「始めまして。アメリカから留学してきました。ルールー・アムールです。」
俺のクラスに転校生が来た。驚きというか疑問しか浮かばなかった。
いや、二学期とかならまだ分かるよ夏休み中にこっち来て色々と準備済ませたんだなあって。何でこんな何もない時期に転入してきたのさ。まあでも、アメリカからの留学生らしいから時期云々は関係ないのか。
「うちにホームステイしてるの、よろしくね!」
「何故、貴女が言うのです?」
そういやそんなことHR前に言ってたな。野乃家とは知り合いらしく、はなとは一度会ったことはあるらしいのだが当人は記憶にないそうだ。てかもう漫才する程の仲になったんか。やっぱはなって凄いなー(小並感)
ここからルールーの能力のえげつなさを知ることになる。
まず国語の授業中、古文の授業で文を一通り音読する時に……
「……えっと、教科書は?」
「持ってきていません。ですが、昨日読んできましたので。あまたさぶらひ給ひける中に……」
見開き2ページ分、全て暗記してきたという……。
先生も教科書持ってきてない癖にスラスラ読まれたら何も文句言えないだろうな。
次に体育、うちのクラスはテニスをやるのだが、ルールーのプロ並の綺麗で速いサーブに対戦相手のはなは勿論、クラス全員が唖然としていた。
「…ねえ、あいつ本当にただの人間か?どっかの民族とかそういうのじゃないのか?ほら、今ボール粉砕したぞ」
「いや、流石に普通の人間でしょ。確かに私達と同い年にしては頭も運動神経も良過ぎるけど……」
そして昼休み、ルールーが男子数人に告白されているのを目撃した。
普通、数人に囲まれて一斉に告白されたら戸惑うものなのだが、ルールーは表情を変えることない。だが、何処か疑問に思ったのか男子に問いかけていた。
「どこにですか?」
・・・???
付き合って下さい!って言葉に対してどこにって疑問を浮かべているルールーに俺は疑問を浮かべていた。まさか、物理的にってことですか……?
「いや、そう意味じゃなくて……」
「では、こういうことでしょうか?」
俺の予感は見事に的中。ルールーは近くにあった柱に正拳突きを仕掛け、あと数分したら自然と壊れる程のヒビを入れた。
いやいや、やっぱ人間じゃないでしょ。どっかの戦闘民族なんでしょあの子。
あまりに衝撃だったのか男子はそそくさと退散してしまった。まだ転校してきたばかりの子が超人並のことしてきたらそりゃ逃げるわな。
「強いんだね〜」
「そういう問題……?」
「あのさ、もうちょっと動揺してくれないかなあ。転校初日の子がいきなり柱ぶっ壊しかけたんだぞ?」
プリキュアやってたらああいうの見ても驚かなくなっちゃうの?正直、隣にいる人たちの方が恐怖だったりする。
「す、すっご〜い!」
まあ、その内の一人は考えてることが良く分からないからそこまで怖くないけど。
☆
「この一週間野乃はなを観察し続けた結果、学業・運動ともに特に優れた点は確認できませんでした」
ルールーが来てから一週間。特にこれと言った動きはしていない。
上司からも動きは見れなかったため、今のルールーはいわば普通の学校生活を送っているだけなのである。
「黒木一斗に関しても特に情報は得られず。やはり私の思い違いなのでしょうか……一体何を企んでいるのですか?」
「わぁ!?いつの間に!?こ、こうなったら、結果オーライ。連れてっちゃえ!」
はなとことりがルールーを連れて、リビングに入るとクラッカーが鳴り響いた。周りには沢山の装飾やご馳走が並べてあった。
「これは……?」
「ルールーのサプライズ歓迎会だよ!」
「歓迎会?それにそれは……」
「手巻き寿司よ、こうするの」
はな母はルールーに手巻き寿司を作ってみせた。そっか、寿司って日本の郷土料理だから食べたことないのか。
「はな、きゅうりも入れなさい」
「やだ河童になる!」
「なるわけないでしょ…」
「どんだけトラウマになってんの」
一方、ハリーとはぐたんが二人羽織とかいう最近話題(?)になっている宴会芸を見せるのだが、ルールーはそれを不思議そうに見つめていた。
「あんさんもやってみるか?」
「お断りします。それに、どうして食べるのに未熟な赤ん坊の手を借りる必要があるのですか?効率が悪すぎます。理解不能です」
「えっ……」
おいおいどうすんの?マジレスのおかげで場の空気悪くなってるんだけど?何とか俺が和ませないと……。
「そ、そうだよな。赤ん坊にやらせるとか効率悪いどころか危険だよな…!」
「それにこの料理、調理を食べる側にさせるなど非効率極まりないです」
あれ、気に触るようなこと言ったかな…?
