ペテル・モークに憑依転生!   作:ハチミツりんご

13 / 20
青年時代編
旅立ちの日


コンコン、と扉を叩く音がする。入るように促すと、エドストレームが扉を開けてこちらをのぞき込む。「乗せていってくれる行商人が村についた」そうだ。よく見ると、彼女の腰には、数年前に俺が買ってきた『刃の鞭(ブレードウィップ)』が左右に下げられている。身軽な格好で、肩には最低限必要な荷物がまとめてあるであろうカバンをかけていた。

 

すぐに行くと伝えると、彼女は頷いて扉を閉める。彼女や行商人達を待たせないように、すぐに準備を始めるーーーといっても、ほとんどまとめ終わっていたので、大した時間はかからなかったが。

 

この日のために母とリリアラームさんが作ってくれた革で出来た鎧を身につけ、最低限必要なものをまとめたカバンーーー本もこの中に入っているーーーを肩にかけ、バックラーをすぐに取り出せる位置に付ける。そして、長い間使っていたために少し古ぼけた戦闘用の斧槍(ハルバード)を背負う。訓練用のやつは邪魔になるので置いていく。

 

 

準備が終わり、家を出て行商人達が待つ場所へ向かう。村ではあまり見かけない大きめの馬車を見つけると、その近くに立っていた青年が片手を上げながら挨拶をしてくる。何度か顔を合わせたことがあり、見知った仲だ。

話を聞くと、既に出る準備は出来ているとのこと。遅れたことを謝りながら馬車に向かい、御者と商隊のリーダーに挨拶を入れる。その後馬車の荷台に乗り込むと、馬車が出発した。

 

 

村のみんなは、全員が俺たち2人の見送りに来てくれていた。

 

ーー頑張れよーー

 

ーーいつでも帰ってきていいぞーー

 

ーー絶対に死ぬなよーー

 

ーーお前達ならやれるさーー

 

 

それらの応援を受け、エドストレームと共に手を振って答える。

 

ーー絶対に強くなって帰ってくる!ーー

 

・・・俺は、絶対に強くならなきゃいけない。王国のアダマンタイト級冒険者ごときではなく、もっと強く。英雄と呼ばれるような強さを持った人間にならなければならない。そして、驕らず、人々に優しい理想の英雄になるのだ。

 

 

それもすべて・・・・

 

 

 

 

「ナザリックに就職する為に・・・!!」

 

 

 

 

 

ペテル・モーク、15歳。

本日エ・ランテルに向けて旅立った・・・

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

馬車で揺られること早数日。

 

 

 

やぁやぁやぁ、久しぶりだね、ペテル(おれ)だよ。いやー、15歳ですよ、15歳。この世界だと結婚している人も珍しくないような歳ですよ。時が経つのは早いねぇ。

 

え?いくら何でも7年間は飛びすぎ?だってめぼしいことは無かったし。あるにはあったけど、俺に直接関係したことじゃ無かったしなぁ。

 

 

この7年間で起こったことーーーというよりも分かったことだがーーーの1番大切な情報は、『原作開始までの残り時間』がおおよそ判明したことだ。

 

今から4年前、俺が11歳の頃に、バハルス帝国で十代前半の少年、【ジルクニフ・ルーン・ファーロード=エルニクス】が即位し、強引とも取れるやり方で貴族達を断罪。

その結果、【鮮血帝】の異名がここ王国まで広まってきている。

 

それと共に、ローブル聖王国において当時15歳の王女、【カルカ・ベレーサス】が即位している。

 

これらの出来事は、原作で約10年前に起こったことだ。

 

つまり、『アインズ・ウール・ゴウン』がこの世界に襲来するまで残り6年ということだ。

 

 

ぶっちゃけあまり時間が無い。俺の目標は、大きくわけて3つ。これを達成するにはちょっと短すぎる。

 

まず、第一目標はアダマンタイト級冒険者になる事。これは大前提だ。ナザリックにとって有益な存在になるためには、ある程度の社会的地位が必要だ。政治に関わらない冒険者でも、アダマンタイト級ならばその影響力も大きいだろう。

 

第二目標は、人望を集めた英雄になる事。これは、原作での漆黒のモモンの役割だ。人望って凄く大事。同じことしても人望が有るか無いかで評価は天と地ほどの差がつくのだ。まぁ、蒼の薔薇のように本当に善人になるか、八本指とも持ちつ持たれつにするかは分からんが。

