やぁやぁ、「ゴブリンとかよゆーだろ!」とか思ってた癖に死にかけた挙句
・・・自分で言っててなんだけど、情けないわぁ。俺の経験値になってくれ(キリッとか言ってるのにギリギリだったわぁ。エドがいなかったら死んでたわぁ。まぁ生きてるし、村も無事だったからいいけどね?
俺がボロボロになった後の戦いについてだが、モンスターを全滅させたため、村側の勝利に終わった。死人も出たし、戦いに参加した村人の殆どが大小様々な怪我を負ったが、想定よりもずっと少ないらしい。
ギグ曰く、「これだけの被害で済んだのは奇跡のようなもの」だそうだ。実際、ギグ自身も死にかけたらしいが、加勢に来た冒険者のおかげで難を逃れたそうだ。
冒険者。そう、冒険者だ。すぐ近くで戦いを見たギグが言うには、直接戦闘を主にしない盗賊1人だったにもかかわらず、瞬く間にオーガ4体と
ミスリル級の実力者なら、そりゃ苦戦することもないだろう。今回のモンスターたちは、Lvで言うと1桁しかいなかった。ミスリル級ならば、Lvは10台後半、下手したらLv20を超えているかもしれない。そんなやつが相手なのだ。数の差があってもモンスターに勝ち目は無い。
【守護の聖剣】と名乗った彼らは、現在話し合いをするために村長の家に集まっている。村長の家にいるのは、【守護の聖剣】の5人や村長の他に、俺達モーク一家が参加している。
ギグは自警団団長だし、レイラは狩猟組の代表だ。そして俺は、北側から攻めてきたゴブリンについて話すため、ということでここにいる。説明できるの俺しかいないしね。エドは最後の方にちょっと戦っただけだし。
全員が揃ったのを確認すると、村長が話し始める。
「では、まずは自己紹介を。私がこの村の村長です。皆さん、村を救っていただき、本当にありがとうございます。そして、こちらが・・・」
「ザリア村自警団団長、ギグ・モークです。助けてもらったこと、感謝しています。」
そう言って、ギグが頭を下げる。
「私は、狩猟組の代表のレイラ・モークです。この子は、息子のペテルです。」
「はじめまして。ペテルです。」
レイラから紹介されたので、挨拶をしながら頭を下げる。冒険者の人達は、なんで子供がここに?的な顔をしている。そりゃそうだわな。話し合いをするなら、大人3人だけで充分だし。
こちらの自己紹介が終わると、向こうのリーダーらしき人物が「それでは」と言いながら立ち上がった。
「改めまして、【守護の聖剣】のリーダーを務めています、ボリス・アクセルソンです。聖騎士で、火神を信仰しています。」
そう言って挨拶をすると、他のメンバーも立ち上がり、挨拶をはじめる。
「俺は、ヨーラン・ディスクゴード。風神を信仰するウォープリーストだ。よろしくな。」
「・・・フランセーン。戦士だ。」
「
「んで、俺が盗賊のロックマイアーだ。また会ったな、おっさん。」
・・・すごく聞いたことがあります・・・。この人達、レエブン候配下の元オリハルコン級冒険者チームか。ん?レエブン候配下の元オリハルコン級冒険者チームだけど、今はまだレエブン候配下じゃなくて、現役ミスリル級冒険者チーム?ややこしいな、おい。
「おいおい、どうしたガキンチョ?俺らの顔になんかついてるか?」
しまった。驚きのあまりじっと見つめてしまったから、ロックマイアーから不審に思われてる。あんまり不審がられないよう気をつけなければ。
「いいえ、別に何も無いですよ?それと、俺はガキンチョじゃなくて、ペテルです。」
「はっはっは、すまんすまん。そういや、なんでガキンチョはここに?大人の話し合いに興味でもわいたか?」
「そういえばそうだな。なんでなんだ、ペテル?」
・・・え、嘘でしょ父さん。レイラの方を見てみると、彼女は嘘だろこいつ的な表情でギグを見ていた。・・・この親父、息子が死にかけたこと知らないのかよ!ま、まぁかなり忙しかったし、仕方ない、のか?
