弱点である聖光や炎熱への脆弱性も克服されており、ジーニアスの光線も弱点とはならず、人並み、通常通りのダメージしか通り得ない。

 

 ――そう。アンデッド、キョンシーである事に由来する他属性に対する圧倒的な耐性と比べ、±0の人並みのダメージを受けてしまう光線のダメージこそが【戸解仙】迅羽の明かな()()なのだから。

 ただの物理攻撃、地属性の多くや海属性の幾らかの属性、呪怨系統や傷痍系統、病毒系統と言った多様な属性に対しては高い耐性を有している故にこそ、それ以外の属性は相対的に弱点となり得てしまうのだ。

 ジーニアスの方は持続回復魔法をも織り交ぜている事もその状況を明確にしていると言えた。……いくら弱点を克服したと言っても、アンデッドである迅羽は回復魔法は絶対的に使用できないのだから。

 勿論、アンデッドの特性の一つとしてHPの自然回復力の強化はあるが……流石に戦闘中の回復を賄える様な物ではない。

 

 即ち、現状のまま推移すれば敗北するのは己の方である。

 恐らく、相手もそれを理解しているからこそ無理に距離を詰めようとはしていないのだろう。

 当然、迅羽もそれを正確に理解はしている。打開法も幾つかは頭の隅に浮かべている。

 しかし――

 

「全く、面倒な小細工……いや、()()()を持ち出してきたもんだなァ!」

「そう言って貰うと僕も鼻が高いね! どうかな、僕の鏡球(ミラーボール)は」

鏡球(ミラーボール)……どう見ても塵球じゃねぇカ!」

「そうとも言うね!」

 

 現状を打破する為に最も有効な手――魔法系超級職である【戸解仙】の奥義、強力な業炎の術である《真火真灯爆龍覇》は使えない。

 その原因は、ジーニアスが光線の合間にいつの間にか自身の周囲に浮かべていた数多もの光球。

 一見全て同じ物の様に見えるが、実際はの光球の中に幾つもの種類の魔法が混在している。

 より強力な光線の準備段階(グリント・パイル)があり、下級光属性魔法の欺瞞(ライトボール)が混ざり、更には幾つかは完全なる偽装である只の光源(フォトン)も配されている。

 だが、それらの中に混ざる様に――幾つか、()()()()()もその中にあるという事を、身を持って思い知っているのだ。

 右手の【テナガアシナガ】がそれを掻き消そうと貫き破らんとした時、貼り付けていた【符】がその力を発揮できず、一瞬で消え去ったその瞬間に。

 

 超級職の手ずから作った【符】をも瞬時に掻き消し、その熱線すら完全に消し去り――そしてその一瞬の交錯で【テナガアシナガ】にすらダメージを入れたその光球の正体を、迅羽は知っていた。

 勤勉な、黄河の<マスター>である彼女だからこそ、知っていた。

 

 ――【煌塵砲】を持ってくるとか、何考えてるんだコイツ!? と。

 

 ……それは且つて、約600年前に一人の黄河の術師が編み出した兵器の再現。

 ()()()()()()()()塵王(キング・オブ・ダスト)】が開発した絶対消滅兵器の模倣に他ならないのだから――

 

 防御系魔法――魔法に対する防御を行う職と言うのは幾つかの種類に分けられる。

 属性その物の耐性を付与する【付与術師(エンチャンター)】派生の【抵抗術師(レジストマンサー)】より連なる【抗王(キング・オブ・レジスタンス)】。

 魔法により生じたエネルギーを減衰させる障壁を展開する【障壁術師(バリアマンサー)】より連なる【壁王(キング・オブ・ウォール)】。

 魔法に与えられた方向(ベクトル)を操作し跳ね返す【反射術師(ミラーマンサー)】より連なる【鏡王(キング・オブ・ミラー)】。

 ――そして魔法の定められたカタチを霧散させる【拡散術師(スプレッドマンサー)】より連なる【塵王(キング・オブ・ダスト)】。

 

