目の前の多くの人の視線が煩わしい。
「えぇ、今日から皆さんと一緒に学ぶことになった――」
「
危うく出そうになる本音を喉の奥で噛み潰し、自己紹介を終える。
こっちを見るな。そう言いそうになるのを抑えて席に座る。
胃が痛い…
「ちょっと暗いけど…結構かっこいいね」
「あいつ、何で眼帯なんか付けてんだ?」
「高校二年にもなって厨二病なんじゃない?」
…はぁ。
同じクラスに昨日の少年がいるが、話しかけ難い。
第一、何と話しかけろと。「やあ君、昨日は災難だったね」とでも言えと?
昨日のことを覚えていても覚えていなくてもクラスの注目を集めるには十分すぎるだろう。
取りあえず、絶対話しかけない。
◆
放課後になった…
授業の内容は何処もあまり変わらないようで、その辺は助かった。
問題は兵藤 一誠、彼だ。
今日、一日中彼がこちらをチラ見してきた。
きっと昨日のことをいくらか覚えているんだと思うが、放課後に付け回してきたので全力で逃げた。
何故か異常に速かったので、十回は物陰に隠れ、やり過ごしを繰り返した。
十分経っても追って来なくなったので何とか撒いたようだ。
「…あった。オカルト研究部」
ノックを数回繰り返す。
「どうぞ」
「失礼します」
正直、びっくりした。
僕はリアスさんが出てくると思っていたから、違う人が対応すると言うのは予想外だった。
対応してくれたのは小さい少女だ。
「初めまして、2年の九尾と言います。えぇと、リアスさんは?」
「…部長なら」
すっと指を指す方へ目をやると、シャワー音が聞こえることに気付いた。
…シルエットも見えるが、嫌に扇情的だ。
しかし、部室にシャワールームって。ん?
何故ジト目?
「………変態」
「………冤罪です。そう言えば君、名前は?」
聞いたのが間違いだった。
いや、と言うか止めてください。
身を守る様に前を手で隠すとか、ジト目で見るのとか、傷つくから、マジ傷つくから…
「小猫ったら、もう仲良くなったの?いらっしゃいコノエ君」
「はぁ、どうも」
小さい子のジト目攻撃に耐えていると、リアスさんがシャワールームから上がってきていた。
何だかこの人、嫌に扇情的なんだよな。ちょっと苦手だ。
「それで、昨日のことよね?」
「…はい」
「じゃあ、まず1つだけ。この話を聞いたら引き返せなくなるわよ?それは平気?」
さっきまでと口調は同じだけれど、空気は明らかに変わって重い。
部屋そのものの雰囲気もあるのかも知れないけれど、何だか圧力を掛けられているみたいな、そんな感じがする。
「…はい。昨日あの場で決めましたから。後悔したくないって、そう思ってます。続けてください」
「…そう。分かったわ。それなら私達の正体から…」
リアスさんの背中から蝙蝠の羽が生えてきた。
すぐには気付かなかったが、小猫と呼ばれていた子も羽が出ていた。
「私たちは悪魔なの」
「どう見ても、比喩的表現、じゃないですよね」
証拠を見せられているし、昨日のことにも多少の辻褄合わせはできるが、納得できるかと言われれば答えはNOだろう。現実的じゃあない。
じゃあ、昨日のどの辺が現実的かと、頭の中でリフレインするが…そんなものは無かった。
「それはもういいです。そういうものだと思っておきます。それより、兵藤 一誠だ。彼はどうなったんです?何だか、普通に生活していたんですが…」
「イッセーのことね。彼は、死んでしまったから、私が下僕悪魔として転生させたのよ」
…どうしよう。頭が追いつかない。正直、彼女以外にそんなことを言われたら、頭がイカれているんじゃないかと心配しそうになる様な事を彼女は言っている。実際に見ていなかったら僕は絶対信じないと言い切れる位には。
「え、えぇとつまり…あいつは、悪魔になったと?」
「そうよ」
「本人が嫌がるとは、考えなかったんですか?」
「…考えたわよ」
リアスさんの顔が一気に曇った。
やってから、自分が最低な質問をしたことに気付いた。
自分は助けようともしなかったくせに…何言ってるんだ、僕は。
「すいません。嫌な質問をしました」
「いいのよ。気にしないで」
「………」
「………」
凄く静かだ…
聞こえるのは誰かがお茶を入れる音…
「――どうぞ」
「あ、わざわざすみません」
「いえいえ、お口に合うかしら」
ほうじ茶だ。
…うん、おいしい。
「………あれ?増えてる?」
よく見れば和服の似合いそうな美人が増えていた。
いつの間に。
「そういう言い方は、あんまり感心しませんわ」
「あ、申し訳ないです。それと、結構なお手前で…」
「あらあら、それはどうも。姫島 朱乃と申します。以後お見知りおきを」
「九尾 九重と言います。こちらこそ」
丁寧な挨拶にこちらも失礼にならないくらいに返す。
…失礼じゃないよね?