「それについては、私がお答えしましょう。」
村長がそう言ったため、視線が村長に集まる。
「今回、襲撃してきたゴブリンたちとは別のゴブリンたちが倉庫がある方からやってきて、村を襲おうとしていたそうです。ペテルはそれを単独で撃破したため、話を聞こうと思い、ここに呼びました。」
村長がそう言うと、【守護の聖剣】の5人は驚愕の表情で俺を見てきた。ギグは、「まぁ、ペテルなら、ゴブリンくらい余裕だな!」とか言ってる。やめて父さん、それちょっと前の俺だから。それのせいで死にかけたから。
「あー・・・。すまない、ペテル君。襲ってきたゴブリンは何匹くらいだったか分かるかい?」
「え?えっと、錆びた短剣や粗末な棍棒を持ったゴブリンが全部で9匹。それに、錆びた直剣を持った大きめのゴブリンーーー多分、
すると、【守護の聖剣】は信じられないといった表情で俺を見てきた。
「嘘だろ?こんな子供が?」
「スゲーな、将来有望じゃねーか!」
「・・・フラン、お前なら子供の時にあんなことできるか??」
「・・・冗談きついぞ、ルンド。無理に決まってんだろ。」
「おおー。やるじゃないの、ガキンチョ!」
だいたいこんな感じの反応だ。なんか、自分より強い人たちに褒められると嬉しいな!こう、誇らしいというか、なんというか・・・
ちなみに、ギグとレイラの2人は、
「
「ほんとほんと!!流石はうちのペテルちゃんね!!」
とかなんとか言っていた。相変わらずの親バカっぷりだ。
「と、とりあえず、ペテル君がいる理由はわかりました・・・。それでは、本題に入りましょう。」
そういうと、ボリスは布の袋を取り出し、テーブルに置いた。金属が擦れることが聞こえたので、お金が入っているのだろう。そこそこ量があるように見える。
「今回、私たちは組合からの依頼でトブの大森林の調査をしに来ました。その際、この村を拠点にすることを勧められたので、こちらに立ち寄りました。」
「なるほど、そういうわけがあったのですね。しかし、なぜ私たちの村に?」
「トブの大森林から近いこと、そして裕福な村だからですかね。自警団を組織したり、そのための武器を揃える余裕がある村なんてほとんどないですから。」
「なるほどな。たしかに、うちの村は領内じゃかなり余裕があるからな。」
「そういうことです。そして、このお金は俺達の村の滞在費です。長期間の依頼なので、それなりの金額が入っています。」
「ただ、村の方に渡したポーションの代金や、ヨーランが行使した回復魔法の料金、それに今回の依頼代を差し引くと、ほとんど残りません。ですので、タダ同然で俺たちを泊めていただくことになりますが・・・。」
「それに関しては問題ありません。食料庫に被害はありませんでしたから。ただ・・・」
「ただ?」
「・・・それだけでほんとに足りるのかい?ポーションや神殿の定めている回復魔法の料金って、かなり高いんじゃ?」
「・・・本当は、かなりギリギリなんですけど、そこは大丈夫です。俺達が誤魔化しておきますので。」
「おいおい、それでいいのか?」
「大丈夫だよ、おっさん。誤魔化す方法なんていくらでもあるぜ?村の人達が奮戦したおかげでけが人は少なかったっていえばいいだけだしな。口裏を合わせれば確認する方法もない。」
「なるほどなぁ。まぁ、助かるからいいんだけどよ。」
「それでなんですが、どこかに泊めていただくことは出来ますか?」
「うーむ、どこか空いている家はあったか?」
「・・・いや、どこも空いてないと思うぞ?死んだのは、自警団の男連中だ。一家まとめて死んじまったとこなんてないな。それに、死んだ奴の家に泊めるのも、難しいかもな。」
「旦那や息子が死んですぐに誰かを泊めるなんて、抵抗あるだろうしねぇ。・・・あ、リリアの家に泊めるのは?」
「たしかにリリアラームさんの家は2人で住むには大きいけど、5人は無理でしょ?」
「大丈夫よ、リリアとエドちゃんがうちに泊まれば。物置になってる部屋があったし、そこを片付けちゃいましょ。」
「なるほど。皆様、どうですか?」
「ええ、それで構いません。むしろ、空いてる家がないのに泊めていただけて、感謝しかありませんよ。」
「いえいえ、皆さんは村の救世主なんですから、このくらい当然ですよ。」
そう言いながら話し合いを続けようとすると、コンコンと誰かがドアをノックした。失礼します、という言葉と同時にドアが開き、リリアラームさんが室内に入ってくる。
「話し合いの最中にすみません。村長、葬儀の準備が整いました。」
「そうか。すみません、皆さん。ここでお待ち頂けますか?」
「・・・いえ、出来ることなら私も参列させて頂けませんか?死んでしまった方々のために祈らせてください。」
