契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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煌月くんの掘り下げ回。

それとちょっとした伏線仕込み回です。

どうぞ、お納めください。


Yの活動記録 -猫探し探偵煌月輝夜-

「チィーッス」

 

「こんにちはー!」

 

ガラリと扉を開けて、入室する。

ここは讃州中の家庭科準備室。

とある部が部室として使用している部屋だ。

 

部の名前は『勇者部』

 

なかなかイカした名前だろ?

友奈なんか眼を輝かせて「かっこいー!」って騒いでたしな。

 

「お、やっと来たわね。遅いぞー、猫探偵」

 

この人は『犬吠埼 風』学年は一つ上の三年生。

この勇者部の部長であり、創設者だ。

口を開けば「女子力女子力」とうるさいが、スタイルは抜群で黙っていれば美人な残念ガール。その上、家事全般も全てこなせるのだからホント、神樹サマは人に二物を与えてはくれないんだな。

 

「煌月ー?なんか失礼なこと考えてない?」

 

「はてさて、何のことやら?で、風さん。探して欲しい猫の特徴は?」

 

「露骨に話を反らさない!・・・まあいいわ。あとでお説教ね」

 

またか。今日は厄日だな。

 

「はい、輝夜くん。これが猫の特徴よ」

 

車椅子を動かして、俺に一枚のペーパーを手渡してくるこの黒髪美少女は『東郷美森』俺と同い年(タメ)でクラスも同じ。

おしとやか系の清純派大和撫子って見た目だが、その実、ゴリッゴリの右側思想でスーパーハッカー。おまけに何処を探しても見つからない位のハイパーナイスバディだ。

 

「輝夜くん?私の顔になにかついてる?」

 

「ああ、すまない。なんでもないよ」

 

「・・・・・・変なこと、考えてた?」

 

「―――――――さてね」

 

ペーパーを受け取りつつ、東郷の熱視線を全身で受け止める。

さて、どんな猫チャンかな?

 

「―――あ・・・あの!煌月先輩!」

 

「ん?なんだい?」

 

おっと、忘れる所だった。今年入ってきたダークホースの存在を。

彼女は風さんの妹の『犬吠埼 樹』学年は一つ下で一年。

風さんとほ真逆で人見知りが激しく、いまだに俺相手だと緊張する小動物系女子。女子らしく占いが得意でその的中率は六割弱、らしい。東郷曰く、「樹ちゃんは才能の塊」なんだと。磨くのは良いが、右側思考には染め上げるなよ?

 

「あ―――――えと」

 

「―――――――?」

 

「――――これ、どうぞ」

 

「ばんそうこう?なんで?」

 

「あら?輝夜くん、肘をすりむいてるわ・・・」

 

「え?ホントに?」

 

いつの間に。まあ、心当たりは一つしかないが。

なぁー、友奈ぁー。

あ、目ェ反らした。吹けないクセに口笛吹いてる。

 

「ん、ありがとう樹」

 

樹の頭をわしわしと撫で、ケガの場所にぺっと貼る。

 

「よし、それじゃ行くとするか!」

 

「いってらっしゃーい」

 

「怪我には気を付けてね」

 

「い・・・いってらっひゃい・・・」

 

この三人に、友奈と俺を含めた五人。

これが俺の所属する勇者部のメンバーだ。

 

―――――――――――†――――――――――

 

勇者部の活動目的は、『世のため人のためになることを勇んで行うこと』

まあ、つまる話がボランティアだな。

しかし、ボランティア部だなんてありきたりな名前にせず、あえて『勇者』なんてケレン味のある名前にすることで人々の印象に残りやすくする。そうすれば知名度は高まるし、依頼も増える。

創った風さんにそんな意図があったかどうかは別だが。

 

「さて、ご依頼の猫チャンは・・・と」

 

「かぐやちゃーーーーーーん!!」

 

「ん?」

 

これから猫を探そうとしたところで、友奈が来た。今度はラリアットされることなく、俺のとなりで止まる。

 

「なんだ?俺の手伝いか?明後日の劇の準備はどうしたんだよ」

 

「準備ならほとんど終わったよ。えっと―――」

 

ん?なんだ?少し歯切れが悪いな友奈のやつ。

まさか―――

 

「さっきの、ケガさせたこと。気にしてんのか?」

 

「う」

 

