現実世界に帰ってきたおれたちは全員、草むらに寝転んでいた。
「───っあ~~~。腰にくる戦いだった~~」
「ミノさん大丈夫~?」
「後で佳南にマッサージを頼むと良い。あいつは上手だ」
「へえ、そうなの?」
「えー・・・・いいよ別に。そこまで痛いワケでもないし」
「遠慮はいらない。佳南なら喜んで引き受けるだろうさ」
「一正くんもそう言っていることだし、頼んでみれば?銀」
「うーん・・・・そこまで言うなら・・・・・」
「なら決まりだな」
言うや否や、おれは立ち上がり銀に手を差し伸べる。
「ほら、行くぞ銀」
「え?・・・あ・・・・うん・・・・」
おずおず、といった感じで、おれの手を取る銀。
続けて須美にも手を差し出す。
「え?私も?」
「・・・・・・・嫌か?」
「そんな悲しそうな顔をされても!?」
「──────────」
「うぅ・・・・・・・わかりました」
攻略完了
そんな訳で、二人と仲良く手を繋ぎ、佳南たちの待つイネスへと向かう事にした。
「──────えへへ~♪待ってよ、三人とも~~」
そんなおれを、園子が微笑ましく見ているのには気付いていたが、敢えてスルーしておく事にして。
―――――――――――†――――――――――
「あ・・・・・帰ってきた」
「お帰り──────って、およよ~?」
「あにさまっ!?ご無事で──────って、あれ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだよ」
イネスに戻ると、三人はまだフードコートに居てくれた。
居てくれたのは良いが・・・・・・何故こっちをニヤニヤしながら見る。
「あンれまぁwwwwww三人仲良くおててを繋いで・・・・・」
「仲良し・・・・・」
「あにさま・・・・・いつの間にそんな・・・・・・あにさまはハーレムの王にでもなるおつもりで!?」
「ならんわ」
我が妹ながら、時折こいつが何を言っているのかわからなくなる。
そして銀と須美は顔を紅くするな。
「かずくんはね~~、時々こうやって~、好きな子に甘えるんよ~~♪」
「ちょっ!?おまっ・・・・園子っっっ!!!」
「すすすすす好きぃ!?カズマが!?」
「あわわわわわわわわわ」
「うっひょひょ~~~い!!二人共、もンのすごい慌てっプリぃ~~~♪」
それを見たアスカが大興奮。なんだ、このカオスな空間は・・・・
「・・・・・・へんたいにエサを与えてはいけない」
「同意だな・・・・・・」
―――――――――――†――――――――――
須美と銀を落ち着けて一息ついたころ、銀が一つの質問を投げ掛けてきた。
「なぁ、カズマ。なんでお前、あんなに無茶ばっかりしてたんだ?」
「─────────それは」
「そんなに、アタシらが頼りない?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと銀」
「悪いけど、止めないでくれ須美。今回ばかりは言わせてもらう」
いつになく真面目な表情で問い詰めてくる銀。
園子がおれたちを心配そうに見つめる中、おれは一つため息を洩らして、本心を語ることにした。
「────────頭脳明晰である事を、昔からおれは、疎ましく思っていたんだ」
「え?」
佳南と園子以外の全員が、驚いた表情を見せる。が、構わず続ける。
「"一を聞いて十を知る"─────どころか、百を知る事のできたおれを、両親はちゃんと愛してくれてたとは思ってる。でも、他の奴らは──────」
「・・・・・・・・・・・・」
「期待してくれるのは嬉しく思ってる。でも、それと同時に、他人から『自分の事を蔑んでいる』と思われているのが・・・・・・・おれには、辛かったんだ」
おれの言葉に、須美が抗議の声を上げる。
「そんな事・・・・!」
「"ある訳無い"?いいや、あり得る事なんだよ、これは・・・・・人は他人の才能に嫉妬する。どうやっても解決しようの出来ない事なんだ、それは」
「──────一正くん」
