【更新休止】Doppelter Gedanke Alchemist 作:APOCRYPHA
なお、上手いか否かは別とする。ォィ
これは、ある日の3時頃の事だ。
アレを封じた己は、己のアトリエに珍しく訪ねてきたプラフタと共に黙々と、盛大に飛び散った溶液と部屋を白く染め上げるラーメル麦粉、そして溶液に濡れてこびりついたラーメル麦粉の塊を片付けていた。
「「…………」」
(き、気拙い……)
その場の空気はとても重苦しく、この際アレでも良いから何か喋れと言いたくなるような気拙い空気で満ちていた。
何故、こんな事になったのかと言うと――――――
「それでなのですが……アイン、錬金術で失敗しない方法にはどんなものがあるでしょうか?」
それは、ちょうど昼食の一時間前だった。
今の受けた納品依頼用の薬を作り終えた己は、さあ昼食にでもするかなとコンテナから保存してあった野菜や肉を取り出して錬金釜で料理を作ろうとしたその時、
「はあ? 錬金術を失敗しない方法?」
「はい。何か心当たりはありませんか?」
「いや、心当たりって言ってもお前……」
『ちゃんと正しい手順で材料を突っ込んで適切な温度を保ち巧く撹拌をする以外に失敗しない方法なんざあるのか?』
魂を弄るような段階には間違いなく達しているプラフタがこんな事を聞いてくる理由が分からず、家主のソフィーがうっかり材料を間違えて錬金術に失敗でもしたのかと思ってちゃんとレシピを守れと答えたが、それを聞いたプラフタは悲しそうな顔をして肩を落とし、首を横に振った。
「やはり、そうですよね……いきなり来て変な事を聞きましたね。忘れてください」
「待て待て待て、いきなり『錬金術に失敗しない方法』なんて聞かれても答えに困る。ちゃんと詳しく説明しろ」
すると、返した答えが間違っていたのか肩を落としてすごすごと帰ろうとするプラフタだったが、己としてはそのまま帰られても気になって昼食に集中できない。
故に、帰ろうとするプラフタを呼び留めて何の話だったのかと問い詰める。
「……ああ、そうでしたね。では、少し長くなりますが、良いですか?」
「……そこは出来るだけ手短に頼む」
「…………努力はしましょう」
で、聞いた話によると、事の発端は人に近い身体を手に入れたプラフタがソフィーの手伝いをしようとこっそり錬金術を行使した事らしい。
ソフィーが採取に出かけている時に受けていた依頼の期限が迫っていて、このままだと間に合わないと思ったプラフタは依頼の品がそれほど難しい物ではなかったのもあって代わりに作ってやろうと釜を回したそうだ。
で、結果は溶水の破裂と言う名の錬金術の失敗、部屋は(元々綺麗とはお世辞にも言えないだろうが)飛び散った溶液と材料の欠片で汚れる結果となったのだと
「……で、その場は小規模な暴発だったのもあってソフィーの帰ってくる前に慌てて片付けて誤魔化し、材料は後日、近場の採取地でこっそり集めて事なきを得た、と」
「そう言う事になりますね」
まあ、そう言う事らしい。
「ふむ……一応聞いておくが、それは本当に『簡単な』錬金術だったのだな?」
「ええ、依頼の品は子供でも錬金術を用いず作れる事に定評のある『山師の薬』と『うに袋』なので、間違いなく簡単な物でしたよ?」
「そうか……」
ふむ、そうなると、本当に判断に困る所だな。
錬金術士としての腕前が本人の思ってた以上に錆び付いたからそんな初心者の登竜門と名高い(?) フラムを作れる頃には片手間で作れる物に失敗したのか、それともただ単に身体が錬金術の殆ど絡まない職人達の手で造られた人形だからなのか、或いはプラフタの生前と材料の性質なり効能なりが微妙に違い、その違いによるズレが起きているのか
色々と推測は出来るが、そのどれもが結局は推論に過ぎない以上、己には何とも言いがt…………いや、待てよ?
