契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

3 / 89
ぐんちゃん救済のための布石!

ちなみに小生はハッピーエンドが好きです。

ま、書けるかどうかはわかんないけどネ♪


千の景色と白い夜

それは、輪廻たち諏訪からの避難者が、四国に到着する少し前―――

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

千景が勇者になった、という話は瞬く間に村中に広がった。

 

『あの』郡千景が勇者として自分たちを守ってくれる・・・と。

 

人は誰もが危機に陥ればプライドなんてかなぐり捨てて自身が忌み嫌っていた者にすら媚びへつらう。

 

そういうものだってボクは知っている。

 

だから、ボクだけは変わらないようにいよう。

 

きっとそれが、今のボクに出来るあの子の為の行為なんだから・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

バスから下りると、目の前に一人の少年が立っていた。

 

「おかえり、千景。香川はどうだった?」

 

「枢木くん・・・」

 

昔と変わらない無邪気な笑みを浮かべて、彼―――枢木白夜は私を出迎えた。

今日、私が帰郷することを枢木くんは一体何時知ったのか、なんてことは聞くだけ無駄なので、素直に彼の問に答える。

 

「別に・・・・・・ああでも、うどんはおいしかったわ・・・」

 

「本当!?良いなぁ、ボクも食べてみたい!」

 

「あなた、うどんより美味しいものを毎日でも食べられるじゃない」

 

彼の父、枢木誠一郎は現職の総理大臣。今は権限の全てを大社に渡しているらしいから、もはや名前だけの存在なのだが。

 

「昔みたいにはいかないよ。政権すらも大社に移しちゃったから、父さん、今はほとんど無職みたいなものだし」

 

「ふぅん・・・」

 

そうこうしている間に私の実家にたどり着く。

 

「さてと、じゃあね千景。後で家にも寄ってくれると嬉しいな」

 

手を振って駆けていく枢木くんを見送って、私は久しぶりに帰宅した。

 

―――――――――――†――――――――――

 

枢木くんとの出会いは、およそ十年くらい前―――

 

両親の間に確執が生まれ始めたころ、だったか・・・

否、違う。思い出した。私が影口を言われ始めたころだ。

 

一人、村の外れにあるハナミズキの樹の根元で泣いていたら、彼の方から話かけてきたのだ。

 

「どうしたの?どこか痛いの?」

 

「べつに・・・・・・なんでもない・・・」

 

「なんでもなくないよ!『ないてる女の子には手をさしだせ』って父さんも言ってたし!」

 

「・・・・・・はぁ?」

 

真面目な顔で彼はそんなことを言ってきたのだった。

今でこそ思うが、彼は一体どんな教育を受けてきたのだろうか・・・。

その後も何かと私に付きまとう枢木くんに、私は遂に我慢が出来ず、

 

「あなたにはかんけいない!もう、どっかいって!」

 

そう言って、突っぱねてしまった。

 

「う・・・・・・」

 

少し、悲しそうな顔をした後、枢木くんは立ち去っていった。が、その直ぐ後、

 

「ねえ!」

 

懲りもせずまた来たのだった。

 

「・・・・・・なによ」

 

「これ!一緒にプレイしよっ!」

 

そう言って差し出してきたのは、携帯ゲーム機。

この時、私はゲームというものの存在を知ったのだった。

 

「なにこれ?」

 

「ゲーム!やったことない?なら教えたげる!」

 

「いや、まだやるって・・・」

 

「いよっし!今日はノーコンでクリアしちゃる!」

 

「はなしをきいて!」

 

二人の時間は瞬く間に過ぎ去っていき、いつの間にか夕方になっていた。

 

「楽しかった~!またやろうね♪ボクは枢木白夜。君の名前は?」

 

「・・・・・・・・・・郡千景」

 

「こおり・・・ちかげ・・・」

 

名前を言った瞬間、少しだけ、後悔したが、次の瞬間にはそれが杞憂であるとわかった。

 

「キレイな名前・・・・・・。ちかげ・・・だね。おぼえたよ!」

 

屈託のない笑みを私に向けて、枢木くんはそう言ってくれたのだった。 

 

「じゃあね、ちかげ。また明日、ここで」

 

「・・・・・・・・・うん・・・・・・また、ね」

 

