契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

24 / 89
魔神セイバー、20連で来ました♪(大勝利~♪)


あ、やめて!石を投げないで!
聖昌石て刺々しいから刺さるのよ!



そんな訳で、続きをどうぞ、お納めください。(頭に石が刺さりながら)


科学と呪術が、交差する時期<とき>

「――――ふっ!」

 

バーテックスの放出する水球を時にステップで、時に転がって、すべて避ける。

しかし、このままではやつに攻撃できない。

 

「(まだ最終調整が済んで無いけど・・・やるだけやってみるか)」

 

右手首の端末をタップ。画面に円グラフが表示される。

 

「(とりあえず出力設定を20%にして・・・よし、完了)」

 

一応の準備は整った。

早速、試してみよう。

 

「ふんっ!」

 

右手のひらの電極を樹海の根にあてがい、エネルギーを放出。

瞬間、木の根が一部隆起し、おれの目の前に壁を生成したのだった。

 

「・・・よし、成功だ!」

 

これぞ、ミカヅキの能力とジュカイネットを掛け合わせて作り上げた、おれの武器。

 

その名も『覆式波動機関(ふくしきはどうきかん)

 

ジュカイネットにより神樹様に接続し、ミカヅキの能力である、生命エネルギーを操作する能力『波動天鎧(オーラマリオネット)』の力で樹海からいろんな物を生成。それを武器に戦う、というシステムだ。

しかし、これだけではおれはこの武器を使えない。なにせこのシステムで生成される物体は、精度は低いものの、勇者たちのみが使える神威の武器と同質の物だからだ。

 

そこで役に立つのが、これ。『所有権の書き換え能力』

 

おれがミカヅキと契約して獲得した能力だ。

効果は読んで字の如く。『触れた物体の所有権を自分に変える』というもの。

これにより、勇者にしか使えない武器も使用可能になる。

 

「ミカヅキ!!」

 

『わかった』

 

端末からミカヅキの声が聞こえてくる。

今、ミカヅキはこの端末のAIとして機能しているからだ。

 

『調整は今のでだいたい出来た。どれにする?』

 

「三番で」

 

『わかった』

 

間を置かず、先程出来た壁から、身の丈程の、細長い一本の棒が現れた。

それを右手で掴み、エネルギーを流す。

すると棒の上端、エネルギー発振基部から、緑色のエネルギー刃が、湾曲して出現した。それにより、棒は大鎌へと姿を変化させたのだった。

 

「いわゆる『霊力光刃(ビーム)大鎌(シザース)』ってやつだな」

 

大鎌を振り回して、一人心地る。

さて、準備は完了。いざ、勝負―――!

 

―――――――――――†――――――――――

 

おれの科学とミカヅキの能力、そして神樹様の御力を組み合わせて初めて完成するこのシステム、名を『デンドロビウムシステム』と称する。

今回使用する三番兵装は、速度と隠密性を活かした『奇襲用兵装』。

だが、他のモノよりも消費エネルギーが少なく、クセが無く使い勝手がとても良い。

使い勝手の良さだったら一番兵装でもいいのだが、今回の相手には速度を活かした戦い方が合うと思い、こちらにした。

 

「せやっ!」

 

速度にモノを言わせて急接近。大鎌による連撃をくわえる。しかしバーテックスに確かに傷を負わせることができたが、直ぐ様回復されてしまった。

 

「ちっ・・・解っちゃいたけど、こうも簡単に回復されるとは・・・」

 

お返しとばかりに放出された水球を避けつつ、悪態をつく。

直ぐにでももう一連撃喰らわせたいが、先程よりも水球の量が増え、身動きが取り辛くなっていた。次第に追い詰められていき―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かずくん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!園子・・・」

 

おれの窮地を救ってくれたのは園子だった。

槍を回転させ、水球を絡めとるように排除した。

 

「・・・・・・・・・一応、お礼は言っておく。ありがと」

 

「えへへ~♪」

 

にへら~、とはにかむ園子が、こちらに頭を向ける。なんだよ、撫でれ!ってか?

