「これで終わりかな」
つい先程殺したアマゾンの体液を公園の水道で洗い流しながら私は呟いた。
戻って、地面に広がる染みの中から腕輪を拾い上げる。
そろそろ目標の80年分を集め終えそうになってきた。
抑制剤は1日に一個消費されていくので、脱走した日から一年半以上経った今では一体当たりの狩る旨味が少なくなってきている。
(しかも人によってはちらほら覚醒しそうになってるのも居たし)
そういう人の所にはあの赤いアマゾンも居たので基本近づかず遠くから眺めてすぐに逃走する事にしている。
あの時以降、私は向上した同族感知能力を使って赤いアマゾンとは一度も顔を会わせていない。
「あー、疲れた。帰って撫子のご飯食べよ」
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「あ、おかえりリンちゃん」
「ただいま」
ご飯作るね~♪と台所へ行ってしまったので、そのままリビングの私のコーナーへと向かい、そこに腕輪を置いてから着替える。
「あ、そうだ」
ポケットにさっき殺したアマゾンが持ってた財布を入れていたのを思い出して取り出す。
「おー、五万も入ってた。それにクレジットカードも」
撫子の一人暮らしに便乗させて貰っている私だが、家賃と食費はキチンと殺したアマゾン達のポケットマネーから支払っている。
「明日辺りに引き出してくるかー」
「また悪い顔してる……」
食事を乗せたトレイを持ってきた撫子があきれた表情で私を見てくる。
「別にいいじゃない、狩りの成果だよ?」
「追い剥ぎの間違いじゃないの?」
「いずれ人を食べる化け物を狩ってるんだから悪く言われる謂れは無いですよー」
「……ま、リンちゃんが無事ならそれでいっか」
何事もなかった風に切り替えて机にトレイを置き食事の準備に戻る撫子。
「切り替え早くない?」
「その追い剥ぎも元はと言えば私を食べない為だし、私もその原因の一つだからね」
「あぁ、うん。……ありがとう」
戸惑ってると、食事の準備を終えた撫子が「はい」と手を伸ばしてきた。
「ご飯出来たよ。食べよ?」
「……分かった」
調子狂うな、まったく。
ご飯後、洗い物をしている撫子に話し掛ける。
「明日からさ、私が学校まで送り迎えするよ」
「アマゾン関係?」
「うん、早い奴だと腕輪の期限がそろそろ切れるみたいだから」
「おっけー。リンちゃんと学校行けるの楽しみだなー!」
「学校は行かないよ、入口まで」
「ですよねー。あ、でも友達に何て説明しよう」
確かに、この撫子と同年齢か少し低い見た目で保護者名乗れる訳ないし。
取り敢えず思いつくところから言ってみるか。
「妹」
「髪色が違い過ぎるね」
「従姉」
「学校は?」
「ペット」
「私が異常者になっちゃうよ」
「性奴隷」
「していいの?」
「えっ?」
「……何でもない」
え、何か生存本能が怯えてるんだけど大丈夫なのかな。
出会った記念で半年前にくれたチョーカーってまさかそういう?
あれ着けてると落ち着くけどさ。
(……あれ、首輪着けて落ち着くって冷静に考えたらヤバない?)
地味に戦慄していると撫子が提案してきた。
「ま、普通に彼女でいいんじゃない?」
「いいの?男装とかしようか?」
してもショタにしかならん気がするけどさ。
「ボーイッシュもいいけど、そのままで。変に隠すより開き直った方がいいんじゃない?」
「なら私は高校中退してストリートパフォーマー目指してる人って設定にしようかな」
「リンちゃん身体能力高いもんね」
「アマゾンですし」
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そんな約束を撫子としてからそろそろ半年。
今日も撫子を送り届けると近くの銀行で今まで手に入れたクレジットカードを使いお金を可能な限り下ろす。
姿は能力の【偽装】で死んだ人と同じにしているので疑われる心配は無い。
お金を手に入れホクホク顔で銀行から出て、撫子が帰る時間まで暇を潰そうとしたのだがふと同族感知に異様な反応があった。
「……アマゾン?今のが?」
何か違和感を感じながらバイクで向かうと、一人のワイシャツを着た男が服装と場違いな山へと登っていくのが見えた。
「げ、あの赤いアマゾン居るじゃん」
感知範囲を広げるとアマゾンが何体も集まっている。
「近付きたくないけど……撫子に何かあったら嫌だし……」
【擬態】でカモフラージュしながら現場へと近付く。
山の高い位置まで登り見下ろすと、銃を持った複数人の集団が一人のアマゾンを連れて辺りを警戒している。
「アマゾン狩りのチームかな、野座間の」
暫く観察していると赤いアマゾンが参戦し、次にさっきのワイシャツ男が緑アマゾンに変身してあっという間にコウモリアマゾンを倒してしまった。
そしてアマゾン狩りの集団の一人がトンボアマゾンになり逃走していった。
「見た所撫子の学校と家とは逆方向だし見逃していっか」
それでも一応心配なので直ぐに下山して撫子の高校へと戻り、近くの自販機でコーヒーを買って飲みながら撫子が出てくるのを待つ。
「あ、リンちゃーん!!」
「撫子、お疲れ」
走ってきた撫子を抱き止める。
少し話していると、じきにに撫子の友達も追い付いてきた。
「相変わらず撫子はリンが居たら走ってくんだな」
「体育の時もやたら速いし、どこにそんな体力あるんや?」
「あはは~」
撫子の友達、大垣千明と犬山葵さんだ。
撫子が入っている「野外活動サークル」という部活のメンバーでもある。
私はバイクを押しながら三人と歩いて家まで向かう。
「そういやリンってストリートパフォーマーらしいけど儲かってるのか?」
「千明やめーや、そういう勘繰りは」
「別に構わないよ。金額は伏せるけど撫子に家賃と食費渡して趣味に使える金額が少し余るくらい」
「おー、すごいじゃんか!」
「せやな~」
犬山さんが感心した目付きで見てくる。
……撫子サンその目止めて。
間違ってないから……ストリート(人気の無い場所で)パフォーマー(アマゾン狩り)だから間違ってないし。
「今度私も見てみたいなー」
「いやぁ知り合いに見せるのは恥ずかしいし……」
見られたら殺さないとだし……
「アーティストに似つかわしくない奥ゆかしさやな~」
帰宅後
「リンちゃんって嘘が上手いよねー」
「許して下さい撫子サン」