あまぞんず   作:ランブルダンプ

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Fake

「……………………生きてる」

 

昨日は撫子に散々責められて何度も気絶し、最後の方は意識朦朧で過ごしていて何度か死を覚悟したけども。

 

「手枷に足枷も無い……」

 

こうして目が覚めたので無事に生きてると安心した。

……起き上がるのは疲れ過ぎてて無理だけど。

 

そんな事を考えてると撫子が寝室に入ってきた。

 

「あ、リンちゃんおはよー」

「……おはよ」

「心配したよー……お風呂で身体洗っても起きないし、私が起きてもまだ全然寝てたし」

「ごめん……ってその原因撫子だろ」

 

つい謝り掛けたけど私悪くないよね?

 

「あはは、昨日のリンちゃん可愛かったなぁ……私の指に従順に反応するし敏感だから良い反応してくれたし」

「あれは……目隠しされたらそっちの感覚から気を反らせないし……」

「最後らへん意識朦朧としてたみたいだけど、どのくらい覚えてる?」

「……気持ち良かったとしか覚えてないよ」

「そっかー……なら良かった!」

 

良くないよ?洒落にならないレベルで疲れてるからね?

私がそう考えてるとは露知らず、撫子は一旦台所に戻りフルーツを切って持ってきてくれた。

自力で起き上がれないので撫子に起こしてもらう。

 

「はいあーん」

「あーん」

 

何だろうこの餌を親鳥から貰ってる雛鳥の気分は。

黙々とフルーツを食べつつ、ふとカレンダーを見ると印が追加されているのに気付いた。

 

 「あれ、一週間後どっか行くの?カレンダーの赤丸」

「あぁ、そうそう。リンちゃんが起きたら話そうと思ってたんだけど」

 

そう言ってポケットからスマートフォンを取り出した。

 

「私が入ってる野クルの活動で今度初めて実地でキャンプする事になったんだけど、リンちゃんも行かない?」

「いいよ」

 

即答、一人っきりにして撫子を失うとか想像するのも恐ろしい。

 

「良かったー!場所はね、イーストウッドキャンプ場って言って……」

 

嬉々として説明を始めた撫子の声を聞きながら、私は無意識に右腕に着けた腕輪に触れていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一週間後、直前に判明した野クルの装備の貧弱さに私が奮発して私達用のいい装備を購入した次の日。

 

「早いなぁお二人さん」

「悪い、待ったか?」

「全然」

 

犬山さんに大垣が来たので荷物を持って駅前から出発する。

 

「ねぇあきちゃん、今日泊まるキャンプ場ってどんなところなの?」

「よくぞ聞いてくれた!薪が無料で温泉が近くて夜景が綺麗で1泊千円!っていうリーズナブルなキャンプ場だぞ!」

 

尋ねた撫子に対してテンション高く大垣が答える。

 

「大垣は行ったことあるの?」

「前に下見でその辺行ってみた事あるぞ」

「そうなんだ」

「駅から4km、歩いて50分ぐらいやって。軽い遠足やな」

 

犬山さんが追加で教えてくれた。

 

「ふーん」

「一つ気になってたんだが……」

「ん?」

「リンちゃんその荷物多過ぎやないの?大丈夫なん?」

 

撫子が快適に過ごせるようにあれこれカバンに詰め込んだだけなんだけど。

 

「平気だよ、私力持ちだし」

「もし疲れたら言えよー?手伝うから」

「千明ちゃんイケメン!」

「ふっふっふ……そうだろ~?」

 

人間がアマゾンの体力についていけるのは厳しいと思うけどな……

 

 

 

 

「リンちゃん!こっちいい景色見えるよ!」

「撫子全然疲れてないね」

「うん!だって楽しいし!」

「今行くよ」

 

そう言って走り去ったリンの後ろ姿を眺めながら大垣と犬山の二人は呟いた。

 

「何で撫子ちゃんあんな体力あるんや……」

「何でリンはあの荷物で走れるんだ……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

犬山さんと大垣の提案で近くの笛吹公園で暫く休憩する事に。

といっても撫子と私が先行し過ぎているので既に到着済みで二人を待つ形になる。

 

(こういう人気の無い公園って割と実験体の狩りスポットだったりするんだよな……)

 

景色にはしゃぐ撫子を見ながら同族感知のレーダーを広げる。

近くの建物に……反応あり。

 

「撫子、ちょっと向こうのカフェでお手洗い借りてくるよ」

「カフェ?私もそっち行こうかな」

「二人が来るまでここで待っててよ」

「う~ん、分かった」

 

まだ信号は覚醒した奴じゃない。

覚醒してたら駆除班に任せて逃げるけど、ここは殺るしかないか。

 

擬態で別人の格好に成りすまし、お店に入って荷物と上衣を椅子に置く。

建物の中にはまばらにしか人がいない。

 

…………居た。

 

反応と服装の少し膨らんだ左腕で確定と見て間違いないだろう。

 

「店員さん」

「……あ、はい今伺います!」

 

顔色が悪い、覚醒寸前かよ……。

少しふらつきながらやってきた女性店員の腕を掴んで耳元で囁く。

 

「薬が切れそうなんでしょ」

「っ!?あなたは?」

 

驚く彼女に話を続ける。

 

「駆除班にやられて死んだ仲間の腕輪が余ってるんだ。今ならまだ間に合う、ついてきて」

 

そう教えると彼女は驚いた顔をした後、涙を浮かべながらくしゃっと顔を歪ませて微笑んだ。

彼女の手を引き人気の無い場所へ連れていく。

 

「あ、あの……どこへ?」

「予備の腕輪を隠してるケースがそこの駐車場に停めてる車の中にあるんだよ、どう?まだ持ちそう?」

「……なん、とか」

「そっか、それは良かった」

 

 

 

良かった。

撫子のキャンプが台無しにならなくて。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ただいま。少し見て回ったけどカフェ以外に軽いご飯も食べれる場所とかお土産屋さんもあったよ」

「お、ならカフェ行こうぜ!」

「せやな、休憩タイムや~」

 

そう言って犬山さんと大垣は荷物を引いて歩き出した。

 

「撫子、私達も行こ……」

 

振り返ったら撫子がじっと私を見ていた。

 

「どうかした?」

「匂いがリンちゃんだけじゃない」

 

……バレる訳がないと思ったんだけどなぁ。

 

「あのカフェに覚醒寸前の奴が居た」

「騒ぎになって無いって事はこっそり殺したの?」

「まぁ上手くやったから」

 

さあ行こう?と撫子の手を引くと逆にぐいっと引かれてバランスを崩し、私の身体は撫子にもたれ掛かった。

 

「私はリンちゃんが優しいのは知ってるよ。だからさ、訊きたいんだけど」

 

 

 

 

「無理してない?」

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