ひぐらしのなく頃に 儚   作:車輪軸

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夢中6

 「特に問題はなさそうですね。痛み等があったりはしますか?」

 「いえ大丈夫です」

 

 診療所に戻り折れた腕の検査をしてもらった。腕を吊っているから不便だといえばそうなのだが、入江先生の処置がよかったのか痛みとかはまったく無い。

 

 「ならよかった。ところで今日は朝からどこへ?」

 「ちょっと神社のほうに行って来ました、昨日は忙しくてほとんど何も見れてませんから」

 「そうですか、片腕が使えないとまた怪我などをしてしまうかもしれませんから十分注意して下さい」

 「はい、分かりました」

 「この後はまた出られますか?」

 

 この後か…とにかく今はオヤシロ様かもしれないあの女の子に会いたいけど闇雲に探しても視つからないだろうし、入江先生に心当たりがないか聞いてみよう。

 

 「はい、そのつもりです」

 「分かりました、夜までには戻ってきて下さい」

 「はい。 …ところで入江先生は鬼隠しってご存知ですか?」

 「…誰にそれを?」

 

 鬼隠しの言葉を聞いた瞬間に入江先生がピクリと反応した。もしかしてあまり聞いてはいけないような話だったのか? そういった話は村とかの小さな集落では禁忌(タブー)として扱われるようなことがある、と以前どこかで聞いたことがある気がする。

 

 「富竹さんっていうカメラマンの人なんですけど……もしかして鬼隠しってこの村の禁忌(タブー)とかになっていたりするんですか?」

 「あぁいえ、そういうわけではないんですが……あまり気持ちの良い話でもありませんし昨日来たばかりのあなたが誰に聞いたのか気になっただけです」

 「確かにそうですね、人が死んだりするような事はあまり話すべきではないですね」

 

 富竹さんがあっさりと話してくれたもんだから軽く捉えていたけど、確かに人の死を世間話程度に話すべきではないだろう。

 

 「まあ彼はこの村の住人ではないですし結構軽く考えていたんでしょう、それにしてもどうして鬼隠しを?」

 「少し気になっただけです、事件事態は確かに好奇心で探っていいものではないように思えますけど、おかげでこの村の信仰している神様のこととかを知れたので、そのあたりのことに興味を持ったので…」

 

 ある土地の昔の伝承とかを知るのはなかなかおもしろいものがあると思う。こういうのをなんていうんだったか…

 

 「なるほど確かにこの村の信仰は少し独特ですからね、民俗学に興味があるんですか?」

 「いえそんな大層な物じゃないですよ」

 

 そうそう民俗学だった。そういえば前に百目鬼(ドウメキ)のやつがそんなことに興味があるって言ってたな。

 

 「それでその…その神様、オヤシロ様に縁があるような場所ってあの神社以外にはないんでしょうか?」

 「そうですねえ~…直接の関係はないかもしれませんが鬼ヶ淵沼のあたりはそんな話がありますね」

 「沼…ですか?」

 「ええ、その昔その鬼ヶ淵沼から這い出てきた鬼達をオヤシロ様が静めたという伝説があります」

 「鬼ですか、また突拍子もない話ですね」

 「それ以降オヤシロ様の加護の元で鬼達と人間は共棲していったと言われていますが、所詮は伝説ですから」

 

 鬼と人間の共棲、俺もそんなふうにアヤカシと共に生きることが出来たらどんなに楽だろうか。アヤカシ達には話しが通じるようなのも沢山いるが、大抵は人に害を及ぼす者が多いように思う。

 ただ人間にとっては害だと思っていても、アヤカシにしてみれば人間の勝手な言い分なのかもしれない。

 

 「話しておいて言うのもなんですが、あまり鬼ヶ淵沼には近づかないで下さいね。大層な名前がついていますが、実際は林の中に埋もれた普通の沼です、その怪我では誤って沼に落ちるなんてことになりかねませんから」

 「そうですか、わかりました」

 

 医者の言うことは素直に聞いておくべきだろう、これ以上怪我をすることになったりしたら困る。

 

 「それじゃあ今日は以上です、何か困ったことがあったらいつでも言ってきてください」

 「はい、ありがとうございます」

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 行く当ても無く村をぶらぶらと散歩していると、周りの家なんかより少し大きくて趣の違う建物を見つけた。建物の前にはちょっとした広場があり、何か公共の建物だと想像できた。気にはなるが勝手に入るのはまずいだろうと思って辺りを散策していると、建物を取り囲むように立っていた柵に看板が付いているのを見つけた。

 

 《雛見沢分校》

 

 つまりこの建物が学校なわけか。分校という名前やその大きさからやはり田舎なんだなあと再認識させられた。

 

 そういえば学校ならば梨花ちゃん達がいるかもしれない。

 柵の外側を周って建物の窓が見える位置に移動すると、中で前原君が騒いでいるのが見えた。時刻はすでに4時であり、教室の中には昨日あったメンバーしか見受けられないことから思い切って声を掛けてみることにした。