「なら、ちょうどいい。これから昼食をと用意していたからな。パンで良いから錬金術で作ってみてくれるか?」
そう、聞いても分からないなら見ればいい。
材料の性質の違いも、技術の不足も、体質(?)の問題も、或いは、それ以外の理由でも、実際にどう言った原因なのかは見ればある程度の判別が付く。
……ついでに個人的な理由を述べるなら、この際普通のパンでも良いから己もたまにはパイ以外のものが食べたい。
「……そうですね。言葉で説明するより、実際に見てもらった方が分かり易いでしょう」
『では、釜と材料を借りますよ?』
そんな個人的思惑を察したのかどうかはさて置き、実際に見れば原因の特定もし易くなると言う考えはプラフタも理解出来たのか、そう言ってコンテナからラーメル麦粉を持ち出して錬金釜へと放り込んだ。
己は錬金釜を回すプラフタを良く見ようと近付くと閃光が迸り――――――
――――――で、そのまま錬金術の失敗に巻き込まれ、二人揃って舞い散るラーメル麦粉と錬金術で使う溶液を盛大にひっ被る破目になったと言う訳だ。
因みに、あまりにも早い失敗から一度では情報が少なくて判別が難しいから、アトリエも汚れている事だしともう数回ほど釜を回させた結果、問題は技術や材料ではなく、極めて
これを改善しようと思ったら、それこそ肉体を錬金術が使える物に挿し替えるか、旧文明の遺物の類いで錬金術が使える道具でも探すしかないだろう。
そんな診断結果を聞いたプラフタは『やはり、そうですか……』と呟いてどんよりと暗い雰囲気を纏い、アトリエは重苦しい雰囲気に包まれた。
(まさか、アレの不快極まりない声が聞きたいと思う日が来るとは思わなかった……)
封印からそう日が経っていないが、まさかアレの声が聞きたいとはな……実際に聞かされたら怒り狂うと思うが、それでもこんな重苦しい空気で黙々と掃除をするよりはマシと言うもの…………いや、やっぱりそうでもないか?
こんな状況で己がキレたら、今そこで落ち込んでいるプラフタに追い討ちを掛けるようなものだろうしな……そう考えれば、アレを封印出来たのは好都合だったと言えるだろう。
「っと、これで終わりか」
「そのようですね」
そんな事を考えている間にも時間と片付けは進み、最後に残った麦粉の塊を4枚目のごみ袋へ入れた事で、錬金術の失敗によって小麦と溶液がぶちまけられたアトリエは綺麗に片付けられ、元の清潔な……いや、元の状態より清潔か……まあ、綺麗に片付いたのだ。うん
「では、私はこれで」
そうして綺麗になったアトリエを眺めている間に、プラフタは何時もの……と言う程に見ている訳ではないが、まあ、それは良い。
何時もの澄まし顔をして、アトリエの扉を開け、帰路に就こうとしていた。
「ああ、力になれなくて済まんな」
「いえ、元々覚悟していた事ですので……それでは」
その後ろ姿は何処と無く、何かに急き立てられているように己には見えた。
(錬金術を使いたいなら身体を変えるかその手の遺物を探せ、ですか……)
ソフィーの元に帰る道中にその言葉を心の中で反芻した私は、何故か焦燥感に襲われていました。
知識の大釜さえあれば間違いなく、今の私ですら錬金術を行使出来るにも拘わらず、です。
その知識の大釜はソフィーと共に探している事を思えば焦るまでもなく、遠からず錬金術が使えるようになるのは間違いありません。
なのに何故、私は焦りを感じているのか
そして一体、私は何を焦っているのか
それらの理由は分からないまま、それでも私の中の何かが『嘗ての力』を求めるのです。
まるで、●●●ドを超える脅威が迫っているかのように…………
「あ、お帰り! プラフタ」
「…………」
「って、あれ? プラフタ? おーい」
「……っ、あ、ソフィー……どうかしましたか?」
っと、いけません。
何時の間にかソフィーの元に帰ってたようですね。
「いや、プラフタこそどうしたの? もうおやつの時間だよ?」
『さ、用意は出来てるから、一緒に食べよう!』
そう言うソフィーに手を引かれ、初めてソフィーにレシピを書き込まれた時から過ぎ去った時により今となってはすっかり馴染んで、故郷の実家のように感じ始めているアトリエのある程度片付いた場所にある椅子に着いた私は、コンテナからおやつを取り出そうとしているソフィーの楽しそうな後ろ姿を見て、先程までの焦りは消え、不思議な安心感に包まれるのでした。
これを書いてる合間にプレイ動画見直したのですが、プラフタって普通に錬金術使えなかったんですね。
うろ覚えだったから間違ってたらどうしようと思ってました。
そして、前書きでも少し触れましたが……日常って、何なんだろう……?素で感性が狂ってるから分かんないわ……orz
自分でも下手だとは思いますので、まずい点があったら詳しく襲えてもらえると助かります。(理解できるかも判らないけど)
……次が中編か後編かは、その時ないし書き上がった後の状況次第です。(それ以前に前編表記すら暫定だけども)