HuGっと!プリキュア ~運命の白黒~   作:イタチ丸

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第4話 失敗という恐怖

「スカウト…?プリキュアを?」

 

授業終わりの休み時間。前の席にいる野乃さんがある事を提案して来た。

残りのプリキュアを捜してミライクリスタルとやらを集めるための提案だろう。

そして、野乃さんが狙っている人物というのが…。

 

「うん!この前のあの人!!」

「輝木ほまれさん?」

「そう!メッチャ美人だし!すごいおしゃれだし!お友達になりたい~!何処に行けば会えるかなぁ?」

 

今時そんな事言えるの野乃さんくらいだと思う。

今年になって学校にも全然来なくなった事で不良扱いされ、更に派手な人達と絡んでるという噂も立てられてるらしい。

ちなみに、俺が良くあいつと一緒にいる事から俺にも飛び火がかけられているらしい。まあ別にどうであれ、今の学校生活を変えるつもりないからね。

しかし、あいつがプリキュアか……。想像出来そうで出来ないんだよなあ。

 

そんな話をしていると、タイミング良く教室の扉が開かれる。

輝木ほまれの登場だ。

それと同時に、クラス全体がざわつく。

いや、無理もない。登校時間を過ぎているどころか一限目すらも過ぎているからね。

ていうか、教室来たの何日ぶりだよ。

 

「えっ!?何で!?同じクラスなの!?」

「すぐ後ろの空席がそうなんだけどな…」

「えっ…どうしよ…どうしよ…」

 

激しく動揺しながら結局、野乃さんはほまれが自分の席の後ろに座った事に驚愕していた。

 

「あっ…かかか…輝木ほまれさん!!」

「うん?」

 

あっさり呼び掛けに答えた。

 

「あの…お、おはようございます」

「おはよ」

 

あの、あっさり過ぎない?確かにこういう何気ない会話でも信頼を築く証にもなれるんだろうけど、それにしてもねえ…。

まあ、毎度これくらいしか会話出来ない俺が言うのもあれだけどさ。

あと、さっきから野乃さんの鳴き声が人間の声じゃないんだけど。

 

「変なヤツ」

「はうっ!」

 

最終的に罵倒されて喜ぶ性癖と化してしまった野乃さん。

 

「お前、よくもまあそんな冷静になれるな」

「カズもこんな感じじゃん」

「いつの間にかドM認定されてた件について」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同じクラスだなんて…これはもう運命!」

 

昼休み。俺達は何故かほまれを尾行している。

運命だとか何とか野乃さんが呟いているが、こんな事言えるのも野乃さんくらいだろう。

 

「なんてお願いしよっかな〜…」

 

そもそもスカウトでなれるものなの?

そんなこんな下らない事を考えていると、梅橋先生の声が廊下に響く。

 

「輝木!!お前だけだぞ、プリント出してないの」

 

そう怒鳴る梅橋先生を華麗にスルーした。

 

「なっ、おい!輝木!!」

梅橋先生は声を荒げるが、それも意味をなしていない。

そのままほまれは歩いてどこかへと行ってしまったのだった。

そしてその後、代わりに俺が先生に謝罪しに行ったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのなぁ、梅橋先生はお前の為に叱ったんだからあんな悪い態度取ってんじゃねえよ…」

「行こう、もぐもぐ」

「無視かよ」

 

放課後。病院へと向かい、もぐもぐの体調を診てもらっていた。

いつも通り、異常なし。良かった良かった。

先程の出来事について不満をぶちまけながら病院を後にし、外へ出たところ見覚えのある顔が続々と視界に入っていく。

 

「あ、黒木くん」

 

初めに声をかけてくれたのは薬師寺さんだった。

薬師寺さんがいるのであれば、勿論あの人達もいるだろうとは思っていたが、案の定野乃さんやハリー、はぐたんもいた。

俺は直ぐに気がついたので軽く手を振ろうとしたが…。

「にょほほ~!?輝木ほまれさん!?!?」

「…っ!びっくりした…」

 

野乃さんのダイナミックな反応につい驚いてしまった。

しかし、ほまれに関してはまるで会いたくなかったというか不満そうな顔をしていた。

 

「なんでこんなとこに…」

「買い出しの途中や」

 

ハリーが即答で説明する。続いてはぐたんも「はぎゅ~」とまるでハリーの説明を繰り返すかの如く言う。

 

「きゃ…きゃわたん…」

 