 

第三目標は、なるべくスレイン法国と、というか六色聖典と仲良くなることだ。

この国はプレイヤーが建国したと思われる国であり、国民総数もそうだが、強者の人数と装備の質が段違いだ。

 

最低でも世界級(ワールド)アイテムである『傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)』を所持している上に、漆黒聖典の連中はシャルティアから「(そこら辺の人間と比べて)獅子とネズミほどの差がある」と言われるほどの実力者揃い、その上装備は伝説級(レジェンド)アイテム以上の可能性があるのだから笑えない。

 

こんな国とは蒼薔薇のように敵対したくないから仲良くしたいってのが一つと、ナザリック就職の際にかなり有益な情報だからってのもある。

 

あの慎重派のモモンガさんに、『傾城傾国』の存在を知らせるだけでもかなり好感度を上げることができる。そして、モモンガさんの心労を少しでも減らせれば、それだけで就職待ったナシだ!!!!

 

 

 

 

それが難しいんですけどね!!!!

 

 

 

 

「・・・何変な顔してんのさ。」

 

「ん?何でもない、何でもない。」

 

訝しげな視線を向けていたエドストレームに対して、手をヒラヒラと振りながら答える。すると彼女は「そ、ならいいや。」といって再び視線を外の風景に向けた。

 

ちなみに彼女、エドストレームはこの7年間で大層美人に成長した。元々美幼女だったが、今は美少女と美女の中間くらいだ。村でもめっちゃ求婚されてた。全部断ってたけど。

 

あ、ちなみに彼女のレベルだがーーー

 

 

〜〜ステータス〜〜

名前【エドストレーム】

性別【女】 年齢【16】

総合Lv【10】

▼ジーニアス/曲芸士(テンブラー) Lv5

盗賊(ローグ) Lv4

暗殺者(アサシン) Lv1

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

とまぁこんな感じだ。ロックマイアー直伝の訓練法に、刃の鞭(ブレードウィップ)を組み合わせた独自のやり方をやっていたらこうなってた。モンスターを狩ることはほとんどなかったので、訓練だけでここまで上がったのは上々だ。

 

俺のステータスはーーー

 

〜〜ステータス〜〜

名前【ペテル・モーク】

性別【男】 年齢【15】

総合Lv【13】

▼ジーニアス/戦士(ファイター) Lv5

斧槍闘士(ハルバーディア) Lv2

付与術師(エンチャンター) Lv4

召喚士(サモナー) Lv2

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

まぁ、こんな感じ。

 

斧槍(ハルバード)を使うようになってから、戦士(ファイター)に代わり斧槍闘士(ハルバーディア)を修得。そして、付与術師(エンチャンター)を3つ、召喚士(サモナー)を1つ上げた。

 

付与術師に偏っている理由は、召喚士の本よりも読み込んでいたことが原因だろう。とりあえずはどちらもある程度は欲しいところだ。

 

武技も〈斬撃〉、〈剛撃〉、〈穿撃〉などの攻撃武技は勿論、〈能力向上〉、〈要塞〉、〈回避〉といった武技も習得した。同時発動のために精神力もスイッチ5個分程になった。いやー、頑張った頑張った。

 

あ、エドストレームも武技はいくつか覚えている。〈隠密向上〉とか〈可能性知覚〉とかどちらかと言うとサポート武技が多めだ。

 

 

 

「おーい、ペテル君。ちょっといいかな?」

 

唐突に、馬車の中にいた青年から声がかけられる。

 

「はい、構いませんよ。どうなさったんですか?」

 

「そろそろ、村が見えてきたからさ。荷物運ぶの手伝ってくんない?」

 

「あぁ、最後に寄る村でしたっけ。了解しました。」

 

「ありがと、助かるよ。」

 

 

 

村の近くに馬車が止まると、行商人達が馬車から下りてくる。それと共に荷台から降り、青年たちと共に村に入っていく。

 

 

「すいませーん、行商の者なんですけど、頼んでいた薬草ってどこに置いてありますか?」

 

「ああ、こりゃどうも。薬草なら向こうの倉庫においてありますよ。案内します。」

 

 