どうやら図星らしい。やれやれ、そんなの今更の事だろうに。まあ、友奈らしいっちゃらしいわな。

まったく、仕方ない。俺は友奈の頭を撫でながら告げる。

 

「いつものことだろ?気にすんなよ・・・・・・て言っても、どうせおまえは気にするだろうからな。ほれ」

 

「ふぇ?」

 

ある場所を指差す。そこには件の猫が佇んでいた。

 

「手伝ってくれるんだろ?俺は()()()()()()()()()()()()()()。捕まえることができない。追い込むから捕獲頼むな」

 

「!・・・うん!まかせて♪」

 

友奈の顔に笑顔が戻る。やっぱ友奈には笑顔が一番似合う。他の表情なんて考えられないくらいだ。

 

「よし、俺が向こうから追い込む。友奈はあっちで捕まえてくれ」

 

「らじゃー!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

作戦は途中までは、上手くいっていた。

猫が友奈を踏み台にして近場の塀に飛び乗り、走り去って、それを追いかけたまではいい。

問題は―――

 

「うー・・・・・・・・・ん」

 

「きゅう」

 

茂みから出てきた小学女子に友奈がぶつかってしまい、その子と共に気絶してしまったことか。

 

「わっしー、大丈夫?」

 

「須美ー?無事かー?」

 

更に茂みから二人現れた。どうやらこの子の友人らしい。

 

「おーい、友奈ぁ?おきろー」

 

友奈の頬をぺちぺち叩いて起こす。逃げた猫?どうせすぐに見つけられるさ。今はこっちが優先。

 

「うぅ・・・・・・・・・はっ!猫ちゃんは!?」

 

「おはよう友奈。猫なら逃げたぜ」

 

「うう・・・そっかぁ・・・」

 

目に見えて落ち込む友奈。むぎゅう、と少女を抱き締める。

 

「んむー!んむー!んむむむー!」

 

「・・・・・・おーい、友奈ぁ。いい加減その子を離してやれー」

 

「え?―――――わあ!!ごめんね!大丈夫?」

 

「ぷはあ・・・・・・らいじょうぶれふ」

 

友奈のホールドから解かれた少女は、顔を真っ赤にさせて目を回していたが、ケガとかはしていない様子。うん、大丈夫そうだな。

 

「ごめんね。すっごく柔らかくて、気持ちよかったから、つい・・・」

 

「そりゃうちの自慢の『ましまろぼでー』ですので~」

 

上質な麻布(シルク)のごときロングヘアーの少女がにこやかに笑い笑いながら言った。

その言葉に友奈に抱き締められていた黒髪の少女がさらに顔を真っ赤にする。

 

「それはそうと、猫がどうとか・・・話してませんでした?」

 

もう一人の、どっちかというと快活そうな少女の一言で友奈が「そうだったー!」と叫んだ。やれやれ、忘れていたのかよ・・・

 

―――――――――――†――――――――――

 

猫探しの協力を申し出てくれた三人と共に、周辺の探索をすること、五分―――

 

「いたー!あんなところに!」

 

「木に登って、降りられなくなっちゃったんだね~」

 

最初に来た公園にある一本の木の上に、件の猫はいた。

周り回って振り出しに戻るとは―――。なんて気落ちしている場合じゃないな。

 

「どうする?ハシゴなんて近くには無いぞ?」

 

「よーし!ここは合体だー!」

 

「「え?」」「おお!?合体!?」

 

「おい友奈、お前まさか・・・」

 

予感的中。

友奈が土台となって、黒髪少女、快活少女、の順に肩に乗る。

確かに猫に届くだろうが・・・・・・自分ら、降りるときどーすんのさ。

とか思っていたら―――

 

「あ」てん

「え?」てん

「わ!」てん

 

「いらっしゃ~い♪」

 

友奈たちをハシゴにして、降りて来た。そこをお嬢ちゃんがナイスキャッチ。

 

「おし、ナイスだ」

 

「えへへ~っとと、この子すっごい暴れるよ~!」

 

捕まえられたのが気にくわないのか、それとも俺が隣にいるからか、猫がお嬢ちゃんの腕の中で暴れまわっている。すると――――

 

「あー!ピッカーンとひらめいた」

 

何を思ったのか、まるで泣きじゃくる赤子をあやすみたいにして、猫をなだめ始めたのだ。

 

「大丈夫~大丈夫~。こわくな~い・・・こわくな~い・・・」

 