赤ちゃんって凄いよな。さっきまでめっちゃ不機嫌だったやつの顔を一瞬にして緩くしてるんだから。

そしてほまれははぐたんを抱いた。思いっきり髪の毛掴まれてたけど笑顔で楽しそうだった。

 

「犬、飼ってたんだ」

「拾ったんだけどね。迷い犬なんだ。だから、一時的に俺が預けて定期的に検査してもらってるってわけ」

 

「もぐもぐって?」

「と、取り敢えず今だけの名前…!」

 

俺が言う前に名付け親が顔を赤くしながら答える。

なんでこういう時だけ女子力高くなるんだろ。

 

「ここは俺達が使うんだ!あっち行け!!」

 

突然、近くの公園が騒がしくなる。

振り向くと、中学生が小学生の子たちをいじめてる…わけじゃないんだろうけど低学年が困っているという図が見える。

可哀想だが年上の奴が相当イキってるからなー、他を当たって…。

 

「コラァ~!意地悪ダメ〜!!」

 

……ですよね〜。

野乃さんが闘牛の如く突進するように行ってしまった。困ってる人見たら助けたくなるのも分かるけどさ…。

 

「何だ?生意気な小学生だな」

「小学生じゃな~いぃぃ!!!」

「……ゴホン!」

 

危ねえ、吹きかけた。

だってしょうがないでしょ、小学生と身長差そんなにないんだもん。

面倒くさいけど、俺達も現場へと向かう。

 

「どうしたの?」

「バスケしたいのにこの人たちが出てけって…」

 

そんな理由でイキってたんすか…色々と可哀想な奴らだなあ。

 

「たまには代わってやれよ。良い大人になれないぞ?」

「じゃ、俺達に勝てたら代わってやるよ」

 

えぇ…。そんなのあんたら有利じゃないですか…。

 

「バスケで?さあやちゃん得意?」

「球技はそこまで…」

 

だよね〜。だからってこんな奴らに背を向けるわけにもいかないし…。

その中でも、余裕の表情で小学生から貰ったボールをイキリ共に投げつけた方が一名。

 

「スリー・オン・スリーで良いの?」

「勿論、どの道俺達の相手じゃねえし」

 

ねえ、何か少年漫画にありそうな熱い展開繰り広げようとしてない?

まあ、それはそれで面白そうだから良いけど。

 

「お姉ちゃん…?」

「大丈夫、勝つから」

 

はぅ…!男でも惚れるくらいめっちゃカッコいいです〜。

 

「というわけで俺はみんなを応援してるから。頑張」

「…は?」

「あ、俺もやらなきゃいけないんですね。分かりました精一杯努めさせて頂きま痛い痛い痛い!すぐやるから腕引っ張るのはやめろォォォ!!」

 

そんなこんなで試合開始となる。

野乃さんが邪魔する→俺が奪ってほまれにパス→トドメのシュート

これで何とかなるでしょ。

 

「ディーフェンス!ディーフェンス!」

 

野乃さんェ…邪魔しようと頑張ってるけど流石に隙があり過ぎですー。

 

「ほらよ!」

 

そう言ってイキリA君はB君にパスしようとするが…。

 

「はい残念!」

 

見事、俺は敵からのボールを取ることに成功する。

やべえ、人からボール奪うことってそんなにないからめっちゃ嬉しい…!

少し歓喜に浸っていると後ろからB君が強引に奪おうとしてくる。

 

「あ、ちょ…!」

 

相手の強引すぎる行動に不覚にもボールを取られてしまう。

そこからイキリ共の綺麗なパスが続く。

 

「話にならねぇな!」

 

そう言ってA君がシュートを決めようとしている。

流石に経験豊富な奴らには敵わなかったか…と思っていたところに唯一の救世主が本気を出す。

 

「何っ…!?」

 

そしてそのままフェイントを右往左往とかけながら強引に奪おうとしていたA君を突破していく。いやぁ、流石だわ。

 

「話にならねぇな」

「グギーーーー!!!」

 

ついにA君が怒り狂う。そりゃあね、自分の発した言葉をそっくりそのまま返されたんだからブチギレるのも当然だろう。

とはいえ、もう後はゴールするだけ。勝ちは確かに頂きました、と思っていた。

 

「………っ!」

「えっ…?」

 

直前で動きを止め、野乃さんへとバックパスしたのだった。

 

「何だ?」

 

