調子はどうかしら?
登場人物はほぼ出揃ったわよ。
そろそろこの劇は動きだすわ。
動き出すというのは始まるということ。
始まるというのは終わりに向かうということ。
何度アンコールしても結末は同じ。
神様気取りの脚本家のデウス・エクス・マキナによって幕は閉じられる。
けど今回は少し変わるかもしれないわね。
何故って?
あなたがいるからよ。
本来なら舞台の上はおろか劇場の中にさえ足を踏み入れることのなかった筈のあなたが。
あなたの存在によって物語はどう変化するのか期待してるわよ。
それじゃあせいぜい頑張ってね。
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「……ん」
がたんという振動のせいで目が覚めた。
興宮とかいうところに行ってみようと思い、バスに乗り込んでいたらいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。昨日の夜は診療所に戻って特にすることも無かったからすぐに寝た筈なのに、疲れているのかな。
窓の外を見るとそれなりに建物が並び立っている、雛見沢と違ってそれなりの街のようだ。そこからもう少し進んだ停留所でバスは止まった。
あれ?そういえば俺この時代のお金持ってないような…
一応こっちにくるときに財布は持ってきているけど、おれの時代のお金を使っても大丈夫なのか?
「お客さん降りないの?」
「あ、降ります」
ドアの前で考えてると運転手が少し迷惑そうにしながら言ってきた。確かにこのままじゃ迷惑になる、でもお金が偽物だとかなっても困るし……
えーい、儘よ!
小銭で運賃を支払って下車する。少しバス会社に悪いことをしたかな…
「まあ、今更考えても手遅れか」
とりあえず街中をぶらついてみよう。幸いにもバス停のすぐ前に役所があり、二階部分は図書館として機能しているようだし、情報収集には事欠かない。口伝ではなく、正確に文章で記された歴史書とかの資料があればいいんだけど。
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図書館で二時間程資料を探してみたが、それらしい資料はあってもどれもこれも推測で書かれた物ばかりでたいした収穫は無かった。
鬼ヶ淵沼から出た鬼はなにかしらの病原菌であり、オヤシロ様とは偶然村に立ち寄った医者であるとか、鬼は山賊でオヤシロ様はそれを退治した何者か、または自然災害であるとかいったものばかりだった。
少なくともオヤシロ様が少女であった、なんて記述は無かった。ただ『八代続いて第一子が女子であったならばその八代目がオヤシロ様の生まれ変わり』という記述があった。富竹さんも言ってたけど、梨花ちゃんは本当にオヤシロ様の生まれ変わりなのかもしれない。
「でも…」
そうするとあの浮遊少女はいったい何なんだろうか。初めは彼女がオヤシロ様なのかもしれないと思っていたけど、もし梨花ちゃんがオヤシロ様の生まれ変わりならオヤシロ様という存在が二人出来てしまう。どちらかが本当にオヤシロ様なのか、それともオヤシロ様と呼ばれるものは複数いたのか……
まだ情報が足りない、もう少しいろいろ調べてみるか。
資料探しに没頭していて気がつかなかったけど、もう昼過ぎで腹の虫が鳴いている。どこかで昼食を取ろうと思って、商店街のぶらついていると一軒の玩具屋が目に止まった。何かイベント事でもやっているのか店内が騒がしい。
少し覗いて見ると幾つかの机の周りに子供が集まって何かやっている。トランプ、それにあれはジェンガだっけかな、そんなような玩具がそれぞれの机の上に一種類ずつ置いてある。ゲーム大会みたいだ。
よく見ると見知った顔があった。前原君に魅音さん、竜ぐ…じゃなくてレナちゃんに沙都子ちゃん、そして梨花ちゃん。みんなそれぞれ別の机についているみたいだ。