 

「・・・・・・・・・・・・・ったく」ガシガシ

 

「わわわっ!?かずくん、ちょっと乱暴だよ~」

 

「優しくされたけりゃ、もっとTPOをわきまえろ」

 

「ぶ~」

 

頬を膨らませる園子を無視してバーテックスに突撃する。

 

「上里!」

 

「・・・三ノ輪か」

 

途中、三ノ輪銀と合流した。もうここまで来たら仕方ない。ちっぽけなプライドにこだわって全滅、なんてザマは死んでもゴメンだ。

 

「おれは右側から攻める。三ノ輪は左から頼む!」

 

「おう!」

 

「ん!――――――え?」

 

「え?」

 

意外と素直にこちらの指示を聞いてくれた三ノ輪に驚き、つい足が止まってしまう。つられて三ノ輪も足を止めた。

 

「いや・・・・・・案外あっさり指示に従うんだな・・・と、思って」

 

「へ?なんで?」

 

「いや、なんで・・・って・・・・・・」

 

「いやあ、アタシ考えるのとかニガテだし、ガラじゃないもん。そういうのは得意なやつに任せて、その分、アタシが頑張る。『役割分担』ってやつ?『テキザイハイリョ』だよ」

 

「・・・・・・適材適所、な」

 

そうそれ!と笑う彼女を見て、なんとなくだが、三ノ輪が勇者に選ばれた理由が少しわかった気がした。

 

「・・・・・・三ノ輪、これからよろしく」

 

「おう!よろしくな」

 

互いに手を伸ばし、握手する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ことは、出来なかった。

 

「「!?!?!?!?!?」」

 

おれと三ノ輪は、バーテックスの放った巨大水球に取り込まれ、今まさに絶体絶命の状況に陥ってしまった。

水球の中でもがきながら、自分の迂闊さを呪った。

戦場で棒立ちなんて、アホでもしないことだ。

隣を見れば、三ノ輪も同じようにもがいている。このままだと二人とも溺死だ。

 

「(どうする?()()()使()()()、確かにこんな水球抜け出せる。だが、それだけの熱量をここで使えば三ノ輪にも被害が及ぶ。それだけはダメだ)」

 

考えろ。

 

要はこの水をどうにかできればいいんだ。

 

考えろ。

 

水を無くす方法・・・・

 

考えろ。

 

蒸発、撥水、あとは・・・

 

「!」

 

そうだ!()()()()()()()()()!!

直ぐ様三ノ輪にもジェスチャーで伝える。

 

「」コクコク

 

首を縦に振ったのを確認して、作戦開始。

 

ごくごく

ごくごく

ごくごく

ごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごくごく―――

 

ごっくん!

 

「「ぷはぁ!!」」

 

あ゛あ゛~、死ぬかとおもった~・・・

 

「三ノ輪~、生きてるか~?」

 

「ああ、なんとかな・・・」

 

「そりゃよかった」

 

「・・・はは」

 

「・・・ふっ」

 

どちらからともなく、二人して笑いあう。

すっ――と拳を突きだし合い、それを重ねる。

 

「かずくん!ミノさん!」

 

「二人とも!大丈夫ですか!?」

 

そんなことをしていたら、園子と鷲尾がやってきた。

あれ?なんで園子のやつ、濡れてるの?

