ひぐらしのなく頃に 儚   作:車輪軸

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夢中1

 ―――何度繰り返しただろう、もう数えるのも止めてしまった。

 

 ―――何度挑んだだろう、もうほとんど諦めてしまった。

 

 ―――何度挫折しただろう、もう涙は枯れてしまった。

 

 ―――何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……何度も!

 

 ―――それでも私は願い続ける、あの日の向こうに辿りつくことを、永遠の迷宮から抜け出すことを……

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「四月一日(わたぬき)ちょっと時間旅行をしてきて」

 「いきなり何を言い出すんですか侑子さん、俺は『わたぬき』であってどこかの青いたぬきみたいな便利な道具は持ってないですよ」

 「たすけてわたえもん~」

 「無理です!」

 

 おれは今ある店でアルバイトをしている、目の前の長い黒髪の妖艶な女性がその店の店長の壱原侑子さん、ちなみに偽名らしい。おれはこの店で某漫画家の言うところの『すこし不思議』もとい、『すっごく不可思議』な仕事をしている。

 

 「ええ~」

 「ええ~じゃないですよ!」

 

 おれは昔から世間一般に言うところの妖怪とか幽霊のようなズレタ存在、アヤカシが視えている。おれのアルバイトの対価はそれらを視えなくすること、実際は半ば詐欺まがいの契約だったと思うけど、今もそのためにこの店にいる。

 

 「それで、いったい今度はなんなんですか?」

 「だから言ったじゃない時間旅行よ」

 「……そんなこと本当に出来るんですか?」

 「見えていることだけが世界じゃないのよ」

 「そんなもんですか」

 「そんなものよ」

 

 こうしておれはタイムワープを経験することになった。

 

 「それで、時を越えてまでいったい何をしでかそうっていうんですか?」

 「行ってみればわかるわよ」

 「そうですか」

 

 侑子さんの言葉はひどく曖昧で具体的な指示は何もないけれど、きっとそれでいいんだ。全てのことは『必然』で、侑子さんの言っていることにもきっと何か意味があるんだと思う。

 

 「それじゃあさっそく宝物庫から『鏡』をとってきてくれる?」

 「『鏡』ってどんなやつですか?」

 「『鏡』は『鏡』よ」

 「? よくわからないですけど宝物庫にあるんですね」

 「ええ」

 

 宝物庫にはいくつか鏡のようなものはあったはずだけど、いったいどれだろうかと考えながら宝物庫に向かっていると黒くて丸っこい茄子みたいのが転がっていた。

 

 「モコナ、そんなところにいると蹴飛ばしちまうぞ」

 「……うぅ」

 

 黒くて丸っこい茄子のような物体が小さくうなった。こいつは茄子ではなく謎の生物のモコナ=モドキ、というか生物であるかも疑わしい。これは侑子さんが創ったらしい、本当はもう一匹、これと同じような形の白いやつがいるのだが、今はとても大切な旅に出ている。

 

 「どうした? 本当に具合でも悪いのか?」

 「わ、四月一日(わたぬき)……お……」

 「お?」

 「おさ……」

 「おさ?」

 「お酒が足りない……」

 「やっぱりそれかい! 晩飯の時間まで待ってろよ!」

 「ええ~」

 「ええ~じゃない!」

 

 この黒いのは見た目はどこかのマスコットみたいな形をしているくせにかなりの酒豪だった。

 

 「とりあえずおれは侑子さんに用事を頼まれてるからその後でな」

 

 そうそうに話を切り上げて宝物庫へと足を運んだ。

 

 「さてと『鏡』は……あれ?」

 

 入った瞬間に違和感を覚えた。宝物庫、おれから見たら物置にしか見えないけど、その真ん中に見覚えのない何かがあった。

 

 「前に片付けたときにこんなのあったっけ?」

 

 疑問に思いながら何かの上にかぶさっていたシーツを取り去った。

 

 「! これって……」

 

 そこにはおれがいた、正確にはおれが映った『鏡』があった。『鏡』は化粧台などに設置されているような『三面鏡』だった。

 

 「あっ……これだ……」

 

 『鏡』を見た瞬間に根拠も何もないけど侑子さんの言っていた『鏡』は確かにこれだと思った。

 

 おれは『鏡』を持って侑子さんのところへ向かった、少し大きかったけど畳めばなんとか持てた。

 

 「来たわね」

 「侑子さん、この『鏡』っていったい……」

 『鏡』を降ろしながら侑子さんに訊ねた。

 「それ自体はただの鏡よ」

 「えっ、じゃあこれじゃないんですか?」

 「いいえそれであってるわ、その『三面鏡』で」

 「? でもただの『鏡』なんじゃないんですか?」

 「四月一日(わたぬき)、合わせ鏡ってわかるわよね」

 「まあそれくらいは」

 「じゃあ合わせ鏡に映った『鏡』の中には何が映るのかもわかるわね」

 「そりゃあ、ずっと向こうまで『鏡』の中の『鏡』の中が続いていくんじゃないんですか」

 「そう、つまり『鏡』は無限を創る」

 「無限……」

 「無限っていうのは限りなくどこまで続いていくものよ、それこそ過去にだって未来にだって……」

 

 過去にも未来にも繋がっている、つまり『鏡』はタイムトンネルってわけか……

 

 「さて準備はいいかしら?」

 「えっと……まあたぶん、時間旅行なんてしたことないし何を用意したらいいかもわからないですし」

 「何もいらないわ、ただ念のため管狐は連れて行きなさい」

 「無月を? 何か危ないことでもあるんですか?」

 「もしかしたらあるかもしれないけど、まあ念のためよ」

 

 するとどこにいたのか管狐の無月が飛んできておれの服に潜んだ。狐っていうけどどっちかって言うと蛇みたいだよなあ。

 

 「それじゃあここに立って」

 

 侑子さんに言われて『三面鏡』の真ん中の鏡の前に立った。そして両隣の鏡を閉めていった。ちょうど三角形をつくるようにしてその中におれが閉じ込められる形だ。

 

 「わたしがこれを閉じたら目を閉じて前に進みなさい」

 

 その言葉と同時に完全に鏡が閉じた。おれは侑子さんの言うとおり目を閉じた、そして前に進もうと足を出した。

 

 「……悪い夢は覚めなければいけないわ」

 

 後ろから侑子さんの声が聞こえたが、出した足は止まらずに鏡にぶつかることもなく前へ出た。

 

 「えっ……?」

 

 そして今度は地面があるはずの位置を踏みしめようしたけど、そこに地面は無かった。おれはそのまま階段を踏み外したような体制になり落ちていった。

 

 「ぎゃああああああああ!!!!」

 

 人生初の紐なしバンジージャンプだった。

 

 

 

 

 

  世に奇妙は多けれど

              どれほど奇天烈

              奇奇怪怪なデキゴトも

                           人が居なければ

                           人が視なければ

                           人が関わらなければ

  ただのゲンショウ

  ただ過ぎて行くコトガラ

 

            人     ひと     ヒト  

 

              ヒトこそこの世で最も

              摩訶不思議なイキモノ 

 

 

                     

 

 




 前からCLAMP作品のクロスオーバーって少ないなあと思っていて、なら自分で書くかと思い投稿しました。
 かなり不定期更新になると思いますがよろしくおねがいします。
 今回はまだプロローグというか導入部分になるのでひぐらしキャラが出てくるのは2話からになります。楽しみにお待ちしていただければと幸いです。
 ではまた次回
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