ペテル・モークに憑依転生!   作:ハチミツりんご

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昇級試験?

イヨロさんの依頼を終わらせてはや三日。俺達は、様々な依頼をこなしていた。

 

引越しの手伝いや店番、無くした物の捜索、果てには街の清掃活動など、受けられる依頼は積極的にこなしていた。

 

こなしていたのだが・・・

 

 

 

 

 

鉄級(アイアン)への昇級試験?」

 

「はい。組合は、あなたがたは昇級の資格ありと判断しました。よって、明日の昇級試験を受けることが可能です。」

 

「いや、私たち、てゆーかダイン以外の四人は、つい先日登録したばかりですよ?」

 

「いえ、あなたがたの評判はかなり高いんですよ?仕事も接客も丁寧で、街の皆さんからの信頼も厚いですし。

 

・・・ぶっちゃけ、組合としてもありがたいんですよ。誰もしないような仕事をちゃんとやってくれますし。」

 

最後にボソッと付け加えた受付嬢の顔は、本当に有り難そうな顔だった。

 

こういう依頼って、依頼を受けるやつがいなかったら組合が文句言われるそうで、俺たちのように丁寧にやってくれる冒険者は本当に貴重なのだとか。

 

「とにかく、受けられますか?」

 

まぁ、断る理由も無いし、俺たちは昇級試験を受けることにした。

 

 

「昇級試験の内容ですが、当日発表されます。ただ、試験中は新人四人に、監督役の冒険者が一人の五人組となります。

 

監督役は、鉄級(アイアン)の冒険者の方が務めますので、皆さんはそのままで結構ですよ!!」

 

「わかりました。それじゃあ、今日の依頼はやめて、宿に戻って休みましょうか。」

 

 

メンバー全員が賛成し、俺たちは宿へと戻っていくのだった・・・。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「くぅ〜〜!!ついに昇格試験かぁ!!今度こそ俺のルクルット伝説が始まるんだ!!」

 

「いや、ついにって言いますけど、私達まだ登録して4日ですからね・・・?」

 

「まぁでも、俺らの実力を考えれば当然だろ?むしろいきなり銀級(シルバー)でもいいと思うぜ?」

 

宿の大部屋で、エドストレームも含めた五人で装備の点検をしながら、俺たちは他愛ない話をしていた。

 

「そういえば、昇級試験ってどんな内容なの、ダイン?」

 

エドストレームの疑問に、ダインは頭を掻きながらうーんと唸る。

 

「・・・まぁ、言っても構わないであるか。私の時は、ゴブリンの討伐だったである。」

 

「おお、討伐!!いいねぇ、これぞ冒険者って感じじゃねぇか!!」

 

ルクルットが一人テンションを上げているので、落ち着けと言わんばかりにゲンコツを落とす。

 

「ってぇ!!何すんだペテル!!」

 

「油断し過ぎですよ。そんなんじゃ命が幾つあっても足りませんよ?

 

ダイン、内容を詳しくお願いします。」

 

「うむ。トブの大森林から少し離れた場所に、ゴブリンの住み着いた森林地帯があるのである。

そこに生息しているゴブリンを討伐し、証拠である耳を組合に届ければ晴れて鉄級になれるのである。」

 

「討伐する数は?」

 

「一人2体、つまりチームで8体であるな。」

 

「なんだ、たった8体かよ。俺一人でも捌ききれるぜ?」

 

マルムヴィストがそう言うと、ダインは重々しい顔をしながら注意する。

 

「・・・油断しない方がいいのである。毎回、昇級試験の度に帰ってこないチームがいるのである。」

 

ダインの忠告を聞きながら、そりゃそうだと心の中で思う。【能力看破の魔眼】で見ても、鉄級(アイアン)の冒険者は大体Lv3とかLv4とかだ。油断してたらゴブリンにも殺されるだろうな。

 

「ま、油断大敵ってことでしょ?でも8体なら、ほんとにペテル1人でどうにかなるでしょ?昔10体を1人で倒してたし。」

 

それを聞いた男3人がギョッとしてこちらを見やる。

いやまぁ、確かにそうだけども。そんな変なものを見るような目で見なくてもいいじゃない。

 

 

