「こんな道あったかなぁ・・・」
毎日の日課である、ランニングをしている最中、少年は道に迷ってしまっていた。
時刻は午後6時。山道なので、外灯などはない。
「どうしよう・・・早く帰らないとお母さんに心配かけちゃうな・・・」
辺りを見渡すと、幽かに灯りがあるのをみつけた。
「あそこに行ってみよう」
少年は灯りの方に歩みを進めた。
灯りが近くなってくるにつれ、大きな建物があることに気づく。
「鳥居・・・神社なのかな?」
少年は会釈をしてから鳥居をくぐった。
「すいません!!誰かいますか!」
少し待つも、返事はなかった。
「誰もいないのかな・・・?」
諦め来た道を戻ろうとした時、誰かに後ろから声をかけられた。
「こんばんは」
「えっ??」
振り返ると
「あっ・・・とこんばんは!!」
いつ後ろにきたんだろう・・・
「こんなところでどうしたの?」
「えっと・・・道に迷ってしまって、明かりが見えたのでここに来ました。」
そう言うと、お姉さんは神妙な顔つきになった。
「君、名前は?」
「緑谷出久です」
「出久くん、鳥居をくぐる時変な感じはしなかった?」
「特には・・・」
どういう意味だろう?
「そっか・・・」
少しの沈黙の後お姉さんは顔を緩め
「自己紹介がまだだったね。私は睡蓮。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「よし!出久くん道に迷ったんだよね?それなら鳥居をくぐってすぐの階段を降りていけばいいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
・・・階段なんてあったかなぁ
「その前に、出久くん手切れてるよ。」
「あっ・・!枝とかで切れてたのか・・・」
「手、貸して」
睡蓮さんはそう言い僕の手をとり、傷口に自分の手をかざした。
「はいっ!これで大丈夫。傷はふさがったよ。」
「すごいっ!睡蓮さんは、治癒系の個性なんですね!!いいなぁ!どこでも活躍できる個性ですね!」
「ふふふっ・・・」
「どうしたんですか??」
「急に元気になったから面白くて」
「えっと・・・!僕、凄くヒーローが好きで、オールマイトみたいに誰でも助けられるようなヒーロになりたかったんです・・・」
出久くんの声のトーンがだんだん下がっていった。
「今は違うの?」
「僕、無個性なんです・・・」
「・・・・・・」
「ヒーローになれなくたって、人を助ける仕事は沢山あります。でも!どうしても!!ヒーローになりたくて!!毎日、身体を鍛えたり、格闘
技をしたりしてても結局ヒーローにはなれないんだって思ってる自分がいて!悔しくて・・・!!」
ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら叫んだ。
「出久くん・・・」
ぎゅっ・・・
「えっ・・・!」
「すごく苦しかったんだね。今はいっぱい泣いていいよ・・・」
「うわあああああぁぁぁああああ!!!!!」
3分後ぐらいだろうか出久くんは泣き止んだ。
「えっ・・と・・すみません・・・」
そう言った出久くんの顔は少し赤くなっている。
「ううん、辛い時にずっと溜めておくのは良くないよ。スッキリしたんじゃない?」
睡蓮さんは微笑みながら言った。また泣きそうになる。
「ありがとうございます・・・。帰りますね。」
「待って。」
「??」
「出久くんは、私が個性を持ってると思ってるよね?」
「はい?」
質問の意味が理解できない。
「出久くん・・・私は個性なんて持ってないよ。」
「!?!?!?」
どういうことだ!?
「えっ・・!だって・・!さっき個性で僕の傷を治してくれたじゃないですか!?」
「そうだね。あれは『個性』じゃなくて『術』だよ。」
「術・・・???」
「色々みせるね」
そう言い睡蓮さんは様々な術を見せてくれた。
空を飛び、火や水を操り、大きな岩を素手で砕いた・・・。
「まだまだ、あるけどまあこんなもんかな」
僕は唖然とした。それと同時に睡蓮さんは人じゃないんじゃないかと思った。
「正解」
「えっ・・・!!」
「私は人じゃないよ」
考えていること読まれてる・・!?
「ごめんね。これも術の一つなんだ。あまり使って良いものではないけどね。」
「人じゃないって・・・どうゆうことなんですか・・・??」
僕は少し怖くなっていた。
「怖がらないでよ。少し悲しいよ。」
「すいません・・・」
「私は神だよ。ここのね。」
「神様・・・??」
僕は困惑している。何を言っていいのかわからない。
「急に神だなんて言っても飲み込めないのは当然だよね。それに、今の世の中は神様信仰なんて殆ど無いけどね。」
睡蓮さんは少しだけ寂しそうに笑っていた。
「でも、出久くんには信じてほしいんだ。」
「なんで僕なんですか・・・?」
「魂のオーラっていうのかな?出久くんはそれがとても清らかなんだよね。いつも、誰かを助けたいって思ってる。なかなかそんな人はいない
よ。」
そして、睡蓮さんは笑いながら
「その心があるだけで、出久くん君は、立派なヒーローだよ!」
僕はまた泣いてしまった。
楽しんでいただけたなら幸いです。