すると猫は徐々に落ち着きを取り戻し、やがて眠ってしまったのだった。

ヒューっ!やるじゃない。

 

その後、うまいこと分離できた友奈たちと共に、依頼者の元へ猫を届けた。

依頼者はたいそう喜び、お礼に、と和菓子の詰め合わせをくれたのだった。

しかし俺たち勇者部は、あくまでボランティアの一環として行っているに過ぎない。故にお礼を受けとることはできない。しかし、それでは依頼者の気が晴れないだろう。そこで―――

 

「実は、この子を捕まえたのは僕たちじゃないんです。この、三人の小さな勇者たちなんです」

 

と言って、小学生ズに受け取ってもらうことにしたのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「本当にいただいてもよろしいのでしょうか?」

 

「いいのいいの!小さな勇者さんたちへの、わたしたちからのお礼でもあるんだから」

 

「そういうこと。それに、死んだばっちゃが言っていたぜ?『無料(タダ)より高いモノは無い。だが、感謝の気持ちはプライスレス。受け取らないのは礼儀に反する』ってな」

 

「須美、お兄さんたちもこう言ってるし、お言葉に甘えちゃおうぜ?」

 

「・・・・・・・・・そうね。そうします」

 

どうにか折れてくれたようだ。

さて、そろそろこいつらは帰らないと、日が暮れる前に家にたどり着くことができなくなりそうだ。

少女たちの着ている制服。昔、ばっちゃも着ていたという『神樹館小学校』の制服だ。

神樹館は大橋市にある。ここ讃州市からは車でだいたい一時間半はかかる。小学生にはそう簡単にホイホイ行き来できるような距離ではない。

 

「またな、小さな勇者たち。次はぜひとも『勇者部』のみんなとも会ってくれよ」

 

「あ、はい!えっと――」

 

そういえば自己紹介がまだだった。

昔ばっちゃに言われたのに。『初対面の相手には、しっかり自己紹介すること。こちらから名乗れば自ずと相手も自己紹介してくれる』って。

だから、ありったけの感謝その他諸々を込めて、高らかに名乗りを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだばっちゃが言っていた―――俺の名は、

『“(かがや)“く“月“となりて、(すべ)ての“夜“道を“(てら)“すモノ』―――すなわち、『煌月輝夜』だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か――――カッコいいーーーーーー!!!!」

 

快活少女が目を輝かせてそう言えば

 

「そう・・・かしら・・・?」

 

黒髪少女は半ば引きぎみに答え

 

「はじめまして~。わたし、乃木園子だよ~」

 

お嬢ちゃんがマイペースに自己紹介していた。

うーん、この統一感の無さよ・・・

 

「と、アタシもか。三ノ輪銀です!」

 

「あ、鷲尾須美です。今日は・・・えっと・・・」

 

「こういう時は『ありがとう』で良いと思うな♪あ、わたし結城友奈。じゃあまたね!」

 

「はい、またいつか」

 

「またね」

 

「またね~」

 

三人は出てきた茂みへと戻っていった。

・・・・・・・・・うーん、なんだろう。何かが引っかかる。

 

「かぐやちゃん?どうかしたの?」

 

「・・・・・・須美って子、なんかどっかで見たことあるんだよなぁ」

 

「え、そうなの?昔会ったことがある、とか?」

 

「そうかなぁ・・・?そうかもしれんな」

 

とりあえず今は友奈のその言葉に納得しておくことにした。

 

「それにしても、良い子たちだったね。また会えたらいいなぁ」

 

「大橋の方に住んでいるみたいだったし、そんなホイホイ行けるわけじゃないが・・・確かに、また会えたらいいな」

 

そんな話をして、二人して笑い合う。

 

「さて、そんじゃ俺らも帰るか」

 

「うんっ♪」




煌月輝夜について②―――

幼きころより面倒を見てくれた祖母(煌月は『ばっちゃ』と呼ぶ)を心から尊敬している。

座右の銘は『不味い飯を出す店と悪がこの世に栄えた試し無し』もちろん、ばっちゃからの受け売り。

ばっちゃは二年前に天寿を全うし、この世を去った。
その為、現在一人暮らし。

それを知った結城家に、「時々で良いからうちにご飯、食べにいらっしゃい」と誘われ、月に一度くらいのペースでお邪魔している。

意外と対人スキルは高め。(あるゆる意味で)
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