 だが、その内【拡散術師】系統が扱う、魔法の制御に干渉し、魔法としての形を失わせる防御魔法は有り体に言って、防御魔法としては評価が低い物であった。

 考えても見れば当然だろう。

 仮に《ファイアーボール》に対し、()()()()()を完全に消去する事に成功したとしても……残るのは、火球という形を失っただけの、火炎放射。

 熱エネルギーも減衰しておらず方向も慣性が付いたままの火炎であるそれは、ただの火炎として術者を焼くだけなのだから。

 魔法としては成功しても、防御の役に立つ訳ではない……それが、【拡散術師】単体の大多数の評価であった。

 

 その常識を覆したのが、かの三強時代に超級職、【塵王】に就いた男だった。

 尤も、超級職と言うのは上級職とは一線を画す才能の怪物だ。超級職が優れているからと言って上級職以下もそうであるとは限らない。

 固有スキルの存在がそれを更に推し進める――のだが。

 

 ――仮に、超級職で行使する至上の技(固有スキル)。それが上級職以下の物でも慣れ親しんだ物であるならば、模倣も出来ようと言う物だ。

 

 同様のコンセプトである多くの防御系魔法職は、その超級職の極致、奥義すら似通っている。

 【壁王】の奥義は魔法エネルギーに限らぬ万物を通さぬ隔絶の壁となり、【鏡王】の奥義は魔法の方向に限らぬあらゆるエネルギーの向きを反転する鏡の護法となり。

 ――そして、【塵王】の奥義は、魔法のカタチに限らぬ万象のカタチを霧散させ、()()()へと変える極悪の()なのだ。

 

 本来、その光の塵は余人には稀有な物、その筈であった……が、世界の理が移ろい変わった今では常識の一つと成り果てた、純粋リソース変換の過程の一つ。

 奇しくも、それは且つてこの世界を襲った“化身”の一柱、“天秤の化身”が使う力と似通った物であるが……かの戦乱の時代を生きる彼らには何の関係もない物だ。

 己のその奥義を、それを改良した業を有用であると理解した彼は、そうして当然の帰結に辿り着く。

 ――有用な(兵器)であるならば、それを増産し、より多くの者が使える様にするのが最も良いだろう、と。

 

 偶然にも、黄河は【龍帝】黄龍人外に倣って魔法職に就いている者が多かった。

 偶然にも、本来であれば超級職の御業を模倣なんて出来よう筈がない物が、見知った現象が介される事で理解を大幅に助けた。

 偶然にも、歴代の【塵王】の中でも有数の技巧を持つ彼はその術式を上級職用に落とし込み、複数人で発動(ユニゾン・マジック)出来る様に調整した物を作成するだけの才を有していた。

 偶然にも――大敵、【覇王】ロクフェル・アドラスターを相手に大陸を二分し、敗北が許されない彼らは……数多の非人道的兵器をも開発出来るだけの土壌を手にしていた。

 

 そうして作られたのが――絶対消滅兵器【煌塵砲】。

 あらゆる防御を無為と化して対象を光の塵に変える、広域殲滅術式である!

 

 

 (だガ――この砲弾だけなラ、まだやり様ハある!)

 

 自身が知るかの術式の情報を思い出しながらも、迅羽は戦況をそう冷静に断じる。

 状況証拠……だけではなく、彼女の手の内にある自らの<エンブリオ>、【テナガアシナガ】の状態こそが動かぬ証拠となっているから。

 

 (本来の【煌塵砲】ハ名の通リ、砲弾として射出し、炸裂させて広域を()()()()()させる兵器ッテ話ダ!

 だガアイツは盾としテ、罠としテしか使ってネェ。推進力としての術式カリソースガ足りてネェんだ。

 そしテ――()()()()()()()()()()!!)

 

 そう。全てを消滅させるという謳い文句に対して……完全に通過した右手の【テナガアシナガ】は【符】こそ完全に消失した物の……【テナガアシナガ】自体は多少のダメージを受けただけで健在なのだ。

 その数も、そう多くはない。数多のブラフの光球で誤魔化しているのもそれを裏付けている。

 恐らくは制御力や魔力(MP)、あるいはその両方が足りていないのだろう。それなら付け入る隙は――ある!

 勿論、注意は必要だ。迂闊に【符】をばら撒き奥義の発動態勢を取れば、容赦なく砲弾をその場で()()させて此方の術式や生半可な【符】を掻き乱し、自爆させようと狙って来るのだろうから。

 むしろ、自分ならそうする。その為の牽制として用意してきたとしても、おかしくはないだろう。

 

 

 そうして、切り札の一つを、それも戦況不利である現状を打破できるであろう技を潰されている状況を再確認し。

 

 迅羽は()()()と嗤った。

 

 

「――少しは面白クなっテ来たじゃねぇカヨ!」

 

 ――直後、()()の側頭部に互いの渾身の一撃が直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――この子、強い――!