「誰だって、他人の持つ何かを羨ましがって、欲しがる。そうして行う成長にだって、相応の成果は存在するんだ。だからこれは、どうしようも無いことなんだよ。頭では、そう解っているんだ・・・・・でも・・・・・・おれは、それがどうしようもなく、怖い」
恐らく、あの黒海月はそうした恐怖心を増幅させて相手に悪夢を見せる能力を持っているのだろう。
だからこそおれは、ありもしない幻を見せられた。
「だからおれは、打算的に生きてきた。そうすれば、『他人は利用するだけの存在』として、おれの中で扱えるから──────でも・・・・・・」
「────────────」
「須美と銀に会えて、おれは今までの自分の考えを改める事にしたんだ」
「と、言うと?」
須美に問われたので、一息ついて答える。
「園子だけじゃない。三人全員、おれが護る─────命に換えても、だ」
「カズマ・・・・お前・・・・・!」
「だって、嬉しかったんだ」
「えっ、何が?」
「祝勝会。おれも呼んでくれた事が────」
「そんな事が!?」
「おれには充分だったよ。そりゃもう、かつての自分を『馬鹿者』呼ばわりしたいくらいに」
その一言に、二人は唖然としていた。
「それで、おれは一人でもお役目を果たせるように努力してきた。合宿の時のアレは、そういう事さ」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも、おれの努力なんて結局役には立たなかったな・・・・・今回の事で、それを思い知らされたよ・・・・・・・」
「かずくん・・・・・・」
「・・・・・アスカ?」
山伏の声に、アスカの方を見る。
アスカの奴は、それはもう幸せそうに、鼻ちょうちんを作って寝ていた。
「──────────オイ、変質者」
「誰が変質者じゃ!?せめて変態と言っておくれ!」
「じゃあ変態。おれの話を聞いていたか?」
「半分だけ~♪」
こいつ・・・・・・・・
「だって、長ったらしいんだもん!要はアレでしょ?カズヤはさ~「一正だ」話の腰を折らないでよ」
「ならちゃんと名前を呼べ」
「これはアダ名だよ!いーでしょ?別に!」
「そもそも許可した覚えは無い」
「許可が有ろうが無かろうが、関係なく呼びたいアダ名で呼ぶ。それがアスカちゃんクオリティ!」キリッ
「胸張って言う事かッ!」
まったくこいつは・・・・・・・・
「でも、アレでしょ?カズヤはボクに対して、そんなに嫌な気持ちになったり、してないでしょ?」
「・・・・・・・・・・それは・・・・・まぁ」
「それでいーじゃん」
「はぁ?」
にこやかに笑って、アスカが言う。
「カズヤさぁ、むつかしく考えすぎだよ~。打算だの何だのと考えるよりも、『こいつと仲良くなりたい!』とか『こいつとなら上手くやっていけそう!』とか、心で感じた事に従って動けばいーじゃんかさ!友達ってのは、そうやって増やしていくもんだよ!」
・・・・・・・・・得意気に言うアスカには悪いと思うが
「・・・・・・・・・・・これ、そういう話、だったっけ?」
「あるぇ?間違えちゃった~?」
───────────なんか、もう
「どうでもいいや」
「ついにあにさまが諦めの境地に!?」
いや・・・・・そうもなるだろ、これは・・・・・
でも──────
「かずくん」
「何?」
「良かったね~。お友達、増えたよ♪」
「─────────そうだな」
なんと言うか、これはこれで、良いのかもしれない。
そう思うと、心が暖かくなった。
そんな気がした。
上里一正について
幼少の折りに、親戚の子供に「気味が悪い」と言われた事がある。
その子供は、別に他意などなく『只純粋に思ったことを言っただけ』であり、直後に謝罪しているが、一正の純粋な心には深い傷を遺すことになってしまった。
この日以降、彼は(家族や乃木家の人々以外の)他人と接する時には、打算的に思考して接するようになる。
そしてそれは、本心(誰かと、純粋に、仲良くなりたい)と乖離した行動であったが為に、傷を更に深いものにしてしまったのである。