A君も思わず疑問を浮かべる。

 

「…あっ!」

 

ボールは今、野乃さんの手にある事に今更気付くA君。取り返そうとした時にはもう遅かった。

 

「ふぇーい!!」

 

適当に野乃さんが投げた球が、奇跡的にゴールへと入った。

 

「やったーーーーーー!!!!!」

 

よってこの試合は俺達の勝利となる。野乃さんってなんだかんだで持ってるなあ。

それにしても、あいつら負け惜しみなんてしないよな?「い、今の反則だろー!?」とかそんな事してないの見りゃ分かるのに言ってきそうなんだよなあ…。

 

「思い出した!お前天才スケート選手の輝木ほまれだろ!!」

「何!?有名人か!」

「天才で有名人か!?」

「逃げろ!!有名人には敵わねぇ!!」

 

『有名人には敵わない』そんな風習あんのか…?

 

「「「チクショー!覚えてろ!!」」」

「ばいばーい」

 

特撮番組の雑魚キャラみたいな台詞を吐いた三馬鹿に俺は元気よく手を振って別れを告げる。

 

これで一件落着。日も暮れてきたので俺達はここで解散することにした。

 

「ほまれさん!超カッコ良かった!!運動神経抜群!めっちゃイケてた!!」

「あんたの方がイケてるよ」

 

ほまれと野乃さんが互いに褒め合っている。

何だよ、いつのまにか仲良くなってるじゃねえか。

 

「ほまれちゃん!!」

「ちゃん…?」

いきなりのちゃん付けで驚きを隠せないようだ。

 

無視してそのまま帰るつもりだったのだろうが、思わず歩みを止めて振り返る。

 

「私、ほまれちゃんと仲良くなりたい!!またね!!」

 

そう言って大きく手を振る野乃さん。

しかし、ほまれは何も言わずに再び帰路へと歩き始める。だが、愛想悪くしているわけではなく、心の中で「またね」と言っているようだった。

野乃さんなら、もしかしたら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『失敗しないことをいつも最優先に考えて行動していくと、無意識のうちに徐々に失敗していくともいえる。』

 

親が読んでいた本にこんな言葉があったらしい。

失敗した時の事やその恐怖など考え込んでしまうと必ず失敗を冒してしまう。だから、失敗を恐れず前向きに行動すればいずれは成功するだろう………ってことなのかな。

でも、人にはプレッシャーってのを感じることがある。そう考えると失敗を克服するって結構難しいんだなと俺は改めて感じた。

その時だった。近くの河川敷の方から轟音が聞こえた。

音の主の方へと駆けつけると相変わらず相当な大きさのオシマイダーとプリキュアになった野乃さんと薬師寺さん、そして何故かほまれもいた。

 

「来たなぁ?やっちゃってぃ!オシマイダー!」

 

あ、チャラ男くんもいたのね、全然気付かなかったよ。

その刹那、オシマイダーがキュアエールとキュアアンジュを潰しにかかってくる。

二人はその手を片手で軽々と受け止め、押し返す。

そしてエールは怯んだオシマイダーに追い打ちのパンチをかます。

しかし、左手で受け止められてしまい、跳ね返されてしまう。

それでも上手く着地し反撃しようとするが、オシマイダーは自分の懐からバスケットボールを出し、二人に投げつける。

何とか避けることは出来たものの、オシマイダーは続けて二個目を投下する。流石に間に合わなかったのかまともに当たってしまう。

 

「へっ、データはばっちりなんだよ!」

 

そう言ってチャラ男はUSBメモリを取り出す。あれで二人のデータを取ってたのか、オシマイダーに命令するだけの奴かと思えば中々面倒なことを…。

 

「ハァ、ハァ…。お前ら、無事か!?」

 

ハリーとはぐたんがこちらに到着したようだ。

 

「あんた!なんか知ってんの?あの二人がプリキュアって…」

「はぁ!?何でバレとんねん!?」

 

まあ、人の目の前で堂々と変身するんだもん。もはや隠す気ないんだよ…。

そうこうしてる内に二人はオシマイダーに大苦戦してる状況となっていた。

 

「もう終わりかよ?じゃあ、さっさとギブアップして、ミライクリスタルをこっちに頂戴」

 

ああ、むしゃくしゃする。何故かってこんなにもピンチな状況なのに何もしてやれないからだ。俺には力がないから…。

 

「そんなの……ダメ…」

 

突然、エールがそう言って立ち上がる。

 

「諦めない…」

 

そしてアンジュも立ち上がる。

 

「「プリキュアは、諦めない!!」」

 

「諦めない………私も…」

 

ほまれはそう呟いた。

 

「私も…もう一度…!!」

 

直後、周りが閃光のような光に包まれた。

え、まさかこいつもプリキュアになるの…?