そうして、倉庫の方に行き、村の村長らしき人と交渉と代金の支払いを終え、荷物を運び出す。量はなかなか多いが、特に重くはなかった。軽量化(ウェイト・サーヴィング)を使う必要もなさそうだ。エドストレームも普通に持ってるし。

 

「よ、よくそんなに持てるな・・・。」

 

「そうですか?そんなに重くはないと思いますけど・・・。まぁ、鍛えてますし。」

 

「そうなのか・・・?エドストレームさんも、細身なのに力持ちなんだなぁ。」

 

などと取り留めもない会話をしながら、薬草片手に馬車の方へ戻っていく。するとーーー

 

 

 

 

 

『お願いします!!俺も乗せてってください!!!』

 

 

 

おっと?なんだ何だ?急いで馬車の方に向かうと、困ったような顔をしている行商隊のリーダーに向かって土下座している村人がいた。荷物であろうカバンと、背中に弓と矢筒を背負っている。

 

「あぁ、皆さん。戻ってきてたんですか。」

 

「ええ。ですけど、これは・・・?」

 

「どうも、我々がエ・ランテルに行くと聞いて、同行を頼んでいるみたいです。ペテル君たちと同じ、冒険者志望らしいんですよ、あの子。」

 

眺めていると、こちらに気づいた行商隊のメンバーが、近寄ってきて状況を教えてくれた。ほうほう、なるほど。冒険者志望とな。

それは応援してやらねばと思い、土下座している彼をよく見てみる。男の割には少し長めの金髪に、赤いヘアバンドのようなものを付けている。

 

 

・・・赤いヘアバンド?

 

 

まさかと思い、すぐに【能力看破の魔眼】を使用する。

 

 

 

・・・・・やっぱりか。嘘だろ、なんでこんなとこにいるんだよ。手間が省けていいけどさぁ。

 

はァ・・・とため息をつき、頭をガシガシとかきながら彼に近付いていく。

 

「ペテル?どしたの?」

 

「・・・助け舟を出してきます。」

 

 

そう言いながら近づくと、こちらに気づいたリーダーが「何故こっちに?」と言った顔で見てくる。彼は土下座したままだ。

 

 

「隊長さん、私からもお願いできませんかね?彼を連れていくの。」

 

「!!!!」

 

バッ!!と彼が頭を上げる。その顔には期待と疑問が入り交じったような表情を浮かべていた。リーダーも「はぁ?」と言いながら表情を歪めている。

 

 

「彼、見たところ野伏(レンジャー)みたいですから、うちのチームに引き込みたいんですよ。戦士と盗賊しかいませんからね。」

 

「いや、しかし・・・。でも、お前さんのとこには世話になってるしなぁ・・・。いや、でもなぁ・・・。」

 

そんなことを呟きながら、チラッと彼のほうを見る。その後こちらに近寄ってきて、耳ともでコソコソと話しかけてくる。

 

「・・・いいのか?あの坊主がくると嬢ちゃんと二人きりじゃなくなるぞ?」

 

「そんなの、私も彼女も気にしませんよ。」

 

 

あの子、この7年間ですんげーサバサバした性格になったしな。昔のフニャっとした顔で笑っていたエドストレームが懐かしい。

 

 

「いや、まぁお前さんたちがいいならいいけどよ・・・。まぁいいか。

 

おい、坊主!!連れてってやるから、荷物運び手伝え!!」

 

「っ!!あ、ありがとうございます!!」

 

そう言いながら、リーダーはとっとと荷物を取りに倉庫の方へ行ってしまった。

 

 

「おい、あんた。助かったぜ。ありがとな!!」

 

「いえいえ。話を聞いていたでしょう?私も自分の利益のために動いたんですよ。」

 

「それでもだよ!それに、向こうにツテなんてないからな。チーム組んでくれた方がありがてーぜ。」

 

「それは良かった。私は、ペテル・モーク。戦士です。あなたは?」

 

 

そう言いながら、右手を差し出す。それを見た彼は、へへっと笑いながら、俺の右手をガシッと掴む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルクルット・ボルブだ。これからよろしく頼むぜ、ペテル!!」




ルクルットのステータスですが、本編中にかけなかったのでここに書いておきます。


〜〜ステータス〜〜
名前【ルクルット・ボルブ】
性別【男】 年齢【15】
総合Lv【7】
野伏(レンジャー) Lv5
弓兵(アーチャー) Lv2

〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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