前原君は何やら左右の小学生くらいの子供達と悪い顔をしてこそこそ話しながらやっている。魅音さんとレナちゃんは余裕があるのか笑みを浮かべている。沙都子ちゃんはもう勝負が着いたみたいでほーっほっほと高笑いをしている。梨花ちゃんの机はこれから始めるみたいだ。
「やあ、梨花ちゃん」
「みい? 四月一日なのですか?」
まだ準備が整っていなかったのか手持無沙汰にしていた梨花ちゃんのほうへ行ってみる。椅子に座って足をパタパタさせている姿からはオヤシロ様の生まれ変わりなんて考えられない。
「どうして興宮にいるのですか?」
「ちょっと調べ物があってね、それが済んで街をぶらついてたらこの店が目に入ってね」
「調べ物ですか?」
「うん、ちょっと気になることがあって」
そんな風に話をしていると店長さんが何か持ってきたみたいだ。どうやら梨花ちゃん達の机でやるゲームみたいだ。
「今日はゲーム大会なのかい?」
「そうなのです、それに今日の部活も兼ねているのです」
「へえ。梨花ちゃんは勝てそう?」
軽い世間話のつもりでそう聞いてみた。
「ぼくはこの机で勝負は間違いなく勝つのです、絶対に」
絶対にと言い切ってみせた梨花ちゃんは自信に満ち溢れているようには見えなかった。むしろその目には諦めにも似た感情が映っているように思えた。
「…どうして、そんなに言い切れるんだい?」
「決まっているからです」
「決まっているって…」
「四月一日は運命を信じますか?」
「運命?」
「ぼく達が何をしても物事の結末は決して変わることはないのです。出口の無い一本道の迷路をただひたすら歩いていくのです」
運命…必然と言い換えてもいいかもしれない。確かに世の中は全て必然なのかもしれない。でも…
「…おれは信じないよ」
「…どうして、そう思うのですか?」
「確かに全ての事はあらかじめ決まっていて必然的に起こりうるものなのかもしれない。でもそれは必然であって不変じゃない。おれ達自信が願って、信じて、選んでいけばきっと未来は、世界は変わると信じているから…」
「…どれだけ信じても、何度願っても叶わない時はどうするのですか?」
「叶うよ。根拠なんて無いけど強く願えば夢はきっと叶うから」
「…言葉だけなら、なんとでも言えるのです」
「確かにそうかもしれないけどね、実際おれが言ってことはほとんど知り合いの受け売りだし」
その知り合い――侑子さんはバレンタインなのにおれにチョコ作らせたり、変なところにおつかいに行かせたり無茶苦茶なことばかり言ってくるけど、それでもおれは侑子さんを信じているから。
「それでもきっと運命は変わらないのです…」
梨花ちゃんはそれっきり俯いて黙ってしまった。ゲームが始めると笑顔になって楽しそうにやり始めたけど、おれにはその笑顔が造り物のように思えてならなかった。
結局、勝負の行方は梨花ちゃんが言ったとおりになった。
梨花ちゃんが勝ち抜けて各机の勝者が出揃った。メンバーは驚くことに全て部活メンバーだった。
「最後は圭一と魅音の一騎打ちで、圭一くんが勝つのです」
梨花ちゃんはそういってゲームを始めた。結果は本当に梨花ちゃんの言ったとおりになった。
「優勝賞品の人形は圭一がレナにプレゼントするのです」
また梨花ちゃんが断言すると、確かに優勝賞品の人形は前原君の手からレナちゃんの手へと渡った。
「運命は決まっているのです」
先に起こる事を次々と言い当てた梨花ちゃんは最後にそういってみんなと一緒に自転車に乗って帰っていった。
まるで全てを見てきたかのように先に起こる事をいいあてる梨花ちゃんは本当に神様…オヤシロ様の生まれ変わりなのかもしれない。おれはそう思いながら一人バスに揺られて雛見沢へと戻った。
あいかわらず亀更新です。
実は書き始めたのは結構前なのに途中で止まってそのままでした。特に何か用事があるわけでもないのに、何故か忙しい。
そんな感じで次の投稿をいつになるか分かりませんがのんびり待っていただけると幸いです。
それではまた次回。