友奈の一撃で半壊したバーテックスだったが、みるみる内に再生していってる。
なんつーチート野郎だ。
「・・・神樹様、どうかみんなを御守りください・・・」
となりの東郷は、ついに神頼みし始めた。
その神樹様に『Help me!!』て言われて俺らここにいるんだよなぁ・・・
―――――――view,change:友奈―――――――
わたしの勇者パンチでバーテックスにダメージを与えることはできた。でもすぐに回復してしまった。
風先輩が言うには、『封印の儀』っていう特殊な手段じゃないと倒せないらしい。
そこで、わたしと樹ちゃんは風先輩の指示に従って、バーテックスを取り囲む位置に移動する。
「うわあ!!」
途中、バーテックスが布みたいなので攻撃してきたけど、寸でのところでかわしてどうにか移動できた。
「位置に付きましたー!」
「こっちもいいよー!」
向こうを見れば、樹ちゃんもちゃんといる。
「よぉーし・・・封印開始!」
風先輩が合図を送る。
えっと・・・確か、祝詞を唱える・・・だったよね。説明書は・・・・・・え?
「こ・・・これ、全部読むの!?」
そこには、なんだかむつかしい文章が書かれていた。
読み方も一緒に書いてあるからいいけど、なかったら絶対に読めないよぉー・・・
「え・・・ええっと・・・か、『かくりよのおおかみ、哀れみたまい』」
わたしが祝詞を詠むと、さっきも出てきた牛っぽいかわいいのが表れた。
「『恵みたまい、さきみたま、くしみたま』」
樹ちゃんもわたしに続く。そのそばには、緑色の毛玉がいる。あの子もかわいいなぁ。
「大人しくしろぉ!!」
「「ええぇぇぇ!!それでいいのぉぉぉぉ!?」」
「要は魂込もっていれば、何だっていいのよ!」
「早く言ってよ~!!」
そうこうしていると、バーテックスの頭がパカっと割れて、中からへんなのが出てきた。
「なんかベロンと出たー!」
「あれが御霊。バーテックスの云わば心臓みたいなもの。あれを壊せばこいつを倒せる!」
「なら、私が!」
風先輩の説明を聞いて、わたしは御霊を破壊しようと飛び出した。
が、その前に御霊が×の字に斬られて爆発。たくさんの光を放って消えた。同時にバーテックスも砂になって崩れ落ちた。
「え・・・えっと・・・今の樹ちゃん?」
「ええ!?わ・・・私知りません!!」
「私も違うわよ!」
風先輩でもない・・・・・・じゃあ、誰?
そんなわたしの疑問に答えるみたいに、わたしたちの目の前に、その人は現れた。
所々ほつれていてボロボロの赤い服を着て、顔には黒いお面を着けている。そのお面には、あるマークが書かれていた。神樹様を模した、特徴的なマーク。それを使っているのはただ一つ、大赦だけ。
でもちょっとおかしい。
「・・・・・・あんたが、やったの?」
風先輩が訪ねる。でも赤い服の人は両手の剣--持つところが銃みたいになってる変わった剣--を構えて―――
バヂィ!!
「きゃあ!!」
赤い服の人の攻撃は、バリアによって防がれた。防がれたけど―――
「ちょ・・・ちょっとあんた!いきなり何よ!?」
「――――――――」
赤い服の人は答えず、両手の剣でまた攻撃してきた。
「きゃっ!ま・・・まって!お願い、話を・・・」
「――――――――問答無用だ」
初めて、赤い服の人がしゃべった。
少し低めだけど、女の子の声だった。
「こんの・・・待ちなさいって言ってんでしょぉぉぉぉぉぉ!!」
風先輩が赤い服の女の子に向かって大剣を振り下ろす。
女の子はそれを右手の剣で受け止め、
「度胸は買う。が・・・力量が足りない」
左手の剣で風先輩の大剣を弾き飛ばした。
「なっ・・・・・・がはっ」
そのまま女の子に蹴り飛ばされて、風先輩は倒れた。
「お姉ちゃんっ・・・!!」
「風先輩っ・・・!!」
「他人の心配してる場合か?」
「え・・・あぐっ」
今度はわたしが蹴り飛ばされた。すごく、痛い・・・
「げほっ・・・なん、で・・・?こんな・・・こと・・・」
「―――――嗚呼、私があんた達を攻撃した理由、か?」
「あなたも・・・勇者・・・なんでしょ?・・・なのに・・・なんで・・・?」
「―――――――――――――――勇者?アタシが?」
「そうだよ・・・あなたも勇者でしょ?だったら、こんなこと・・・」
「―――――――――――――――フフ」
女の子は、突然笑いだした。わたし、そんなに変なこと、言ったかな?
「ふざけるなよ」
ひとしきり笑った後、女の子から発せられた声は、分かりやすいくらい、怒っていた。
「―――――――――ひ」
「アンタ、何も知らないんだな・・・お目出度い奴。もういい」
つかつか、と女の子が近付いてきて、わたしの頭を掴んだ。
「ああっ!!」
そのまま目線(お面で目がどこにあるかわかんないけど)を合わせると、
「とっととスマホを渡せ。ぶっ壊して、使えなくしてやる」
「えっ!?」
どういうこと・・・スマホがなくなったら、わたしたちは変身できなくなっちゃう・・・
「勇者なんざ必要ない。『魔人柱』たる私がいれば事足りる」
「・・・・・・だから、攻撃してきたの?」
「お前たちは分かっていない。勇者がどういうモノなのか・・・」
「いたっ・・・」
わたしの頭を掴む力が強くなる。
「さあ・・・渡せ・・・!」
「う・・・ああ・・・」
痛みでどうにかなってしまいそうになる。
誰か・・・
「!?――ガァ!!」
突然、わたしから手を離したとおもったら、いなくなっていた。違った。
「――――――ま、さか」
遠くに飛行機雲が見える。樹海に沿ってまっすぐ伸びたそれが、
「―――――――――――かぐやちゃん」
少し離れた場所に、女の子と
「(―――わたし、
いつだって、かぐやちゃんは理不尽にいじめられてる人のために戦っている。
あの日、初めて会ったときから、ずっとそう。
そんな彼を助けたくて、わたしは勇者になったのに―――
「友奈ぁ、無事だな!」
「―――かぐやちゃん」
こちらに背中を向けたまま、かぐやちゃんがわたしを呼ぶ。
そのまま左手を動かそうとして、壊れていることに気付いて、右手でガッツポーズをとる。
「こっから先は、俺の担当だ」
そう言って、かぐやちゃんと女の子の戦いが始まった。