??「……?ここは……?」
青年は起き上がる。そう、森の中で倒れていた青年だ。
目が覚めるとそこは部屋だった。
近くに窓があり、正面にはドアがあり、近くの棚とかには人形が座っている。青年には見覚えのない部屋。目覚めたばかりでここがどこかも分からない不安の状態のまま、
コンコン
正面のドアがノックされる。
ガチャリと音をたて、扉が開くと
??「あら、起きたかしら?もう大丈夫なの?」
扉の先には女性がいる。短めの金髪の髪色に赤く、白いフリルの付いた女性がいる。目があっているだけで何か不思議な気分になる。そんな女性だ。
??「えっと……ここは…?」
女性「ここは私の家。そして私はアリス・マーガトロイド、この家の家主よ。あなたは?」
??「俺は……」
名乗ろうとすると思考が固まる。普通なら簡単に名乗ることができるのに、この時は違う。名前が出てこない。それどころか、昨日何を食べたさえも。
アリス「?どうしたの?」
??「あ……いや……」
まるで記憶の一部にぽっかりと穴を開けられた気分だ。自分の名前が出てこないなんて思いもよらないだろう。だが、悩んでいるとふと頭の中に文字が浮かぶ
??「……月……神…霧……人?」
それらをつなげて読んでみる。
??「……月神 霧人(つくがみ きりと)だ。」
アリス「ふぅーん……変な名前」
霧人「なっ…!?」
名前を聞いた後に飛んで来たのはまさかの罵声だった。
アリス「まぁ、いいわ。これから霧人と呼ばせてもらうからあなたは私のことは気軽にアリスでいいわよ。」
霧人「あぁ……」
一応(?)名前は思い出すことはできたが、それ以前に霧人は疑問はまだ残っていた。
霧人「なぁアリス……ここはどこなんだ?」
今の質問に対し、アリスは
アリス「やっぱりね……あなた、外の世界の人でしょ?」
霧人「外?」
さらに疑問は募る。世界に中でも外でもあるのか?と。
霧人「外ってなんだ?」
アリス「…あなた、本当に何も知らないのね。分かったわ、私が教えてあげるわ。」
霧人が寝ていたベットに座ると、
アリス「…ここは幻想郷。普段は結界で囲まれているのだけれど、たまにあなたのような結界の外で生きる人間も迷い込んで来るのよ。だから、外の世界。私たちはその人たちを外から来たことを由来にし、「外来人」と呼んでいるわ。」
霧人の頭の中の疑問が少し解消される。外の世界とは何か、それが分かったのだから。
霧人「(なるほどな。外の世界ってそう言う意味か……てっきり異世界のような類な物かと思った…)」
アリス「あとは……そうね。幻想郷には妖怪がいるわ。」
霧人「妖怪!?」
妖怪とは、古きから人間を襲う異形の存在である。霧人のいる世界ではいないと言った方が正しいに対し、
アリス「そう。この幻想郷には吸血鬼や河童、天狗やつるべ落としや土蜘蛛だっているわ。あなたのいた世界にはそういうのはいないのかしら?」
幻想郷では妖怪はいると言うのが正しいのかもしれない。
霧人「……まさか…アリスも?」
アリス「お察しの通りよ」
アリスが指を動かすと、部屋の棚の上にいる人形が突然動きだし、アリスの元へ集まる。
アリス「この幻想郷にいる大半の妖怪と一部の人間には「能力」と言う物があるわ。私の場合は『魔法を扱う程度の能力』と言っても、人形を操るくらいだけど。」
アリスにより動いている人形は操り人形だと察することはできるが、操り人形とは思えないほどの機敏な動きである。まるで本当に生きているかのように。
霧人「………」
アリス「もしかしたら、あなたにも能力が宿っているかもしれないわよ。」
人形に目を奪われている霧人にアリスは言う。
アリス「とりあえずお茶にしましょ。あなたがこれからどうするかを聞いておきたいからね。」
人形が元いた場所に戻ると、アリスは部屋を出て行く。
霧人「………」
ふと窓を覗くと、木々が続く森の背景と霧人の顔が映っている。
白いボサボサ頭に、黒目に赤みを帯びた目、そして、21歳である霧人の若々しい顔が映る。
霧人「(幻想郷、妖怪、能力……なんで俺はそんな所にいるんだ?……何故……)」
頭の中で整理できていないまま霧人はアリスの元へ向かう。
アリス「どうぞ。」
霧人の席に綺麗に透き通る赤い紅茶が出される。その近く一帯に紅茶の独特な香りが広がる。
霧人「どうも。」
口に含むと独特の香りと苦味の中に潜む甘みが口に広がる
霧人「(あ、結構美味いな。)」
アリス「どうかしら?あまりお客さんに紅茶って出さないから。」
霧人「あぁ、大丈夫大丈夫。結構美味いよ。」
アリス「そ、良かった。」
感想を聞き終わると、話が変わる
アリス「話は変わるけど、あなたはこの世界に来る前に何をしていたのかしら?」
霧人「来る前……」
思い出そうとするも、先ほど名前を聞かれた時と同様、思い出せない。記憶に穴が空いたかのような気分だ。
霧人「……ごめん、分からないや。」
アリス「そう…(記憶喪失かしら?もともと記憶はあるのか、それとも……)」
思考を巡らせながら、ふとアリスは近くの時計を見る。すると、何かを察したように立ち上がる。
霧人「?どうしたんだ?」
霧人の質問に耳を傾けながら荷作りをしている。
アリス「人里へ行って人形劇をしに行くの。ほら、私って人形を自由に操っていたでしょ?それを利用した人形劇が里の子供達に人気なの。」
まるで小さい子を思う大人のような回答が帰ってくる。すると、顔を霧人に向け、
アリス「あなたも来るかしら?」
霧人「あ、俺も?いいのか?」
アリス「えぇ。別に人形劇を手伝わせようって思った訳じゃ無いの。ただ、里に行けばあなたの記憶の手掛かりがあるかなって。」
あるかないかは結構不確定な物であるが、霧人はアリスの言葉を信じてついて行くことにした。
霧人「じゃあ俺も行くよ。」
アリス「分かったわ。玄関で待ってて。あと少しで準備終わるから。」
そう言われ、玄関へ向かう。
靴を履き、少し考える。
霧人「(なんでだろう……なんで過去の記憶を思い出せないんだ?それどころか自分の名前さえも覚えていないなんてな………それに、月神 霧人……か。なんでこの名前が頭に浮かんだんだ?……じみちに思い出すしかない……か。)」
少し経った後、アリスが出てくる。
アリス「待たせたわね。さ、行きましょ。」
こうして、幻想郷に降り立った霧人の記憶を思い出すために、幻想郷を巡ることとなる。
第二話へ続く………