契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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7月10日 -破-

楽しかった遠足も終わり、おれたちは帰路に着く。

アスカと山伏とは自宅が別方向なので、ここには園子たち三人とおれしか居ない。

夕焼けに照らされる帰り道、遠足の楽しかった思い出を語り合うおれたち。

 

 

 

 

 

しかし、そんな平穏は、音を立てずに崩れ去る。

 

 

 

 

 

「・・・・?」

 

最初に気付いたのは銀だった。

少し遅れておれたちも気付く。空を飛ぶ鳥が、風に揺れる木々が、まるで一時停止をかけられた映像の如く停止していた。

 

「────お役目の時間!?」

「あーあ、どうせならバーテックスももうちょっと空気を読んで欲しかったなぁ~」

「遠足中に来なかっただけ恩情だろう」

「あはは、カズマの言う通りかも」

 

端末を取り出して変身する。

その内に樹海化が発生し、世界は変容する。

久方ぶりに動かす覆式波動機関の調子を確かめる。うん、問題無し。メンテナンスは欠かさずやっていて良かった。

 

「よぉ~し!銀さん暴れちゃうぞー!」

「もう銀!調子に乗らないの!!」

「そうだ。馴れた頃こそ油断大敵だ」

「おっと、まさかの挟み撃ちだ」

「園子もいるんだぜ~~」

 

普段の調子で大橋へと向かう。

この四人なら、どんな奴が相手でも勝てる。

そんな自信が、今のおれにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、こんな事になってしまったのだろうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・畜生・・・・!ちくしょう・・・・・!!」

 

全身傷だらけで息も絶え絶えの園子を抱え、おれは大橋傍の死角へと走る。

須美は銀に任せているが、あっちもボロボロのはず────

援護したいが、目覚めない園子の方が心配だ。

 

「しっかりしてくれ・・・・・おれがぜったい助けるから・・・・・!!」

 

なんで、こんな事に・・・・

何度目になるかわからない、答えの返って来ない問いを投げ掛けながら、冷静になるためにも先の戦闘時の事を思い返す。

 

―――――――――――†――――――――――

 

今回、バーテックスは二体同時に現れた。蠍座(スコーピオン)蟹座(キャンサー)の二体だ。

三人は驚いていたが、この程度おれには十分に予測できていた。

奴らは知恵を持っている。そして、おれたちとの闘いを経て学習しているのだ。今まで一体ずつで追い返されてきたのだから、二体同時に出撃させればどちらかが神樹にたどり着けるだろう・・・・なんて策を思い付くのも当然だ。

だから冷静に、二手に別れてバーテックスに対処していた。

蠍の針に毒が仕込まれている事も、蟹の装甲が硬い事も、文献に書かれていて知っていたおれは、それにも対応できるように作戦を練り、バーテックスを着実に追い詰めていっていた。

 

 

 

 

 

だが、それを嘲笑うかの如く、空から絶望が降り注いだ。

 

 

 

 

 

園子が傘を広げ、その中に全員で入りやり過ごす。降ってきたのは針の雨だった。

 

そして、おれたちは無防備にも針の雨の中で立ち止まっていた。

 

その瞬間を待っていたと言わんばかりに、蠍が尾を振り払い攻撃してきたのだった。

再生力に物を言わせた捨て身の一撃は、咄嗟に作り出した壁を破壊して、おれたちを凪ぎ払った。

おれと銀は、それぞれの武器でガードした為に致命傷は避けられた。

が、問題は傘を広げていた園子と、後衛故に盾を持たない須美だった。

尾の一振りに吹き飛ばされる二人を、おれは只、呆然と見ているしか出来ずにいた。

 

「──────そ、の」

「カズマぁ!!!!!!」

「ッ!?」

 

銀の叫び声で正気に戻ったおれは、背後から迫り来る矢弾を間一髪で弾き、それにより、奇襲を掛けてきた相手が射手座(サジタリウス)である事を理解した。

 

「銀っ!!プランZ(全力で逃げろ)!!!お前は須美を!おれは園子を担いでいく!!!」

「りょーかい!!」

 

それだけ叫ぶと、樹海の木を少しだけ拝借し、武器用のエネルギーパックに変換すると、それをバーテックスへ向かって投げつけた。

 

「ぉらあっ!!!」

 

それに合わせるように、銀が自身の武器を投擲。

見事エネルギーパックに斧が命中すると、目映く辺りを照らし出した。只の光ではない。圧縮された魔力が起こした爆発の光だ。当然ダメージもある。とは言っても、表面を少し溶かすくらいしか出来ないだろうが・・・

 

「今!!散開!!!」

 

だが、撤退する隙は作る事ができた。

それだけで十分に役目は果たされたと言えるだろう。

 

「園子・・・・」

 

地面に倒れ伏す園子に近寄り声をかける。が、返事が無い。呼吸は小さいが脈はある。大丈夫、ちゃんと生きてる。

 

「・・・・・・畜生」

 

なんで、こんな事に・・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

「────ふぅ・・・・で、どうする?」

「───────────────────ぇ」

 

安全地帯にどうにか逃げ込めたおれたちは、須美と園子に応急措置を施した。しばらく安静にすれば、歩くくらいはできるだろう。しかし、それだけでは駄目だ。

 

「アタシとカズマであの三バカ、どうにかしなくちゃだろ?なんか一発逆転の作戦ないの?」

「────────────────────」

 

しばらく思案して、「ある」と頷く。

 

「あるの!?さっすがー♪で?アタシはどうすれば良い?」

「・・・・・・・・・ああ。うん、そうだな・・・銀は──────」

 

ゆっくりと、右手の電極を銀の額に当て────

 

 

 

 

 

「しばらく、寝てろ」

 

 

 

 

 

バチンッ!!!

覆式波動を撃ち込まれた銀は、『信じられない』と言わんばかりに目を見開いて、仰向けに倒れた。

 

「か・・・・ず・・・・・・・・・・・」

「ごめん。今回ばかりはどう考えても犠牲が出てしまう。なら、その人数は少ない方が良いだろう?」

「・・・・・・・や・・・・・・・・・・め」

「平気だ。死ぬつもりは無いよ。只、おれは────」

 

 

 

 

 

 

「お前たちの未来を、守りに行くだけだ」

 

 

 

 

 

「じゃ・・・・・・行ってきます」

 

銀から返事は無かった。

それで良い。三人が起きる頃には、全部終わっているはずだ。

後ろを振り向かず、バーテックスの下へ向かう。

本当は・・・・・少し怖い。

アスカともっとバカ騒ぎしたかった。

山伏にもっと話をしたかった。

シズクにもっと話を聞きたかった。

銀ともっと遊びたかった。

須美ともっと歴史議論をしたかった。

園子と、ずっと一緒にいたかった。

 

「でも・・・・・!」

 

ここでおれが頑張らなければ、あいつらが生きる未来が消える。

それだけは・・・・・・絶対に阻止しなければならない。

 

「─────────」

 

バーテックスの前に立ち、端末を取り出す。

かなり進行されていた。だがもう、これ以上は進ませない!!

 

「悪いけど、此処から先は一方通行なんだ。引き返してくれ」

 

バーテックスは応えず、臨戦体制を取る。

 

「そちらがその気なら、仕方ない──────」

 

端末を操作し、もしもの時の『切り札』を呼び出す。

 

「擬似精霊システム────起動!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呑み干せ・・・・・『フェンリル』!!」

 

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