 

「ハッハァッ! オイオイなんだヨ今ノ一撃はァ! 頭ガ吹っ飛ぶかと思ったゼェ!」

「《練技・竜尾形成(ドラゴンテイル)》《練技・軟身功(クラーケンスタビリティ)》《練技・避竜隠蔽(カメレオンカモフラージュ)》の合わせ技さ! 普通の術師であれば確実に首から上を吹き飛ばせていたんだけどね!」

「それハ()()()()()()だゼ! それにしても、触手を使うとかてめェ実はレジェンダリアからの――」

竜の尾(ドラゴンテイル)って言ったんだけど!?」

 

 肩から竜尾を生やし、隠蔽化と伸長、その上で【影】【祓魔師】のアクティブスキルを駆使し更なる隠蔽とアンデッド特攻の痛撃を叩き込んだ筈だが――ダメージは予想以上に少ない。

 それこそ本人が語る様に、頭部を捥ぎ取るつもりで放った奇襲の一撃。それを

 

 (――上手く防がれちゃったね。勘が鋭すぎる、これは間違いなく()()って奴だよね!)

 

 ジーニアスの渾身の奇襲を防いだのは彼女、迅羽――が操る金属脚、【テナガアシナガ】だった。

 自らに幾重にも巻き付けた【テナガアシナガ】の右脚。

 総身を覆っていたその<エンブリオ>の守りが、ジーニアスの竜尾が命中するその直前に瞬時に伸びてその頸部と頭部をも完全に覆い隠し、防がれてしまったのだ。

 此方の何重もの隠蔽の上でそれを察知する感知力には唸らざるを得ない。

 が……それ以上に脅威であると感じたのは、【テナガアシナガ】の基礎性能だ。

 

 ()()()()()()

 

 (――硬い手足が速く伸びる。そういう能力特性だって一応は事前に知っていたけども……これじゃそれを鵜呑みにした人は()()されちゃうね) 

 

 その様に思考を高速で動かしながらも足を動かす。

 ――側頭部より流れて来た血の味を味わいながら、敵手(迅羽)の攻撃から()()()()()

 

 防いだ。防ぎはしたのだ。

 本来は球状、或いは半球状の《防御結界》を数十㎝の面状にまで形状を圧縮、その上で持続時間も圧縮して瞬間的な堅固なシールドにして。

 回避こそ出来なかった物の、それを悟った時点で確実に防御できる様にシールドを完全に、的確に攻撃に合わせて。

 ――その上で、ジーニアスが作れる最大の防御壁(シールド)はいとも簡単に突破され、側頭部に命中し痛打を喰らう事となった。

 

 ジーニアスの防御型と比する程のHPとENDでなければ、あるいは《防御結界》を圧縮してなければ、あの一撃のみで重篤な傷痍系状態異常によって死亡していた事だろう。

 

 【改良型治療符】の同時起動。直後に襲い掛かって来た【テナガアシナガ】を避け、弾き、また飛び退き避ける――

 全方位から襲い掛かって来る黒金の鉤爪に対処する、対処し続ける。

 熱線と光線の攻防を途切れさせずに居ながら、意識の何割かを【テナガアシナガ】への対処に割き続ける。

 

 何故なら、魔法系超級職、【尸解仙(マスターキョンシー)】迅羽の持つ一番の脅威が……かの<エンブリオ>、【テナガアシナガ】なのだから。

 

 常識的に考えれば、その結果はあり得ない、と誰もが言うだろう。

 迅羽は魔法系超級職である。【僵尸】系統も複合している為、他の魔法系職と比べれば耐久力は圧倒的に高く、STR自体も高い物の……それでも、<エンブリオ>のステータス補正があっても2000に届くか、届かないかと言った所だろう。

 第六形態の<エンブリオ>である【テナガアシナガ】も、基礎性能が高い方であるとは言え、装備攻撃力とSTRを合わせた数値は1万には届かない筈だ。

 ジーニアスの防御力を貫く所か、圧縮した《防御結界》を貫ける筈もない攻撃力にしかならないだろうと。

 だが、何らかのアクティブスキルが発動した様子もなく幾度もの剣戟の防御の際にも……その理不尽な威力は見受けられた。

 【龍帝】の攻撃と比する程に、重いと……!

