診療所の外に出ると蒸し暑さが襲って来た、蝉の声も大きく聞こえる。
「やっほ~四月一日さん」
「あれ皆? どうしたのこんな朝早くに?」
とりあえず神社を目指そうかと思っていると昨日の子達と会った。
「これから学校なんでその前にちょっとお見舞いでもと思ってきたんですけど、元気そうですね」
「うん怪我自体はそこまでひどいことなかったからね」
「みい四月一日、無理をしては駄目なのですよ~」
「ありがとう梨花ちゃん」
おれの事を心配してくれる梨花ちゃんはやっぱり梨花ちゃんだった。昨日の別の人間であるかのような感覚は無かった。
「ほんと元気そうでよかったですよ」
「……ああ! 前原君か今日はメイド服じゃないんだね」
普通の格好をしているせいで気がつかなかった、メイド服の印象が強すぎたな。
「ぐっ……そのことにはあんまり触れないで下さい」
「ははは、ごめんごめん」
「よっぽど圭ちゃんのメイド服姿が印象深かったみたいだね」
「メイドさんな圭一くんはかぁいいもんねぇ」
「ところで何であんな格好をしていたんだい?」
正直梨花ちゃんの事とか浮遊少女の事よりもメイド服の方が気になる。
「……罰ゲームです」
「私らの部活で毎回負けた人は何かしらの罰を受けるんですよ」
「へぇおもしろそうだね」
だけど罰ゲームは少し恐ろしいな。
「魅ぃちゃんそろそろ行かないと遅れちゃうよ」
「おっともうそんな時間か、それじゃあ四月一日さんお大事に」
「うん、ありがとう」
そういうと本当に時間が迫っているのか少し駆け足で皆は去っていった。
「さてじゃあこっちも行きますか」
目指すは神社だ。
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「いないな……」
神社に辿りついたが昨日の浮遊少女を視つけることは出来なかった。神社の神様かなんかだと思っていたから、ここに来れば会えるかと思ったんだけど影も形もない。昨日視た時には驚いて逃げていったし今日はどこかに隠れているのだろうか。
「とりあえず休憩っと」
考えてもいないものは仕方ないので昨日と同じ場所に座って休憩を取る。やっぱりこの時期に暑い外を歩くのは疲れる、また熱中症でふらついても困るから気をつけたほうがいいだろう。
それにしても本当に『今』に何があるんだろうか。この村は静かでいたって平和な場所だ、しかもここに来る途中もアヤカシの類を全く見かけなかった。こんな平和な場所のこんな平和な時代に何があるんだろう。侑子さんのことだからきっと何か意味があるんだと思うけど……
「考えたってどうしようもないよな……よしっ」
ここにいなくてもどこかにはいるだろうし、それが『必然』なら絶対に会うことが出来るはずだ。まだ時間は早いし別の場所を周ってみよう。よっこらせと体を上げた時突然カッと光が走った、その光の出所にはカメラを持ったおじさんがいた。
「こんにちわ、見ない顔だね」
「……どちら様で?」
「僕は富竹、フリーのカメラマンさ。毎年この村に写真を撮りに来ているんだけど見たことない人がいたからついシャッターを押してしまったんだ、驚かせて悪かったね」
おれ以外にもこんなところまでわざわざ来る人がいるのかと思ったけど、カメラマンなら納得できる。ここは自然が多いから、そういうのを捕っている人なら絶好のスポットともいえる。
「そうなんですか、おれは四月一日っていいます。おれも観光で来ているので富竹さんが知らないのも無理ないと思いますよ」
「観光だって! うれしいな僕以外にもこの村の良さが分かる人がいてくれて」
おれの言葉に驚いているみたいだけど、本当は観光に来たっていうよりもほとんど無理矢理に送られたってほうが正しいけど。でも確かにこの村が良いって言うのは分かる。
「ここは自然も多くてのどかでいい所ですよね。 ところで富竹さんは普段どんな写真を獲っているんですか?」
「普段は野鳥を主にやっているんだけど、この村に来るとついつい他の物にもレンズを向けてしまうんだ」
思った通り自然関係の写真家だったみたいだ。そうだ毎年来ているならこの村にも詳しいだろうし、どこか浮遊少女がいそうな所がないかそれとなく聞いてみよう。
「あの~富竹さんはこの村に詳しいんですか?」
「うんそこそこ詳しいほうだと思うよ、まあ村に住んでいる人には負けるけどね」
「それならどこか……心霊スポットとかそういう関係の場所を知りませんか?」
心霊スポット?と富竹が首を傾げた。おれもアヤカシが視えるけど侑子さんみたいにアヤカシに詳しいわけじゃない、けどやっぱりアヤカシの類は心霊スポットとかの嫌な空気が溜まっていそうな所に現れるだろう。