何はともあれ、まずはルールーを止めるべきだろう。
「あ、あのさルールー…?」
「そもそもなぜ歓迎会を?挨拶なら初日に済ませたはずです」
俺の説得を遮るように自分勝手に思ったことを口にするルールー。
ここまでフルボッコに言われると流石に腹が立ってくる。相手の事を思って開いたイベントなのに……。
「そんな言い方ないんじゃないの?」
「私はただ分かりやすく伝えているつもりですが」
「そうじゃなくて、こういうのは気持ちの話で……」
「もう良い、俺が話つける。ちょっと来い」
俺はルールーの腕をぐいっと引っ張り廊下へと連れ出す。
その行動にルールーは抵抗せずすんなりと受け入れていた。
☆
俺はルールーを二階の廊下へと連れ出した。
何故二階かと言うとリビングにいる皆んなに聞こえないようにするため。実を言うと今の一件とは関係なく、他の重要なことを話すつもりなのだ。
「これさ、俺の直感だから間違ってたら謝るけど……お前、クライアス社の連中だろ」
俺の問いにルールーはしばらく黙り込んでいる。表情も変わることはない。誤魔化そうとする様子ではなさそうだが、何を考えているのだろうか。
「強いて言うとすれば授業中とかずっとはなの事を見てたことかな。監視というか、俺にはそんな感じにしか見えなかった」
「……私はクライアス社のアルバイトです。野々はな、キュアエールの力の源の調査のため、観察し続けていました」
情報収集のためだけに学校に転入してきたりしたのか。もっと悪いこと企んでるかと思った。まあどちらにしろ厄介なんだけど。
「こういう時だったら焦りを感じるのが普通だと思うんだけど」
「私はアンドロイドですので、特にこれといった感情を抱くことはありません」
本当に人間じゃなかったのかよ。まあでも、教科書見ずに古文スラスラと読んだりテニスボールとか柱破壊する奴がただの人間なわけないし薄々感づいてたことなんだけどね。
「それで、私の正体を知ってそれを彼女らに報告するのですか?」
「いや、そんなことはしないよ。あいつら悲しむし」
「悲しむ……?先程の件で私は嫌われたはずですが」
「あいつらはそう簡単に人を嫌わねえよ。皆んな人を気遣う良い奴らだよ」
そう、こんないつも役立たずな俺と一緒にいてくれるんだから、ホントよく分かんない連中だよな……。
「……で、君は何処から聞いてたのかな?」
「え!あ、でも今来たばかりだよ!?」
階段から誰かの気配がしたので声を掛けると案の定はなだった。
やっぱりルールーのことが心配でこっちに来たのだろう。
「私さ、折角来てくれたルールーを喜ばせようとしたんだけど、変な感じになっちゃったよね。余計な気を回せ過ぎて、逆に貴女に壁を作っちゃってた。それじゃお互いのことなんて分かるわけないよね」
いつの間にか壁を作っていた……友人関係において一度はあることだ。でも、それを乗り越えることの出来る人物がいる。
「だから、貴女のために特別な事をしようとするのは止める。これからはもっと気楽にさ、当たり前の事を何でも一緒にしてみようよ!私たちタイプは全然違うし、ぶつかることもあるかもだけど、何とかなるって!」
「私と貴女が?何とかなる根拠はあるのですか?」
「えぇっとそれは……そう、ルールーが好きだから!」
この瞬間、ルールーが何かを感づいたかのように身体をビクッと震わせた。同時に、何処かしら表情が一変したかのようにも見られる。
でも、どの道ここからは俺の出番はなさそうだ。俺は静かにこの場を離れ、リビングへと戻った。
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