契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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ついに、『結城友奈は勇者であるA』のぱるにゃすによる実況動画が配信されましたね。

最後の銀にやられた方々は多いはず。僕もその一人です。

そんな訳で!ミノさん救済ルートを突き進むわすゆ編!

どうぞ、お納めください。


寂しがり屋のロンリーボーイの章
上里一正は天才児である


おれが、上里一正(カズマ)としてこの世に産まれて、七度目の誕生日に、両親が死んだ。

両親にねだって連れて行ってもらった遊覧船『あきつ』。その転覆事故に両親とおれは巻き込まれ、結果、おれだけが生き残ったのだ。

だが、大人たちはおれに、悲しむ時間を、心の整理をつける時間を、与えてはくれなかった。

遺産相続、権限委託、難しい言葉を並べて、まくし立てる。

結局、おれの手元に残ったのは、誕生日が一日違いの妹と、大きさは変わらないはずなのに、やたら広く感じる我が家だけだった。

生活費は、ろくに顔をあわせたことのない叔父が出してくれることになった。

一度にたくさんのものを失ったおれたちに、大人たちは口々に言う。「つらかったね」「災難だったね」と・・・

だからおれは、言ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その言葉、本心からですか?」てな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に対して何も言い返さない大人もいれば、そうでない大人もいた。

前者には無視を決め込み、後者の、それもおれを心から心配していそうな大人たちには、子供らしくすり寄った。

そうして、自分の顔を変えて、大人たちの間で生きていった。

父さんから託された、あるものを守るために。

 

―――――――――――†――――――――――

 

父さんは、この世界を守護してくださってる『神樹様』を奉る組織『大赦』の中で、最も発言力の高い地位に座していた。それはつまり、父さんの一言で大赦を自由に動かせる、ということ。

しかし、父さんは私的にその権力を利用することを良しとせず、世のため、人のために権力を奮った。

そんな父さんに託されたもの、それは大赦本庁地下に存在する資料保管庫、通称『開かずの間』のカギ。

ここには、西暦から今日までに至るまでの全ての資料が()()()()()()保管されている。

それゆえに、やろうと思えば今の世の中の常識を、根本からひっくり返すことだって出来てしまう。

だがおれは、そんなことをするつもりはない。

このカギを渡された時、父さんは言った。

 

「いつかの未来、お前が私の意思を継いでくれることを信じて、このカギをお前に託そう」

 

おれは、父さんの意思を継ぐ。

継いで、この国を、人々を守る。

だからおれは、大人たちの目を盗み、『開かずの間』に入り浸った。

ここならなにか、役に立つ資料があるはずだと、そう信じていたからだ。

結果としては、それは正しかった。

神樹様と、神樹様が創る結界『樹海』についての考察がまとめられたノートが見つかったのだ。

筆者の名は『伊予島杏』

現代において、大赦を創設した六家、通称『六花』に数えられる、伊予島家の人間にして、初代勇者の一人。

このノートから得られた情報を元に、ある方法を模索する。

 

すなわち、『勇者以外の人間が、勇者と同等の力を手に入れる方法』

 

勇者は、神樹様の力をその身に宿すことで常識離れした能力を獲得する。

もし、勇者の素質を持つ者以外にも、神樹様の力を宿すことができたなら、西暦から続く奴らとの戦いにも、終わりが見えてくるのではないだろうか。

そう考えての研究だ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

研究を開始して一月―――

遂に基礎理論が完成した。

 

神樹様に選ばれた少女たちは、アプリを通じて神樹様にアクセスすることで勇者になれる。

また、神樹様に記録された怪異や自然現象を、精霊という形で自身の身体に降ろし、使役していたという。

 

ここで一つ、仮定を立てる。

 

神樹様を『巨大なサーバー』として見た時、そこから伸びる樹海は『ネットインフラ』で、勇者たちは神樹様へのアクセス権限を持つ『アカウント』となる。

 

この仮定を前提として、おれの研究を一言で纏めるなら

 

「現在広く普及しているインターネットのように、誰もが『ゲストアカウント』で神樹様に接続可能になれるシステムの開発」

 

となる。

 

その名も、『ジュカイネット』

 

おれは早速、大赦の上役たちにこの理論を提出。反応を待った。

 

結果、大赦はおれの理論をゴミ箱に捨てた。

 

