契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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円陣と死闘と超越者 後編

極彩色の木々を舞うように走る一つの影。

 

「やあ、そんなに急いでどこに行くんだい?」

 

その影に、天より光が射す。

 

光の正体は炎。

目映く輝く紅蓮の焔に包まれた輪廻だった。

 

「・・・・・・・・・」

 

影は何も語らず、細剣(レイピア)を構え―――

 

 

 

 

 

ガキィン!

 

 

 

 

 

「あっぶな!?なんかしゃべろうよもう!」

 

影の奇襲を輪廻はカギ爪で受け止める。奇襲を防がれた影は後退して距離を取るのだった。

 

『無駄だな。今のアイツには意識が無い』

 

「誰かに操られてるとか?」

 

『おそらく、な。次、五時方向』

 

「はいよっ!」

 

ガキン!

 

またも防ぐ。

 

「影に沈んでの奇襲。なかなかの手合いだけど気配を隠せてなければ、意味が無いんだよねー」

 

そう。輪廻が影の奇襲を防げている理由がこの、ニックとの連係だ。

ニックが影の気配を読み輪廻に教える。たったそれだけ。

()()()()()()()()()()

 

『九時方向』

 

「ん!」

 

ガキン!

 

『十二時』

 

ガキン!

 

『三時』

 

キン!

 

『十時』

 

キン!

 

『二時』キン!

 

『九時』キン!

 

『十二時』キン!

 

『六時』キン!

 

『一時』キン!

 

『七時』キン!

 

「うおお!ちょーラッシュアワー!!」

 

都合十二度、全ての影からの奇襲を輪廻は裁ききってしまったのだった。

 

「ふぃー、凄いじゃんキミ。悪魔の力をここまで使いこなせるなんて」

 

その言葉は、輪廻にとっては心からの称賛の言葉だったのだが・・・

 

『オイ輪廻、お前それ煽ってンのか?』

 

「え゛!?そう聞こえる?」

 

『聞こえるな』

 

「oh・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

最も、影は何も答えないが。

 

『・・・解析終了。どうやら前回のとは別の奴だな』

 

「このあと出てくる可能性は?」

 

『無いだろうな』

 

「ん、じゃあ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっさと終わらせようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟・・・!と輪廻の纏う炎が勢いを増した。

影は当然、身構える。

 

が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬られた。影は確かに、そう知覚した。

なのに、身体には傷一つ無い。

そうして自らの身体を調べて、気付いた。

 

先程まで纏っていた影が、取り払われていることに。

 

 

「へえ・・・・・・キミ、女の子だったんだ」

 

影の中から現れたのは十歳くらいの子供。

着ている衣服はあちこち摩りきれてボロボロ。四肢は細く、頬も痩けていることから、まともな食事もできないような、過酷な環境下にいたことが解る。

 

『ホウ・・・・・・輪廻お前、アレが女だって良く判ったな』

 

「ん?ああ、確かに・・・なんでだろ?」

 

『無意識か』

 

「そんなことより、あの子と契約した悪魔の名前、判った?」

 

『ア?何故そんなことを聞く?』

 

()()()()()()()()

 

『・・・・・・本来、悪魔の真名を契約時以外に明かすのはご法度なんだがな・・・』

 

「そこをなんとか!頼むよ!()()()()()()()、さぁっ!」

 

ガキィン!

 

少女が輪廻に襲いかかる。輪廻はニックと会話しながらも、それを受ける。

細剣による乱れ突きをカギ爪で器用に受け、弾き、かわす。

 

「ニック!」

 

『チッ――――――影を纏い、影に潜る能力。即ち『哭影潜行(シャドウ・スナッチャー)』の固有能力。そして、()()()()()()。コイツの真名は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――序列四十位・ラウムだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、少女の動きがピタリ、と止まった。

 

「今!」

 

カギ爪に炎を纏わせ、少女の胸を貫く。

 

「最大火力でぇぇぇぇ!!」

 

炎の出力を上げ、少女を――否、()()()()()()()()()()()()()()

 

ニックの扱う炎は、命あるモノを癒し、命無きモノを葬る炎。

故に、少女と悪魔のつながりを燃やすことで輪廻は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『オイ輪廻。そこまでしてこのガキ助ける意味なんざ無いだろう。何故助ける?』

 

()()()()()()()()。理由なんてそのくらいで充分だよ!」

 

『ハッ!オマエらしいよ。――――OK、終いだ』

 

炎を消し、爪を引き抜く。

細剣を手放した少女はそのまま倒れて―――

 

「おっと」

 

輪廻の胸にすっぽりと収まった。

 

「生きてるよね。()()()()

 

『ああ、問題ない。上手く契約()()を焼き切れた』

 

「そっか・・・・・・よかっ・・・た・・・」

 

ばたり、とその場に倒れる。

まるで死んでいるように見えるが、深く、ゆっくりと、寝息をたてていることから、眠っているだけだろう。

 

「まぁ・・・初回でこの程度なら、上出来か」

 

倒れている二人の側に座ったニックが一人、そんなことを呟いた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

輪廻たちの上空。そこでは、六人の勇者が大型の進化体に挑もうと、巨大化旋刃盤に乗って空を飛んでいた。

 

「りんくんは大丈夫かな?」

 

「ノープロブレム!・・・とは完全に言い切れないけど、でも平気よ。だってりっくんだもの!」

 

なかなかのパワーワードである。

 

