HuGっと!プリキュア ~運命の白黒~   作:イタチ丸

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第3話 母の温もり

 

ピピピピッ ピピピピッ

 

雲ひとつない晴天の朝。

今日も目覚まし時計が甲高く鳴り響く。

俺は即座に止めたが、今日は休日だし特に予定もない。

ということは、このまま寝ても良いよな…よし寝よ((

 

ピンポーン

 

「何だよこんな朝っぱらから…寝かせてくれよ」

 

突如インターホンが鳴り、寝起きな為ゆっくりと玄関に向かいドアを開ける。

まあ、時間的にあいつだろうな…。

 

「移動動物園行こ?」

「………嫌だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動動物園

のびのび町の名物、その名の通り車で移動する動物園である。

結局、一度断った直後にドアを閉めようとしたが「あんたどうせ暇なんでしょ?」というほまれさんの発言と威圧によって同行する事となった。もうあれ完全にヤンキーでしょ…。

 

「でも、お前いっつも一人でここ来てるよな?」

「うん、たまには誰かと一緒に行きたいなって」

 

意外と単純な理由だった。

俺も誰かとゲームしたい時誰か誘うし。

 

「は~ぎゅ!は~ぎゅ!」

 

…ん、どっかで聞いた事ある声だな。

声の主を捜してみると、野乃さんと薬師寺さんが必死に赤ちゃんを宥めていた。

基本俺は人見知りだから学校以外で声をかける事は無いが二人がいつもフレンドリーに話しかけてくるので今回は俺から声をかけに行こうと思う。しかし…

 

「ビービーうるせぇなぁ。だからガキは嫌いなんだよ」

 

いきなり中年のおっさんが野乃さん達に絡んでくる。

うわぁ…絶対上司に怒られたとか部下が真面目にやらないとかでストレスを極限まで溜まりまくってるでしょ、あの人。

 

「…ちょっと行ってくる」

「あ、ちょ…!」

 

あの状況に耐えられなくなったのかほまれは立ち上がり、おっさんの元へと歩き出す。

面倒事にならないと良いんだが…。

 

「カッコ悪い」

「はぁ?」

「ガキは嫌いって…あなたも昔は子供だったんじゃないの?」

 

あーあ、どストレートに言っちゃったよ。

 

「…んだと?」

 

案の定おっさんは更に怒った。今にも殴りかかってきそうだ。

流石に応戦した方が良いかな…。

 

「はいはい、喧嘩はそこまで〜。申し訳ありませんが俺達はまだ思春期真っ最中の子供なんでね…大目に見てくれますよね?」

 

止めに行けたのは良いが発言の最中におっさんが睨んできたので少々カチンとなり、途中から口調は少しキレ気味に表情は笑みをこぼしながら言った。

ここまでウザいとほまれもどストレートに言うのは当然だね…と、俺はいつの間にか同情していた。

 

「子供相手にムキになることねぇか…」

 

おっさんはそう言い残すとまたベンチに座り込んだ。

一先ず、面倒事にならなくて良かったと思う。

 

「かっこいい!ありがとうございます!!」

 

野乃さんが目をキラキラ輝かさながらお礼を言う。

ていうか、野乃さんって今赤ちゃん抱き抱えてるよな…?ということは…

 

「かわいい〜」

 

はい、きゃわたんスイッチ入りました〜。

説明しよう。きゃわたんスイッチとは、輝木ほまれが起こす赤ちゃんとか小動物とかそういう可愛いものを見ると女子力全開の性格と化す現象の事である。

 

「こうしてハグする感じでだっこすると、落ち着くの」

 

俺が心の中で説明しているうちにいつの間にか女子会っぽいものが始まってた。

 

「黒木くんとほまれさんは知り合いなんですか?」

「うん。小学校からの幼馴染」

 

ほんのちょっとだけど俺の事言われると何故か嬉しくなる。

そんな事を思っていると遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえた。

 

「お姉ちゃん~?」

 

直後、野乃さんは後ろを振り向く。成る程、声の主は野乃さんの妹さんか。

 

「赤ちゃん!?」

 

と、妹さんは驚きを隠せない様子で言った。

だろうね。いきなりお姉ちゃんが赤ちゃん背負ってたら吃驚するのは当然だ。

そして、隣にいるのはお母さんだろうか。

 

「だっこさせて」

「えっ?うん」

 

野乃さんは赤ちゃんを手渡す。ちなみに、この子の名前は『はぐたん』というらしい。

 

「どうしたの?うん、よしよし」

 

やはり母の温もりというのは神がかっていた。はぐたんが一瞬にして機嫌を治した。

 

「この子、どこの子?」

 

誰も答えられる者はいなかった。どうすんのさ、この状況…。

 

「娘さんに、えらいお世話になってます」

「…え?」

 

現れたのは、赤髪のめっちゃイケメンな関西人って感じの人だった。

 

「あなたがこの子の!?若いお父さんね!」

「えっ…お父さんて言うか…」

 

全く見覚えないんだけど。はぐたんが学校に入り込んだ時、普通近くにいるはずだがそれらしき人物は見当たらなかった。

 