 

 理不尽な攻撃の重さ、あり得ぬ程の物理攻撃力……()()()の正体を、ジーニアスは知っていた。

 

 

「まさか“超重アームズ理論”の申し子がこんな所に居るとは思わなかったよ!」

「はッ。外野がそう言っているだけだろう、がッ!」

 

 上方より、打ち下ろすかの様に超加速した【テナガアシナガ】が落ち――大きな衝撃と音と共に、闘技場の床に小さなクレーターが出来上がる。

 完全に回避に成功しても、肝が冷える程の威力だ。おそらく、シールドを何重に張って耐えようとしてもそのまま『ぺちゃんこ』にされる程の圧倒的な威力だろう。

 

 ――“超重アームズ理論”。

 それは数多の<マスター>が最強理論を探ろうと試行錯誤を繰り返し……そして決定的な“ガードナー獣戦士理論”が発見された後に、それに対抗する為に編み出された机上の空論の一つの筈だった。

 “ガードナー獣戦士理論”はTYPE:ガードナーがシステム的に従属キャパシティが0であると言う優位を最大限活かした理論であるのだが、では、“何故システム的に優遇されているのか?”に着目した事に起因して連想された物だ。

 

 ガードナーの必要従属キャパシティが0であるのは、この<Infinite Dendrogram>の“自由”を阻害しない為だ。

 仮にガードナーの強さに応じて従属キャパシティが必要であるならば、ガードナー系統の<エンブリオ>を孵化した物は従属キャパシティを有するジョブを選ばない限り<エンブリオ>を使えない……そんな不自由さを解消する為のシステムだろう、と仮定されている。

 では、その自由さ、そして不自由さを解消する為のシステムはガードナーだけなのかと言えば、そうではない。

 リアルの操縦技術も、《騎乗》《操縦》と言ったスキルがなくてもTYPE:チャリオッツの<エンブリオ>は<マスター>の思うがままに動かせる様に。

 ――仮にどんなに非力でも、TYPE:アームズの<エンブリオ>を全く重さを感じずに振り回せる様に。ガードナー以外の<エンブリオ>であってもその様なシステム的な優位性は存在するのだと。

 

 で、あるならば。その優位性を活かせるのも“ガードナー獣戦士理論”と同じ筈だ。理論上は。

 “無免許チャリオッツ理論”ならば、チャリオッツがそれ単体で複雑であればある程不利を踏み倒せる筈だし。

 “超重アームズ理論”であれば……アームズが、()()()()()()()威力が上がっていく。

 ……際限なく、重ければ、重い程に。当然の物理法則によって――その物理攻撃。否、()()()()の威力は上がっていくのだと。

 

 実際に、巨斧や巨棍のTYPE:アームズの<エンブリオ>の<マスター>の報告では自身のSTRと装備攻撃力だけでは説明が付かない程のダメージを与えられる、と言う報告もあり一時期はアームズ界隈が盛り上がりはした。したのだが……

 ……現実的に、それで“ガードナー獣戦士理論”に勝利する、と言うのは非常に難しい。

 まず重量の重い、質量の大きなアームズの<エンブリオ>自体が多くはないし、その質量を活かした攻撃をしようと思えば自ずと攻撃パターンが限られてしまうからだ。

 ただでさえ“ガードナー獣戦士理論”と比べAGIでは圧倒的に負けているのだ。ENDやSTRの差もあり……それだけで比肩する、と言うのは土台無理な話であったのだ。

 空論として、巨人アバターの<マスター>がその体躯に見合った超重アームズを振り回せばあるいは、とか。

 むしろSTR超特化して超重アームズを全力投擲するのが物理法則と世界の法則的に最効率じゃね? とか。

 数多の迷走の末に空論と断じられて他の幾つものビルド論に埋もれる存在となった筈だったのだが。

 

 

 ――アームズとしてのシステム的優位性をあそこまで発揮している<エンブリオ>は初めて見たね。これは、最上位ランカーも頷けるって物だよ。

 