「そういう話が好きなんですよ、山奥とかだとそういったものがあるってよく聞きますから……」
「怪異蒐集家ってやつかい?」
「はいそんな感じです」
本当ならむしろそういう話をしていると寄ってくるって言うから怪異蒐集なんて絶対にしたくないけど……まあ今はいいか。
「う~ん、場所っていわれるとすぐには思いつかないなあ。でもそういう話ならあるよ」
「どんな話ですか?」
場所が分からないなら探しようがないけど、もしかしたらあの子に関して何かしらの手がかりになるような話が聞けるかもしれない。
「……この時期に来たってことは君は綿流しのお祭りを見にきたんだよね?」
「はいそうですけど・・・」
「……この村にはね鬼隠しっていうものがあるんだ」
鬼隠し……鬼ごっことかかくれんぼの親戚かな。
「一人が死んで一人が消える……」
「人が……死ぬ……!?」
想像を超えた話に驚いた、まさか人が死ぬようなことだとは思って無かった。
「そう……毎年綿流しのお祭りの日に誰かが死体で見つかって、別の誰かが行方不明になる」
「ただの偶然じゃあ……」
そうは言いいながらもおれは分かっていた、この世に『偶然』なんてないあるのは『必然』だけだということを……
「確かに偶然なのかも知れない、でも毎年この事件が起こっているのは事実だ」
「毎年ってことは今年も……」
「ああ起こるかもしれないね。 このことを村の人達はオヤシロ様の祟りなんて呼んでる」
「オヤシロ様っていうのは?」
「ああこの村で奉られている神様のことでね、慈悲深い神様とされる一方で祟り神としても伝えられているんだ」
神様と聞いて昨日この神社のほうに消えていったあの子の事を思い出した。そんな人間を祟るような子には視えなかったけどなあ。
「じゃあもしかしてこの神社って……」
「そうだねこの古手神社の神様、それがオヤシロ様らしいよ」
そうなるとやっぱりあの子はオヤシロ様なんだろうか。
それにしても富竹さんの言葉に何かひっかかる。綿流し鬼隠しオヤシロ様祟り古手神社……古手!?
「あのこの神社って古手神社っていうんですか!?」
「うんそうだけど?」
「じゃあ梨花ちゃん……古手梨花はこの神社の子なんですか!?」
「梨花ちゃんを知っているのかい? 確かに彼女はこの神社の子だよ、それに彼女はオヤシロ様の生まれ変わりなんて言われているよ」
梨花ちゃんが神様の生まれ変わり……ならもしかして昨日の様子がおかしかった梨花ちゃんは何かオヤシロ様に関係していたのか、いや待てよ梨花ちゃんがオヤシロ様の生まれ変わりだとしたらあの浮遊少女は何なんだ? それともやっぱり梨花ちゃんの様子がおかしかったのは何かの気のせいでやっぱりあの子がオヤシロ様なのか……でもどちらであったにせよあの子達が祟りを起こすようには思えない。浮遊少女のほうにいたっては何の根拠もないけれど、あの子からそういう悪いものは感じなかった。
「………………」
「お~いどうしたんだい急に固まって?」
「えっああすいませんちょっと驚いて……」
「はははちょっと脅かし過ぎたかな? 心配しなくても大丈夫だよ、きっと鬼隠しなんて何かの偶然さ」
富竹さんは鬼隠しについて語っていた時の暗い雰囲気を払拭するように笑い飛ばした。そんなふうに冗談めかしているが、おれには冗談とは思えないことだった。
「はいそうであって欲しいです、興味深い話をありがとうございました」
「いやいやこの村の良さが分かる同士と話が出来て僕もよかったよ、それじゃあ僕はまた写真のモデル探しにに行かせてもらうよ」
「いい写真が撮れるといいですね」
「ありがとう、じゃあまた」
言いながら富竹さんは神社の裏のほうに周っていった。
「……オヤシロ様か」
少しだけ何かの足がかりになりそうだ。梨花ちゃんがオヤシロ様かあの浮遊少女がそうなのか、どちらかは分からないけど梨花ちゃん本人に聞いても答えてくれそうにないし、やっぱりあの浮遊少女にあって直接話しを聞くのが一番だな。
とりあえずだいぶ太陽も高くなって来たし一端診療所に戻ろうかな。
いつも思うんですけどこの後書きのスペースって何書いたらいいんでしょうかね?
ニ三ヶ月に一回とかの長い文章の投稿ならまだ書くこともありそうですけど、この小説は一話が短いですから一体何を書いていいのやら……
なんやかんやいいつつも五話です、四月一日が鬼隠しを聞きました。
四月一日は真実を見つけることが出来るのでしょうか……
それではまた次回。