作画も女児向けじゃなかったし、今作ほんと神ですね。
どうか私の推しが報われますように……!
今回はハイキング回で登場したオリキャラ、美咲希メインのお話となっております。
それではどうぞ
美咲希side
東山美咲希の休日は音楽を探すために旅をしている。
唐突だが、私の夢はドビュッシーやベートーヴェンのような世界が誇る音楽家になることである。
彼らは数々の名言を残し、この世を去った。
ベートーヴェンであれば『音楽は新しい創造を醸し出す葡萄酒だ。そして私は人間のためにこの精妙な葡萄酒を搾り出し、人間を精神的に酔わすバッカスだ』
ウィリアム・ジェームズであれば『人は幸せだから歌うのではない。歌うから幸せなのだ』など多くある。
中でも、私が惹かれた名言はモーツァルトの名言である。
『旅をしない音楽家は不幸だ』
『音楽は自らの人生であり、人生は音楽である。このことを理解できない人は、神に値しない』
何と冷酷かつ淡々とした名言だろうか。
モーツァルトの性格はユーモアで明るく、また楽天的だったと言われている。
そんな今時の子供のような性格の彼から放った名言に、私は震え上がった。
そして、私は決意した。幸せを掴むために音楽を探る旅に出る、と。
因みに、音楽を探る旅と言っても、やることはただ何処かで音楽を奏でることだけ。自分の持つヴァイオリンをただ弾くだけである。
自分のことはどうだっていいとして、私は出掛けるついでに親に買い物を頼まれた為に寄り道していた。
1パック20円の卵が数量限定で売られているらしい。ガムを2つ買った時と同じ値段で販売するというのは、店側は色々と大丈夫なのだろうか。まあ、小6の私が商業関係のことなんて分かるわけがないですが。
「貴女をお守りするのです〜!!」
「引き受けた任務はやり遂げなければいけません」
「この声は…えみるちゃん?」
声がした方を見ると、友人が紫髪の女性の腕にがっしりしがみついているのだが、女性が早歩きなのとえみるちゃん自身の力がないお陰で引きずられているという何とも微笑ましい光景が映っていた。
何故微笑ましいと思っているのか、理由は色々あるが何よりもえみるちゃんの可愛らしい格好である。
最近、以前に何度かプリキュアに助けられたことが原因で彼女の一番の憧れとなったのか、ごっこ遊びと言ったら彼女に失礼だが学校でずっと演じているのだ。
「こんにちは、えみるちゃん。何をしているのですか?」
「えみるじゃありません、キュアえみ〜るなのです。私は今、危険に曝されているこの方をお守りしているのです」
「危険に曝されていません。あの、彼女のお知り合いでしたら引き剥がしてくれませんか?数量限定の激安卵を買うという任務を成し遂げなければならないので」
「えっと〜……こういう時のえみるちゃんは誰にも止められないので諦めるのが好判断だと思いますよ〜…」
☆
私と紫髪のルールーさんは、目的が同じらしいので一緒にHUGMANへと足を運んだのだが……
「かなり人が入っていますね」
「タイムセールがある時はこんなもんですよ〜。でも、確かにいつもより人が多いですね〜」
『HUGMANにお越しの皆様、ただいまから1パック20円の激安卵のタイムセールを開催しま〜す!』
店員がタイムセールの始まりを告げた瞬間、雪崩のように多数の人が駆け込み出した。
「どうやら急いで取らないと危険な目に遭いそうですね」
「なら、どっちが先に取れるか勝負です!」
2人は雪崩から逃げるように走り出した。
その雪崩の中には
「走るのは危険なのです!何もないところで躓いて転んで怪我をしてしまいまぐへぇっ!!」
えみるちゃんが無惨にも飲み込まれる姿や
「急いでください先輩!間に合わなくなってしまいます!」
「だったら先行けよ!何でカート持ってる奴と並走してんだouch!!」
一斗お兄さんと綾介お兄さんが無惨に飲み込まれる姿が見受けられた。
そんなこんなで卵はもう目の前だ。
「えいっ……!」
何とか危なげなく卵をGET。
一方、ルールーさんは私よりも早く卵を手に入れていた。任務完了と言いながらポーズ決めてる姿は中々にシュールである。
「畜生…畜生…!」
「…なあ綾ちゃん、移動しようよ。色んな人に見られて恥ずいんだけど…」
☆
「キュアえみーるは全然皆さんのお役に立ちませんでした……」
「そうでしょうか?貴女が声をかけた人は皆笑顔になっていました。それが何故なのか理解できませんが」
私とルールーさんが卵を買っている間、えみるちゃんはキュアえみ〜るとして色々な人のお手伝いをしていた。
だが、上手くいったかと聞かれればいってはいないと思う。異常な積み方をしている缶詰めを取ろうと手に取ったが、直後に缶詰めが総崩れしてしまい下敷きとなったり、大根を買いそびれた人に届けようとしたら蓮根と間違えたり、重い荷物を持った人の手を貸そうとしたけど持てなかったりと上手くいっていなかった。
ルールーさんの言う通り、何故笑顔になっていたのか私も理解できないでいた。
「あ、あの…!貴女ともっとお話しをしてみたいのです。もし良かったら、私の家に遊びに来ませんか…?」
「良いですよ」
「!?!?……こ、こちらなのです〜」
ルールーさんの返事に目が飛び出る程に驚いたえみるちゃん。
私も少し驚いている。クールなルールーさんが誘いを受けるとは思わなかったからだ。
