契約者たちへの鎮魂歌   作:渚のグレイズ

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進行マキマキ♪進行マキマキ♪
急展開にはご容赦を♪




・・・・・・すいません。
巻き進行で行きたいので、急展開注意です。

それでも良いと言う、心の広い素敵なお方、どうぞ、お納めください。










ところで、『なんかすごいビーム』って聞くと、クルモンを思い出すの僕だけかな?


Vの襲来 -終わる日常-

「かーぐーやーちゃーん!」

 

「んぉ?」

 

俺を呼ぶ声に振り向くと、友奈と東郷が歩み寄って来た。と言っても、東郷は車椅子なんだがな。

 

「輝夜くん、これから部室へ?」

 

「その前に職員室。今日日直で」

 

「そういえばそうだった、じゃあ先に行ってるね」

 

「おう。すぐ行くから、また後でな」

 

「うん!じゃねー」

 

友奈たちと別れ、職員室へ小走りに向かう。

 

「失礼しまーす。不同せんせー、居ますかー?」

 

扉を開けて雑に挨拶すると、奥の方で一人の教師が手を挙げた。

 

「ああ、煌月くん。こっちですよ」

 

そちらに近づく。

金髪のトゲトゲ頭に柔和な笑みを浮かべるその人こそ、俺たちの担任教師『不同(ふどう) 幕切(まくぎり)』である。

 

「いつも思うんスけど、その頭、どうにかしないんスか?不良感パないッスよ?」

 

「うーん・・・・・・これでも地毛ですからね。剛毛なのも含めて。ほら、染めたりすると将来剥げるって良く聞くじゃないですか」

 

まだまだ若く見られたいので、と言って笑う。

まあ良いけど、別に。興味ないし。

 

「とりあえず、今日の日誌ッス。そんじゃ、おつかれーッス」

 

「おおっと。こらこら、不用意に物を投げない!」

 

すんませーん、と、とりあえずの謝辞を述べつつ、退室。

さっさと部室へと向かうのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ちわーッス!煌月、入りまーッス」

 

「お、やっと来たわね」

 

「こ・・・こんにちは」

 

「こんにちは輝夜くん、さっきぶりね」

 

部室に入ると、風さん、樹、東郷が出迎えてくれた。あれ?友奈は?

 

「あ、かぐやちゃん!ちょうど良かった。ちょっとそこ押さえて欲しいの!」

 

「うお、そこに居たんかお前」

 

友奈は床で作業していた。これ、昨日の人形劇で使ったセットじゃん。

 

「そーいや、お前が倒してぶっ壊したんだっけか」

 

「こ・・・壊したのはわたしじゃないよー!」

 

確かに倒したのはわたしだけど・・・と小声で呟く友奈。ばつの悪そうに指先をちょんちょんしているのがちょっとかわいい。

 

「あの時はホントびっくりしたわよー。ま、誰にもケガが無くて良かったワ」

 

「風さん、そういう問題じゃないと思う・・・」

 

「固いこと言わない!にしても、なんで壊れちゃったのかしら?」

 

「真ん中くらいでポッキリ折れちゃってるよね・・・」

 

姉妹が首を捻る。

簡単に説明すると・・・

昨日の幼稚園での人形劇の最中、テンション上がった友奈がこの舞台セットを倒してしまったのだ。

園児たちの方へ倒れて行き、あわや大惨事になるかと思いきや、セットが()()()()()どうにか園児たちにぶつからずに済んだ。

―――ということがあったのだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・どした?東郷。俺の顔に何か付いてるか?それとも、俺に見惚れていたのか?」

 

「それは無いから安心して」

 

「あっけらかんとそんなこと言わないでよ悲しくなるじゃん」

 

部室に笑い声が響く。

うむ。()()()()()()()()()()()

 

―――――――――――†――――――――――

 

時刻は過ぎて夕方。

俺達は『かめや』といううどん屋に来ていた。

かけうどんが一杯百円と学生諸君にはとっても優しい値段設定(リーズナブル)になっており、その上、うまい。

おかげで我ら勇者部一同、すっかりここの常連客である。

・・・店員さんにも顔を覚えられる程に通っているし、常連と言っても大丈夫だよね?

 

「ぷはー!すみませーん!おかわりー!」

 

「三杯目・・・」

 

うん。こんだけ食ってんだから、常連客じゃなくても、上客としては扱ってくれてるだろ!←投げやり

 

「・・・風さん、あんまり食いすぎると、肥るぞ?」

 

「んぐっ!!げほっげほっ・・・・・・だ、だだだ大丈夫よ。アタシの場合、栄養は全部女子力に変換されるんだから!」

 

なにその謎理論。根拠はどこよ?

