「…遅い」
「ゴメンナサイ」
帰り道、待ち受けていたのは思いっきり俺を睨んでいる生意気な幼馴染の輝木ほまれちゃん。
怪物襲撃の後、一時間くらい気を失っていたらしい。
結構寝てたような、そんなに寝てないようなって感じだったが…
それにしても、若干おこでありながらもちゃんと待ってくれてたのか。ちょっと嬉しかった。
「午後の授業出てないって聞いたけど、何かあったの?」
「体調不良になった」
「午後の授業丸々出れないってくらい具合悪かったなら早退すれば良かったのに…」
気を失ってたと本当の事を言おうとしたけど、どうすればそうなるのか動機が思いつかなかった。
サッカーとかだったら頭を思いっきり打って気を失う事があるかもしれないけど、俺が昼休みにクラスメイトとワイワイするような奴じゃないって事くらいほまれは知っているだろう。
そんな事を考えていた時、
「あれって…」
突然、ほまれが俺の背後を指差す。
「ん、子犬…?」
道のど真ん中に一匹の子犬の姿。
ずっと付いて来てたのかな…?
「迷子か…?にしても、あんな所にいると危なっかしくて仕方ねえ」
「うん。ちょっと連れてくる」
ほまれが駆け足で子犬の元へと向かったその時…
「ちょっ、トラック来た…!」
「え…?」
トラックが思いっきり突っ込んでくる。
ほまれは慌てて手を伸ばすも、このままでは轢かれる可能性大である。
俺は思わず目を瞑ってしまう。だが
「はぎゅ~…はぎゅ~…」
「「…っ!?」」
赤ちゃんのような声と共に何故か奇跡的に時間が止まる。
…何処かで聞いたことあるような。
やがて時間は動き出し、勢いよくトラックが走り去る。
「だ、大丈夫か…?」
「ハァ…ハァ…」
どうやら無事そうである。今日は色々と心臓に悪い…
「じゃあ、こいつは俺が一時的に預かりますね」
「ダメ。この子は病院で預かってもらう」
「何でよ!」
あの後、俺達は子犬を病院に連れて行き具合を確認してもらったが、特に悪い箇所はないらしい。
この子犬をどうしようか医者と考えていたのだが、俺が家で預かるという事を提案する。
医者はこれに反対はしなさそうな感じだったが、約1名速攻で反対する者がいた。
「ただでさえ面倒くさがりなあんたが毎日散歩とかご飯とかやらなきゃいけない事をやり続けれるとは到底思えない」
「俺の印象酷くない!?確かに俺の面倒くさがりは異常だけど、そういうのは絶対やるからね!」
「最初の内はそう言うけど最終的にはお母さんが世話するっていう定番ネタがあるの知ってる?あ〜考えてたらもっと心配になってきた」
「つーか何でお前は俺の母親ポジションなんだよ!」
本題は子犬の今後の事だから重要なんだけど争い方が低レベルな喧嘩に医者も言葉が出なくなっている。
ごめんなさいね…この子可愛いのにはうるさいもので。
結局、俺が預かる事になり飼い主が見つかったら即連絡するとの事だった。
この事にほまれは機嫌を悪くするだろうと思ったが、振り向くと何かに悩んでいるというか考えているというか、そんな表情だった。
「…もぐもぐ」
「…は?」
何か考えが思いついたのかと思えば突然変な言葉を言い始めた。
「こ、この子の名前。もぐもぐ…」
「……フッ」
「なっ…!」
顔を赤く染めて今にも虎のように襲いかかろうと睨んでくる。
いやいや、そりゃ笑っちゃうでしょうよ。俺が預かる事にまだ不満を持ってるのかと思えば名前考えてて思いついたかと思えば『もぐもぐ』なんだもん。可愛らしいというかめっちゃ女子というか…。
ちなみに俺が名付けるとしたらホワイト…やっぱ止めよう。
「良いじゃんその名前。こいつアホっぽい顔してるから似合うよ」
「馬鹿にされてるような感じなんだけど…」
こんなやり取りをしながら、ここで分かれ道となる。
「じゃ、また明日な。ほまれ」
「ん、じゃあね。カズ」
そう言って別れを告げた。
あいつ、めっちゃもぐもぐの事見てる…どんだけ心配なんだよ。
『オシマイ…ダー……』
『貴方は一体…何者…』
ここは、完全消滅と化した世界。
「これでもう俺は幸せに…」