「・・・とりあえず、準備は怠らないようにしましょう。はい、この話おしまい!!点検に集中しますよ!!」

 

「ちょっと待て!!お前さっきの話聞かせろこら!!」

 

「ゴブリン10体相手に1人って、どうなったらそうなるんであるか!?」

 

「どうやって倒したんだ!立ち回りとかどうやったんだ!?個別にか、それとも纏めてか!?」

 

「ああもううるさい!!エドも余計な事言わないでください!!」

 

「あれは、遠い昔のことだった・・・。」

 

「エド!!!」

 

「テメェらうるっせぇぞ!!!騒ぐ元気があるなら店の掃除手伝えやぁ!!!」

 

 

俺たちのくだらない口論は、あまりの騒々しさに部屋に突撃してきた親父さんによって止められるまで続いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

翌日、俺達5人は組合の案内員に連れられ、エ・ランテル外周部の入口に来ていた。そこには、俺達の他にも昇級試験を受けるであろう銅級(カッパー)の冒険者たちが大勢いた。

 

「結構いるなぁ。こいつら全員受けるのか?」

 

「だろうな。こんだけ居て、何組が戻ってくるのかねぇ。」

 

「さぁ?ただ、死にそうな奴らは結構いるみたいだけどね。あそこの奴らなんか監督役も含めて全員戦士(ファイター)みたいだよ?」

 

「・・・これはふるいの役割であるからなぁ。生き残るために注意を払う冒険者と、そうでない冒険者を分けるための試験であるし。」

 

「そう聞くと、我々は大丈夫そうですね。だけど油断はしないようにしましょう。」

 

 

そんな他愛ない話をしていると、外への門が開かれ、近くにいた冒険者達が一斉に外へ向かって走り出した。

 

 

「・・・え、なんかこう、開会宣言的なものはないんですか?」

 

「おかしいであるな、私の時は組合の方がルール説明をしていたのであるが・・・。」

 

「とにかく、とっとと行かねぇと獲物がいなくなっちまうぜ!!」

 

 

ルクルットの言葉で我に返った俺達は、急いで外に走り出した。

 

・・・が、後ろから声をかけられ、立ち止まる。

 

 

「まって、待ってください!!」

 

後ろを振り返ると、冒険者組合の制服を着た男がこちらに向かって走っていた。男はこちらまで来ると、息を切らしながら尋ねてくる。

 

「ほ、他の冒険者の方々は、どこに!?」

 

「先程、門が開いたので一斉に走っていきましたが・・・?」

 

「そ、そんな!!あああぁぁぁまずい!!!本日の昇級試験は中止なのに・・・!」

 

「中止って、何かあったんですか!?」

 

俺がそう尋ねると、男は顔を青くしたまま答える。

 

「元々、あそこの森には弱いゴブリンしか居なかったんです。それが、最近になってオーガの目撃例が増えていて。それを理由に、昇級試験を中止にすべきとの判断がされたのですが・・・。」

 

「ですが?」

 

「その、お恥ずかしいのですが、その情報が受付嬢たちまで行き渡って居なかったようで・・・!!本来、今日は昇級試験は行われないんです!!銅級(カッパー)鉄級(アイアン)じゃ絶対に太刀打ちが出来ません!!あぁ、どうしたら・・・!!」

 

 

「他の冒険者達への依頼は!?」

 

「い、今組合が緊急依頼として出しています!」

 

「それじゃ間に合わないのである!」

 

組合の男の言葉に、ダインが叫ぶ。今から依頼を受けて森に向かっても、殆どが死んでいる、もしくは二度と戦えないくらいの傷を負っているだろう。

 

・・・仕方ないか。

 

 

「みんな!!今から森に向かって、助けられるだけ助けましょう!」

 

「だ、駄目ですよ!森にはオーガが・・・」

 

「大丈夫だよ、ただのオーガだろ?上位種の大鬼の戦士(オーガ・ファイター)大鬼の術師(オーガ・ソーサラー)じゃないんなら、負けねぇよ。」

 

マルムヴィストがそう言ったが、実際俺達五人は、昔村を襲ってきたくらいのオーガだったら十分戦える。むしろよっぽど数がいない限り楽勝だ。

 

俺は組合の男に向き直り、肩をガシッと掴みながら口を開く。

 