「歌野は、輪廻のことを心から信頼しているのだな」

 

「オフコース!」

 

若葉の言葉に、歌野はニカッとはにかむ。

そうこうしている内に旋刃盤はバーテックスの群れに突撃しようとしていた。

 

「数が多い・・・ザコはこのまま蹴散らせるけど、進化体までは・・・」

 

「なら、ここは私の出番だな」

 

そう言って、若葉が一歩前に出る。

 

「オーケー!そういうことなら私がサポートするわ!」

 

その若葉のとなりに歌野が立つ。

 

「歌野?」

 

「一人よりも二人よ!!・・・実はこれ、前にりっくんにも言ったことがあるのよね」

 

「そうか・・・背中は任せた!」

 

「オフコース、ヒーロー!」

 

その言葉を合図に、二人は同時に神樹へとアクセスし、旋刃盤から飛び立つ。

 

 

 

 

若葉が降ろした精霊は『源義経』人間離れした体術を持つ武人。

壇之浦の戦いにおいて、敵軍の舟を飛ぶように渡り歩いたという伝説を持つ。その名も『八艘飛び』

今、若葉は伝説の八艘飛びをバーテックスを使って再現して魅せた。すなわち、バーテックスを蹴り加速、別のバーテックスを蹴りまた加速、また別のバーテックスを蹴り更に加速・・・と、どんどん加速していき、敵とのすれ違い様に斬る。

これだけでも通常のバーテックスは一掃できる。だが、相手には進化体も複数存在している。

 

だからこそ、歌野がいる。

 

歌野が降ろした精霊は『覚』他者の心を読む妖怪。

獲得した能力は至って単純に、『戦況予測』

歌野が知覚できる範囲内限定で、()()()()()()()()()というもの。

その能力故にか、覚は力が全く強化されず、戦闘に向いているとはお世辞にも言えない。その非力さを歌野は、自身のバトルセンスで補っていた。

 

「「ハァァァァァァァァァァ!!!!」」

 

二人の奮戦により、道は開かれた。

 

「いくぞ!突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

珠子が、友奈が、千景が、杏が、大型進化体に襲いかかる。

燃やされ、殴られ、切り裂かれ、射抜かれた大型は成す術もなくその身を崩壊させていった。

誰もが勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、大型の死に際の一撃に、誰も反応出来なかった。

 

 

「っ!!若葉ちゃん!!」

 

放たれた弾丸は真っ直ぐ若葉の方へ飛んでいき―――

 

 

 

 

 

若葉には当たらず、その目の前で爆発した。

 

 

 

 

 

「ぅああっ!!」

 

「若葉!?」

 

「若葉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

爆風に巻き込まれ、地面に向かって真っ逆さまに落ちていく若葉。

勇者たちが急いだところでもう間に合わない。

そう、勇者たちでは・・・・・・

 

 

 

 

 

「おっしゃトラァァァァァァァァァァァァァァァイ!!!!!!」

 

「りっくん!?」

 

輪廻だ。

落ちてきた若葉を滑り込みで受け止めてみせたのだった。

 

「あー、超いたい」

 

「・・・ぅ」

 

「あ、起きた?おはよう若葉。僕らの勝ちだ」

 

「――――――そうか」

 

樹海化が解けていく。

視界が花の嵐に包まれて、気が付けば丸亀城側の生け垣に座り込んでいた。

 

「―――なあ、輪廻」

 

「なんだい?」

 

「以前、お前は言ったな・・・『独りで抱え込むな』と」

 

「言ったね」

 

「その意味、ようやく理解できたよ」

 

「へぇ」

 

「みんなのお陰だ」

 

「そっか、そりゃよかった」

 

輪廻と若葉の下にみんなが集まってくる。

それを輪廻は手を振って、若葉は微笑んで、出迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

後に『丸亀城の戦い』と称される戦は、こうして幕を閉じた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

数日後―――

 

「・・・なあ、友奈」

 

夕暮れの丸亀城。普段勇者たちが教室として使用している一室にて。

 

「あれ?若葉ちゃんもう帰ったんじゃないの?」

 

「教室にお前の姿が見えたら、つい」

 

「そっかあ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

二人は無言で夕日を―――否、夕日に照らされる壁と海を見ていた。

 

「・・・・・・・・・あの時」

 

「あの時?」

 

「私が大型の攻撃を受けそうになった時だ」

 

「ああ・・・」

 

「あの時、私に当たる筈だったあの爆弾は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・・・・()()()()

 

「友奈も気付いていたか」

 

「うん。気配をね・・・感じたんだぁ」

 

「そう、か・・・・・・ということは、やはり?」

 

「たぶん、ね」

 

友奈が笑う。しかし、その笑顔は普段のそれよりも弱々しくて、どこか、儚げだ。

 

 

「・・・・・・・・・友悟」

 

 

「・・・・・・・・・友くん」

 

 

二人の呟きは誰もいない教室に飲み込まれて、消えた。

 




瀬戸内海本州側の一角―――

「――――――状況終了」

『ハァイ♪おつかれ~』

「これで・・・四国はしばらく安全だな」

『そうね~。北海道と沖縄で、勇者とオーバードが頑張ってるみたいだからね~』

「・・・・・・逝くぞ」

『会って行かないの?』

「・・・今は、いい。どうせ後で会える」 

『それもそうね~。で?どこ行くの?』

「そうだな―――――」










「諏訪にしようか」
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