曰く、「これは神樹様への冒涜に当たる文書である」とのこと。

 

「人類を護ることに繋がるのだから、例え冒涜に当たるとしても、神樹様は大目に見て下さるはずだ!」

 

おれはそう訴えたが、頭の硬い老害どもは聞く耳を持ってくれなかった。

 

「あにさま、どうかお気を落とさず・・・何事にも、挫けずリトライ♪ですよ!」

 

「・・・・・・さんきゅ、佳南(かなみ)

 

この時のおれにとって、妹の佳南だけがおれの味方だった。

そう、思っていた。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「へ~いかずくん!今日こそ遊ぼうぜ~♪」

 

おれの理論をゴミ箱に捨てられてから数日後のある日、園子がやってきた。

 

乃木園子―――

『六花』の内の一家で、上里と同等に大赦での発言力が高い乃木家の一人娘。

昼寝とシエスタとかわいいモノ集めが趣味の変わり者。

家柄とその突飛な言動のせいで友達がいないことを少し気にしている。

 

そんな奴だ。

 

「・・・・・・なんか用か?」

 

「かなちゃんはもう準備万端なんよ~?あとはかずくんだけ!さあ!レッツエンジョイカガワラァァァァァイフ!!」

 

「待て、出かけるなんて一言も言ってない」

 

「ええ~!?いかないの~?」

 

おれの予定を勝手に決めるな。

大体、佳南もこいつの誘いに乗るなよまったく・・・・・・

 

「おれにはまだやることがあるんだ。お前みたいに年がら年中ボケ~っとしてる訳にはいかない」

 

「でもでも~、ちょっとは息抜きも大事なんよ~」

 

それは理解できるし、園子もおれのことを考えて行動しているのも分かる。だが―――

 

「今は休む訳にはいかないんだよ。あと少し、もう少しで完成するん「かずくん!」」

 

いつになく、真面目なトーンの園子がおれの顔を両手で押さえて無理やり向かい合わせてきた。

真正面から見る園子の顔は、やはり、というか、なんというか、その、率直に言ってかわいい。

『お人形さんみたい』なんてありきたりな言葉でしか言い表せない自分の語彙力の無さが悔やまれるくらいだ。

 

「ねぇ、かずくん」

 

「・・・・・・あ・・・な、なに・・・かな・・・?」

 

先程、園子のことをとやかく言っていたが、おれも園子と同じく友達がほとんどいない。それを嘆いたことはないが、こういう時に言い淀んでしまうのは、なんとかしたいな、と思っている。

大人相手に演説するのは得意なのだが・・・。

 

「え~い♪」

 

むにぃ、といきなり頬を引っ張られた。

 

「ふぁっ!ふぁ()いおふう(にをする)ぅぅ!!」

 

「わぁ、ほっぺたやわらか~い♪」

 

そのまま、おれの頬をぐにぐにと、いじくり回す。正直、痛い。

 

ほおお(そのこ)

 

でも―――

 

「ん~?なぁに~♪」

 

心底楽しそうに頬をこねくり回す園子がかわいかったので、なんだか止めさせられなかった。

 

「・・・・・・あんへおあい(なんでもない)

 

「ん~、そっか~」

 

なんというか、おれも甘いやつだと思う。

昔からそうだ。何時だっておれは園子には勝てない。頭が上がらない、とか、そういうのではない、と思う。

多分、園子のやることが他人を思っての行動なのを分かっているから、なんだと思う。

そうでなければ、こんな頭お花畑なやつに、こうも好き勝手させたりしない。

 

 

 

 

 

 

このあと、結局おれは佳南と園子と園子の両親と一緒に遊びに出掛けた。

 

帰ってきたおれは、実に数日ぶりにぐっすり眠れた。




上里一正について―――

イメージソング:
・PSI-missing
・Rimless ~フチナシノセカイ~


上里ひなたの子孫。
五歳で自作OS搭載パソコンを造れるほどの天才児。
頭が良すぎて大人たちからは少し気味悪がられているが、家族ぐるみで交流のあった園子の両親は彼に対して偏見をもたず、「子供らしく、無邪気にのびのびと育って欲しい」と思っている。
妹の佳南の世話をしながらも、上里家当主としての責務を全うしようと頑張る努力家。そのせいか、変に気取っている節がある。
実は寂しがり屋。
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