 

「かずくんミノさん、バーテックスのお水、どんな味だった~?」

 

「真っ先に聞くことがそれか」

 

つーか見てたなら助けろよ。

 

「ソーダっぽい味からウーロン的な味に変わった・・・」

 

「お前も真面目に答えんなよ」

 

「うえぇ・・・まずそう~」

 

「それより園子、お前どうした?なんでそんなに濡れてる?」

 

「ああ~、これ~?」

 

「ぅ・・・」

 

おれの指摘に鷲尾が小さくうめく。

ふむ、なんとなくわかった。

 

「あのね~、鷲尾さんがバーテックスに狙われて~、それをわたしが助けたの~」

 

「やっぱりか」

 

「でもそのおかげでわたしの槍、盾になることを思い出したんよ~」

 

「忘れてたんかい」

 

自分の獲物のスペックぐらいちゃんと把握しておけよ。

 

「あの・・・乃木さん、先程は・・・その・・・」

 

「鷲尾、そういうのは今は後にしよう。バーテックスの位置がそろそろヤバイ」

 

バーテックスのいる方向を指差す。

現在、橋の中程にて悠然と行進している。

 

「どうする?」

 

「どうする・・・・・・と言われても・・・」

 

「奴は近距離からの攻撃には弱い。それは確認済みなんだ。問題は・・・」

 

「どう接近するか・・・ですか?」

 

「鷲尾の言う通りだ。さて、何か案があるか?ちなみにおれは無い」

 

「「ええ・・・」」

 

おれの発言に、心底がっかりした様子の声をあげる三ノ輪と鷲尾。

なんだよ。文句あるのかよ。

 

「あ!ぴっかーんとひらめいた!!」

 

「よし、それを待ってた」

 

「「???」」

 

こういう時、園子のひらめきは役に立つ。それを元にしておれが作戦を立案するのだ。「いわば!二人の共同作業だね~!」と園子が興奮気味に話していたこともあったな・・・・・・意味分かって言ってんのかな・・・

 

「で、どんなの思い付いた?」

 

「うん。あのね~」

 

―――――――――――†――――――――――

 

作戦はこうだ。

 

まず、園子を先頭に、三ノ輪、おれ、鷲尾の順に単縦陣をとる。

 

「敵バーテックス、水球を放出してきました!」

 

「園子!」

 

「いっくよ~!!」

 

水球を出してきたら、園子が盾を展開。ガードしながら進む。盾で防げない位置の水球は、鷲尾が射ち落とす。

問題は―――

 

「っ!!大型、来ます!」

 

「来たな―――!」

 

先程おれと三ノ輪が呑み込まれた大型水球。しかし、今なら―――

 

「三ノ輪!」

 

「よし来ぉい!」

 

三ノ輪が斧を水平に構える。おれはそこに飛び乗る。

 

 

「うぉおおおおおりゃあ!!!!!!」

 

 

カタパルトの要領で三ノ輪に跳ね上げてもらい、大型水球に右腕を突っ込む。

 

蒸発し(ハジケ)ろ!」

 

エネルギーを撃ち込むと、水球は爆発。辺りに水蒸気となって飛散した。

 

「よし!行軍再開!」

 

所定の位置に戻り、指示する。

突撃可能距離まであと少し・・・!

だが、バーテックスも阿呆じゃない。

水蒸気を切り裂くように、激しい水流がこちら目掛けて照射された。

 

「来るぞ!」

 

咄嗟におれは園子の右後方へ、三ノ輪はその逆、鷲尾はその真ん中に位置取る。

園子を吹き飛ばした一撃。その時園子は一人だった。

だが、今はおれたちがいる。

園子は吹き飛ばされず、しっかりと受け止めることが出来ていた。

 

「かずくんの!言うとおり!なんよ~!」

 

「すごい・・・さっきはあんなにも簡単に吹き飛ばされてしまったのに・・・!?」

 

「一本じゃ容易く折れる矢も、三本、四本、まとめれば折れにくい。つまりはそういうことさ!!」

 

「なるほど!良くわからん!」

 

「三ノ輪ァ!もうちょい考えることをしろォ!!」

 

「よ~し!!このまま行っくよ~!!」

 

園子の号令で、一歩、一歩、確実に前進する。

 

「オーエス!オーエス!」

 

運動会かよ。玉転がしとかじゃあるまいに

 

「ほら、鷲尾さんと上里も!」

 

「ええ!?」

 

「オーエス!オーエス!」

 

「お・・・オーエス!オーエス!」

 