友情パワーと謎理論で並みいる敵をなぎ倒す某プロレス(?)漫画みたいな理論を述べおって・・・

 

「アタシのことは良いの!それより、本題に入るわよ」

 

「そういえば、話があるからって理由でここに来てたんだっけ」

 

「そうよ!今度の文化祭の話をするために来たのよ!」

 

「文化祭ぃ?」

 

「もうですか?」

 

讃州中の文化祭は十月に行われる。現在五月の頭。流石に早すぎやしないか?

 

「去年は色々ゴタゴタしてて、何も出来ませんでしたから・・・」

 

「あー、そういやそうだったな」

 

二杯目を注文したおれは、カバンからビンを取りだし、中の自家製梅干しをやってきたうどんに一粒のせる。そして、食う。

うん。うまい。

 

「あ♪かぐやちゃんの梅干し、いっこもーらい♪」

 

ひょい、ぱく。

 

「あっ。・・・たくもう。ちゃんと味わえよ?」

 

「ひゃーい」

 

酸っぱそうに口をすぼめながらも、元気よく返事をする。

 

「あ、私にもちょうだい?」

 

「いいぞー。ほれ」

 

「ん、ありがとう」

 

東郷はどうやら酸っぱいのは平気らしく、なんとも美味しそうに食べてくれた。

やはり手間隙かけて作った物を喜んでくれる人がいるというのは、とても良いものだ。

死んだばっちゃも言っていた。「一流(プロ)料理人(シェフ)は、自分の為に料理を作らない。自分の料理を食べてくれた人が、満面の笑みを浮かべて、『ごちそうさま』と言ってくれる。この為に料理を作るのだ」と。

 

「・・・・・・あ・・・あのー・・・」

 

「ん?なんだい樹。お前も梅干し、欲しいのか?」

 

「あ・・・えっと・・・そうなんですけど・・・そうじゃなくて・・・」

 

ふむ・・・?

 

「うーん・・・・・・梅干し、ニガテ?」

 

「えっと・・・・・・すこし」

 

「そっかー。そんな樹には、こっちのビンだな」

 

カバンからもう一つのビンを出す。そちらにはラベルが貼ってあり、『甘め』と書かれている。

 

「氷砂糖とシロップを使った『はちみつ漬け梅干し』!これなら、酸味控えめで良い感じだと思うぞ。ほれ、食べてみ?」

 

ビンから一粒取りだし、樹に渡す。

 

「・・・・・・・・・いただきます」

 

はむっ

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・どうだ?」

 

「―――――――――――――おいしい、です・・・!」

 

「そうか!それは何よりだ!」

 

表情から見ても無理しているわけではない。どうやらホントにちゃんと食べられたみたいだ。あー、よかった。

 

「ちょっとちょっと!あんたたち!」

 

風さんが頬を膨らませてこちらを睨む。

 

「何?風さん。梅干し食べたいのか?」

 

「たべるー♪」

 

今日も勇者部は平和です。

 

 

 

 

ちなみに、文化祭の出し物の案は宿題となった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ただーいまー」

 

『かめや』での会議(という名の食事会)を終え、東郷家が頼んでいるデイサービスの車を、いつも通りに断って、一人徒歩で帰宅。

 

「ああ、おかえりなさい輝夜」

 

出迎えてくれたのは不同先生。

なんでうちにいるのかというと、実は彼、この家の使用人なのだ。その上教職員もやっている。本人曰く、本業は使用人(こっち)らしい。

 

「使用人が副業に教師やるのって、どうなのさ」

 

「今さらですね」

 

「それよりマッキー。今日の夕飯は?」

 

マッキーとは不同先生のあだ名である。俺は幼少のころからこの人のことをそう呼んでいた。

 

「今日はご実家から蕎麦が届きましたので、夕飯は蕎麦にしました」

 

「おー蕎麦か。良いね。うどんの次に好きだよ」

 

煌月家の先祖は、諏訪という地からの移住民らしく、血筋の人間には蕎麦好きが多い。

が、生憎俺は蕎麦よりもうどん派だ。

もっと言うとうどんより梅干し派だ。梅干し万歳。

 

「もうあとは茹でるだけなので、リビングで待っていてください」

 

「はいよ」

 