 

 「おおーい」

 

 大きな声で叫んで手を振っていると、それに気がついて魅音さんがこっちに手を振ってきた。

 

 「四月一日さんじゃないですかー、どうしたんですかー?」

 「ちょっと散歩途中に見かけたからー、何しているのかなーと思ってー」

 

 お互いに広場ごしに声を張り上げて会話するのは疲れるな。

 

 「そうですかー、よかったらー、寄っていきますかー」

 「勝手にはいちゃってもー、大丈夫なのかーい?」

 「いいんじゃないですかー、もう放課後ですしー」

 

 それならばと少し悪い気もしたが、まあ少しくらい大丈夫だと思って校舎に足を向けた。さすがに校舎の中にまで入るのはまずいかと思って、皆がいる部屋の窓際に向かう。

 

 「やあ皆、なにしてるの? 特に前原君」

 

 教室を覗いてまず目に入って来たのは頭を抱えて奇声を発している前原君の姿だった。うああああ、と声を上げている様は鬼気迫るものがある。

 

 「みぃ、こんにちわなのです四月一日」

 「あら、四月一日さんじゃありませんこと」

 「こんにちは四月一日さん」

 

 忙しいそうな前原君以外の人が僕のほうに集まってきた。

 

 「今皆で部活していたところなんですよ、でちょうど圭ちゃんに罰ゲームが決定したところなんです」

 「圭一さんもまだまだですわね」

 「よしよしなのですよぉ圭一、さあ早くこの服に着替えるのです」

 

 さっきまでの狂乱した様子とはうって変わって、部屋の隅で体育座りでいじけている前原君の頭をよしよしと梨花ちゃんが撫でている。

 

 梨花ちゃん励ましているように見えるけど、昨日より丈の短いスカートとうさ耳を持って前原君に迫っている…なんとかいうかご愁傷様?

 

 「前原君はあいかわらず大変そうだね…」

 「ヘルプ!四月一日さんヘルプ!」

 「あ~…ごめん」

 「のおおおぉぉぉぉ!!!!」

 「往生際が悪いですわよ」

 「あっはっはっは、圭ちゃん罰ゲームは絶対だよ~」

 

 皆賑やかで楽しそうだな、この光景を見ていると鬼隠しなんて物騒なことが本当に起こっていたのか疑問に思えてくる。

 

 「ところで気になってたんだけど、部活道って具体的に何をしているの?」

 「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれました!我らの部活、それはすなわち厳しい現代社会に飲まれることなく、常に勝利を目指して奔走する!あらゆる状況に対応し、どんな不利な状況にも決して屈しない!そんな人材を養成しているのが我が部活の真髄なのだ!」

 「まあ実際は放課後皆で集まってゲームやらなんやらをして楽しもうというのもですわ」

 「みぃ今日はトランプだったのです」

 

 魅音さんの言葉を聞いて何かすごいことをしているのかと、一瞬だけわくわくしたけど後の二人の言葉で俺の妄想は音をたてて崩れさった。

 

 「ははは、それは楽しいそうだ」

 「そんなわけで時代の荒波に揉まれ、身も心をぼろぼろになってしまった男の姿がこちら!」

 

 魅音ちゃんくいっと後ろを指すと、そこにはいつのまに着替えたのかメイド服+うさ耳姿の前原君の姿があった。

 

 「ちくしょおおおお!!!こうなりゃやけだ!メイド服だろうとセイラー服だろうとナース服だろうとうさ耳だろうと猫耳だろうとなんだって持ってきやがれえぇぇぇぇ!!!!」

 「はぅぅ、うさぎさんな圭一君もかぁいいよぉ」

 

 全てを諦めてやけになっている前原君とそれを見て恍惚の表情を浮かべるレナさん。

 …なんというかその…あれだ、強く生きろ前原君…

 

 「そんなこと言ってていいのかなあ圭ちゃん…今日の勝負はまだ終わってないよ~」

 「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 「ははは…前原君も大変だね……、それじゃあおれはそろそろ行くよ」

 「もう少しゆっくりしていってもいいんですよ?」

 「悪いけど、暗くなるまでには診療所に戻らないと行けないんだよ、それまでにもう少し村を見て周っておきたいんだよ」

 「そうですか…じゃまた今度来た時は四月一日さんも参加していきますか?ゲストメンバーとして」

 「うん考えとくよ、じゃあね」

 「ヘルプミィィィィ!!!!」

 

 前原君の悲鳴をバックにその場をあとにした。

 




 ひぐらしの部活メンバーって楽しそうでいいすよねえ…
 私もあんな幼少時代を送りたかったです。

 最近だいぶ寒くなってきたせいかどうも体調が優れません、皆さんも健康に十分には注意してください。

 それではまた次回。
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