「うぅ~ん・・・」
「あ♪輪廻さまっ」
目を覚ますと、目の前に香草クンがいた。
「よかった・・・りっくん、気絶する前のこと、覚えてる?」
「・・・・んーと、変態カラスを追いかけてるところまでは覚えてるんだけど・・・」
「そっか・・・・」
みぃが少し残念そうにしている。何があったんだろう・・・?と、それよりも
「香草クン。どうして──いや、どうやってここに?」
「ラウムと再契約しまして、その能力で輪廻さまの影に潜り込みまして!」
「なるほど」
「納得しちゃうんだ・・・」
だからなんでみぃは残念そうにしてるのさ?
まぁ、とにかく色々あったけど僕たちはここで一晩を過ごした。
バーテックスが襲ってくるかも、と見張りを進み出たけど、特に何事もなく、みんなぐっすり眠れたみたい。
―――――――――――†――――――――――
パーティーに香草クンが参加した翌日──
「梅田に来たぞー!」
「今日はりっくん、朝からエキサイティングしてるわね!」
「小さい頃から梅田と銀座に行くのが夢でした!」
「────────モノポ○ー?」
「郡クン鋭い!その通り!」
「ぐんちゃんよくわかったね!?」
「あのボードゲーム、梅田と銀座に止まれれば、大体勝てるって言われてるから・・・流石に、プレイしたことは無いけど・・・・・」
「そうなのか・・・・私はそもそも、モノ○リー自体知らないのだが・・・・」
「うおぉぉぉぉ!!憧れの梅田ぁぁぁぁぁぁ!!!」
「輪廻さん!?何処に行くんですか~!!」
「お前ら、モノポリ○の話は良いから輪廻を止めるの手伝ってくれぇ~!」
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全員で暴走する僕を止めたり、伊予島クンが潰された古書店を目の当たりにしてバーテックスへの怒りを燃やしたりして梅田を探索するが、やっぱり、誰もいない。
どころか、バーテックスすら見当たらない。
「バーテックスもいないとはなぁ・・・」
「・・・・あの、卵のような物体すら、見当たらないわね」
「地上には無い。となると、必然的に───」
この街に入る少し前の会議にて、『梅田には大きな地下街がある』と言っていた。
そこなら避難シェルターにもなるし、もしかしたら、生存者も見つかるだろう、と。
「──────行こう。もしかしたら、の可能性だって、あるかもしれないし」
「りっくん。良いこと言うじゃない♪」
「なら、それは歌野のおかげだね」
「ふふ、ユアウェルカムよ♪」
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地下道への入り口はちゃんと残っていた。
周囲にばらまかれた机やらなんやらは、きっと、バリケードの名残だろう・・・・
ということは────
「──────行こう。確かめてみなければ、何もわからない」
若葉の言葉に促され、僕たちは地下へ入っていった。
辺りは暗く、電気が通っていないのは、一目瞭然。
「こんな時は、ニックの炎で「「りっくん!」」ごめんなさい・・・・」
歌野とみぃに怒られたので、今度はふざけないでちゃんと懐中電灯を取り出した。
「誰かいないかぁ~~~!!!」
「いたら返事プリーズ!!!」
若葉と歌野が呼び掛けるが、二人の声が反響するだけで何も返ってこなかった。
「生活してた痕跡は、あるみたいですけど・・・」
伊予島クンが辺りを見回して分析してくれた。
確かに、空のペットボトルやら何かの包みなんかがまばらに散乱してはいる・・・・けど、やたら少ない気もする。梅田って、人口少ないの?それとも、逃げ込めた人数が少なかった、とか?
「─────妙だな」
「ぅわ!?ニック!?」
いきなり隣にニックが現れた。びっくりするから止めて欲しいんだけど・・・
「妙、とは?」
「生命体の気配が無ぇ。それは解る。だが、
ニックの言葉に全員が驚愕する。
「───どういうことなんだ?」
「さぁな。だが、用心に越したこたァ無いだろうよ」
それだけ告げて、ニックはまた指輪に戻った。
「─────どう思う?」
全員で顔を見合わせて、ニックの発言について議論する。伊予島クンが手を上げて発言し始めた。
「ニックさんの発言が本当なら、ここには本当に何も無い、ということになりますが・・・・」
「あのデビルが、こういう時に嘘を付くのはあり得ないわ」
「どうして、そう言い切れるの・・・?」
「ニック・・・さんは、りっくんが死なないように行動しています。こんな所で嘘なんか付くわけ、無いと思います」
「ふーん・・・じゃあ、あいつは輪廻が死なないよう、タマたちに警告してくれたって所か?」
「そう考えるのが、妥当でしょうね・・・」
上里クンが難しい顔でそう言った。
「うーん・・・とにかく!みんなで注意して進む!これで良いと思うんだけど・・・・どうかな?」
友奈がそんな事を言い出した。
「─────ま、良いんじゃないの?」
「だな!」
そんな訳で、ここからは更に注意して進むことになった。
―――――――――――†――――――――――
「なんだよ・・・・これっ!?」
広い場所に出た瞬間、タマっちクンが叫んだ。
そして同時に───
「おやぁ・・・?やっと、生存者が来ましたかぁ・・・・・」
広場に積まれた白骨の上に座る少女が、こちらを見て、呟いた。
「貴様・・・何者だ!!」
「ははぁ・・・・血気盛んなのは結構ですねぇ。ええ。わたくしですね?」
のらりくらりと、少女は立ち上がり、名乗った。
「わたくしは、七十二の悪魔が一体。序列十六位ゼパルと申し上げます。以後、お見知りおきの程を・・・」
恭しく、一礼した少女の瞳は、まるで死体の"それ"のように、ひどく、濁りきっていた。