同時に、はぐたんも叫び声をあげる。

そして、ミライクリスタルが生まれた。

 

「あれって…ミライクリスタル!?」

「えっ!?」

 

その場に居る誰もが驚きを隠せなかった。無論、敵のチャラ男もだ。

 

「出やがった!!??」

「何あれ…」

「走れ!!あれはお前の…未来や!!」

 

そう聞くと一心不乱に走り出した。自らの未来を掴むために、ただそれだけを理由に。

 

「いっけー!!ほまれちゃん!!!」

 

そう言われ、ミライクリスタルを掴もうと飛び立った。

誰もが掴んだと思っただろう。しかし…

 

「あっ…」

 

ほまれはミライクリスタルを掴めなかった。そしてそのまま転げ落ちる。

 

「消えた!やったぜ!」

 

チャラ男の喜びなど無視して、俺はほまれの元へと駆けつける。

 

「おい…大丈夫か?」

「ほまれちゃん…」

 

エールも心配の言葉をかける。

 

「無理…私…とべないよ」

「………」

 

どうしよう、何て返せばいいのか分からない。

正直な話、俺はこいつの気持ちを真剣に考えた事がない。今考えてみると、今まで1日1日が辛かったんだろうとこっちまで辛くなってくる。

 

「また…泣かせてしまった…」

 

いきなり、オシマイダーが語り始めた。

 

「俺はなんて不甲斐ない教師なんだ…」

 

咄嗟に声の方を向く。そこには、闇のオーラを放った梅橋先生の姿が。

 

「さっさとプリキュアを叩きのめせ!!やれってんだよ!出来損ないがぁ!!」

 

今この状況の中でギャーギャー騒がないでくれませんかねえ…。

 

「オシマイダー!!!!」

 

オシマイダーはまるでその一言に反抗するように、雄叫びをあげる。

そしてエールにパンチをかますが、エールはそれを跳ね返した。

そして…

 

「フレフレ!ほまれちゃん!フレフレ!先生!!」

 

エールの全力の応援が響き渡る。

 

「ほまれちゃん…私まだ…なんだかよくわかんないけど!でも!!負けないで…!!負けちゃ駄目~!!!」

 

そう言って思いっきり叩き潰そうとするオシマイダーの攻撃をエールは空高くジャンプしながら避け、強烈な脳天割りをオシマイダーに喰らわせた。

そして、トドメのハート型砲撃を放つ。

「ヤメサセテモライマスゥ」と、全身に虫唾が走るような声でオシマイダーは昇天していったのだった。『浄化完了』ってやつだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして一件落着、俺達はいつものように帰路に就く。

だが、俺達は分かれ道となるまで一言も喋る事はなかった。喋らないのではなく、喋れなかった。

 

「じゃあ、俺達はこっちだから」

「うん…」

 

いつも場を盛り上げてくれる野乃さんも何処となく悲しげな表情をしている。

 

「なんか…ごめんね…」

 

ほまれはそう言い残し立ち去ろうとしたが…

「フレフレ!ほまれちゃん!!」

野乃さんは必死にエールを送った。

すると間髪いれず、

 

「やめて!!」

 

以前、俺も同じように怒鳴られた。こうやって去り際で失敗してしまったあいつを励ますように応援した時と全く同じように。

まあ、無理もないか…ほまれは今、物凄く落胆しているだろう。プリキュアに成れなかった自分、また飛べなかった自分…そして何より、過去に打ち勝てなかった自分。

様々な負の感情が彼女の中を駆け巡っているだろう。そんな時に応援されてもただ傷口が広がるだけだ。

 

「ごめん。今の私には…」

「今はそっとしといたれ…」

 

ハリーが冷たく言った。

流石の野乃さんもエールを送るのを止めるが…。

 

「…また明日、また明日ね!!」

 

それでも、野乃さんはめげずにそう言ったのだった。

俺にも力があれば、誰かを勇気づける事だって出来るかもしれないのに…。思えば梅橋先生の思いと俺の思いって一緒だったのかな…。

 

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