最初、安芸先生から告げられた一言を、私は理解出来なかった。
「・・・・先生。今、なんと?」
「──────そうね。到底受け入れられないわよね。特に、貴女たちは」
悲しげに目を伏せた安芸先生だったが、直ぐにいつも通りの凛々しい眼差しで真っ直ぐに私たちを見据えて伝える。
「明日、上里一正くんの葬儀を執り行います」
「待ってくれ、先生・・・・カズマは生きてる。ぜったい生きてるんだって!!」
「これは決定事項です。覆すことは・・・・・もう、出来ません」
「そんな・・・・・ご両親は何と?───────あ」
そこで私は思い出した。一正くんには、もう・・・ご両親は─────
「現在、彼の親権を持っているご親戚の夫婦からは、既に了承を得ております。ただ、お二人は出席しない、と申してましたが・・・・」
「─────ふざけんなよ」
銀が両手を固く握り締めて、震えている。
「ふざけんなよ!!なんだそれは!?それでも親かよ!!」
「銀、落ち着いて・・・・」
「これが落ち着いていられるか!!─────なあ、園子。お前も何とか言ったらどうなんだ!?」
そのっちは、何も言わない。
というよりも、あの日からずっと、そのっちは上の空で
何時にも増してぼーっとしている。
(違う。そのっちはたぶん、眠れていないんだ)
知らない人が見ても分かる程にできた目の下の隈。
そのっちにとって、衝撃が大きすぎた・・・・という事の現れだ。
「園子!!」
返事を返さないそのっちに業を煮やした銀が、そのっちに掴みかかった。それを羽交い締めにして止める。
「銀止めて!そのっちだって辛いのよ!?それくらい、見れば分かるでしょう?」
「───────────ごめん」
私の言葉に落ち着いた銀が、一言謝る。それでも、そのっちは動かない。
と、その時だった。
突如として静寂に包まれる世界。
時計が秒針を刻む音すらも聞こえてこない。これは・・・・!?
「まさか・・・・こんな時に!?」
「───────────────────ぅう」
「え?園子?」
気付けば、そのっちが椅子から立ち上がっていた。その手に端末を握りしめて。
「ぐ・・・・・・うぅ・・・・・・」
「そのっち・・・・?」
端末がミシミシと音を立てる程、強く握りしめながら、そのっちは呻き声を上げている。
そして、彼女は爆発した。
―――――――――――†――――――――――
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ま・・・・待ってそのっち!!」
「園子!無闇に飛び出すなよ!!なあ、おいってば!!」
桃色のバーテックスに突撃していくそのっちを、私たちは止める事が出来ない。
バーテックスは複数の爆弾を投げつけて来ていると言うのにも関わらず、そのっちはそれに構わず、寧ろ爆弾に槍を突き刺し爆発させる。
当然、爆弾は爆発する。その瞬間にそのっちは槍の盾を開いて、爆風を追い風にして加速する。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
そのままバーテックスの頭部(?)に槍を突き刺す。何度も、何度も、何度も何度も。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そんな彼女の姿は、以前に一正くんが話していた『狂戦士』というものを連想してしまう。
「そのっち・・・・・・」
「須美、アタシらも行くぞ。このままじゃ園子が・・・」
「あ・・・・・そ、そうね!」
銀に言われるまで私は、自分が呆けている事に気付かなかった。
いけない・・・・今はお役目の最中なんだ・・・!
―――――――――――†――――――――――
お役目はとても速く終了した。
全て、そのっちが鬼神の如き活躍をしたから。でも───
「そのっち!なんであんな危険な事をしたの!?」
「そうだぞ園子!カズマだって言ってたろ?『前衛はアタシとカズマ、後衛に須美。園子は中衛で援護』って!!」
私たちはそのっちを叱った。当然だ、だって今のそのっちは三人の中で一番ボロボロで、とてもじゃないけど、見ていられなかった。
「・・・・・・・・・・ねえ、わっしー」
「なに?」
「わたし、頑張ったよね・・・・かずくん、喜んでくれるかな~?」
その一言に、私はそのっちの頬をひっぱたいた。
「ちょ・・・須美!?」
「そのっちあなた・・・・!!!こんなことをして、一正くんが喜ぶ訳ないでしょう!!!!!!」
「・・・・・あ~、やっぱり~?」
「じゃあ、どうしてかずくんは、わたしを叱りに来てくれないのかな・・・・・・?」
そのっち・・・・・・
「ねえ、なんでかな・・・・・・?わたしの事、嫌いになっちゃったのかな・・・・・?」
「──────────」
私も銀も、何も答えられなかった。
「なんで、かずくん・・・・・戻って来ないのかな・・・・・・?会いたいよ・・・・・・かずくんに、会い・・・・・た・・・・・うぅ─────」
「そのっち!!」
「園子!!」
もう、我慢なんて、できなかった。
私たちは、互いに身を寄せあって、抱きしめあって、わんわん泣いた。
悲しくて、辛くて、心が痛くて、先生が迎えに来るまで、私たちは泣いていた。
翌日、雨が降る中、一正くんの葬儀が執り行われた。