「ちゃんと手洗いうがいはしっかりやってくださいよ」

 

「わーってる!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

夕飯を終え、二階の自室へ。

風呂は寝る前に入る主義なので、今のうちに宿題を片付けることにしよう。

 

ブーッ、ブーッ、

 

と、思ったがメールが来たので先に確認。

 

「む、友奈からだ」

 

『こんやのお月様は、まんまるできれいだよっ♪』

 

「・・・・・・やれやれ、いつの間にこんな言葉を覚えたのか」

 

このメールはいわば()()()だ。

なので早速ベランダへ出て、手摺を使って屋根へと登る。そこで待っていたのは――――――

 

「あ♪待ってたよ。かぐやちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月明かりに照らされて、光輝く桜色の天使であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――やあ、友奈。月夜の密会にお招きいただき、恐縮だよ」

 

「えへへー♪かぐやちゃんがまたむつかしいこと言ってるー」

 

「・・・・・・・・・せっかくカッコつけたんだからさぁ」

 

「あはは、ゴメンゴメン」

 

「んもう・・・」

 

二人して笑い合う。俺と友奈は、時々こうして屋根の上でおしゃべりをする。話題は大抵、今日の出来事。今回は、風さんからの宿題が話題かな?

 

「ありがとね、かぐやちゃん」

 

「んん?なんで?なんかしたか?俺」

 

()()()()()だよー」

 

「・・・・・・・俺は何もしてないよ」

 

「・・・・・・・それでも、言いたいの」

 

「・・・・・・・そうかい」

 

それっきり、二人とも、黙ってただ月を眺めていた。

時々そよぐ風が、友奈の香りを俺に届ける。

それ以外は何もなく、ただただ、時間ばかりが過ぎていった。

どれくらい経ったか、「くちゅんっ」というかわいらしい声が隣から聞こえてきた。

 

「・・・・・・五月だからって、これ以上は体が冷える。そろそろ戻ろうぜ?」

 

「・・・・・・うー。わかったよぉ」

 

そそくさと自分の部屋へと戻っていく。その途中、

 

「かぐやちゃん、また明日ね♪」

 

「ああ、また明日」

 

そういってお互いに手を振り合って、今夜はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、文化祭の出し物について、話し合うの忘れてた」

 

どうしようか?

 

―――――――――――†――――――――――

 

翌日、結局なにも良いアイデアは思い浮かばなかった。

 

「(文化祭の出し物・・・文化祭の出し物・・・)」

 

現在授業中だと言うのに、全く授業内容が入ってこない。

さてさて、ホントにどうする?

 

「(あー、クソ。時間止まんないかなぁ?)」

 

そんな子供みたいなことを思った、その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪~♪~♪~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅおっ!!なんだぁ!?」

 

「誰ですか?携帯の電源は切っておくように!」

 

辺りを見回す。なんか音源がスッゲー近いような・・・

 

「てゆーか、俺じゃね?」

 

あわてて端末を取り出して、ふと、思い出す。

 

「(おかしい、授業始まる前にちゃんと電源は切っておいたハズ)」

 

画面には『樹海化警報発令』と表示されている。

なんだ、これは・・・

 

「・・・・・・これは、一体」

 

呆気に取られていると、けたたましい音が止み、教室は静寂に包まれていた。

 

んん?でもなんか、静か過ぎない?

 

「・・・・・・・・・え?」

 

もう一度、辺りを見回す。

先生も、クラスメイトも、時計の針も、外に舞う落ち葉すらも、なにもかもが止まっていた。

 

「輝夜くん・・・・・・友奈ちゃん・・・・・・」

 

「え?なに・・・・・・なんでみんな止まって・・・・・・」

 

友奈と東郷を除いて。

 

「・・・・・・・・・んだよ・・・これは・・・」

 

訳が分からない。まるで時間が停止してるみたいな状況。そんな中、なぜか動ける俺たち。

 

「・・・とにかく、情報収集だ」

 

思い立ち、行動しようとした、その時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が、光に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅお!まぶし!」

 

「!!東郷さん!」

 

「きゃあ!!」

 

あまりのまぶしさにとっさに眼を閉じる。

しばらくして、眼を開けた時―――――

 

 

 

 

 

辺りは、極彩色の木々に覆われていた。

 

 

 

 

 

「――――――は?」

 

 

 

 

 

この日、俺たちの日常は、一旦、終わりを告げたのだった。




キミが願うことなら、全てが現実になるだろう。
キミが、選ばれし者ならば・・・

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