 伸びる。伸びる。伸びる――高速で。

 総身は武具系アームズとしては珍しくはない、到達形態に比する硬度の金属よりも尚硬き物。

 神話級金属には劣り、古代伝説級金属に勝る程度の特筆すべきではない、まぁまぁそこそこの基礎性能、金属強度。

 その金属が、少女の手足の太さに等しきかの金属が――()()()()()()()()()

 幾ら伸びても強度を落とさず、幾ら伸びても太さは変わらず。星に手を届けんとする程に際限なく伸びて伸びて伸びて……その分だけ、際限なく質量を増やすモノ。

 しかも、その上で、手足と同様に()()()()()()()というオマケ付き。

 それこそ……古代伝説級金属を超える程の強度のそれで、総身を覆える程に。

 武具としての強靭さを。手足としての柔軟さを。羽の様に重さを感じさせずに、そして途方もない程の超質量を。

 それら総てを兼ね備えたあり得ざる矛盾存在。

 その<エンブリオ>の銘は、【星天到達 テナガアシナガ】。

 硬い腕が早く伸びる――その上で、際限ない質量を自由自在に振り回せる極悪の凶器となる<エンブリオ>だった!

 

 (遠心力、重力、貫通力……直撃したら余裕でお陀仏だよねぇ。さて、と)

 

『――マスターよ、大丈夫なのか!? かなり良いのを貰っていた気がするが!?』

『(大丈夫だよ、イグニス。()()()()は見切ったからね。二度同じ手は食わないよ。後はどう攻めるかだけども――)』

 

 そして、確かに、【テナガアシナガ】による縦横無尽の質量攻撃が何よりの脅威ではあるが……それと同時に、迅羽は()()()()()()でもあるのだ。

 下級魔法の打ち合いという悠長な手段で削り切れる気はしない。あちらにだって切り札や大技の数枚は用意してあるだろう。

 この戦闘の流れを組み立てる力。【テナガアシナガ】を上手く質量攻撃として成立させているのも含めても、希代の才媛と言うに相応しい才能を持った難敵だろう。

 物理力も、魔法の力も、双方で上回られている強敵だろう。

 

 それでも。

 

 (勝つのは僕だ。今度は此方から行かせて貰うよ――!)

 

 ()()()()()()()()と、そう確信し勝利を目指す。

 

 内心の宣言と共に発動するのは、周囲に浮かばせていた数多の光球の一つ。

 鏡球(塵球)の隠れ蓑にしていた《フラッシュ・バン(目晦まし)》の魔法が起動し、闘技場を閃光で満たした――

 

 

 

 To Be Continued…………

 

 




ステータスが更新されました――――

 拡散魔法、【煌塵砲】:
 あるいは霧散魔法、消散魔法とも呼ばれる。
 実際の所、拡散魔法は魔法スキルを『制御』する術式を無効化(キャンセル)、霧散させて形を失わせ威力を減衰する魔法だが本文で言われている程無用な魔法ではない。
 魔法を構成する要素である『魔法の制御』には『エネルギーの変換』以上の魔力消費や緻密さが必要である為、少しバランスを崩してやるだけで拡散魔法は成立する為、他の防御系魔法と比べて消費魔力が少ない特徴がある。
 また、魔法が拡散する事で……正確には、魔法スキルが拡散、霧散する事で魔法の威力を担保していた諸々も霧散する為、減衰される威力は相応に大きくなっている。
 まぁそれでもエネルギーやベクトルはそのままと言うのはやっぱり変わらないので他の軽減方法と併用するのが基本になるだろう。

 【煌塵砲】は他の防御魔法系超級職の奥義と同様に、その魔法系統の効果を万物万象に適用させる事で万物を消散させる事が可能となる超兵器――である、が。
 光の塵、つまり純粋リソースに変換する都合上、リソース内包量が多い存在であればある程効果が薄くなる。
 第六形態の<エンブリオ>である【テナガアシナガ】が普通に無事であったのもその為。
 超級職にして<マスター>である迅羽も直撃しても暫くは無事であるだろう。
 勿論、リソース内包量が少ない存在であれば直撃、あるいは炸裂の余波を喰らうだけであらゆる防御を貫通して光の塵に変換される極悪な兵器なのは変わりないのだが。
 三強時代の仮想標的である三強には当然の様に全く通じない。是非もないよね。
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