「…リアスさん。話の続き、お願いできますか?」
「ええ」
姫島さんも交えて、次に話してもらったのは、天使と堕天使について。
一誠を殺した、あの女――あれが堕天使らしい。
特徴は黒い鳥の様な羽。天使は白いとかなんとか…
確かに、思い返せば羽が生えていたと思うが、あんなことがあったというのに何故だか印象が薄くなっている。重要なことは覚えているが、他が靄がかかって思い出せない感じ…いや、強く意識すれば思い出せるようだ。どちらにしろ気持ちのいいものじゃないが。
「…堕天使の力を退けた。正直、何の力もない人間…と言う線はなくなりましたわね」
「?どう言う…」
僕の問いにリアス先輩は一見関係のない所から答えてくれた。
「兵藤一誠、彼の殺された理由をまだ言ってなかったわね」
「分かってるんですか?理由」
それってつまり――
「
「堕天使に、殺された?その
――狙われていると、知っていたのか?
そんな言葉が、頭をよぎった。
「…危険よ、モノによっては悪魔や堕天使を脅かせるくらいには」
僕の脳は意外と容量が小さかったらしい。
兵藤一誠の死んだ理由を話していたはずが、悪魔や堕天使を殺せる兵器を彼が持っていたという話になっている。
本当に訳が分からない…頭がパンクしそうだ。
「さっきの質問の答えね。それが、あなたの中にもあるんじゃないかと私達は考えているのだけれど…」
僕の中にも?……………それって、僕も狙われるってこと?
……………………あ、はは、は…
冗談じゃない!そんなことになったら、今度こそ助からない。
「…どうやったら、分かるんですか?その、神器って」
生き残るには、僕が生き残るには力がいる。死んでたまるか。
「そうね。左手を上に上げて、目を閉じてみてちょうだい…そうそんな感じよ」
言われたとおりに左手を上げて目を閉じる。
「その状態で一番強いと感じる何かを想像してちょうだい」
「一番、強い…?」
「難しく考えなくていいの。素直に一番強いと感じるものよ」
強いと、感じる…
「――背中」
「え?」
パッと思い付いたことを口走ってしまい少し赤面する。
ただ、イメージはそれであっていたようで、手の中に光があふれる。
「成功…した?」
「ええ」
「そのようですわね」
いや、だが、しかし、これは…
手の中の感触からある物を思い起こした。
アルバイトに行っている雑貨店でも偶に扱ったりしている物だ。
いやいや、流石にない。
きっと、そうきっと僕の思い過ごしだ…
だって、悪魔や堕天使に対抗できるようなものが、こんな形のわけが…
しかし、開いた手の中にあったのは…
「………キーホルダー」
…キーホルダー
「キーホルダー、ですわね」
……キー、ホルダー
「…マスコットも無いのね」
………きー、ほる、だー?
頭の中でキーホルダーと言う言葉が回り続け、ゲシュタルト崩壊し、一周回って砕け散った。
何度見ても、ただの、マスコットすらないキーホルダーだった。
留め金と、チェーンと、リング、それだけ。
「なに、これ?」
流石にこれは予想外だった。
「…見たことのないタイプの神器ね。いいわ、調べておいてあげる」
「し、調べるたって…これ、ただのキーホルダーじゃ…」
「いい?これは神器よ。ただのキーホルダーに見えてもれっきとした神器。何か特別な能力があるはずよ。大切になさい。それと…」
ずいっと顔を寄せてこっちを見てくるリアスさん…
思わず、目を逸らしそうになる。
「そっちの口調が素かしら?」
「え?…あ」
そう言った時の勝ち誇ったような笑みが、印象的だった。
うーん。
感想にすでに2人主人公の名前が気になる人が出ているのですが、変えた方がいいですかね?
あ、お手数ですが、出来れば主人公の名前のことは感想欄ではなく、メッセージや活動報告へお願いします。
ではまた。
//誤字・脱字
イッセーの追いかけてきた速度。
何故か以上に速かった(誤)
何故か異常に速かった(正)
リアスのセリフ。
大切なさい(誤)
大切になさい(正)