えみるちゃんは驚きから餅のように柔らかな表情を浮かべながら自宅まで誘導していた。私も面白そうなのでついて行くことにした。
「(不可解な点は多い。しかし、あの時のアスパワワ……プリキュアの可能性はゼロではない。それに、もう1人のこの少女も私達について来るというのは、何かあるのかもしれない。視察しておくのも良いのかもしれません)」
☆
〜愛崎家〜
「ここが私の家なのです。よくお城みたいだって驚かれますが……」
「お城みたいっていうか、お城に等しいんですけどね〜」
「行きましょう」
「「…え?」」
反応が薄いと言われる私でもかなりのリアクションを見せたのだが、まさかこんなに大きなお城に驚かない人がいたとは……彼女の家も嘸かし大きいんでしょうね〜。
「お客様をお招きしました」
えみるちゃんがそう告げると、部屋が真っ黒になり、一部分だけスポットライトが当たった。
「ラララ~ようこそ~」
「我が家へ~」
「「どうぞごゆっくり~」」
「変わった両親だとお思いでしょうが、あまり……」
えみるちゃんのご両親の挨拶の仕方は相変わらず派手である。
えみるちゃん自身は引いているが、私は逆にこんな両親が欲しいと思っています。
「おや、美咲希ちゃんじゃないか。久しぶりだね」
「ん?あ〜、ご無沙汰しております〜」
私に声を掛けた人物は兄の正人さんだ。優しいお兄さんだと思っているのだが、えみるちゃんは何処か不服らしい。
正人さんは私に挨拶すると、視線をルールーさんに向け、再度挨拶する。
「兄の正人です。よろしく。ところでえみる、さっき街でお前を見かけたけど……」
「ふ、2人を案内しますので、これにてなのです!」
そう言ってえみるちゃんは慌てて私とルールーさんの腕を掴み、部屋まで連れて行った。
「バタバタしてしまってすみません。ここが私の部屋なのです。どうぞゆっくりしていって下さい」
私とえみるちゃんが極楽な感じでゆっくりしている中、ルールーさんは私のヴァイオリンとえみるちゃんの楽器を交互に見回していた。
「お二人の持っている物は何ですか?」
「あれは楽器なのです」
「何をする物なんですか?」
「え、音楽を奏でる物ですが?」
「音楽……とはなんですか?」
「「音楽を知らない!?」」
この人は本当に不思議な人だ。今時音楽を知らない人なんて、もはや人じゃない気がするのだが……。
「成る程……それでしたら、お教えしましょう。美咲希にしか知らない私の秘密と共に!」
私しか知らない秘密ってもう秘密じゃない気がするのですが。
えみるちゃんはそう言って、どこからともなく現れたギターを手にとった。
「ギターは自由なのです。ノれるのです。かっこいいのです。ギュイーンとソウルがシャウトするのです!」
読者の皆様、repeat after her
『ギュイーンとソウルがシャウトするのです!』
「…よく分かりません」
「そ、そうですか。では、これはどうでしょうか?」
えみるちゃんは今度は優しい音を奏で始めた。
ギターとヴァイオリンというのは比較的珍しい組み合わせだが、この優しい音であればセッション出来るだろう。
「えみるちゃん、ちょっと失礼しますね〜」
私も途中の小節から奏で始める。
「(な、何なのですか?この…音と声の組み合わせは。これが音楽、これが歌…なのですか?苦しい、歌というものが私の中で響き続けていて、もっと……聞きたい)」
「ギターの音が聞こえると思ったら、やっぱりな」
「「……っ!」」
「お、お兄様!?部屋を入る時はノックをしてから入って下さい!」
「したんだが?君がギターに夢中で気づかなかっただけだ。全く、女の子にギターは似合わない、美咲希ちゃんみたいに、ピアノやヴァイオリンの方が似合うとあれほど言っているのに」
「……チッ」
思わず舌打ちしてしまった。
以前会った時の正人さんはとても優しい人って印象だったのに、えみるちゃんの音楽に対するプライドを傷つけるような発言をしたおかげでその印象が一気に薄れた。
だが、反論しようとはしなかった。というか、出来なかった。
相手がどんなに捻くれた人間とはいえ、権力は年上の相手にあるからだ。
「何故ギターはダメなのですか?」
その時、ルールーさんが口を開いた。
その表情はいつもの無表情とは違って、何処か怒りを感じた。
「何故って、可愛いえみるには似合わないからさ」
「基準が不明瞭です」
「由緒ある愛崎家にギターは不釣り合いだと言っているんです」
「貴女はえみるのマスターなのですか?そうでないのなら、命令に従う義務はないはずです」
「……ただの助言だ。邪魔したね」
そう言って正人さんは退室した。
今の時代、人種差別する人は減っていると思ったのだが、まだまだ身近で出会う程にいるらしい。人の心を束縛して何か得する事でもあるのだろうか。怒りというか不思議でしかない。
それにしても、ルールーさんの説得力は素晴らしい。威圧的な態度だった彼に思ったことを全て吐き出すように反論したのだから。
だが、論破された彼の変わらぬ捻くれた態度にルールーさんは不満を持っていた。
「むー…何なのですかあの人は!貴女は先程言いました。ギターは自由だと、かっこいいのだと、最も愛するものだと。それをあのように否定するなんて「ありがとう、ルールー」えっ?」
「私のために怒ってくれて」
「(怒った?私が……?)」
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