あまぞんず   作:ランブルダンプ

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「リンちゃんの昔話聞きたい!」
「昔っても一年しか経ってないし、別に聞いてもつまんないよ」
「でも知りたいなーって」

その顔反則……分かったよ。




BATTLE α

あの逃げ出した日の夜、私は他の実験体数人と一緒に閉店したショッピングモールへ侵入し、手術着ではない一般人らしい服装を手に入れていた。

他の実験体が暗い店内を更に漁る中、私は懐中電灯とリュックを盗んで直ぐにその場を立ち去った。

 

 

「まさか逃げ出したその日の内に帰ってくるとは思わないよね」

 

ここは元実験体が居た野座間製薬の本拠地だ。

事件が発生しているので警戒はされているものの、逃げた実験体を追うのに力を割いているからか人は少ない。

 

監視カメラに映らないように侵入し、地下の電気は案の定落とされていたので懐中電灯を頼りに進む。

そして、消毒液の匂いが漂う部屋へと着いたので目的の物を探す。

 

「……!あった!」 

 

懐中電灯で照らしながら、壁の棚を片っ端から調べていく。

探すこと10分、私の左腕に付いているのと同じアマゾンズレジスターがしまわれた箱が並んでいるロッカーを見つけた。

箱から中身を取り出して確認し、内側の針に注意しながら残っている腕輪をどんどんリュックへと詰めていく。

6個程入れた所で、私に声が掛けられた。

 

「おい、そこで何をしてる」

 

ハッとして振り向くと、見覚えのある研究員が立っていた。

 

「……っ!!」

 

リュックを素早く背負い、棚から取り出しかけてた箱を投げつける。

男が怯んだ隙に部屋のもう一つの出口から脱出を図る。

 

「おい!待て!」

 

男の怒号を聞きながら地下の通路を全力で走る。

地下を抜け出し、建物の外へと飛び出て追っ手を振り切るまで駆け続けた。

 

 

 

 

 

「奴が盗んだレジスターの数を数えろ」

「警備員は何をしていた!」

「いや、予想外過ぎる。逃げた実験体がその日の内に戻ってくるなんて」

「ただ逃げた他の実験体とは思考が違う」

「どうやって駆除すれば……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

逃げ出した日から一週間、私は手に入れた5個のレジスターを抱えて逃亡していた

ホームセンターへ盗みに入り、半田ごてや精密ドライバを手に入れたので電気が通っている夜中の高校に侵入しレジスターを分解して構造を把握する事を毎日繰り返す。

 

「取り敢えず10年分か……」

 

他の実験体と比べたら五倍も人間で居られる。

しかし、それ以上は……

 

「……理性を失ったアマゾンと化して駆除されるのがオチだな」

 

となると他の実験体を殺して腕輪を奪うしかない。

この身体がどれだけの寿命なのかは分からないが80年分も有れば大抵の事はやれるだろう。

生ききった、と言えると思う。

 

「そうなるとこれから仲間を狩らなきゃな……」

 

そう考えてリュックを背負い、片付けを開始した時だった。

 

足音が聞こえた。

 

誰も居ない筈の校内から。

 

「…………!」

 

急いで教室の窓に駆け寄り開け放つ。

窓枠に足を掛けて飛び降りようとしたその瞬間。

廊下から発生した凄まじい衝撃波が部屋の扉を吹き飛ばし、開いた窓ガラスから逃げようとしていた私も衝撃波を喰らい吹き飛び、校庭に叩き付けられた。

 

「あ゛っぐ…………」

 

背中を打ち呼吸が出来ず喘いでいると窓から何か飛び出してきた。

 

「お前……研究所から腕輪盗んだろ」

「はぁ、はぁ……それが?人を食べたくないからだよ。悪い?」

「悪くないさ、お前達はそういう生き物だ……だから俺が殺す」

 

そう宣言すると赤いアマゾンが襲い掛かってきた。

痛む身体に鞭打って逃げる。

 

しかし、

 

「何て……速っ……!」

 

距離は広がるどころかぐんぐんと追い詰められていく。

 

死にたくない。

 

「…………!あぁぁぁ!!アマゾン!!」

 

蒸気を上げて全身の細胞に攻撃意識を送り 込み、触手生やした異形へと変化する。

 

「ほぅ……抑制剤があるからって無茶してるな」

「うるさい!!」

 

背中の触手て相手の腕を押さえて組み付く。

しかし、両腕に生えた鋭い器官に切り裂かれて逃げられてしまう。

 

「くそっ!」

「…………」

 

こちらの攻撃を全ていなされて、また一つと触手を切り落とされる。

 

(ヤバい、強い)

 

死ぬ。その言葉が何度も脳裏をよぎる。

端的に言えばビビってしまっていた。

そんな私が、その攻撃をかわせたのは偶然だった。

【Violent Slash】

 

直感に従いマトモに当たれば胴体が真っ二つになるであろう攻撃を身体を捻って避ける。

代償は腕輪の付いた左腕だった。

「がああぁぁぁぁぁぁあああ!!!??」

 

骨まで切断されて辛うじて繋がっているだけ、触手はあと一本しか残っておらず全身は裂傷だらけ。

 

「ぐる゛な゛ぁぁぁぁぁ!!!」

 

タコのアマゾンとしての能力で相手に墨を吹き掛けて視界を潰す。

相手が払っている隙に全力を振り絞って校舎内へと逃げ込んだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

廊下をヨロヨロと進む。

変身を保つだけの体力はとうにないので人の姿でだ。

 

「ハァっ……ハァっ…………」

 

ぶらんと垂れ下がった左腕を眺める。

そして、この状況を切り抜けるたった一つの案を思いついた。

 

 

辛うじて繋がっていた腕を引き千切る。

痛さで身体が強張る。

次に奴が納得するだけの血を撒く。

服を脱ぎ捨てて倒れ込んだ様に見せ掛ける。

 

左腕が溶けて腕輪だけが転がった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

死に掛けの私が出す波動は随分と小さく、奴は私が逃げたのに気付かず、アレを死体だと思ってくれたみたいだった。

 

多分。追われてないのがその証拠だと思いたい。

 

あの後、全裸のまま逃げ出した私だがそのまま露出狂として逃げた訳ではない。

一度アマゾン態に変化したのが切欠で人間態でもその能力の一部分、体表の偽装ができる様になった。

つまり透明人間である。

 

この能力を使って学校周辺の制服屋に侵入して服を頂いた。

一着くらいバレないだろう。

 

そして朝、一番の問題である腕輪の話だが

 

「本当にヤバい時用に一個埋めといて良かったー……」

 

学校へ侵入した時にタイムカプセルが卒業生によって埋められてる場所を知ったので、万が一の時の為に埋めておいたのだがそれがこんなに早く役に立つとは……

 

掘り出して直ぐに右腕に嵌める。

 

「痛っ……てぇ……」

 

せっかく手に入れた腕輪を五個失ったのは痛い。

だが、その経験を糧にして生き延びてやる。

 

そう私は朝日に誓うのだった。

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