それからというもの、私と枢木くんはよく二人で、このハナミズキの樹の根元で遊ぶようになったのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

両親の様子を見て、枢木くんの家に行く。

しかし、私はその先でとんでもないものを見てしまうのだった。

 

「なに・・・これ・・・」

 

村中から『枢木邸』と呼ばれ、敬愛されていたお屋敷は見るも無惨に変わり果ててしまっていた。

 

「(お父さんが、枢木邸に行かないほうがいいって言っていたのは、このことなの・・・?)」

 

私の記憶にあるこのお屋敷は、いつだってキレイだった。

しかし、今目の前にあるのは、たくさんの落書きと張り紙で汚された赤レンガの塀に囲まれた、ぼろぼろの幽霊屋敷。

 

「いったい、なにが・・・」

 

「あ!やっほー、千景。早速来てくれたんだね♪」

 

驚き戸惑っていると、上の方から枢木くんの声が聞こえた。・・・・・・上の方?

 

「・・・・・・・・・・・・あなた、壁の上でなにしてるの?」

 

「とび師の真似事。知ってる?とび師」

 

「知ってる」

 

確か、建設現場で足場を組む人のことを指すのだったか・・・・・・・いやそんなことより!

 

「お屋敷、どうしたのよ。ぼろぼろじゃない」

 

「色々あってね~。あらよっと」

 

持っていたモップを器用に使い、塀の上から降りてきた枢木くんは、照れたように笑いながら言った。

 

「その様子だと、あの噂は聞いてないんだね」

 

「噂って・・・?」

 

「うーん・・・とりあえずさ、中入ろう?多分、長話になるだろうし」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「父さんが、核エネルギー開発に力入れていたのは知ってる?」

 

応接室に通されて開口一番の質問。

渡された紅茶を飲みながら、それに答える。

 

「知ってる。あなたがよく話してくれたから」

 

「・・・・・・・・・バーテックスが降ってきたのは、核開発を進め過ぎたせいだって、そういう噂が流れているみたいなんだ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

「今後来るであろうエネルギー問題を解決するための一大事業だったハズなのにね~・・・」

 

「まってよ・・・・・・何も本当にそれだけが理由ってわけじゃ・・・!」

 

「核とは古来より、『熱かい悩む神の火』と呼ばれ、神にしか扱えない代物とされてきた」

 

唐突になにかを語り始めた枢木くん。

彼はいったい何を言っているの・・・?

 

「大社に務める人の中には、父さんの知り合いがいてね、なにかと『お世話』になってるんだよ。この話も、その人から教えてもらったことなんだ」

 

「なにを・・・」

 

「天の神が人類を粛正しようとしたきっかけは、『人間が神に近付こうとしたから』だそうだよ」

 

「それが・・・なに?」

 

「わからない?」

 

枢木くんが、今まで見たこともないような、うすら寒い笑みを浮かべて、可能性の話をする。

 

「神サマはどうも、人が核エネルギーを自在に操れるようになるのが気にくわないらしいよ?だって、核―――つまり『熱かい悩む神の火』を操れるのは神サマだけだからね」

 

「だからって・・・・・・だからって、枢木くんたちが悪いわけじゃない!」

 

「でも、生き残った市民の中には、それを信じている人もいる」

 

「っ!」

 

「伝聞というものは歪曲する。どこをどう聞き間違えたのかはわかんないけど、少なくとも、このあたりでは、『父さんのせいでバーテックスが人間を襲うようになった』らしいよ」

 

「・・・・・・・・・そんな」

 

ひどい話だ。

今まで散々『応援している』だの『この村の誇り』だのとたくさんの称賛の言葉をかけてきたくせに、何かあった途端にこの手のひら返し・・・!