「野乃さん…あの人誰?」

「えっと、ハリーだよ。黒木くんがはぐたんと一緒に助けたあのハリネズミの…」

「嘘でしょ……」

 

あの小さいのがああああ!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ〜!!」

 

野乃さんが窓越しの素晴らしい光景にはしゃいでいる。

ここは町の名物のびのびタワーの展望室。野乃さんのお母さんはリポーター関連の仕事をやっていてその取材目的でここに来たらしく、その途中で俺達に会ったらしい。現在は、お母さんの勧誘によってこの場にいる。

 

「あなたがさあやさんで、あなたがほまれさん、そして一斗君でしょ?」

「「「は、はい」」」

 

…ん?今下の名前で呼ばれてなかった?野乃さんに下の名前で呼ばれた記憶ないぞ?

 

「はなに聞いてるわ。とっても素敵な方たちだって」

「そんな…」

 

知り合いの親御さんにそういう言葉言われると結構照れるな…。

 

俺達が話していると、はぐたんは先程までのグズりようが嘘のように、眠りに入ったのだった。

 

「寝よった!まるで魔法や」

 

ハリーが目を丸くして驚いている。

温もりというより母親という存在が神がかっているのかもしれない。

 

「ちょっとコツがいるのよ。心臓の音を聴かせると落ち着くの。お母さんのおなかの中に居た頃を思い出すらしいわ。だから胸にこうして赤ちゃんの耳をつけるようにして、抱くといいのよ」

 

子供寝かせるのってそんなに難しいのか。親の苦労が良く分かる説明だった。

 

「変わります」

 

ハリーが両手を前に出しながらそう言ったが

 

「待って、まだ眠りが浅いから。しばらくはこうやって落ち着かせないと」

 

そう言うと、野乃さんのお母さんははぐたんを抱きかかえながら歩き始める。

眠りが浅いとかよく認知出来るなあ。やっぱり親って凄えや。

 

「ねぇ、ハリー」

「うん?」

「はぐたんのママは?」

 

野乃さんにそう聞かれると、ハリーは顔色を曇らせて窓辺へと向かった。

あ、これ聞いちゃいけない奴じゃん。

 

「オレがおった世界もこうやった」

「えっ?」

「明るくて、笑顔と希望にあふれる世界やったあいつら…クライアス社の連中に時間をとめられるまではな!!」

 

ハリーとはぐたんは別世界から来た人物だそうだ。

大抵の人は信じられないかもしれないけどハリーが人間に変身出来たり、はぐたんの泣き方が独特だったりと普通に考えれば俺の場合すぐに信じられる。

 

「アスパワワが奪われて、未来がなくなってもうた。オレ以外は…」

「そんな…はぐたんのママも…?」

 

未来がなくなる…俺はその言葉に何故か引っかかる。

 

「なんとかオレははぐたんと一緒にミライクリスタルホワイトの力で逃げてきたけど、ミライクリスタルホワイトはそん時力を使てしもた。はぐたんに八個のミライクリスタルの力を与えたら、また時間が動き出すんや」

「ミライクリスタルって?」

「はな達のクリスタルのことや」

「って事は…残り六個…」

「ああ、見つけんと」

 

そんな極稀にしか存在してなさそうな物が六個も必要なのか…そもそもこの世界にそんなにあるのかな?

 

「クライアス社のヤツらを放っといたら、ここもオレの世界みたいに…」

 

そっか。ハリー達も自分達の世界の為に相当頑張ってここまで来たんだな。

俺みたいなただの弱虫と違って…止めておこう、これ以上は思い出したくない。

 

 

 

「オシマイダーーー!!!」

 

「うわぁっ!?」

 

突如、タワーが揺れ始めた。

この声って前に学校に襲撃して来た奴…にしてはあの時より数倍もデカい。

それよりも、早く逃げないとやばいでしょ!俺はそう言おうとしたが突然、野乃さん達が非常口を駆け上がり外に出て行ってしまった。

 

「おい、危ねえぞ!」

「あいつらは大丈夫や」

「え…?」

 

ハリネズミに戻ったハリーが俺を安心させる。

見ると、二人の手にはハート型のような物が。あれがミライクリスタルとかいう奴だろう。

 

「安心して黒木くん。私達…」

 

 

 

「「プリキュアなんだ!!」」

 

 

 

「っ!?」

 

そう言うと二人は光に包まれ、やがてプリキュアに変身した。

驚きを隠せなかった。だって目の前で身近な人がタワーよりデカい怪物に真正面から立ち向かってるんだよ?何というか…言葉に出ないわ。

 

「プリキュア……か」

 

隣からほまれが自然と呟いていた。

 

「ねえ、カズ」

「ん?」

「私、あんな風に…また……飛びたい……!!」

 

一度は諦めてたフィギュアスケート選手。その夢をもう一度掴みたいという思いは嘘ではないだろう。

そんなほまれの思いに俺は何も出来ないけれど、一つでも手助けして誰かの役に立つ事が出来たら良いなと思う…。

 

 

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