「俺達が出来るだけ対処しておきます。貴方は、急いで組合に戻って、他の冒険者を連れてきて下さい!!」

 

「で、ですが・・・」

 

「でもじゃない!!早く!!」

 

「は、はい!!すみません、どうか、ご無事で!!」

 

 

そう言って、組合の男は内周部に向けて走っていく。それと同時に、俺達も外の森に向かって走り出す。

 

 

 

「・・・いくらなんでも無茶である。」

 

「だよなぁ。相手はオーガだぜ、オーガ。」

 

「仕方ないよ、ペテルは昔からこうだもん。諦めなよ。」

 

ダイン、ルクルット、エドストレームの3人が、苦笑しながら言葉を交わす。すると、先頭を走っていたマルムヴィストが声を上げる。

 

「おい、2人いたぞ!!追いかけられてる!!」

 

マルムヴィストのいる方向を見ると、森から逃げ出してきた2人の銅級(カッパー)の後ろに、木の幹をそのまま削り出したかのような棍棒を持ったオーガが一体、粗末な武器を持ったゴブリンが5体、獲物を逃がすまいと追いかけていた。

 

 

「ルクルット!!」

 

「はい・・・よっと!!」

 

俺が合図すると、ルクルットは即座に弓に矢をつがえ、引き絞り、放つ。放たれたそれは、ブレることなく、一直線に真ん中のゴブリンの眉間に突き刺さった。死んだことを確認しつつ、俺はエドストレームとマルムヴィストを引き連れて走る。

 

 

「私がオーガを!!2人は左右それぞれ2体ずつ!!」

 

「ハイハイ!」

「了解!!」

 

2人はそれぞれ左右に分かれてに走っていき、俺はそのまままっすぐ走る。途中すれ違った2人の銅級(カッパー)は、俺のプレートを確認すると引き留めようとするが、無視して走り出す。

 

 

「〈斬撃〉〈能力向上〉」

 

武技を使い、身体能力と斬撃の威力を上昇させ、オーガの腹に向かってハルバードを振るう。その一撃により、オーガの腹がパックりと割れる。突然の痛みに叫びだしたオーガは、目の前の俺に向かって手に持って棍棒を振るう。

 

 

「〈要塞〉」

 

が、それも武技によって受け止める。受け止められた衝撃で弾かれ、隙を見せたオーガに向かって、俺は袈裟斬りによってオーガの体を切り裂く。そのまま〈流水加速〉によって加速しながら股下から切り上げる。

 

「〈斬撃〉[兜割り]!!」

 

そして、〈斬撃〉の武技に加えて、斧槍闘士(ハルバーディア)のスキルである上段からの振り下ろし攻撃の[兜割り]を使い、オーガの脳天を真っ二つ・・・とまではいかないが、かなり深くまで傷をつける。

 

 

格上からの連撃に耐えきれず、オーガはそのまま糸が切れたかのように地面に倒れ込み、そのままピクリとも動かなくなった。

 

周りを見ると、既に2人はゴブリンの始末を終えており、ルクルットとダインもこちらに合流していた。

 

 

「なぁ、ペテル。俺にはオーガが瞬殺されたように見えたんだが、気のせいか?」

 

「・・・ルクルット、現実を見るのである。実際にそこにオーガの無残な死体が転がっているのである。」

 

「さっすがだなぁ、俺でももっと時間がかかるぜ?」

 

「うっわぁ、こりゃまた派手にやったねぇ、ペテル。」

 

各々が思ったことを口にするのを聞きながら、俺は苦笑を浮かべる。1度、深く深呼吸をし、息を整える。周りには血の匂いが充満しているが、もう慣れた。

 

 

 

 

「・・・さて、みんな落ち着いて。ここからが本番ですよ。」

 

俺が声をかけると、4人は話すのをやめ、俺の言葉に耳を傾ける。その目には、ふざけた様子はなく、真剣なものだった。

 

 

俺は軽く笑みを浮かべると、同じく真剣な顔で4人に語りかける。

 

「今から、森林内に入ります。目標は中に入っていった他の冒険者の救出。質問は?」

 

4人が無いことを伝えると、俺はハルバードを構えて森に向き直る。

 

「・・・よし、行くぞ!!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

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