 

「今さら気にするようなことじゃないけどね~」

 

しかし枢木くんはどこ吹く風。全く気にも止めていないみたいだった。

 

「・・・・・・・・・あなた、それで良いの?」

 

「あんな連中の言葉、耳を傾けるだけ無駄だもん。それよりもボクは千景の話が聞きたいなぁ♪」

 

「・・・・・・・・・・・・もう帰る」

 

昔と全く変わらない、その能天気さに呆れ果てた私は、枢木くんの静止も聞かずにお屋敷から出ていった。

そして、家に帰る途中、

 

「あなた・・・郡さん?」

 

かつて担任だった女性教師に声をかけられた。

 

「どうしてこんなところにいるの?みんな、あなたの家の前で待ってるのよ」

 

「え?」

 

―――――――――――†――――――――――

 

教師に促されるまま家まで戻ると、たくさんの人が家の前で待っていた。

 

「あ!勇者様だわ!」

 

一人が私に気付き、その声をきっかけに全員が私の元に集まってくる。

私を虐げてきた人々が、こぞって私にすり寄ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その裏で、枢木くんを苦しめているくせに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラスメイトが私に許しを乞う。

 

同じ口で枢木くんにひどい言葉を浴びせてきたくせに。

 

 

商店街の店主たちがぜひうちの店を利用してくれ、と両手をすり合わせ媚を売ってきた。

 

枢木くんには、態度をがらりと変えるくせに。

 

 

主婦をはじめとする数多の人々が、私をこの村の誇りだと褒めちぎる。

 

かつてそれを言ってきた枢木くんには、裏切り者だと罵るくせに。

 

 

「(ああ・・・そうか・・・)」

 

私は、納得した。

枢木くんは知っていたのだ。

人間が、こういう生き物だということを。

 

「(だから、あんな態度だった・・・)」

 

納得した瞬間、私の胸に込み上げてきたのは・・・

 

「うおっ、なにこれぇ?なんかのお祭り?」

 

その一言が聞こえた瞬間、私への称賛の声が途切れた。

声の主が誰なのか、見なくたってわかる。

 

「あ、千景~。よかったぁ、まだいたよ」

 

人混みをかき分けてやってきたのは、やはり枢木くん。

 

「ハイこれ。冷凍カツオ!勇者のみんなで食べて欲しいな♪」

 

そう言って渡してきたのは青いクーラーボックス。

多分この中にカツオがあるのだろう。

 

「・・・・・・・・・別に、無理して渡してくれなくても」

 

「いーのいーの!こっちはこっちでどーにかできるから。だから気にせず持ってって・・・」

 

その時、誰かが叫びを上げた。

 

 

 

 

 

「人殺し!」

 

 

 

 

 

、と。

 

その声を呼び水に、枢木くんを糾弾する言葉が広がっていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

枢木くんは、それを黙って聞いているだけ。

 

「このっ・・・・・・人類の敵めぇ!」

 

ついに、というべきか、とうとう、というべきか、枢木くんに向かって石を投げつける者が現れだした。

一度投げつければ二度も三度も同じこと。終いには数人がかりで枢木くんに向かって石を投げつけだした。

 

「勇者様はこちらに!」

 

私はその前に誰かに手を引かれて、枢木くんから引き離された。

 

「(これが・・・今の枢木くんの有り様・・・)」

 

村中の人間に忌み嫌われ、蔑まれる日々。

この光景を何処かで見たことがある。

 

「(ああ、そうか・・・これは、()()()()()だ)」

 

あそこで石を投げられているのが、かつての私。

 

今、こうしてそれを傍目で見ているのが、かつての枢木くん。

 

「(なら・・・・・・私が、かつてあの場所にいた私がするべきことは・・・!)」

 

私は布袋に入れたままの大鎌の柄で、地面を叩いた。

大して大きくもない乾いた音は、それでも、群衆を黙らせるには十分だった。

 

「皆さんに・・・・・・訊きたいことがあります・・・」

 

皆の視線が集まる中、私は一つの問いを投げ掛ける。

 

「・・・・・・私は、価値のある存在ですか・・・?」

 

この問いに意味なんて無い。今、目の前で行われていたことを思えば、返ってくる答えなんて容易に想像できるからだ。

だからこれは、ほんの前降り。

私の本題は、答えの後にある。

 

私の問いに人々は怪訝な顔をして、やがて誰かが答えた。

 

「もちろん、だってあなたは勇者様なんだもの」

 

続いて似たような意味合いの言葉が、私に浴びせられる。

わかっていた。こうなることくらい。

彼らは、私というみこしを担いでいるに過ぎない。

そこはかつて、枢木くんのいた場所。

今は、私の場所。

私と枢木くんの許しの一つもなく、彼らは勝手にすげ替えた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「だったら――――――もう、枢木くんには関わらないであげて・・・!」