まじか。やるのか、鷲尾。

 

「「オーエス!オーエス!」」

 

「仕方ない・・・オーエス!オーエス!」

 

『オーエス!オーエス!』

 

四人の声が重なり、一つになる。

次第に縮まるバーテックスとの距離。ついに突撃可能距離まで到達した。

その瞬間、バーテックスからの攻撃が止んだ。

 

「今!突撃ィィィィィィィィィィ!!!!」

 

おれの号令に全員散開。

水球を鷲尾が封殺し、左からは三ノ輪と園子が、右からはおれが攻める。

 

「園子!そのまま振り回せ!!」

 

「うん!」

 

園子の槍に掴まった三ノ輪が叫ぶ。

 

「うんとこしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

気合一閃。槍を薙ぐ。

勢いを付けた三ノ輪は、斧から炎をほとばしらせる。

 

「こっから・・・出ていけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

その一撃で、バーテックスの左半分が消し飛んだ。

おれも負けていられない・・・!

 

「ミカヅキ!リミットパージ!」

 

『エネルギー0009(トリプルオーナイン)。残り一撃分。これで決めるんだよ』

 

「ああ!!」

 

右肘と肩のアーマーがパージされ、二の腕の強制廃熱口がフルオープンになる。

アーマーがパージされたことで露になった肩のスラスターフィンが起動し、加速。

このままバーテックスへ突撃する。

 

が―――

 

 

 

 

 

「っ!!」スカッ

 

目測を誤り、バーテックスを掴むはずの右手は、虚空を舞う。

 

「かずくん!?」

 

「外した!?」

 

「そんな!?」

 

「まだまだァ!」

 

咄嗟に身体を無理矢理捻り、バーテックスへ右腕を伸ばす。

しかし右手は届かない。だから、()()()()()()()()()()()()()()()。ほんの少し腕を延長させた。

数字にして、およそ数センチ程度の延長。しかし、それだけあれば十分だ。

 

 

右手は確かに、バーテックスを掴んだ。

 

 

「弾けろ・・・バァァァァァァテックスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」

 

万感の想いを載せて放った一撃は、バーテックスの右半分を吹き飛ばしてみせた。

 

「へぶっ」

 

しかし、着地に失敗。

最後の最後で締まらねぇ・・・ちくせう・・・

 

「かずくん、平気~?」

 

「大丈夫か、上里?」

 

「いま、顔から落ちなかった?」

 

「おまえらよってたかって・・・・・・いや、それよりバーテックスは!?」

 

痛む身体を無理に起こしながら、三人に問う。

 

「大丈夫だよ~。ほら、見て」

 

園子に言われて。空を仰ぎ見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大橋が、咲き誇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際には花吹雪が舞っているだけなのだが、神聖なその空気に、どうしても、そんな風に見えてしまった。

 

「すげえ・・・・・・これが・・・・・・『鎮花の儀』か・・・・・・」

 

『鎮花の儀』

 

バーテックスをある程度弱らせることで実行可能になる、バーテックスを壁の外へと追い返す儀式。

これが発動した、ということはつまり・・・・・・

 

「おれたち・・・勝った・・・のか?」

 

花吹雪がバーテックスと共に消え、辺りに静寂が流れる中、ぽつり、と呟いた。

 

「勝った・・・?」

 

「勝ったんだ・・・!」

 

「勝ったのね・・・!」

 

 

『やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

四人全員で抱き合う。

ちょっとしたおしくらまんじゅうだ。しかし気にしない。

 

おれたちは、お役目を成し遂げたんだ!!

 

そんな充足感が、四人を満たしていた。

 

 




覆式波動機関について―――

造形は紅蓮の徹甲砲撃右腕部。そこに狂スロットの騎士は徒手にて死せず、シェルブリット等を混ぜ込んで造ったのがこれ。

僕の趣味として、いろんなネタをミキシングビルドする傾向にあるので、それが顕著に現れた一品、なのかもしれない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。