「それなら俺も。これでも神官の端くれだしな。」
「なら、俺達も頼めるか?そこの2人みてぇに、神官じゃないけどよ。」
「おお・・・!すみません、ありがとうございます。では、お願いします。」
【守護の聖剣】に向けて頭を下げる村長。人として当然の事です、といいながら爽やかに笑うボリス。
「では、行きましょうか。」
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死んだ村人のために作った簡素な墓の前で、ボリスとヨーランの2人が真剣な顔で祈りを捧げていた。フランとルンドの2人も、周りの村人とともに黙祷している。
・・・相変わらず優しいねぇ。村のピンチを救った。それだけでいいだろ?わざわざ死んだやつに祈りまで捧げることはないと思うんだが。
もちろん、俺だって可哀想だとは思う。平民出身だから辛さもわかる。だから仲間に確認も取らずに依頼を受けたし、戦ってたギグっておっさんにポーションを渡したんだ。
だが、それは純粋な可哀想って気持ちより、ここで恩を売っておいた方が後々便利だからという気持ちの方が強い。
村ってのは閉鎖空間だ。外との関わりがほとんどないから、俺たちみたいなのが来たら少なからず反発がある。でも、村の危機を救ってくれた奴らに反抗的な感情を向ける奴なんてそうそういない。その打算があって助けたんだ。
だけど、あいつらは違う。特にボリスとヨーランは、損得なんて関係なく人を助けようとする。まぁ、そのおかげで依頼人や組合、街の連中からの信頼は厚いんだけど。実力も確かだし、一緒にいて面白いから俺もついて行ってるわけだしな。
ふと、後ろから何かが近づいてくる気配がする。・・・ガキだな。それも女の。そいつが俺に向かって、こっそりと近づいてきていた。
「お嬢ちゃん、俺に何か用かい?」
後ろを振り向きながらそう答える。俺の予想通り、さっき会ったペテルとそう変わらないくらいの女の子が立っていた。褐色肌に、灰色が混ざったような銀髪。ここら辺じゃ、あんま見ない髪色だな。
「あの、すみません。盗賊の方ですよね?」
「その言い方だと、俺が無法者みたいじゃねぇか?まぁ、あってるよ。たしかに俺は盗賊系の
「戦い方を教えてください。」
「嫌だ。」
俺の即答に面食らったのか、驚いた顔のまま固まっている。すぐにハッとした表情になり、少し焦った様子で頭を下げる。
「そ、そこをなんとか!お願いします!」
「無理だ。なんで自分の飯の種を他人に教えなきゃならねぇんだ。」
冒険者にとって、戦う術、生き残る術は何よりも価値がある。1度死んでしまったらそこで終わりだ。だからこそ索敵が出来る盗賊や
・・・うちの聖騎士様や神官様を除いて。
「だいたい、なんで盗賊なんだ?戦士のフランセーンや、
「私、武器を持って戦えるほど、力は強くないし、魔法が使えるほど、頭も良くないから・・・。だけど、隠れたり、忍び歩きは得意だし、手先も器用だから、盗賊が向いてるかなって・・・。」
「つまり、戦士や
「そ、そんなつもりじゃないです!お願いします!!」
はぁ、とため息をつきながら頭を搔く。なんでこんな子供が戦う術なんて・・・。
「なんで、そうまでして教えてもらいたいんだ?自警団で戦うなら、盗賊になる必要なんかないだろ?」
「・・・大切な人が、冒険者になるんです。だから、私も、力になりたい。」
「・・・やめとけ、やめとけ。冒険者なんかなるもんじゃねぇぞ?俺は運良く最高の仲間に出会えた。そしてここまで生き残ってきた。だがな、ほとんどのやつはそうはいかねぇんだ。仲間に恵まれずに死ぬ奴もいる。実力があるけど、運悪く死ぬ奴もいる。怪我が原因で引退する奴もいる。冒険者登録してから、1年以内にほとんどがいなくなる。残るのはほんのひと握りだ。そんな世界だぞ?」
「それでも、彼が行くなら、私も行きます。」
「・・・あーくそ。めんどくせぇ・・・。さっきのペテルといい、なんでここのガキはこんなに可愛げがねぇんだか・・・。おい、名前は?」
「っ!エドストレームです!」
「よし分かった。長期間の滞在っつっても、そんなに長くは居ない。どんなに調査が長引いてもせいぜい1ヶ月だ。だから、基礎的なことしか教えれないぞ?」
「はい!それで充分です!!」
「ハイハイ。俺は甘くねぇからな?覚悟しろよ?」
「はい!!よろしくお願いします!!」
あーあ、こんなこと引き受けちまうなんて、俺もあいつらに毒されたかねぇ・・・。
ロックマイアーさんは、なんだかんだ言ってますけどチームで1番面倒見はいいです。
それではまた次回。