村を見て回るとは言った物のどこへ行ったらいいか、この村はなかなか広いように思うけど見るような物は特にない。入江先生に釘を刺されているから鬼ヶ淵沼に向かうわけにもいかない。
とりあえず村の端の方まで見ておこうと思って山と平地の境になっているような所までやってきたはいいけど…
「ひどいな…これは…」
そこにあったのは『ゴミ』、冷蔵庫や洗濯機のような大きな家電製品、タンスやテーブルのような物、自転車や用途不明のプラスチックの塊、どれもこれも壊れて薄汚れている。
乱雑に山となって積み重なっている所を見ると不法投棄のゴミなんだろうと思った。村からはそこそこ離れていてさらに山陰になっているから勝手に捨てていくには都合がいい場所だったのだろうな。山の木々を押し潰していく勢いで積み重なっている。
都合がいいなんてのは人間にとってのことでしかない、こうして人間は『尊きもの』たちを助けることなく貶していくんだろう。そしていつか人間は『尊きもの』から離れ彼らのことを忘れてしまう、それはそれでいいのかもしれないけど、その報いを受けるのもきっと人間だろう。
―――人間は尊きものを助けないのに、何故、尊きものが人間を助けなければいけないの?
前に
「四月一日さん」
「うん?前原君と竜宮さん?」
ふと声がして後ろを振り返ると二人が立っていた。こんなゴミしかないような所に何のようだろうか…
「どうしたんですかこんな所で?」
「とにかく村を端まで見ておこうと思ってここまで来てみたんだけど…君達の方こそどうしてこんなゴミ山しかないような所に?」
「あ~その…なんていうか…そのゴミ山じゃなくて…ええっと…」
前原君は後ろのゴミ山を指して何か言いたそうにしていたけど、こんな物にいったい何があるんだろうか…
「ゴミ山じゃないよぉ~、『宝山』だよぉ~」
……宝?このゴミが?
「ええっと……どいうこと?」
「レナにとってはこれは宝山なんすよ…」
いつのまにか竜宮さんが鉈を持ってゴミ山を登っていた。慣れているのかガタガタの斜面をすいすいと登っていく。
「彼女は何をしているんだ?」
「宝探し…だそうです」
宝探しって…実はこのゴミ山はカモフラージュでその下には金銀財宝が!?…そんなわけないか。
「レナはゴミ山の中から気に入った物を掘り起こして集めるのが趣味なんすよ…」
「変わった趣味だね…」
捨てる神あれば拾う神ありとはよくいったものだ、ただこの場合はどこにも神はいないんだろうけど。
「それで彼女は今回は何を発掘しようとしてるんだい?」
「さあ…レナのセンスはさっぱり理解出来ないすから、いったい何を拾ってくるのやら…もしかしたら金銀財宝とか、それか人の死体とかとんでもないもの掘り返して来るかもしれませんよ」
人の死体と聞いてどきりとした。確かにこの村に鬼隠しで行方不明になった人達が死体となって埋まっていてもおかしくはないのかもしれない。もちろん前原君はそのことを意識して言っているわけじゃないんだろうけど、一度死体が埋まっていると考え出すと恐ろしくなってくる。
「あんまり怖いことはいわないでよ」
「ん?もしかして四月一日さんって怖い話とか苦手なタイプなんすか?」
「まあ確かに苦手と言えば苦手なんだけどさ…」
おれの場合は実際に体験してしまうからなぁ…
「へえ~なんか意外っすね、四月一日さんって結構クールそうな感じなのに」
「そんなことないよ、そういうやつはむしろおれの知り合いに何人かいるよ」
主に百目鬼とか百目鬼とか百目鬼とか、あと動じないって点で言えばひまわりちゃんもクールって言えるかな。それに何考えてんだか分からないって点でいえば侑子さんもかなりクールな分類に入るんじゃないかな。
「そういう前原君は何か苦手なものとかはないの?」
「う~ん…あんまり思いつかないっすね」
「例えばさ、綿流しのお祭りの時期に起こる『あれ』とか」
あれとはつまり鬼隠しのことだ。あまり村の人達に聞くのはいいことじゃないかもしれないけど、今は情報が欲しい。前原君は飄々としていてあまりそういったことは気にしなさそうな正確だから思い切って聞いてみることにした。
「『あれ』?」
前原君は思い当たる節がないようで首を傾げていた、ただ単に何のことか分かっていないのか、そもそもその存在を知らないのかは判別できない。もしかしたら鬼隠しはそこまで深く考えられていないのかもしれないな。
「…前原君は鬼隠しって知らないの?」
「なんすかそれ、鬼ごっこの親戚かなんかですか?」
「ああ、村の人にはオヤシロ様の祟りっていったほうがいいのかな?」
「いやそれも知らないっす、実はおれも最近この村に引っ越してきたばかりであんまり村のことは詳しくないんで」
学校の皆に馴染んでいたからてっきり昔からここに住んでいるのかと思ったけど、どうやら違ったらしい。村に詳しくない者同士、少し親近感がわく。
「そうだったのか、学校の皆とは馴染んでいたからてっきり…」
「いやあれは皆がフレンドリー過ぎたんすよ。あいつらならいきなり外国とかに放り出されてもなんとかやっていけるんじゃないんすかね」
「あの輪の中でやっていけてる前原君も十分にそういった素質があると思うよ」
いくら皆が前原君を明るく迎えてくれても、それを本人が拒否していたり引っ込み思案な正確だったりしたら駄目だったろう。だからあれだけ一緒に騒げているのはきっと前原君自身のあり方だ。
「う~ん…なんかうれしいようなうれしくないような微妙な素質だな…」
前原君が顎に手を当ててうんうん唸っているけど、確かにあんまり度を過ぎて元気なのも考え物だな。
「あ、ところで鬼隠しって結局なんなんすか?」
どうしよう、村に来たばかりなら嫌なイメージを持ってもらっても村に迷惑が掛かるかもしれないから下手に教えないほうがいいかもしれないな。前原君には魅音さんや竜宮さん、それに沙都子ちゃんと梨花ちゃん達がいる、もし話してもいいならいつか彼女達が話してくれるだろうな。
「いや知らないならいいんだ、気にしないでくれ」
「???」
いつかは知ることになるだろうけどそのいつかは別に今じゃなくてもいい。皆との楽しい時間を阻害しちゃ悪い。
「圭一くーん」
「お、竜宮さんが戻ってきてるぞ」
話をうやむやにするのにちょうどいいタイミングで戻ってきてくれた。
「そうみたいっすね。そういえば四月一日さんレナのこと竜宮って呼んでるみたいですけどレナのほうで呼んであげて下さい。あいつその方がいいらしんで」
「そうか、じゃあ今度からそうするよ」
「それにしても今日は収穫は無しかな?」
「そうみたいだね」
レナちゃんはここに来た時のままで、初めから持っていた鉈以外は何も持っていないみたいだ。
「それじゃあおれはそろそろ診療所に戻るよ」
「そうすか、じゃあまた」
「ああ、またね」
前原君と話している内に太陽が沈みかけるところまで来ていた。夜になるまでには帰るように言われているし早く帰ろう。
安定の不定期更新……あ、矛盾してるな