 

 

その一言で、場の空気が凍り付いたのが、肌で理解できた。

でも、もう言ってしまった。覆水は盆に帰らない。しかし後悔は無い。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

沈黙する人混みを無視して、枢木くんの側に行く。

 

「・・・・・・・・・千景」

 

「大丈夫、安心して。今度は私が、あなたを守るから」

 

これが、私の決意。枢木くんへの恩返し。きっと、枢木くんは快く受け取ってくれる。

だから―――

 

「ありがとう、千景」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、別にいらないかな?」

 

 

そんなあっさりと断られるなんて、思いもしなかった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

結局その日は家に泊まることなく、すぐに香川に帰った。

 

「ふざけてる・・・ふざけてるっ・・・!」

 

なんだってあそこで、あの流れで断わるのか、意味がわからない!

思い返せば、枢木くんはいつだってマイペースなんて言葉では言い表せないくらい、自由奔放だった。

 

「育てた親の顔が見てみたいわ!」

 

それなら、ニュースでも見る?という声が聞こえてきた気がして、ますます腸が煮えくりかえる。

 

「―――かげ」

 

枢木くんの性格からして、決して私のことを馬鹿にしているわけではない。それは理解している。

 

「でも、だからこそむかつく・・・!」

 

「千景」

 

いけない・・・・・・そろそろ切り替えないと・・・。

 

「おおーい、千景?」

 

高嶋さんに心配をかけさせるわけにはいかない。

でも―――

 

『別にいらないかな?』

 

「っ!!あああああああああ!!もう!!腹立たしい!!」

 

「っ・・・す・・・すまない、千景」

 

「あ・・・」

 

いつの間にか目の前に、乃木さんがなんだか少し申し訳なさそうに立っていた。

どうやら気がつかない内に丸亀城についていたようだ。

 

「連絡しようと思っていたのだが、ちょうど、帰ってくるのが見えたから・・・」

 

「・・・・・・いえ、こちらこそ、ごめんなさい。別に乃木さんに怒っていたわけではないの。だから謝らないでほしい」

 

「ン・・・・・・それなら、いいんだ」

 

「それで?一体何の用なの?」

 

「ああ、そうだ!大社から我々に、緊急の依頼が来たんだ」

 

真面目な表情を浮かべて、乃木さんは言った。

 

なんでも、この四国に向かってくる生命反応を確認したらしい。

そこで、私たち勇者がその調査に向かうことになったのだという。

 

「わかったわ・・・すぐに準備する」

 

「重ねてすまない。戻ってきたばかりなのに」

 

「気にしないで。あと、これ。知り合いからのお土産」

 

そう言って乃木さんに枢木くんからもらったクーラーボックスを渡す。

 

「うおっ!なんだこれは?中になにが・・・?とにかく、その人にはありがとうと言っておいてほしい」

 

「感謝なんて・・・するだけ無駄だと思うわ・・・」

 

「?・・・それは、どういう・・・」

 

「それじゃ、先に行くから」

 

「えっ・・・あっ・・・ちょっ・・・待ってくれ!これはどうすれば!!」

 

乃木さんの静止の声を無視して自室に荷物を置きに行く。

そのまま変身して、集合場所である大橋まで跳んで向かう。

 

「(いいわ、あなたがそういう態度を取るなら・・・!)」

 

私は決めた。勇者として大成することを。

そうしてたくさんの人から称賛されるようになれば、あの頑固者もきっと折れるはず。

 

「(そのためには、もっともっとバーテックスを狩らないと・・・!)」

 

決意を胸に、私は大橋にたどり着いた。

 

「(やってやる・・・枢木くんを助けるのは・・・私だ!)」

 

 

 

 

 

 

それが、間違いだと気付くのは、もう少し先の話―――

 




枢木白夜について

年齢:14才

身長:165㎝

第97代日本国総理大臣・枢木誠一郎の息子。
手先が器用で、特技は裁縫と掃除。
ゲームは嗜む程度に得意。
千景とは幼いころからの友達。
自他共に認めるほど、自由奔放。
麺類はそこまで好きじゃない。どっちかというとご飯派。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。